シムシティ ビルドイットは古典町づくりシミュレーションゲームのスマホ版である。タブレットを購入したのを機にインストールし、時々ビルを建てていたのだが、オフラインでもプレイできると分かってからは取り憑かれたようにプレイしている。時間が空くとタブレットを手に取って金属を生産してしまう。
シムシティでは住宅を建設、高層化して住民を増やし、レベルアップすればする程作れるものが増える一方、住民からの要求も高くなる。それがリアルな部分と奇妙な部分が混在していて面白い。
高層ビルが立ち並んでいるのに、下水道がないので整備して下さい、という要求が出た時は笑ってしまった。新宿ばりの高層ビル群なのにトイレはくみ取り式便所だったのかよ、と苦笑しながら町の中心部に下水処理施設を作ったら「他にも場所はあるのに何て市長だ!」と大ブーイングを食らった。そういう所はリアルなのか。
レベルアップする度に電気、水道、下水、ゴミ処理、消防、警察、病院と住民からの要求が増える。一方、一定以上のレベルに達すると税金を取れるようになり、時間の経過と共に税収は着実に溜まっていく。従って、出来るだけ不熱心にプレイする程金が貯まる。だが、都市を発展させたいという欲求に逆らえず、ついつい住宅を拡張して人口を増やしてしまう。
シムシティをプレイして感じるのは人間の根源的な創造欲求は非常に強いということだ。子どもは毎日のように絵を描いたり積み木や土で何かを作ったりしている。
しかしながら、大人になると作ったものが世間的にはしょぼいものでしかないということに気づいてしまう。頑張っても恥ずかしい出来のものしか作れない。労多くして益少なしということが、人間の創作欲求を抑えこんでいる。
シムシティでは少ない労力で素晴らしいものを作ることができる。シムシティでビルを建てる労力は画面をタッチしてフリックするのを繰り返すだけだ。
一方、出来上がる都市は細部まで作りこまれている。作り上げた町の中では、車や人間が常に動き回っている。しかも、ランダムに動いているのではなく、ちゃんとこのビルからこのビルへ向かっているという風に、自然な動きをしている。
ビルの配置を考えるのは人間だが、デザインはプログラムが自動で決めてくれる。そして何と言っても素晴らしいのが朝昼晩の景色の変化だ。夜景も綺麗だが、さらに美しいのが明け方だ。茜色に染まったビルが長い影を落としている光景はほれぼれするほど美しい。
労力と生産物のバランスを変えるだけで、アホみたいに作り始める。人は作らずにはいられない生き物なのだ。