東雲製作所

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移動平均線を下抜いたら売る戦略は有効か

先週から株式市場が軟調になっている。S&P500は一週間で3.31%下落した。
ロビンフッダーにやられたヘッジファンドが換金売りするのではないかという懸念が直接の原因だが、背景には株バブルが弾けるのではないかという投資家の恐れがある。

資金の主な運用先は株と債券だ。
各国中央銀行が低金利政策を採っているため、債券は利回りが1%しかないのに下落余地はたっぷりあるという誰得状態になっており、資金を運用するには割高でも株を買うしかない。

今後、債券利回りが上がったら、債券に資金が流出して株価が下落することは避けられない。
FRBは今年中は利上げしないという予想が大半なのでまだ大暴落はないと思う。今後1年以上株以外に運用先がない状態は変わっておらず、顧客に「適当な投資先がなく現金で保有していたのでリターンは0です」と言うわけにいかない機関投資家は、長期間株式市場から離れるわけにいかないからだ。
だが、疑心暗鬼にかられた投資家が逃げ出して、一時的に株価が下落するリスクは常にある。

今は株を持っていないと資金は増えないが、逃げ遅れると怪我をするというチキンレース状態なのだ。


こういう時誰もが思うのが、大暴落をいち早く察知して売り逃げられないかということだ。
東雲製作所でも以前、先行指数と言われるSOX指数、ダウ輸送株平均、ラッセル2000を用いて察知できないか検証したが、できることもある程度の精度だった。

shinonomen.hatenablog.com


他にも、株の先行指標にはバルチック海運指数、銅/金レシオ、VVIX/VIXなど色々あるが、どれも完全ではない。

唯一大暴落から確実に逃げられる方法がある。株価が移動平均線を下抜いたら売る戦略だ。これはテクニカル分析の最も基本的な戦略だ。
この方法はある程度株価が下落してから売るのでいち早く売り逃げることはできないが、大暴落の途中で株価は必ず移動平均線を下抜くので、確実に途中で逃げられるというメリットがある。

そこで、2020年のS&P500時系列データを用いて、移動平均線を下抜いたら売却し、上抜いたら買い戻す戦略の有効性について検証した。

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青がS&P500、オレンジが50日移動平均線

下記の2つの方法で積み立てを行い、1年間のリターンを比較した。
1)毎日1$ずつ単純に積み立て
2)同様に毎日1$ずつ積み立てるが、50日移動平均線を下抜いたら売って積み立てを停止、上抜いたら買い戻して積み立てを再開。

投資額 235$
1)のリターン 18%(298.52$)
2)のリターン 13%(285.27$)
1)の単純積み立ての方がリターンが良かった。
2020年は10年に一度の大暴落があったので2)に有利なはずなのに負けた。大暴落がなければさらにリターンが劣ることが予想される。

両戦略の評価額の推移を示す。

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青が戦略1),オレンジが戦略2)の評価額

2)は2月に売って4月に買い戻した時点ではリードしていたのだが、9月と10月の押し目で買えなかったせいで逆転された。
実際は売買手数料や売却益への課税が発生するので、さらにリターンが劣後する。

2)のメリットは含み損が少なくて済むことだ。
3月の暴落時、1)は最大で27%の含み損が発生するが、2)の含み損はわずか2%だ。

移動平均線を下抜いたら売る戦略は、30%もの含み損を抱えるなんて耐えられないという人はやっても良いが、リターンを最大化したいのならやるべきではない。