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債券投資信託の比較検討

3月から4月にかけて米国株が急落、乱高下した。株式のリスクを痛感した私は、リスク軽減のため、現在ほとんど持っていない債券の割合を増やすことを検討している。
だが、オルカンに代表される株式投資信託に関する情報はあふれているが、債券投資信託に関する情報はあまりない。
そこで、信託報酬が低い債券投資信託の比較検討を行った。

1.債券の概要

債券とは国や企業などが投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券だ。投資家はお金を貸す対価として一定の利子を受け取る。発行元の種類によって、国債、地方債、社債などに分けられる。
会社の業績によって価値が変動する株式と違い、債券は発行元が倒産しない限り元本と利子が支払われる。そのため、債券は株式よりも低リスク低リターンであるという特徴がある。

生債券は満期まで保有していれば倒産しない限り損をすることはないが、途中で売買すると価格変動により損失を被ることがある。債券投資信託は途中で売買するので元本が保証されていない。

債券は利回りが上昇すると価格が低下する(逆に利回りが低下すると価格が上昇する)。そのため、中央銀行の利上げが見込まれる時期に保有すると大きな損失を被るリスクがある。農林中央金庫が大きな損失を出したのは、米国が利上げする時期に大量の米国債保有していたためである。

債券はリスクによって主に下記の四種類に分けられる。

短期国債 長期国債 投資適格社債 ハイイールド債
←低リスク低リターン 高リスク高リターン→

左ほど低リスク低リターン、右ほど高リスク高リターンになる。右二つが社債で、発行元の信用度によって投資適格社債とハイイールド債に分けられる。
総合債券は短期国債、長期国債、投資適格社債分散投資した商品だ。


2.国内債券と海外債券

債券は円建てか外国通貨建てかで国内債券と海外債券に分類できる。
国内債券には為替リスクがないというメリットがある。
しかしながら、国内債券は利回りが低い。さらに日銀は今後利上げを行うことが見込まれている。利回りが低い上に価格下落リスクは高いので、全くお勧めできない。
参考までに代表的な国内債券投資信託のチャートを示す。このチャートを見るだけで、誰もが買う気が失せるだろう。

国内債券に投資するなら、国内債券投資信託を買うより、直接国債社債を買った方が良い。これなら満期まで保有していればデフォルトにならない限り損をすることはない。

一方、海外債券は為替リスクがあるものの、利回りが高い。FRBなどの主要中央銀行はこれから利下げすると見込まれている。投資信託で購入するなら、海外債券の方が良い。
ただし、FRBが利下げすると日本との利回り格差が縮まってドル安になり、ドル建て資産の価格は下落する。


3.主な海外債券投資信託

主な海外債券投資信託の概要を示す。内容が同じものが複数ある場合は、実質コストが安い商品を選んだ。
投資信託ETF(上場投資信託)の違いは証券取引所に上場しているかどうか。
投資信託は1日1回算出される基準価額で取引するのに対し、ETFは株と同じように市場でリアルタイムに変動する価格で売買する。
投資信託は100円単位で好きな額を売買できるというメリットが、ETFは安値、高値で機動的に売買できるというメリットがある。

3,1.投資信託

SBIアセットマネジメントの債券投資信託が充実している。

eMAXIS Slim 先進国債券インデックス

運営会社:三菱UFJアセットマネジメント
信託報酬(税込): 0.163%
連動を目指す指数:FTSE世界国債インデックス(除く日本)

組入上位5カ国・地域:1アメリカ 47.0%、2中国 11.1%、3フランス 7.4%、4イタリア 6.8%、5ドイツ5.3%
組入上位債券種別:国債100%

日本以外の先進国国債分散投資した投資信託国債のみで構成されているため比較的低リスク低リターン。


SBISBI・iシェアーズ・全世界債券インデックス・ファンド

運営会社:SBIアセットマネジメント
信託報酬(税込):0.0638%、実質コスト 0.1158%
連動を目指す指数:FTSE世界BIG債券インデックス

組入上位5カ国・地域:1 米国 44.17%、2 中国 10.34%、3 日本6.25%、4 フランス 5.30%、5 ドイツ 4.50%
組入上位債券種別:1政府機関債 35.29%、2 社債 27.02%、3米国国債 20.47%、4パススルー証券 10.43%、5地方債 2.53%

全世界の債券に分散投資した投資信託社債を含んでいるためeMAXIS Slim 先進国債券インデックスよりはやや高リスク高リターン。コストが安い。


SBISBI・iシェアーズ・米国総合債券インデックス・ファンド

運営会社:SBIアセットマネジメント
信託報酬(税込):0.0638%、実質コスト 0.0938%
連動を目指す指数:ブルームバーグ米国総合インデックスTTM(円換算ベース)    

組入国:米国93.9%
組入債券種別:国債、政府関連債、社債

米国の国債社債分散投資した投資信託。信託報酬が安い。投資地域が米国のみな点がネック。


SBISBI・iシェアーズ・米国短期国債・ファンド

運営会社:SBIアセットマネジメント
信託報酬(税込):0.0638%、実質コスト 0.1538%
連動を目指す指数:ICE0-3か月・米国国債インデックス(円換算ベース)

組入国:米国100%
組入債券種別:米国債100%

米0-3ヶ月の短期米国債のみで構成された投資信託。もっとも低リスクの短期国債のみで構成されているため、非常にリスクが低い。ほぼ米ドルと連動して動く。


SBISBI・iシェアーズ・米国投資適格社債(1-5年)インデックス・ファンド

運営会社:SBIアセットマネジメント
信託報酬(税込):0.0638%、実質コスト 0.1038%
連動を目指す指数:ICE BofA USコーポレート・インデックス(円換算ベース)

組入国:米国69.5%、英国5.3%
組入債券種別:社債99.3%

ドル建ての投資適格社債で構成されたETF。米国以外にも分散されている。リスクはやや高め。


SBISBI・iシェアーズ・米国ハイイールド債券インデックス・ファンド

運営会社:SBIアセットマネジメント
信託報酬(税込):0.0638%、実質コスト 0.1438%
連動を目指す指数:ICE BofA USハイイールド・コンストレインド・インデックス(円換算ベース)

組入国:米国85.4%
組入債券種別:社債99.2%

ドル建てのハイイールド債で構成されたETF。リスクが高い。

 

3.2.ETF

ETFではブラックロック・ジャパン米国債券を中心に17種類もの海外債券ETFを発行している。主なものを紹介する。


iシェアーズ 米国総合債券 ETF(2256)

運営会社:ブラックロック・ジャパン
信託報酬(税込):0.088%程度
連動を目指す指数:ブルームバーグ米国総合インデックスTTM(為替ヘッジなし、円ベース)    

組入国:米国100%
組入上位債券種別:1財務省証券 45.12%、2政府機関 24.66%、3銀行業 5.65%、4非景気循環消費 3.81%、5テクノロジー2.35%

米国の国債社債分散投資した投資信託。信託報酬が安い。


iシェアーズ 米国債0-3ヶ月 ETF(2012)

運営会社:ブラックロック・ジャパン
信託報酬(税込):0.1540%
連動を目指す指数:FTSE米国債0-3ヶ月インデックス(国内投信用、円ベース)

組入国:米国100%
組入債券種別:米国債100%

米0-3ヶ月の短期米国債のみで構成された投資信託。もっとも低リスクの短期国債のみで構成されているため、非常にリスクが低い。


iシェアーズ 米国債1-3年 ETF(2620)

運営会社:ブラックロック・ジャパン
信託報酬(税込):0.1540%
連動を目指す指数:FTSE米国債1-3年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース)

組入国:米国100%
組入債券種別:米国債100%

1-3年の短期米国債のみで構成された投資信託。低リスクの短期国債のみで構成されているため、リスクが低い。


iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(1656)

運営会社:ブラックロック・ジャパン
信託報酬(税込):0.1540%
連動を目指す指数:FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース)

組入国:米国100%
組入債券種別:米国債100%

7-10年の長期米国債のみで構成された投資信託。リスクは中程度。

 

他にもフランス国債ドイツ国債米国債20年超、投資適格社債、ハイイールド債など様々な債券ETFがある。

 


4.リターン・リスクの比較

主な債券投資信託について2025年3月末時点での3か月、1年、3年のリターン、リスク、シャープレシオを比較した表を示す。

全てが揃っている過去1年のデータでは、理論通りハイイールド債のリターンが最も高かった。一方で、過去3か月のリターンは最も悪く、値動きが激しいことが分かる。
理論的には最も低リスクなはずの米国債0-3ヶ月が高リスクという意外な結果となった。ここ1年の為替変動が激しかったためだと思われる。
過去3年では短期米国債金利が大きく下がったため、米国債1-3年のリターンが良好だった。
米国の金利が高いため、世界債券より米国債券の方がリターンが高かった。


5.トランプショック時の値動き比較

トランプショックが起きた2月20日から4月21日までの値動きを比較した。

S&P500連動投信やオルカンのような株式投信と比べると債券投信は下落耐性が高いことが分かる。

債券のみの値動きを拡大した図を示す。


ハイイールド債が最も下落している。次いで米国比率が高く社債を含む米国総合債券の下落幅が大きい。
4月8日までは米国債7-10年のリターンが最も良好だったが、その後米国債、ドルが売り込まれて下落している。
4月21日時点では米国以外の国債にも分散されているeMAXIS Slim 先進国債券インデックスの下落耐性が最も高かった。


6.まとめ

過去1年のリターンが高かったのは米国ハイイールド債券だが下落局面での下落幅も大きい。
トランプショック時の下落耐性が高かったのはeMAXIS Slim 先進国債券インデックス。
債券投信は株式投信に比べると株価急落時の下落率が低く、分散する意味はある。