東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ライトノベルとお約束ギャグ

少し前に「アニメの寒い描写がきつい」という増田記事が話題になっていた。 anond.hatelabo.jp 私も筆者が挙げている「女子のツッコミの過剰な暴力、寒いギャグやノリ、不自然なエロハプニング、シリアス展開中の不自然なギャグ」みたいなお約束ギャグはいら…

不条理な欠落――その女アレックス感想

(本稿は『その女アレックス』の抽象的ネタバレを含みます。) 物語は欠落を回復する過程を描いたものだ。桃太郎のおじいさんとおばあさんには子供が欠落しており、シンデレラは地位と伴侶が欠落している。欠落は自分のミス、不運、敵による侵害など様々な要…

なぜ白王子は黒王子に負けるのか

少女漫画や少女小説に登場するヒーローには2パターンいる。優しく紳士的な白王子と意地悪で粗暴な黒王子だ。普通に考えれば白王子の方が良さそうだが、白王子と黒王子が直接対決した場合、勝つのはたいてい黒王子だ。 少女小説の源流は『嵐が丘』だ。『嵐が…

戦略としての小説家――ライトノベル・フェスティバル2017(ゲスト森田季節先生)感想

まずは小説二作品の本編冒頭部分を読み比べて頂きたい。 「焼いたフルーツってずるい味がする」 二切れ目の焼きパイナップルを口に入れる前につぶやく。率直な感想なんだけど、我ながらいまいち要領を得ない表現だ。「ずるいって何だよ?」 ほら、広峰には伝…

一瞬で伝わるもの――ヨコハマトリエンナーレ2017感想

ヨコハマトリエンナーレは12年前に行って面白かったのだが、遠いので二の足を踏んでいた。だが、日曜美術館で壇蜜さんが紹介していたので、俄然興味が高まった。さらにはぶっださんもレビューを書かれていたので、重い腰を上げて行くことにした。 ヨコハマト…

吉野家とはなまるうどんで食いまくった

(前回のあらすじ:吉野家で「はしご定期券」を入手した私は意気揚々と丸亀製麺に行き、はしご定期券をかざして店員に「それははなまるうどんで使えるカードですね」と告げられる。私は恥辱を埋め合わせるため、アホみたいに吉野家の牛丼を食いまくることを…

文化の盗用と関西弁

しばらく前にわっとさんが文化の盗用の問題点について書かれていた。 www.watto.nagoya 私はモデルのカーリー・クロス氏が和服を着てグラビア撮影を行い、バッシングされた事件で文化の盗用という概念を知ったので、文化の盗用=行き過ぎたポリコレだと捉え…

エスカレート・立場の逆転・身体性・斬新さ――キングオブコント2017感想

(本稿はキングオブコント2017のネタバレを含みます。) キングオブコント2017はかまいたちが優勝した。一方で、最も衝撃を与えたのはにゃんこスターのリズム縄跳びネタだろう。 全15ネタを見返した所、高得点を得たネタに共通する要素が見えてきた。それが…

バナナは野菜350gの代わりになるか

一日分の野菜とは何ぞという増田記事を読んだ。 それに対し、ネギさんが「野菜じゃなくてバナナ1本でいいんだよ。」というコメントをされていた。 一日分の野菜とは何ぞ 野菜じゃなくてバナナ1本でいいんだよ。 2017/10/04 16:44 b.hatena.ne.jp 野菜を350…

恥辱に塗れた話

はしご定期券をご存知だろうか。9月15日から10月23日まで吉野家とはなまるうどんでそれぞれ80円引きと天ぷら一品無料になるカードで、300円で販売されている。天ぷらが100円としても2回ずつ来店すれば元が取れる計算だ。 私は販売開始間もなく吉野家で購入し…

乗り物天国ルスツリゾート

少し前に北海道の留寿都村に行った。留寿都村は札幌から南西に車で一時間半くらいの場所にあり、リゾート地として有名である。冬はスキー、夏はゴルフやテニスができ、大きなホテルや遊園地が建っている。 そんな高級リゾートで私が何をしていたかと言うと、…

何故けものフレンズは人気なのにリベラルは叩かれるのか

テレビ東京系で『けものフレンズ』(たつき監督)が再放送された。私も冒頭だけ見てから出社し、帰ってきてから録画を見て癒やされていた。ほんと、幸せな気分になるアニメだよね。 けものフレンズのメッセージはオープニングテーマの「けものはいてものけも…

自らの人生を選び取っているか?――おんな城主直虎第33回 嫌われ政次の一生感想

(本稿は「おんな城主直虎第33回 嫌われ政次の一生」のあからさまなネタバレを含みます。) おんな城主直虎第33回で直虎が政次を自ら刺し殺したのには驚愕した。実家に帰省して家族で見ていたのだが、終わるまで誰一人口を開くことができなかった。 直虎の政…

大抵のことはアブよりはまし

北海道出張では何日か森のなかで作業をした。北海道の森で最も恐ろしいのは熊である。熊よけ鈴にスピーカー、爆竹など万全の装備をして森に入ったが、幸い遭遇することはなかった。だが最もうざい奴に追い回された。アブである。 アブは体長2~3センチ。ブオ…

数年ぶりに運転した

北海道に出張に行き、数年ぶりに自動車の運転をした。前回、田舎道で試しに運転した時は、左の人を避けようとして道のど真ん中に停車してしまったので、それ以来運転しないようにしていたのだ。 北海道と言えば私が学生時代自爆廃車事故を起こした思い出の地…

ナプキン一枚分だけ

七夕の夜、電撃小説大賞から一次選考落選のメールが届いた。会心の出来で、最終選考までは行くんじゃないかと思っていたので、放心状態になってしまった。 こういう時、「慰めて」と言える相手がいないのは辛いことだ。 美味しいものを食べようと、後楽園の…

今朝の記事に関するお詫び

今日の0時に自動投稿した記事に不穏なことが書いてあり、申し訳ありません。 出張から帰ってきた後、ゴミ箱に入れたはずなのですが、ちゃんと消えていなかったようです。 自動投稿した小説は電撃小説大賞に応募して落選したものの第一章です。 無事に生還を…

僕は二階から目薬が差せる

久しぶりに運転するので念のため小説を予約投稿しておきます。 これが公開されていたら、事故にあったか投稿したのを忘れたかだと思います。 予約投稿の解除に失敗していました。ご心配をおかけして済みません。 2017.11/28 GA文庫大賞に応募するため、本文…

異なったリアリズムの混在――コンビニ人間感想

(本稿は『コンビニ人間』の抽象的ネタバレを含みます。) 不気味さの谷という言葉がある。人間とは全然違うロボットや人間と見分けがつかないロボットは不気味ではないが、人間のようで微妙に違うような外見や動きのロボットは不気味に感じることを指す。 …

学食のカレーを食べ比べる

学食と言えばカレーである。学食の麺類は安いが専門店より味が大きく落ちる。丼ものは美味しいが安くない。その点、カレーは安く、味も外れがない。大量に作るという学食の利点が生きる料理だ。 そこで、職場に近い、東京都文京区にある大学の学食を巡ってカ…

取り返しがつく犯罪に共謀罪はいらない

改正組織犯罪処罰法(テロ等準備罪・共謀罪)が7月11日に施行された。本ブログは基本的に政治的なことは書かないようにしているのだが、例外的に一点指摘しておく。 改正組織犯罪処罰法には277の罪が対象となっている。法務省は対象犯罪を下記の5つに分類し…

クリーム玄米ブラン全種類レビュー

クリーム玄米ブランを昼食によく食べている。せっかくなので現在発売されている全種類のレビューを書いてみた。 ブルーベリーオーソドックスなブルーベリー味。普通においしい。 アサヒグループ食品 クリーム玄米ブラン ブルーベリー 72g×6袋 出版社/メーカ…

アイデア大全のアイデア創出法を整理する

読書猿氏と言えば、知的で役に立つブログ、「読書猿Classic: between / beyond readers」で有名である。物語作者がチラシの裏に書くべき7つの表/もうキャラクター設定表はいらないは小説を書く時お世話になっている。 そんな読書猿氏初の著作が『アイデア…

観客は主人公と一緒に叩き落とされる

(本稿は『君の名は。』『この世界の片隅に』『時をかける少女』『アナと雪の女王』『ベイマックス』の内容に触れています。核心部分は反転していますが、抽象的にはネタバレになります。) 最近、アニメ映画で驚愕することが多い。 もろネタバレになるので…

作らずにはいられない――シムシティ感想

シムシティ ビルドイットは古典町づくりシミュレーションゲームのスマホ版である。タブレットを購入したのを機にインストールし、時々ビルを建てていたのだが、オフラインでもプレイできると分かってからは取り憑かれたようにプレイしている。時間が空くとタ…

プロデューサーの奇妙な業務――デレステ感想

アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージ(以下デレステ)は奇妙なゲームだ。プレイヤーはプロデューサーになってアイドルを育成するのだが、主に行うのはリズムゲームなのだ。つまり、アイドルプロデューサーの最も大切な業務がアイドルが…

エンタメとして評価すべき――罪と罰感想

(本稿は『罪と罰』のあからさまなネタバレを含みます。) 『罪と罰』(ドストエフスキー著、工藤精一郎訳、新潮文庫)は人間の罪に関する深い洞察を含んだ高尚な純文学であると思われている。例えば、下巻の裏表紙には「ロシア思想史にインテリゲンチャの出…

回転寿司の支配者

ゴールデンウィーク。出かける所のない私は回転寿司屋に行った。11時頃とあって客はまばらだ。その店ではカウンター席とボックス席が向かい合わせになったレーンが二つある。私が案内された席の右側にはおじいさんが、私とおじいさんの向かいにはそれぞれ家…

酷い目に遭いたいという欲望――ぼくは明日、昨日のきみとデートする感想

(本稿は『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の抽象的ネタバレを含みます。) 『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(七月隆文著、宝島社文庫)を読んで、非対称性に居心地の悪さを感じた。本作の恋愛は構造的困難さを抱えており、その負荷は男女が均…

大阪7000円弾丸旅行

ヨッピー氏の記事を読んで、大阪観光に行きたくなった。その後、なかなか行く機会がなかったのだが、ゴールデンウィーク前の平日に、さくら観光のおまかせプラン(便が流動的な分安い)がキャンペーンコード値引きで片道1350円になっていたので、休暇を取得…