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米国ハイテク株は米国債より低利回り

米国で債券利回りが上昇している。2月18日時点で10年債利回りは3.81%、2年債は4.62%に上昇した。

インフレがなかなか収まらず、FRBのメンバーが金利がより高い水準により長期間とどまるというタカ派発言を繰り返しているのが原因だ。FRBは以前からずっとタカ派だったのだが、債券市場参加者が発言を信じていなかった。物価指数が高止まりしているのを見て、債券市場がようやくFRBの言うことを信じ始めた格好だ。
一方、株式市場はFRBの言うことを無視している。S&P500は年初来で6.67%、ハイテク株中心のナスダック100指数は13.77%も上昇している。益利回りはS&P500が5.39%、ナスダック100は3.92%に低下した。

国債はほぼノーリスクで額面通りの利回りが得られるが、株式には価格変動リスクがある。そのため、株式は通常、価格変動を受容した対価として債券利回りにリスクプレミアムを付与しただけの利回りが得られる。リスクプレミアムは2%前後と言われているが、市場参加者の心理によって変動する。参加者が恐怖にかられている時は大きく、強欲な時は小さくなる。

現在、ナスダック100の2年国債に対するリスクプレミアムは-0.7%だ。
米国2年債を買えばノーリスク注)で4.62%の利回りを得られるのに、下落リスクがあり3.92%の利回りしか得られないナスダック100が買われているのだ。明らかにおかしい。

こんなことになっているのは、株式市場の参加者が非常に強欲になっているからだ。年初からハイテク株中心の上げが続いているため、バスに乗り遅れまいと我先にと株を買っている。

Fear&Greed Index(恐怖と強欲指数)は強欲を示す69になっている。さらに、算出に用いている指数を個別に見ると、ジャンク債需要だけが恐怖で市場のボラティリティが中立、市場モメンタムとが強欲、残りの四項目は極端な強欲になっている。債券市場が恐怖になっているので市場全体では強欲になっているが、株式市場だけ見ると極端な強欲だということだ。

edition.cnn.com

市場参加者が冷静になればおかしいと気づいて、株が下落するか債券が上昇する、もしくはその両方が起こって価格が調整されるはずだ。

10年ぐらいの長期で考えれば株式には増益の影響が大きく働くので債券よりリターンが大きくなる可能性が高い。
だが、今後1年間は、景気減速の影響でほとんど増益が期待できないので、単純にナスダック100の方が米国2年債より期待リターンが低い。
長期保有するならナスダック100を買っても良いが、今は米国債を購入し、リスクプレミアムが正常化してからナスダック100に乗り換えた方が良いのではないだろうか。

注)米国債がほぼノーリスクなのはドルベースでの話。日本円で生活している我々にとっては為替リスクがあるのでノーリスクではない。