東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。ジオシティーズ(http://www.geocities.jp/shinonomenod/)から移転してきました。Amazonのアソシエイトとして、当メディアはごくまれに適格販売により収入を得ています。

2015-01-01から1年間の記事一覧

嫌なことが起こらない世界――ボラード病感想

(本稿は『ボラード病』のネタバレを含みます。)『ボラード病』(吉村萬壱著、文藝春秋)は嫌な小説だ。普通の小説は読者にとって心地よいことを書くが『ボラード病』は嫌なことを書く。 小学五年生の主人公、恭子の視点で何気ない日常生活が描かれるが、そ…

カマシと成長の余地――りゅうおうのおしごと!感想

(本稿は『りゅうおうのおしごと!』の内容に触れています。)主人公とヒロインが強すぎないかというのが『りゅうおうのおしごと!』(白鳥士郎著、GA文庫)を読んだ最初の感想だ。主人公の九頭竜八一は16歳にして将棋界最強の竜王を獲得した天才棋士。八…

全ての小説は走馬灯である。――海を失った男感想

(本稿は『海を失った男』のあからさまなネタバレを含みます。)『海を失った男』(シオドア・スタージョン著、若島正編、晶文社)の表題作を最初に読んだ時は訳が分からなかった。二回目に読んだ時、意味が分かり、三回目で傑作であることが分かった。四回…

演者としての評価――M-1グランプリ2015感想

5年ぶりに復活したM-1グランプリは敗者復活戦から決勝戦まで面白いネタばかりで何度も笑い転げた。 番組自体は大満足だったのだが、気になることがあった。審査員の採点が私の評価とはだいぶずれていたのだ。メイプル超合金が面白かったのに…という意見は既…

登場シーンジェネレーター

すっかり過疎化している本サイトの方で登場シーンジェネレーターをアップしました。小説の新キャラ登場シーンを自動生成するものです。ついでに過去に作成したジェネレーター一覧を貼っておきます。 ラノベあらすじジェネレーター(11.10/14) ファンタジー小…

最近のこのライトノベルがすごい!文庫と宝島社文庫の感想

献本を頂いたのに全く感想を書いていなかったので、短い感想を。絵本作家・百灯瀬七姫のおとぎ事件ノート 喜多南 宝島社文庫 最後の「私が何者か」という謎に関するどんでん返しに感心した。ライトノベル的にコミカルなシーンは無理に入れなくても良いのでは…

頑張って絞り出された言葉――心が叫びたがってるんだ。感想

(本稿は「心が叫びたがってるんだ。」のネタばれを含みます。)心が叫びたがってるんだ。(超平和バスターズ原作、長井龍雪監督)は人魚姫などの童話をモチーフにした青春物語だ。だが、作中のあらゆる要素が定型からずらされている。 冒頭、子供時代のヒロ…

はてな村は部族社会

『昨日までの世界 文明の源流と人類の未来』(ジャレイド・ダイアモンド著、倉骨彰訳)は工業化社会以前の様々な伝統的社会について論じた本だ。紹介されている様々な部族に関する分析を読む内に、私も身近な小集団について論じてみたくなった。その集団とは…

自作小説の宣伝

小説家になろうに掲載していた「念土遊戯」と「魔界に行ったのにやってることはパン工場のバイトかよ!」をネット小説大賞に応募しました。 「念土遊戯」は中二的長編バトル小説で「魔界に行ったのにやってることはパン工場のバイトかよ!」は脱力ものの短編…

特殊から普遍へ――のんのんびよりりぴーと感想

のんのんびより(あっと原作、川面真也監督)は五人しかいない旭丘分校の生徒達の田舎暮らしという特殊な生活を描いたアニメだ。東京から田舎に引っ越してきた小学生の蛍視点で都会と田舎のギャップを描くコメディーというのが当初の構図であった。田舎生活…

夜は寝よう――9月18日国会前デモ感想

9月18日夜。安保法案成立直前の国会前に行ってきた。私が着いた時は夜十時。車道と歩道の間にずらりと装甲車が並んで車道を封鎖しているのに驚く。 国会に近づくと、歩道にぎっしり人が詰まっており中々前に進めない。小雨が降る中、国会前に置かれた光源に…

羊たちのシュプレヒコール――8月30日国会前デモ感想

2015年8月30日に行われた「国会10万人・全国100万人行動」の国会前デモに行ってきた。14時、15時、15時55分の3回シュプレヒコールをやるということで、どれかに参加すれば良いや、とだらだら向かった所、霞ヶ関駅に着いた時は15時半前で、多くの人がデモを…

面白いだけで良い――バケモノの子感想

(本稿は『バケモノの子』のネタバレを含みます。) 『バケモノの子』(細田守監督、スタジオ地図)はワクワクする異世界冒険活劇映画だ。主人公九太が迷い込むバケモノ達の町、渋天街の光景には好奇心を刺激されるし、住人のバケモノ達もキャラが立ちまくっ…

全力で物語を面白くする敵役――六花の勇者6感想

(本稿は六花の勇者6までの抽象的ネタバレを含みます。) 面白い物語には魅力的な敵役が不可欠だ。優れた敵役にはいくつか条件がある。 第一に、敵役は主人公より強大でなくてはならない。主人公が自分より弱い敵を蹴散らしても、物語は盛り上がらない。自分…

全おたくの敗北――春琴抄感想

(本稿は春琴抄のあからさまなネタバレを含みます。) 春琴抄(谷崎潤一郎著)はツンデレ娘、春琴と彼女に献身的に尽くす佐助の愛の物語であると言われている。 だが、二人の関係は通常の愛というよりアイドルや二次元美少女とおたくの関係に近い。二人が性…

好きなライトノベルを投票しよう!! - 2015年上期

好きなライトノベルを投票しよう!! - 2015年上期に投票します。 まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる(2) 紫炎 【15上期ラノベ投票/9784800235701】 スクールライブ・オンライン(5) 木野裕喜 【15上期ラノベ投票/9784800237972】 ひとつ海のパラスアテナ …

遠くまで届くことば――ぼくらの民主主義なんだぜ感想

朝日新聞には、月一回、そこだけ明らかに周囲の記事より値打ちの高いページが出現する。それが高橋源一郎氏が担当されている論壇時評だ。その文章は分かりやすいのに深く、日本語における散文の最高峰と言っても過言ではない。 その4年分の連載が本になった…

村上春樹おたく論

(本稿は文中の敬称を略させて頂いた。) ライトノベルは村上春樹の影響を受けている。 例えば杉井光は村上春樹の影響を公言しているし、河野裕も『サクラダリセット』に「ふかえり」ならぬ「おかえり」というキャラクターを登場させたりと強い影響を感じる…

没入を防ぐ神視点――まのわ 魔物倒す・能力奪う・私つよくなる感想

(本稿は『まのわ 魔物倒す・能力奪う・私つよくなる』の抽象的なネタばれを含みます。) 『まのわ 魔物倒す・能力奪う・私つよくなる』(紫炎著、このライトノベルがすごい!文庫)は三人称神視点で描かれている。多くは主人公風音の視点で描かれているが、…

判断を留保する主人公――響け!ユーフォニアム感想

『響け!ユーフォニアム』(石原立也監督、京都アニメーション)についてはアニメ「響け!ユーフォニアム」を通して見る揺れる心や「響け!ユーフォニアム」の滝先生にモヤモヤする件などネット上に次々と優れた評論が発表されている。これは単に『響け!ユー…

会社と萌え作品は評価軸が逆

http://anond.hatelabo.jp/20150113220036 http://anond.hatelabo.jp/20150114092802 「職場の先輩が超怖い」と「職場の後輩が超かわいい」を読んで思ったのだが、会社と萌え作品では評価軸が逆になっている。 会社では超怖い先輩のようにきっちりしていてミ…

好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期

好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期に投票します。 【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) 勇者を送り迎えするだけのカンタンなお仕事です 加藤雅利 【14下期ラノベ投票/9784800234889】 神様のメモ帳(9) 杉井光 【14下期ラノベ投票/9784048667289】…