東雲製作所

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明日ちゃんのセーラー服感想――興味はコミュ力に勝る

(本稿は『明日ちゃんのセーラー服』のネタバレを含みます。特に大きなネタバレは反転しました。)

 『明日ちゃんのセーラー服』(原作:博、監督:黒木美幸、アニメーション制作:CloverWorks)はど田舎で育った明日小路がセーラー服に憧れてお母さんの母校に入学。お母さんに仕立てて貰ったセーラー服で登校したら制服がブレザーに変っていてセーラー服なのは小路だけという出落ちみたいなアニメだ。出だしが面白すぎるのでネタが続かないんじゃないかと懸念していたが、その後も面白い。
 今まで同級生がいなかった小路がクラスメート達と次々友誼を結んでいく話なのだが、ささやかな心の揺れをしっかり描いているので、劇的なことは起きないのに一話を見る毎にスタンディングオベーションをしたくなるような満足感がある。

 特に好きなのは第七話だ。第七話はギターが弾けないのに見栄を張って弾けると言ってしまった蛇森が練習して小路の前で一曲を披露するというだけの話だ。だが、頑張って進歩している同級生への劣等感や、コツコツ練習してきたことを丁寧に描いているから、観客が一人だけの演奏会なのにかけがえのないものに聞こえる。蛇森の弾くチェリーがまた、素人が頑張って練習したというのがはっきり伝わってくる押さえの甘いコードだとか、恥ずかしがりながら精一杯歌っているのをひしひしと感じるぶっきらぼうな感じの歌声とか、全てがリアリティ抜群で素晴らしい。
 才能に溢れた木崎によるバイオリンやピアノの演奏は見事だが、自分とは別次元の話に感じる。帰宅部で特別な才能もない蛇森がそれでも頑張って一曲弾いたのを見ると、人生の一瞬は常にかけがえのないものになりうるのだと感じ、生きる希望が湧いてくる。

 小路は次々友達を増やしていくのでコミュ強のようだが、良く見ると、友達を家に誘うのに延々時間がかかったりと別にコミュニケーションが上手いわけではない。にもかかわらず、友達を増やせているのは他人に対する興味が強いからだ。
 小路は相手に対して興味があるということをまっすぐに表明する。人間関係を築く上で最も重要なのは相手に対して興味を持つことだ。コミュニケーションテクニックというのは、相手に対して興味があるかのように見せかける技術であって、本当に興味があることに勝るものはない。人は誰しも自分に対して興味を持ってもらいたい、自分のことを知って欲しいと思っているからだ。

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