「もみあげの米国株投資」は私が毎朝読んでいるブログだ。米国駐在員であるもみあげ氏がその日の米国市場の動向について端的にまとめられていて、米国株の速報サイトではピカ一だ。
そんなもみあげ氏の本が出た。『もみあげ流米国株投資講座』(もみあげ著、ソーテック社)だ。
株式投資本には大きく分けて二種類ある。インデックス投資本と個別株投資本だ。
前者は「市場全体に連動するインデックスファンドをコツコツ積み立てろ」というもので、初心者向けの内容としては正しい。下手に市場平均を上回ろうとすると火傷をするからだ。
だが、インデックス投資本の内容は、要約すれば「市場全体に連動するインデックスファンドをコツコツ積み立てろ」の一行だけだ。
私からすると知っていることしか書いてない。
一方の個別株当資本は、独自の手法で市場平均を上回る方法を説いた本だ。高配当株でマネーボックスを作るとか、新高値の株を買ってトレンドに乗るとか、ボロ株を買って吹き上がるのを待つとか、内容がバラエティ豊かで面白い。
反面、言っていることが怪しげだ。主張の根拠が曖昧で、著者が運良く上手く行っただけじゃないの? と言いたくなるものが多い。
『もみあげ流米国株投資講座』は様々な市場平均を上回る手法について書いてある。1種類しか書いてない類書より密度が高い。ちゃんとデータに基いて市場平均を上回る根拠が書いてあるし、その手法の良い点だけでなく悪い点も書いてあるので信頼できる。
本書は、初心者でも一から米国株投資について学べる本でありながら、投資本やレポートを読みまくっている私でも知らないことが沢山書いてあって読み応えがある。各セクターの特色に加え、有望銘柄の特徴が端的にまとめられている。
具体的には、GAFAMはインドに積極投資しているので、インド企業に直接投資するよりもGAFAMに投資した方が低リスクでインド企業の成長を取り込めるという指摘には眼から鱗が落ちた。
また、QQQ+VIGは重複が15%しかなく、S&P500をオーバーパフォームできそうという提案は、すぐ真似ができ、実用性が高い。
もみあげ氏は最終章でご自身のポートフォリオ区分を公開されている。
もみあげ流ポートフォリオ
インデックスETF 10%
GAFAM 10%
成長株銘柄・ETF 50%
高配当銘柄 5%
安定連続増配銘柄 10%
ESG銘柄 15%
現金 10%
各ジャンルにおいてETFを紹介されている場合はETF、ない場合は一押し銘柄か最初に紹介している銘柄を組み込んで、具体的なポートフォリオを作成してみた。
インデックスETF
VOO 10%
GAFAM
MSFT 10%
成長株銘柄・ETF 50%
QQQ 10%
SMH 10%
V 10%
DHR 10%
TSLA 10%
高配当銘柄
VYM 5%
安定連続増配銘柄
VIG 10%
ESG銘柄
QCLN 15%
現金 10%
投資手法の検証にはバックテストとフォワードテストがある。バックテストは過去のパフォーマンスを見るもの、フォワードテストは投資手法提唱後のパフォーマンスを見るものだ。
本書では、過去のパフォーマンスを元に成長株中心ポートフォリオの優秀性が説かれている。
そこで、上記ポートフォリオのフォワードテストを行った。
本書には2020年7月末までのデータが載っているので、2020年7月末~2021年1月末のパフォーマンスを求めてみた。
銘柄 | ウェイト | 7/31 | 1/29 | リターン | リターン×ウェイト |
---|---|---|---|---|---|
VOO | 10% | 297.61 | 340.18 | 14.3 | 1.43 |
MSFT | 10% | 203.98 | 231.96 | 13.72 | 1.37 |
QQQ | 10% | 265.31 | 314.56 | 18.56 | 1.86 |
SMH | 10% | 165.07 | 226.61 | 37.28 | 3.73 |
V | 10% | 189.83 | 193.25 | 1.8 | 0.18 |
DHR | 10% | 203.8 | 237.84 | 16.7 | 1.67 |
TSLA | 10% | 286.15 | 793.53 | 177.31 | 17.73 |
VYM | 5% | 79.79 | 90.99 | 14.04 | 0.7 |
VIG | 10% | 121.9 | 137.05 | 12.43 | 1.24 |
QCLN | 15% | 34.84 | 79.87 | 129.25 | 19.39 |
現金 | 10% | ||||
49.3 |
VOO(市場平均)のリターン 14.3%
もみあげ流ポートフォリオのリターン 49.3%
もみあげ流ポートフォリオが3.45倍のリターンを上げた。(現金が10%入っているのに!)
フォワードテストでももみあげ流ポートフォリオの優秀性が示された。
テスラ、ESG銘柄のQCLNが倍以上という驚異的パフォーマンスを上げたほか、半導体のSMHも好調だった。
一方ビザ(V)が不調だったが、経済が回復すると伸びてくる銘柄なので、バランスも考えられている。
ただし、今からもみあげ流ポートフォリオをそっくりコピーしても、市場平均を上回れるとは限らない。
もみあげ流ポートフォリオが圧倒的パフォーマンスを上げられたのは、徹底的な調査でテスラ、ESG銘柄、半導体の将来性が高いということを市場に先んじて見抜いたからだ。
特にテスラとESG銘柄はバブル的に上がっているので、今から買うと大損するリスクがある。(もちろん安定的に上がり続ける可能性もあるが。)
やはり市場平均を上回るのは並大抵のことではないのだ。