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主要資産の10年リターン・リスク(2022年12月)

投資情報サイトmyINDEXで2022年12月末時点でのインデックスファンド10年円建てリターンランキングが公表されている。

myindex.jp


国内、海外ひっくるめて、日本の証券会社から投資できる全てのインデックスファンドのランキングなので、投資対象を選ぶのにとても役に立つ。
ランキングには10年以上継続しているものだけでも387もの投資信託が並んでいる。同じ指数に連動する商品が多数含まれており、資産毎のリターン・リスクを比較しづらい。そこで、主な資産の年率平均リターン・リスク・シャープレシオを抜き出して下表にまとめた。

資産 種類 リターン リスク シャープレシオ
 10年  1  10年  10年
ナスダック100 株式 20.9 -22.8 19.7 1.1
S&P500 株式 17.5 -6.3 17.4 1
ダウ平均 株式 16.7 6.4 17.9 0.9
先進国(MSCIコクサイ) 株式 13.9 -5.5 17 0.8
転換社債 債券 13.7 -9.3 15 0.9
ラッセル2000 株式 13.4 -9 21.8 0.6
台湾 株式 13.1 -18.6 18.6 0.7
全世界 株式 12.5 -6.1 16.6 0.8
インド 株式 12.3 7.3 21.3 0.6
日経平均 株式 11.5 -7.5 16.8 0.7
TOPIX 株式 10.5 -2.6 15.5 0.7
マザーズ 株式 10.4 -40.8 35.8 0.3
J-REIT リート 9.3 -5.1 16.5 0.6
ユーロストックス50 株式 9.2 -1.6 20.5 0.4
米国REIT リート 9.1 -15.4 19.1 0.5
中国A株 株式 9.1 -9 25.7 0.4
外国REIT リート 8.9 -13.1 18 0.5
先進国(除く米国) 株式 8.7 4.1 18.1 0.5
ヨーロッパ 株式 8.6 -3.8 18.2 0.5
先進国REIT リート 8.6 -13.1 17.9 0.5
米国ハイイールド債 債券 7 1.9 10.1 0.7
ドイツ 株式 7 -10.9 21.1 0.3
8資産バランス バランス 6.9 -5.1 10.1 0.7
投資適格社債 債券 6.2 -6 9 0.7
タイ 株式 6 17.3 21.8 0.3
新興国 株式 5.8 -6.1 16.9 0.3
米国総合債券 債券 5.3 -0.5 7.9 0.7
香港ハンセン指数 株式 5.2 0.8 20.2 0.3
米国短期国債 債券 5 15.5 8.8 0.6
米国中期国債 債券 4.9 -2.9 8.4 0.6
ベトナム 株式 4.9 -35.8 23.5 0.2
韓国 株式 4.9 -16 21.2 0.2
コモディティ 4.7 13.7 13.3 0.3
シンガポール 株式 3.6 3.2 18.1 0.2
インドネシア 株式 3.5 14.3 23.8 0.1
先進国債 債券 3.2 -5.4 7 0.5
南アフリカ 株式 3.1 8.5 23.7 0.1
メキシコ 株式 2.7 15.9 23.6 0.1
フィリピン 株式 2.6 -3.7 20.1 0.1
新興国債券 債券 2.5 0.9 10.6 0.2
マレーシア 株式 2.1 8.6 15.4 0.1
トルコ 株式 1.8 135.5 33.6 0.1
ブラジル 株式 1.5 28.3 33.4 0
アフリカ 株式 0.7 -5.3 19.4 0
日本債権 債券 0.5 -5.4 1.9 0.3
原油 コモディティ -6.4 41.3 43.9 -0.1
ロシア 株式 -10 -78.5 33.4 -0.3
           

 

1)株式
10年リターンでは、米国株、特にナスダック100指数が年率20.9%と圧倒的に高い。シャープレシオ(リスク当たりリターン)でもナスダック100がトップだ。
年率20.9%というのは10年で6.67倍になる計算だ。昨年22.8%も下落したのに、なお年率平均リターンが20.9%というのはいかに強いかが分かる。
米国を代表する大型株500からなるS&P500の年率平均リターンは17.5%。10年で5.01倍だ。
米国の株式指数ではナスダック100>S&P500>ダウ平均>ラッセル2000の順にリターンが高い。GAFAMに代表される大型ハイテク株のウェイトが高い指数ほどリターンが高くなっている。
過去10年は絶好調だった米国株だが、今後10年も年率平均17.5%のリターンが得られる可能性は低い。
2012年頃はS&P500が低迷しており割安だったし、円建てリターンなので、ドル高の恩恵を受けているからだ。

日本株TOPIXが10.5%と健闘している。ただし日銀によるETFの大量購入によって作りだされた官製相場という側面があるので、今後も同程度のリターンを上げられるかは疑問が残る。
日経平均TOPIXより若干ハイリスクハイリターンでシャープレシオは同程度。マザーズのリターンはTOPIXにわずかに劣っており、35.8%とロシア株よりリスクが高い。

米国以外の先進国株のリターンは8.7%と17.5%のS&P500の半分以下なのにリスクは高い。欧州株はあまり組み入れるメリットが見いだせない。

新興国株はハイリスクローリターンでリターンがリスクに見合っていない。
新興国GDP成長率が高いのでリターンが高いイメージがあるが、通貨が弱いので円建てリターンは低い。
新興国株のリターンは台湾・インド>>中国>>タイ>香港・ベトナム・韓国>その他の順だ。
新興国株でリターンがTOPIXに勝っているのは台湾とインドだけ。-10%のロシアは別にしても、アフリカ、ブラジル、トルコの年率リターンは2%以下しかない。


2)株式以外
J-REITのリターンは9.3%とTOPIXにやや劣り、リスクはやや高い。平時の値動きは小さいが、コロナショックのような時に大暴落するのがネックだ。
米国、外国REITのリターンは9%前後と株式に劣後している。ただ去年1年の下げが大きく割安になっているという指摘もある。

米国債券のリターンは5%程度。リターンは低いが8%前後と株よりリスクが低く、通常時は株と逆相関するので、組み入れを検討する価値はある。
米国債券内では転換社債のリターン(13.7%)が圧倒的に高く、以下ハイイールド債、投資適格社債国債の順。リスクが高いものほどリターンも高い。
先進国債券のリターンは3.2%と低い。新興国債券は2.5%とさらに低く、リスクに見合っていない。
日本債権はリターンが0.5%しかないのに今後日銀の利上げによる暴落リスクがある最悪の資産。絶対に組み入れるべきではない。わざわざ日本債権だけ買っている人は少ないと思うが、バランスファンドなどで組み入れている人は要注意だ。

金は4.7%と米国債券並みのリターンがあるが、リスクは株と債券の中間程度。暴落時に強い傾向がある。


3)米国株か全世界株か
長期投資のメインの投資先を何にするかには米国株派と全世界株派がいる。
米国株(S&P500)と全世界株を比較すると、リターンとシャープレシオでは米国株が、リスクの低さでは全世界株が勝っている。

この問題は、米国株か全世界株かではなく、米国株に米国以外の先進国株と新興国株を追加するかという問題として捉えるとだいぶ印象が変わる。
私は米国株派だ。米国株の2/3程度のリターンであれば、分散のために組み入れても良いが、米国以外先進国は8.7%、新興国株は5.8%であり、17.5%の米国株とリターンの差が大きすぎるからだ。

また、全世界株の組み入れ比率にも不満が残る。
eMAXIS Slim全世界株式の組み入れ比率は下記の通りだ。
米国61.6%
日本5.2%
その他の先進国22.9%
新興国10.0%
(インド1.6%)

米国以外先進国はS&P500と比べてリターンが半分以下なのにリスクは少し高い。欧州の多くは人口減少国であり、長期成長性も低い。22.9%も組み入れたくない。
逆に比較的リターンが高く長期成長期待が高いインド株は1.6%しか入っていない。これではほとんどリターンに寄与しない。
私は米国株のみで良いと思うが、どうしても地域分散したいのであれば、台湾株・インド株など比較的過去の長期リターンが高い国のETFを個別に追加する手はある。ただし、台湾株には中国による侵攻リスク、インド株には米国株より割高という欠点がある。
現在は米国債券の利回りが高いので、米国株以外にリスク分散したいのなら米国債券を買うのが良いのではないだろうか。