東雲製作所

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2021年テレビアニメベスト10

2022年の第二クールが始まってしまったが、ようやく2021年テレビアニメベスト10を発表する。
鬼滅の刃や王様ランキングのように年またぎで放送された作品は2022年版に回した。


1)無職転生異世界行ったら本気だす~(原作:理不尽な孫の手、監督・シリーズ構成:岡本学、アニメーション制作:スタジオバインド)
小説家になろう」で連載された異世界転生もの初期の代表作。原作の変化に飛んだ世界を精緻な美術で再現している。
主人公が無双する作品が多い中、本作は主人公を叩きのめす容赦のなさが凄まじい。特に第十六話「親子げんか」はあまりに辛くて翌週まで鬱々としていた程だ。
世の中に辛いことは沢山あるが、自らの醜さと向き合うことが一番辛い。醜い自分と向き合いたくないから転生する異世界転生ものが多い中、本作は主人公に自分を直視させていて感銘を受けた。
こう書くと鬱アニメのようだが、楽しい話はひたすら楽しい。振れ幅の大きさと先の読めなさが最大の魅力だ。


2)ゆるキャン△ SEASON2(原作:あfろ、監督:京極義昭、アニメーション制作:C-Station)
キャンプブームの火付け役となった人気作品の第二期。
劇的なことが起こるわけではないが、視聴者の心がささやかな心の動きを敏感に感じられるように作っているので、大きな満足感がある。
ヒロインなでしこのことが好きすぎる。コミュ強キャラと言えばハルヒのように強引に人を振り回すタイプが多いが、なでしこは気遣いのできる天然なのだ。コミュ障の私にとっては女神のようだ。
第4話「バイトのお金で何を買う?」はなでしこの魅力が存分に詰まった神回で、特にエンディングは延々超ロングカットで長回しをしているのに、なでしこの感情が手に取るように伝わってくる演出が素晴らしい。TOKYO MXBS11で4月28日 23:30から再放送されるので見れる方はぜひこの回だけでも御覧ください。(できれば神回その2の第8話もご覧下さい。)

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3)ブルーピリオド(原作:山口つばさ、総監督:舛成孝二、アニメーション制作:Seven Arcs)
主人公矢口八虎が東京芸大合格を目指すアニメ。合格倍率200倍超の現役合格に挑む様はさながら現代の科挙だ。
絵画薀蓄ものとしても興味深いが、天才たちがしのぎを削るバトル物としても見応えがある。通常、フィクションに登場する天才の技は所詮は作者の想像の産物なのだが、本作に登場する天才の絵画は本当に東京芸大に合格した天才が描いた絵画なので、説得力が全然違う。
花守みゆり氏が家庭環境の複雑な女装男子という難しい役を好演。何でもできる実力派声優としての地保を着々と固めている。

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4)不滅のあなたに(原作:大今良時、監督:むらた雅彦、アニメーション制作:ブレインズ・ベース
謎の存在が地球人を記録するために作った物体が、死んだ生物の情報をコピーすることで徐々に人間のことを理解していくという骨太な物語。人間とは何かというテーマに正面から挑んでいる。
特に、初期の数話はここからどういう方向に話が進んでいくのか全く分からず、こんな話見たことない! と衝撃を受けた。ほとんどの物語は主人公が人間であるということが前提条件となっており、その前提条件さえ外してしまえばまだまだ無限の可能性があるということに気づかされた。
フシの死者の姿をコピーできるという能力は、「死者は知り合いの心の中で生きている」という考えを具現化した設定で、生きる意味について考えさせられる。
ファーストシーズン全体を見ると、ヒロインが老婆だ。これは主人公が不老不死ならではの設定である。人生に限りがあると、可能なうちに生殖をしたいという欲求が働くからだ。本作のフシと老婆ピオランの交流は肉体的欲求とは無関係に成立しており、もっとも純粋なラブストーリーと言えるかもしれない。


5)吸血鬼すぐ死ぬ(原作:盆ノ木至、監督:神志那弘志、アニメーション制作:マッドハウス)
吸血鬼ハンターのロナルドが、吸血鬼ドラルクを討つべく居城に潜入した所、ドラルクはちょっと叩いたぐらいですぐ死んで砂になってしまうめちゃ雑魚だったというコメディー。ギャグのキレが良く、毎回腹を抱えて笑った。
ロナルドとドラルクがあまり仲が良くないのだが、行きがかり上共同生活を送っているという設定が絶妙。コンビが対立していた方が会話が盛り上がるし、欲得ずくで動いていた方がギャグとして面白い。基本は欲得ずくなのだが、時々ちょっと相手への親愛の情が覗くというさじ加減も絶妙だ。続々出てくる新キャラもみんな変で素晴らしい。

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6)シャドーハウス(原作:ソウマトウ、監督:大橋一輝、アニメーション制作:CloverWorks)
洋館「シャドーハウス」を舞台にした奇妙な物語。生き人形の少女エミリコと顔のない主ケイトを中心に、徐々に館の謎が明らかになっていく。
物語構造論的に考えぬかれて作られているので、創作上学ぶべき所が多い。徐々に情報を明かしながら、常に新たな謎とサスペンスで引っ張っていく手腕に舌を巻いた。

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7)蜘蛛ですが、なにか?(原作・シナリオ監修:馬場翁、監督:板垣伸、アニメーション制作:ミルパンセ
蜘蛛に転生した「私」を中心とした元クラスメート達の異世界群像ファンタジー
本作の魅力は主人公蜘蛛子に尽きる。陰キャなのに異様に好戦的で、残忍でありながらお人好しな部分もある。読者が嫌いにならないぎりぎりのラインを突いた絶妙なバランスだ。悠木碧氏の熱演でさらにユニークさが際立っている。
かけあいの面白さが出せないので、主人公が延々単独行しているというのは異例だ。相棒がいないのに面白いということを取っても、蜘蛛子がどれだけ良いキャラか分かるだろう。

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8)かげきしょうじょ!!(原作:斉木久美子、監督:米田和弘、アニメーション制作:PINE JAM
宝塚歌劇団をモデルにした紅華歌劇団を舞台にした予科生達の群像劇。様々なタイプの生徒が出てくるので、誰もが一人は共感できる生徒が見つかるだろう。
予科が舞台なのでトップスターの座を争って戦うような劇的な展開はない。物語は賭けているものが大きいほど劇的になる。フィクションではしばしば命を賭けたり、恋の成就を賭けたり、全国制覇を賭けたりして盛り上げる。だが、本作を見て、そんなことをしなくても、心に抱えた抑圧が解放される様を説得力を持って丁寧に描けば十分面白いのだということに気付かされた。
役者の話なので声優さんの演技も見どころの一つ。役者さんが普段のイメージとは全然違う役を演っているのが面白い。
花守みゆり氏はコミュ強のなでしこ役とは真逆のコミュ障キャラだし、長瀞さんみたいな落ち着きがない後輩役が多い上坂すみれ氏は真面目な委員長だし、健気で可愛い役が十八番の花澤香菜氏が意地悪な小姑みたいな先輩を演じている。生徒役は初々しさが出るように、「こういう役と言えばこの人」という定番を外したキャスティングにしたのかも知れない。


9)ぼくたちのリメイク(原作:木緒なち、監督:小林智樹、アニメーション制作:feel.
勤めていたゲーム会社が潰れてしまい、奇跡の世代のクリエイター達と一緒に仕事をするという夢破れた主人公が、18歳に戻って、行かなかった芸大に進学し、奇跡の世代達とゲームを作る話。
とにかくヒロイン志野亜貴の博多弁がめちゃくちゃ可愛い。シノアキ、おっとりしているのに、主人公が大好きでぐいぐいアプローチをかけてきてもうたまらん。「ぼくたちのリメイク」の魅力はシノアキが可愛いことです。以上! で話を終わらせても良いぐらいだ。
主人公橋場恭也に関しては共感できる部分と、もうちょっと何とかならんのかという部分があって、評価が難しい。ただ、評価が分かれている部分もクリエイターとは創作最優先の、世間的価値観ではクレイジーな連中だということを示していると考えれば納得が行く。


10)東京リベンジャーズ(原作:和久井健、監督:初見浩一、アニメーション制作:ライデンフィルム
タイムリープものとヤンキーものを組み合わせることで新機軸を開拓した大ヒット作品。登場人物達が全く法に縛られていないので驚くような行動を取り、話がスリリングになっている。
第一クールは主人公の成長物語として完璧だし、カタルシスも申し分ない。だが、話が進むにつれ、主人公達が稀咲にやられっぱなしなのでストレスが溜まってくる。マイキーと千冬が良く話し合ったのに何で稀咲を排除しないのか。
第二クールも場地と千冬の友情には心打たれたのだが、納得のいかないことが多すぎる。第一クールだけできれいに終わった方が良かったのではないだろうか。


その他にもスーパーカブ」、「探偵はもう、死んでいる。」、「スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました」、「のんのんびより のんすとっぷ」、「オッドタクシー」などが面白かった。

2019年TVアニメベスト10は年末に、2020年は2月、2021年は4月と毎年2ケ月ずつ発表が遅くなっている。
このままでは2026年TVアニメベスト10は2028年に発表することになってしまうので、来年も何とか4月までには発表して後ズレ傾向に歯止めをかけたいものだ。