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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第一話感想

(本稿は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』と『少女革命ウテナ』のネタバレを含みます。)

機動戦士ガンダム 水星の魔女』(原作:矢立肇富野由悠季、監督:小林寛、アニメーション制作:サンライズ)が話題だ。ネット上の評判を見ると、ウテナだ百合だという声が多い。『少女革命ウテナ』(原作:ビーパパス、監督:幾原邦彦、アニメーション制作:J.C.STAFF)は私が最も好きなアニメの一つなので、早速見てみた。

第一話を見た所、思った以上にウテナだった。「学園を舞台に学園のエリート達が決闘で花嫁を奪い合っている。そのことに憤った正義感の強い転校生が決闘を挑み、花嫁を奪取する。」という物語の基本構造が全く同じだ。学園ではなく軍隊を舞台にするとか、もうちょっとアレンジを加えた方が良いのではないだろうか。これでは原作としてビーパパスをクレジットした方が良いレベルだ。

もちろん、決闘方法が剣からガンダムに変更されているなど、違う部分もある。最も異なっているのは花嫁の性格だ。
少女革命ウテナ』のアンシーは決闘者達から人形のように扱われても反抗の意志を見せない受動的なキャラクターだ。一方、『水星の魔女』のミオリネは決闘で結婚相手を決められることに憤っており、学園から脱出しようとしたり、自らガンダムに乗って戦ったりと、積極的に反抗している。
一見、『水星の魔女』の方がより自立した女性を描いているかのようだが、そうではない。物語はキャラクターの変化を描くものだからだ。

少女革命ウテナ』は意志のない人形のようだったアンシーが自立して学園を出ていくから、女性の自立に関する強烈なメッセージになっているのだ。
一方、ミオリネは第一話の時点で学園から脱出しようとしている。ミオリネの変化を描こうとするなら、最終的に学園から出る以外の行動を選択して、主人公スレッタとの出会いを通じてこのように変化した、ということを示さねばならない。
一つ考えられるのは、ミオリネを学園に留まらせることで、「逃げずに自分の持ち場に留まって戦え」というメッセージを発することだ。だが、結婚相手を勝手に決めるような親からは逃げた方が良いのであって、逃げずに戦えというメッセージに説得力を持たせることは難しい。

物語冒頭にミオリネの脱出シーンを置いたのは、最後にアンシーが脱出する少女革命ウテナと綺麗な対照を成している。これは、本作がポスト少女革命ウテナ作品であるという明確な意思表明だ。
最後にミオリネがどういう行動をし、それによって作品としてどういうメッセージを発しようとしているのか、期待して待ちたい。

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