東雲製作所

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アイデア大全のアイデア創出法を整理する

 読書猿氏と言えば、知的で役に立つブログ、「読書猿Classic: between / beyond readers」で有名である。物語作者がチラシの裏に書くべき7つの表/もうキャラクター設定表はいらないは小説を書く時お世話になっている。

 そんな読書猿氏初の著作が『アイデア大全 創造性とブレイクスルーを生み出す42のツール』フォレスト出版)だ。古典からビジネス書まであらゆるアイデア創出法に関する文献を渉猟されており、その視座の広さに感嘆した。
 本書の優れている点に関しては既にDain氏fujipon氏けいろー氏といった著名ブロガーによるレビューが出ており、同じように褒めても屋上屋を重ねるに過ぎない。そこで私は本書に収録された42のツールについて、自分なりに整理を試みた。

 

 本書のアイデア創出法は概ね下記の5種類に分類できる。
1普段とは違う視点を導入する。
 P.K.ディックの質問、ルビッチならどうする?、ゴードンの4つの類比etc

2リストを元に考える。
 ランダム刺激、エクスカーション、さくらんぼ分割法etc

3アイデアが出やすいよう自分を制御する。
 フォーカシング、TAEのマイセンテンスシート、ノンストップライティングetc

4思いついたアイデアの書き留め方。
 エジソンノート、セレンディピティ・カードetc

5分析法。
 ケプナー・トリゴーの状況把握、空間と時間のグリッド、事例―コード・マトリクスetc

 この内、4と5は狭義のアイデア創出法ではないので、1~3について整理する。

 アイデア創出法の鍵は、固着を取り除くことだ。そのためには普段とは異なった思考をする必要がある。アイデア創出法とは、普段とは異なった思考をする方法に他ならない。
 PC上でアイデア創出ソフトを走らせている状態を考えると、1は使用ソフトの切り替え、2は入力データの追加、3はバックグラウンドソフトの停止に相当する。

 

1普段とは違う視点を導入する。
 普段とは違う発想法を試みる方法。主に下記の四通りがある。
1-1別人になったつもりで考える。
 尊敬する人、歴史上の賢人、夢想家、実務家、批評家、問題そのもの等になったつもりで考える。

1-2似たものからヒントを得る。
 生物などの異なった分野や先行研究などから似たものを探しだして参考にする。

1-3既存のアイデアの一部を変更する。
 アイデアを複数の属性に分割し、そのうちの一つを他のものに置き換えたり逆転させたりする。

1-4問題を抽象化する。
 問題を抽象化して端的な表現や動詞、形容詞等に置き換え、本質や隠された意味を探る。

 違う視点の導入という点では、擬人的類比・直接的類比・象徴的類比・空想的類比を提示した「ゴードンの4つの類比」が最も網羅的である。

 

2リストを元に考える。
 個人が思いつく量には限界があるので、リストという外部からの刺激を多数入れることで、アイデアをひねり出そうという手法。
 リストの作り方で下記の二通りに分けられる。
2-1課題とは無関係な既存のリストを活用する。
 名詞(動物、職業)、図形、接続詞といったリストやランダムに開いた辞書等から刺激を受けて考える。

2-2課題から導かれる単語に操作を加えてリスト化する。
 課題の属性について列挙したり、解決策と原因を書いたりといった操作を繰り返して課題と関連したリストを作成する。

 

3アイデアが出やすいよう自分を制御する。
 良いアイデアが生まれるような状態になるよう身体的に制御する方法。
 しばらく問題を離れてひらめきを待つ方法、ノンストップで書き続けることで内的批判者をオーバーフローさせる方法、内的もやもやに名前をつけて質問する方法等がある。

 

 分類の中では3が一番興味深かった。アイデアが出やすいよう頭をリフレッシュするという点では、瞑想もアイデア創出法の一種と言えるかもしれない。