東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

2006-01-01から1年間の記事一覧

文学少女と戦う司書の部屋の感想

戦う司書と追想の魔女 山形石雄 集英社スーパーダッシュ文庫 血も涙もない悪役っぷりをみせているハミュッツだけど、実際は心に傷を負っていて、早く誰かに断罪してほしくてああいう言動を取っているようにも見える。 今回は、「どんな人の生にも意味がある…

いろいろ感想

グラン・ヴァカンス―廃園の天使1 飛浩隆 ハヤカワ文庫 あらすじから秋山版『鉄コミュニケーション』みたいな知恵と勇気で戦う話かと思っていたら、『バトルロワイヤル』+黒乙一みたいなスプラッタ小説だった。 キリスト教の心の中で思うだけで姦淫の罪にな…

対照的な戦争ものの感想

ポロポロ 田中小実昌 河出文庫 表題作は短編にして『カンバセイション・ピース』並に感動したので、感嘆したのだが、最後まで読むと作者は「物語」を出来る限り排除しようとしているとのことなので、この感動も、作者にとっては出来れば排除したかったものな…

One of them

昨日書いたばかりの記事に白翁さんから素早い反応が! 有難うございます。なんかWEB2.0な感じだ。確かに駄目人間で凡庸な自分を受け入れるのは難しい。 私自身、物書きになるのをあきらめられないし。 だからせめて周囲からの「特別な存在たれ」という圧力が…

のび太だということを受け入れられれば大丈夫

のび太の存在ほどタチの悪いものはないと思うんだ。確かにドラえもんはいじめっ子にいじめ方を教えているという点では問題がある。 だが、いじめられている側に悪影響があるという主張には疑問があり、どちらかというと好影響があるんじゃないか。藤子・F・…

マルドゥック・ヴェロシティの感想

マルドゥック・ヴェロシティ2 冲方丁 ハヤカワ文庫 東雲長閑は小説に外国人が十人以上登場すると、仕様上、誰が誰だか分からなくなるということを再確認した。 甲賀忍法帳+七人の侍みたいな内容で、敵が悪者で背景を持たない上に不気味な人外なので、読んで…

銀盤カレイドスコープなどの感想

まいじゃーより早く銀盤カレイドスコープの感想を書いたぞ、わっはっは。ぎをらむさんが馬鹿なコメントを書いたと悔やんでらっしゃいますが、あんな程度で悔やんでいては、ホロに駄目人間なコメントをよせた私の立つ瀬がないというものです。 『このライトノ…

このライトノベルがすごい!

『このライトノベルがすごい!』の献本を頂きました。どうも有難うございます。 予想通り別々の層が押すあれとあれの大接戦になっていました。 私が一位と二位に押したやつが両方ともランクインして、 しかもコメントも載せていただいていたので、大満足であ…

ROOM NOとかの感想

ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック! 新井輝 富士見ミステリー文庫 本シリーズは描写がほとんどなくて、ほぼ会話とモノローグから成っているのだが、それが視点人物たる健一を象徴している。 健一が落ち込んでいるときにシーナと出会ってハーモニカを得…

パンツはいてないバッテリー学校を出ようの感想

めでたくはてな市民になりました。学校を出よう!〈2〉I‐My‐Me 谷川流 電撃文庫 谷川さんは、エンターテイメント作家になる際に捨てるはずのものを持ち続けている。 今回は制服だけ置いてあるシーンが屹立している。よくわかる現代魔法 ゴーストスクリプト・…

米澤穂信講演会

友人の閏さんと米澤穂信講演会に行ってきました。 ぎをらむさんや"平和さんと一緒に聞いていたのですが、どうやらdeltazuluさんもいらしていたとのこと。 平和さんの隣にいらした方かしらん。 内容に関しては上記の方々が既に書かれているので特に書かないの…

バード・ハート・ビートなどの感想

ライトノベルリングに参加しました。どうぞ宜しくお願いします。 リングに参加していると、更新をしないとどんどん自分のサイトが下に落ちていって、悪いことをしているような気になりますな。 バード・ハート・ビート 舞姫天翔! 伊東京一 ファミ通文庫 ピン…

カーリーとかの感想

「このライトノベルがすごい!」の締め切り前に読んでればカーリーに投票したのに! 骨牌使いの鏡III 五代ゆう 富士見ファンタジア文庫 繰り返し語られる「物語には常に最善の結末を」という言葉は重要である、というのは、作者が物語りを最善の結末へと導け…

狼と禁書目録感想

狼と香辛料III 支倉凍砂 電撃文庫 ぎをらむさんが「ロレンスとホロの最終目的は一致しません」と指摘していた http://d.hatena.ne.jp/giolum/20060305 通りの展開になったことに感心した。 読みながら、「ロレンスよりわっちの方がホロと上手くやりんす」と…

クジラのソラとかの感想

http://saimoe2006.hp.infoseek.co.jp/ アニメ最萌トーナメント 有希がハルヒに勝ったと思ったら次はみくるって何かの陰謀? 陽気なギャングの日常と襲撃 伊坂幸太郎 祥伝社ノベルス 銀行強盗が何故人助けをしているのかが謎なところは「カリオストロの城」…

大賞とEDGE5の感想

このラノ締め切り直前に大賞がぽこぽこ出たら読むまで絞り込めないじゃん! 黄色い花の紅 アサウラ スーパーダッシュ文庫 ヴァッシュ・ザ・スタンピードほど命を大切にするのは無理にしろ、登場人物が皆、必要以上に殺しすぎだと思いながら読んでいたのだが…

ARIA The NATURAL最終回などの 感想

EDGE4 檻のない虜囚 とみなが貴和 講談社X文庫 シリーズ中もっとも小さな事件だが、犯人が縛鎖から逃れようと行動する過程で一気に引き込まれた。 犯人が死んだり犯罪自体がうやむやになったりする小説が多い中、このシリーズはきっちり犯人に落とし前をつ…

煌夜祭 などの感想

悪魔のミカタ(12) It/ストラグル うえお久光 電撃文庫 次巻の決着に向けてみんな頑張っているという話。 生存をかけて激突している両陣営が紳士的に交渉している所がおもしろくももどかしい。 煌夜祭 多崎礼 C・NOVELSファンタジア アラビアンナイト…

川の名前 などの感想

出張に行っていたので本の感想が溜まりまくっている。 待ってて、藤森くん! 壱乗寺かるた 富士見ミステリー文庫 リーダビリティーが普通の小説の倍くらい高い。 折角幼なじみと相思相愛なのにどうしてこれ以上第三の女性を登場させて話を引き伸ばす必要があ…

夜のピクニックなどの感想

夜のピクニック 恩田陸 新潮文庫 登場する男性キャラクターの人間的魅力という点では光一郎>忍>融という順なのに、作中モテ度はその逆なところがこの世の不条理を体現していてほろ苦い。しかし、主役二人の関係が恋愛ではないところはすがすがしい。 ジャ…

ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟 感想

ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟 上遠野浩平 電撃文庫 ブギーポップに世界の敵と認識された者は無残に死ぬか、すがすがしく死ぬかしかない。 しかしながら、ブギーポップに目をつけられずとも、誰もが無残に死ぬか、すがすがしく死ぬかしかない…

TOY JOY POP 感想

TOY JOY POP 浅井ラボ HJ文庫 結論自体はそれほど斬新でもないけれど、絶望の底を確かめるようにハラキリを繰り返すような作品を書き続けてきた浅井さんがついにここにたどり着いたことを思うと感慨深い。 村上春樹さんが『スプートニクの恋人』を書いたのに…

”文学少女”と飢え渇く幽霊感想

”文学少女”と飢え渇く幽霊 野村美月 ファミ通文庫 どろどろした理不尽な話が苦手な私としては、すごいとは思いつつも、これは愛ではなくストックホルム症候群だと思いたい。 今回、遠子先輩が物語を読んでから味わっていることが判明したので、妖怪ではなく…

ARIAとかの感想

ARIA The NATURAL感想 第22話「その ふしぎワールドで…」 「その アクアを守る者よ…」 脱力系の話。西村ちなみさんの演技だけでアリア社長が何を考えてるかだいたい分かるので、 言葉で示さなくても良かったのではあるまいか。 先週は小説の資料用に ヴォ…

悪魔のミカタ11とARIAの感想

悪魔のミカタ11 It/ザ・ワン うえお久光 電撃文庫 ほとんど外伝とも言うべき内容で、登場するのも新キャラだらけなので、慣れるまで時間がかかるが、最後の方は暗いマグマが煮え立つような悪魔のミカタらしさが戻ってきた。 一連のシーンの中で視点人物を変…

「ニート」って言うな! 本田由紀・内藤朝雄・後藤和智 光文社新書 萌える男 本田透 ちくま新書 両書は題材こそ異なっているが、主張していることは「[ニート/オタク]が出現したのは社会構造に拠るのであって、[ニート/オタク]が人格的に問題があるかのよ…

感想いろいろ

半分の月がのぼる空8 橋本紡 電撃文庫 半月最後の短編集は秋山節を思わせる馬鹿小説から若い心の揺れを扱ったものまで幅広い。一般文芸の作品はわりと橋本さん得意の作風で勝負しているが、あらゆる技を使って読者に奉仕してくれているこちらの方が楽しめた…

ひかりをすくう感想

ひかりをすくう 橋本紡 光文社 本作で橋本さんは主人公がストレスのかかる生活を回避しなくてはならないという設定を導入することで、劇的なものをできるかぎり排除しようとしているが、劇的なものなしで面白い小説が成立しうるかという挑戦は、劇的なものの…

アラビアの夜の種族

読んだ本の一文感想を本サイトからこちらに移転しました。 でもって、二文感想に変更。アラビアの夜の種族I 古川日出男 角川文庫 『後宮小説』と『ブンとフン』を足して二で割ってジョジョ風味に味付けたような破天荒小説。馬鹿みたいに人が死ぬのだが、語り…

改名

名前の変え方が分かったので、「shinonomenの日記」から改名。 せっかくなのでARIA The NATURALの感想でも第18話「その 新しい自分に・・・」 恋愛を描いたものは多くても、愛情を描いている作品は少ないんじゃないかと思った。 三大妖精がそれぞれ違った…