東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)の投資と評論サイトです。ジオシティーズ(http://www.geocities.jp/shinonomenod/)から移転してきました。

アニメ

「蜘蛛ですが、なにか?」に学ぶキャラクターの立て方

(本稿は「蜘蛛ですが、なにか?」の抽象的ネタバレを含みます。) 『蜘蛛ですが、なにか?』(原作・シナリオ監修:馬場翁、監督:板垣伸、アニメーション制作:ミルパンセ)は蜘蛛に転生した「私」を中心とした群像異世界ファンタジーだ。『蜘蛛ですが、な…

シャドーハウス感想――逆転・隠喩・二枚のカード

(本稿は『シャドーハウス』の抽象的なネタバレを含みます。)『シャドーハウス』(原作:ソウマトウ、監督:大橋一輝、アニメーション制作:CloverWorks)はユニークな設定のアニメだ。洋館「シャドーハウス」では貴族のような生活を送る顔のない黒づくめの…

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました感想

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(森田季節原作、木村延景監督)(以下スラMAX)は異世界に転生し不老不死になった主人公アズサが、300年間コツコツスライムを倒していたら最強になっていたという出落ちのような小説が原作…

シン・エヴァンゲリオン劇場版感想――もっと脚本に労力を!

(本稿はシン・エヴァンゲリオン劇場版のあからさまなネタバレを含みます。) ようやく『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観た。 私のこれまでの新劇場版の評価は、序→かなり面白い、破→すげー!最高!!、Q→ひどすぎる、もう知らん!という感じだ。Qで心が…

プロフェッショナル仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~感想

『プロフェッショナル仕事の流儀~庵野秀明スペシャル~』が話題になった。ネットでは異常なまでにクオリティを追及する庵野監督に振り回される周囲の人々に同情する意見が多かった。私は本放送を録画しておらず観られなかったのだが、5月1日の深夜に再放送…

2020年テレビアニメベスト10

2019年テレビアニメベスト10は2019年の年末に書いて発表した。 shinonomen.hatenablog.com だが、その後に放送された『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』の最終回が滅茶苦茶感動的だった。これを観てから選定していれば、絶対ベスト10入りの…

神様になった日感想――下らない一瞬の価値

(本稿は『神様になった日』のネタバレを含みます。)『神様になった日』(原作・脚本:麻枝准、監督:浅井義之、アニメーション制作:P.A.WORKS)は平凡な高校生成神陽太の元に、全知の神を名乗る少女佐藤ひなが現れ、「30日後に世界は終わる」と告げたこと…

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編感想――やり場のない悲しみが観客を駆り立てる

(本稿は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の抽象的だがあからさまなネタバレを含みます。またTVアニメ版の具体的なネタバレを含みます。) 11月1日に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメーション制作:ufotable)…

天晴爛漫!感想――ホームズは絶望しない。

(本稿は『天晴爛漫!』の重大であからさまなネタバレを含みます。) 「天晴爛漫!」(監督:橋本昌和、アニメーション制作:P.A.WORKS)は、自動車黎明期に実際に行われたアメリカ横断自動車レースを舞台にした冒険活劇だ。キャラクターが魅力的で夏アニメで…

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...感想~ハリウッド式作劇法へのアンチテーゼ

(本稿は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』のネタバレを含みます。) 一視聴者としてはとても面白かったが、一クリエイターとしては敗北感で打ちのめされた、というのが『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生して…

ゆるキャン△と藤原拉麺店とカレー麺

ゆるキャン△は孤独の自由も仲間とのふれあいもどちらも等しく素晴らしいということを描いた、私にとって大切な作品だ。 shinonomen.hatenablog.com そんなゆるキャン界隈が1月からにわかに活気づいている。まず、へやキャン△というショートアニメが始まった…

2019年テレビアニメベスト10

今年は例年よりはテレビアニメを観たので、ベスト10を発表する。とにかく面白いもの、レコーダーに未見の作品があったら真っ先に見たいもの、という観点で選出したらメジャーなものばかりになってしまった。ジャンプ作品が4つも入っている。一時期低迷が囁…

他者にしか救えない――鬼滅の刃感想

(本稿は『鬼滅の刃』のネタバレを含みます。) アニメ『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴原作、外崎春雄監督、ufotable)が素晴らしい。元々ストーリー・設定・キャラクターが魅力的な原作にufotableの神作画が加わってものすごい高みに達している。特に第十九話『ヒノ…

お姉さんじゃなきゃダメなんだ――天気の子感想

(本稿は『天気の子』のネタバレを含みます。) 『天気の子』(新海誠脚本、監督)は映像だけで観客の心を揺り動かす。花火大会のシーンはあまりの映像の美しさに泣いてしまった。 また、晴れと雨に対して観客が抱く感情が反転するという構成は何事も捉え方…

本心開示量が不適切な連中――かぐや様は告らせたい感想

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦』(赤坂アカ原作、畠山守監督)は相思相愛の白銀御行生徒会長と四宮かぐや副会長が、自分から告白すると立場が下になるからと相手から告白させようと画策しあうアニメだ。 第一話を見て、下らないプライドのた…

普遍性のある苦難――約束のネバーランド感想

(本稿は『約束のネバーランド』のかなりのネタバレを含みます。) 『約束のネバーランド』(神戸守監督、白井カイウ原作、出水ぽすか作画)は2019年冬アニメで一番面白かった。1話のラストで驚愕し、次々襲い来る試練に引き込まれっぱなしだった。 成長物語…

他者の色がないと気づけない――色づく世界の明日から感想

(本稿は『色づく世界の明日から』の抽象的ネタバレを含みます。) 『色づく世界の明日から』(篠原俊哉監督)のヒロイン月白瞳美が色を見ることができないという設定には舌を巻いた。テーマ的にも表現的にも見事な設定だ。 第一に、瞳美が世界を活き活きと…

スマホが表現を規定する

TBSラジオのアフター6ジャンクションで12月4日、1月8日の二回にわたってWebトゥーンの特集をしていた。 www.tbsradio.jp Webトゥーンとは縦スクロール、フルカラーのウェブ連載されている漫画のことだ。 12月4日は「海月姫」など紙漫画のヒットメーカーであ…

高畑勲監督は24年早かった

高畑勲監督が亡くなった。 高畑監督程、アニメについて考えた人はいないだろう。天才宮崎駿監督に知名度や興行収入では劣っても、アニメ界への影響は計り知れない。 私の高畑監督のイメージは基礎研究者だ。基礎研究が実用化され、広く一般化するには時間が…

フィクションの感動はバズらない――ゆるキャン△第5話感想

アニメ「ゆるキャン△」(あfろ原作、京極義昭監督)の白眉と言えば第5話「二つのキャンプ、二人の景色」だろう。 ゆるキャン△は女子高生がまったりキャンプをするという癒し系の作品だが、「アニメ「ゆるキャン」で東山奈央が「くぁwせdrftgyふじこlp」を全…

フリのアウトソーシング――ポプテピピック感想

(本稿はポプテピピックのネタバレを含みます。文中敬称略。) 『ポプテピピック』(大川ぶくぶ原作)が話題だ。特に耳目を集めているのはパロディの多さと毎回変わる声優だ。両者は別のこととして語られているが、毎回声優が変わるのも一種のパロディだ。主…

何故けものフレンズは人気なのにリベラルは叩かれるのか

テレビ東京系で『けものフレンズ』(たつき監督)が再放送された。私も冒頭だけ見てから出社し、帰ってきてから録画を見て癒やされていた。ほんと、幸せな気分になるアニメだよね。 けものフレンズのメッセージはオープニングテーマの「けものはいてものけも…