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NISAでオルカンやS&P500よりハイリターンを狙う方法

1.インデックスか個別株か

来年から新NISAが開始される。つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の年360万円が無期限で非課税になる。

NISAの投資先にはインデックス(市場を構成する多数の株への分散投資)と個別株がある。高配当の個別株を推奨するような記事もあるが、賛同しかねる。NISAでは長期右肩上がりのインデックスを買った方が良い。理由は二つある。


1)長期右肩上がりのインデックスは長期的には上がる可能性が高い。
NISAは長期間保有し続けることで非課税というメリットを最大限生かせる。そのためには下落しても長期的には上がるという確信をもって保有し続けられる資産に投資すべきだ。個別株は業績が悪化してそのまま倒産するリスクがあるが、長期右肩上がりのインデックスは暴落しても資産価値がゼロにはならず、いずれ戻るという信頼がある。

2)数十年後にどの銘柄が強いか分からない。
1970年代の米国には、ニフティフィフティと呼ばれるこれを買っておけば鉄板だという50銘柄が存在した。その中にはフィリップモリスファイザーのように好リターンを上げた銘柄もあるが、ポラロイドのように経営破綻してしまった銘柄もあった。
1970年代に将来デジカメやスマホが普及し、フィルムカメラが駆逐されてしまうことを誰が予測できただろう。長期的には市場環境が激変してしまう可能性があるので、個別株を保有し続けるのはリスクが高い。


2.第三のインデックスNASDAQ100

長期右肩上がりになっているインデックスでは、米国と全世界株が有名だ。
インデックス投資の世界には米国派と全世界派がいて、論争が続いている。
米国(S&P500や全米)の強みは全世界より過去のリターンが高いこと。
全世界の強みは米国以外にも分散しているため、リスクが低いことだ。

長期投資向けのインデックスでは米国と全世界ばかりが話題になるが、長期右肩上がりでS&P500、全世界より過去のリターンが高い第三のインデックスが存在する。それがNASDAQ100指数だ。

NASDAQ100は米国のナスダック上場銘柄の中から金融会社を除き、時価総額上位100銘柄を組み入れた指数で、S&P500よりハイテク株のウェイトが高い

QQQ(NASDAQ100ETF)、SPY(S&P500ETF)、VT(全世界ETF)の過去15年の推移を示す。

VT(全世界株式ETF)の時系列データが得られた2008年6月23日の株価を100とすると、
2023年11月3日時点の株価はVT=264.5、SPY(S&P500ETF)=458.1、QQQ(NASDAQ100ETF)=921.4となる。
過去15年間で、NASDAQ100は全世界の3.5倍のリターンを上げている。

NASDAQ100指数を牽引しているのは、マグニフィセントセブンと呼ばれる米国のビックテック7社(アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベット(グーグル)、テスラ、メタ)だ。
ETFにおけるビックテック7社の組み入れ比率を示す。

全世界=14.29%、S&P500=27.44%、NASDAQ100=43.16%となっており、ビックテックのウェイトが高い指数程過去のリターンが高い。


3ETFとビックテック7社の株価を比較したグラフを示す。メタ上場週の2012年5月14日を100とした。


エヌビディアとテスラのパフォーマンスがすさまじすぎて、他が見えないので、2社を除いたグラフを示す。

11年間のパフォーマンスは
エヌビディア>テスラ>>>>マイクロソフト>アマゾン>アップル>>グーグル>メタ>NASDAQ100>>S&P500>全世界
となっている。
マグニフィセントセブンの中ではエヌビディア(162倍)とテスラ(120倍)のパフォーマンスが突出している。メタ(8.2倍)とグーグル(8.6倍)のパフォーマンスが冴えないが、それでもNASDAQ100(6.7倍)に勝っている。7社がいかに強いかが分かる。

S&P500が全世界よりリターンが高いのは米国株全体が強いからではなく、マグニフィセントセブンに代表される米国テクノロジー株のウェイトが高いからだ。
NASDAQ100指数は米国テクノロジー株のウェイトをS&P500よりさらに高めることで、ハイリターンを実現している。


今後もビックテックの優位は続くのだろうか。
前出のチャートの過去15年間に当たる1997~2012年のチャートを見ると、アップルとアマゾンが驚異的なパフォーマンスを見せていることが分かる。


NASDAQ100は特定の銘柄がずっと牽引しているのではなく、1998年からのアマゾン、2004年からのアップル、2013年からのテスラ、2016年からのエヌビディアのように、驚異的なパフォーマンスを見せる銘柄が順次登場し、高成長を維持している。
NASDAQ100指数のリターンが高いのは個別企業特有の強みによるものではなく、米国大型ハイテク企業に共通する構造的な強みに起因している可能性が高い。構造的要因が原因なのであれば、今後エヌビディアやテスラのパフォーマンスが落ちても、新たな牽引銘柄が登場し、NASDAQ100のハイパフォーマンスは維持されるのではないだろうか。

米国大手ハイテク企業に共通する構造的強みとは何か。IT業界が勝者総取りであることが大きい。
例えばYouTubeの配信者の取り分は広告収入の55%に抑えられている。他のマイナープラットフォームに動画をアップしてもわずかな視聴者しか得られないため、配信者は取り分に不満でもYouTubeに動画をアップせざるを得ず、アルファベットは濡れ手で粟で莫大な収益を得ることができる。

半導体業界の覇権企業がインテルからエヌビディアに交代しつつあるように、NASDAQ100のトップ企業の顔ぶれは変わっていくだろうが、トップ企業が莫大な利益を上げられるという構造自体は変わらないのではないだろうか。


3.NASDAQ100のリスク

効率的市場仮説によるとあらゆる資産のリスク当たりリターンは等しくなる。
NASDAQ100のリターンが高いということはリスクも高いということを意味している。
NASDAQ100のリスクは主に二つある。

1)大手ハイテク株に大きく依存しており、多様性が低い
前記のように、NASDAQ100指数は、大手ハイテク企業7社のウェイトが43.16%もあり、7社の株価に大きく依存している。他の銘柄もハイテク株が多く、多様性が低い。

QQQが設定された1999年3月8日からのSPYとQQQのチャートを示す。

QQQは2000年のITバブル崩壊で82.7%も下落している。100$投資していたら17.3$になってしまった計算だ。怖すぎる。
同期間のS&P500の最大下落率は45.7%だ。

S&P500は大手ハイテク株と全く異なる値動きをするエネルギー株や銀行株、公益株、生活必需品株などをある程度含んでいる。NASDAQ100は似た値動きをするハイテク株のウェイトが高いため、ハイテク株に逆風の環境になると大きく下落するリスクがある。

2)割高
11月3日時点でNASDAQ100の予想PERは25.75、S&P500は19.27だ。

stock-marketdata.com


NASDAQ100の予想PERはコロナ前は概ね20~22と21前後で推移していた。PERが平均回帰すると18.4%下落する。
S&P500予想PERはコロナ前は概ね16~19と17.5前後で推移していた。平均回帰すると9.2%下落する。共に割高だが、NASDAQ100の方がより割高だ。

下記の記事によると、米国のITバブル時のナスダックの予想PERは80近くに達していたという。

seekingalpha.com

ITバブル崩壊の時に82.7%も下落したのは、適切価格の4倍近い非常識なバリュエーションになっていたからだ。
現在は18.4%割高なだけなので、82.7%も下落する可能性は低い。


4.NISAでNASDAQ100に投資する方法

NISAでNASDAQ100に投資するには、具体的に何を買えば良いのだろうか。

下記の記事でNASDAQ100インデックスのコストを徹底比較してくれている。

shintaro-money.com

 

1)つみたて投資枠
長年つみたてNISAではNASDAQ100に投資できなかった。金融庁がNASDAQ100をインデックスだと認めていないからだ。
2023年10月からiFreeNEXT NASDAQ100インデックス(実質コスト0.519%)が買えるようになった。存続期間の長いアクティブファンドとして承認されたのだ。
現状これしか買えないので選択の余地はない。

2)成長投資枠
成長投資枠では外国株口座でドル建てのQQQMを買うのが最も経費率が低い。QQQMはQQQの廉価版で実質コストは0.15%だ。1株150$程度で買うことができる。

円建てで買いたい人はNEXT FUNDS NASDAQ-100連動型上場投信【1545】(実質コスト0.320%)が最もコストが低い。1株23000円程度で買うことができる。

毎月一定金額を買いたい人はインデックスファンドを買うのが良い。<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックス(信託報酬0.2035%)が最もコストが低い。ただし、設定されたばかりで、信託報酬以外の経費がどのぐらいになるか分からない。

 

まとめ

・NASDAQ100は全世界株やS&P500より過去のリターンが高い。
・米国の大型ハイテク株のウェイトが高い指数程、リターンが高い
・NASDAQ100をNISAで買うには、つみたて投資枠ではiFreeNEXT NASDAQ100インデックス、成長投資枠ではQQQMが良い。