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年初一括投資は有効か

山崎元氏のNISA記事がホットエントリー入りしていた。

diamond.jp


記事中で山崎氏は「投資資金を早くNISA口座内に集めることが合理的」なので、「年初に240万円投資する。」ことを推奨されていた。

確かに、S&P500のようなインデックスは長期的には右肩上がりで上昇するのだから、1~12月に分散して買うより1月に買った方が期待リターンは高くなる。
それでは、年初一括投資と毎月積立投資では実際にどの程度の差が生じるのだろうか。
S&P500指数に対し、1985年~2023年の39回で年初一括投資と毎月積立投資で購入できる株数を比較してみた。

年初一括投資が毎月積立投資を上回ったのは28回。年初一括投資が上回る確率は71.8%だ。
最も年初一括投資が上回ったのは1987年の14.15%、最も下回ったのは2008年の-18.8%だった。
年初一括投資の方が平均3.32%多く購入できる。

 

2%毎のヒストグラムを見ると、±1%以内が最も多く、-1~+15%の頻度が高い。

横軸は年初一括投資の毎月積立投資に対する上回り率。縦軸は回数。


だが、年初一括投資が-9~-19%と大負けしたのが4回ある。何とかして大負けを避ける方法はないだろうか。

株価の割高、割安を簡便に見分ける方法に移動平均線乖離率がある。過去の平均株価と比べ、大幅に割高になっていたら割高と判断する方法だ。今回は50カ月移動平均線という超長期の移動平均線を採用した。
年初一括投資が大負けした年は、1月がバブル的高値になっていたのではないかと予想し、50カ月移動平均線乖離率を調べてみたのだが、乖離率は+45%~-7%とバラバラだった。

移動平均線乖離率と年初一括投資の上回り率の散布図を示す。両者に相関は見られない。

横軸は年初の移動平均線乖離率。縦軸は年初一括投資の上回り率。

 

S&P500のチャートを示す。オレンジが50カ月移動平均線、グレーが50カ月移動平均線乖離率10%の線を示す。

チャートを見ると現在の右肩上がり相場が始まって長期移動平均線が上向いた2012年以降、乖離率10%以下はどれも良い買い場だったことが分かる。
そこで、2012年以降の移動平均線乖離率と年初一括投資の上回り率の散布図を描いた所、右下がりの相関が現れた。

横軸は年初の移動平均線乖離率。縦軸は年初一括投資の上回り率。

 

2012年以降の平均乖離率は23.22%であり、平均乖離率以下だった年はマイナスになったことがない。
一方、乖離率45.98%と著しく割高だった2022年は-15.58%と大きく一括投資が下回った。
2012年以降は移動平均線乖離率を元に、割安なら一括投資、著しく割高なら毎月積立投資にする戦略がある程度有効であることが分かる。

 

まとめ
50カ月移動平均線乖離率が10%以下なら、一括投資した方が良い。
50カ月移動平均線乖離率が10~23%もどちらかと言うと一括投資した方が良い。
50カ月移動平均線乖離率が23~40%の時はどちらとも言えない。
50カ月移動平均線乖離率が40%以上の時は一括投資は止めた方が良さそう。

ちなみに12月16日時点での50カ月移動平均線乖離率は20.61%だ。来年初も今と同程度の価格であるなら、乖離率23%以下なので、一括投資しても良さそうだ。

ただし、この法則は右肩上がり相場が続いている場合に限られる。右肩上がり相場が終わって00年代のようなボックス相場になると、この法則は使えなくなるので注意が必要だ。