東雲製作所

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ラーメン激戦区 東京・丸の内レビュー

東京駅八重洲口の地下には東京ラーメンストリートがある。

shinonomen.hatenablog.com


一方、丸の内口にあるビル、KITTEには「ラーメン激戦区 東京・丸の内」がある。東京駅の東西どちらに出てもラーメン屋街があるのだ。
東京ラーメンストリートは以前、全店レビューを書いたので、今度はラーメン激戦区のレビューを記す。
元々5店舗だったのだが、一幸舎が撤退してしまい、4店舗しかない。代わりに隣接したビルにあり、ラーメン激戦区から三十秒ぐらいで行けるトナリのレビューも書いた。


松戸富田麺絆
濃厚つけ麺(並) 920円

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松戸の超有名店「中華蕎麦とみ田」の直営店。コロナ禍にも関わらずよく行列が出来ている。
最初は麺だけ食べろと書いてあるだけあって、甘みが感じられるもっちりとした太麺が特徴。
最初に麺だけ食べたことで、スープにつけて食べている時も麺の甘さを感じることができた。
スープは魚介ベースのオーソドックスなつけ麺スープだがネギが多い。
ブリの煮物みたいな食感のチャーシューが美味。

 

中華そば福味
中華そば 820円

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「らーめんせたが屋」の系列店。せたが屋は色んな系列店を出しているのだが、せたが屋○○みたいな名前にした方が客が入るのではあるまいか。
信玄丸鶏から取ったという油分は多めだがスープはあっさり。麺も細くさっぱりしている。逆に言うと食べごたえがない。
あっさりしたラーメンが好きな人向け。

 

東京スタイルみそらーめん ど・みそ
みそらーめん 800円

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京橋に本店があるみそラーメン専門店。
強い甘みと程よい辛味のあり、背脂がたっぷり入った濃厚な味噌スープが特徴的。
もっちりとして噛みごたえがある太麺、もやしやコーンとの相性が良い。
普通のみそらーめんだと卵やチャーシューなどが載っていないのは寂しい。

 

四川担々麺 阿吽
汁なし担々麺 950円

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汁なし担々麺ブームを作ったという店。
辛さ(辣油)とシビレ(花椒)の強さを0~6の7段階で選べる。私は初心者向けの2,2で注文した。
出てきた状態では全く汁がないが、皿の底にオイリーなスープが隠れており、良く混ぜてスパゲッティぐらい汁が麺に絡まった状態にして食べる。
花椒が本格的で、ラーメンと言うより中華料理。本格中華が好きな人向け。


東京タンメン トナリ
タンメン 730円

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カウンターのみで町中華の雰囲気が漂う店。店内には常に鉄鍋を振る音が響いている。
山盛りになったもやしとキャベツに圧倒される。
牛、豚、鶏を全部使った動物性の旨味たっぷりなスープに、大量の野菜の旨味が溶けこんで豊かなハーモニーを奏でている。全体的に長崎ちゃんぽんを思わせる。
美味しいがとにかく量が多い。野菜で満腹になった所に満を持して太麺が登場するので食べきるのが大変だった。体重を測ったら0.7kg増えていた。

 

主要指数のコロナショックからの回復率

世界的にグロース株からバリュー株への資金シフトが起きている。
アメリカではこの1ヶ月で伝統株の割合が高いダウ平均が3.05%、小型株のラッセル2000が6.75%上げたのに対し、ハイテクグロース株主体のナスダック100指数は+0.72%とほぼ横ばいだった。日本でもTOPIXは5.29%上昇しているのに、ハイテク主体の東証マザーズ指数は5.15%下落。中国でも出遅れていた香港ハンセン指数が7.26%上昇したのに対し、ハイテク主体の中国創業板指数は0.65%下落している。(11/13時点)
ハイテク株の上昇が頭打ちになる中、コロナワクチンの普及に伴う景気回復を見込んで、出遅れバリュー株へ資金が動いているのだ。

 

SBI証券の北野一氏はかなり前からグロース株とバリュー株のパフォーマンス格差がITバブル期並に拡大していることから、バリエーション調整が起こると予測されていた。実際、調整が発生したが、氏は依然としてパフォーマンス格差が大きいことから、さらにグロース株が下落すると予想されている。
また、高橋ダン氏も、グロース株からバリュー株へのローテーションが継続すると予想されており、長期的にハイテク株のポジションを減らして、出遅れている英国株、スペイン株、銀行株、航空株などにローテーションすべきだと主張されている。

www.youtube.com


一方、楽天証券の広木隆氏はバリュー株の復活は長続きはしないと主張。バリュー株とグロース株の物色は行きつ戻りつ、循環しながら相場全体の底上げが図られると予想されている。

media.monex.co.jp

 

資産をグロース株からバリュー株にローテートすべきなのだろうか。そのためには、グロース株とバリュー株のパフォーマンス格差はどの程度で、どれぐらい上昇余地があるのかを知る必要がある。
出遅れ度合いを見るのに参考になるのがコロナ前高値への回復率だ。ワクチンが普及し、経済活動が完全にコロナ前に戻れば、株価はコロナ前の水準まで戻るはずだ。

 

  コロナ前高値 コロナ底値 11月13日 最大下落率 回復率 コロナ前比
CXSE(中国ニューエコノミーETF) 44.64 35.02 62.4 21.55 284.62 139.78
マザーズ指数(2516) 714 419 959 41.32 183.05 134.31
NASDAQ100 9718.73 6994.29 11937.84 28.03 181.45 122.83
SPDRゴールド 157.55 138.04 177.16 12.38 200.51 112.45
VTI 172.17 111.91 183.32 35.00 118.50 106.48
上海総合指数 3115.57 2660.17 3310.1 14.62 142.72 106.24
日経平均 24083.51 16552.76 25385.8 31.27 117.29 105.41
S&P500 3386.15 2237.4 3537.01 33.92 113.13 104.46
インドSENSEX 41932.56 25981.24 43443 38.04 109.47 103.60
ラッセル2000 1696.07 991.16 1744.04 41.56 106.81 102.83
ダウ平均 29551.42 18591.93 29497.81 37.09 99.51 99.82
TOPIX 1348.94 961.61 1320.15 28.71 92.57 97.87
ドイツDAX 13789 8441.71 13067.72 38.78 86.51 94.77
VYM(米国高配当ETF) 94.6 60.97 87.84 35.55 79.90 92.85
香港ハンセン指数 29056.42 21709.13 26156.86 25.29 60.54 90.02
XLF(米国銀行株ETF) 31.07 17.66 27.03 43.16 69.87 87.00
英国FTSE100 7674.56 4993.89 6316.39 34.93 49.33 82.30
銀行株ETF(1631) 159 104 125 34.59 38.18 78.62
東証リート指数 2250.65 1145.53 1696.2 49.10 49.83 75.36
運輸・物流ETF(1628) 19100 12740 13630 33.30 13.99 71.36
エネルギー資源ETF(1618) 11960 7090 7580 40.72 10.06 63.38
JETS(航空株ETF) 32.2 12.16 20.15 62.24 39.87 62.58
USO(原油ETF) 105.44 17.04 28.13 83.84 12.55 26.68

主な株式指数のコロナショック底値からの回復率、コロナ前高値との比率を示す。
CXSE、マザーズ指数、NASDAQ100といったハイテク指数はコロナ下で逆に業績を伸ばしているため、コロナ前より遥かに高い水準にある。

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NASDAQ100

金利で相対的に魅力が高まった金やコロナを抑え込んで成長している上海総合指数も高い。

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上海総合指数

グロース株を比較的多く含む日経平均やS&P500もコロナ前高値を既に上回っている。

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日経平均

一方、バリュー株が多いダウ平均やTOPIXはまだコロナ前高値を抜いていない。

主要国・地域で見ると、英国FTSE100、次いで香港ハンセン指数が出遅れている。それぞれブレクジットと国家安全法の懸念があるため戻りが遅い。

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英国FTSE100

業種別で見ると、エネルギー株、運輸株、リートが低迷している。

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東証リート指数

最も回復率が低いのが原油で、わずか13%しか戻っていない。

 

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USO(原油ETF)

もし、利益とバリュエーションが全てコロナ前まで戻るなら、ハイテクグロース株は23~40%下落し、エネルギー株、運輸株、リートは25~37%上昇する。だが、コロナによって世界が変容しているため、完全に元に戻ることはない。ハイテクグロース株はコロナ下で逆に利益を増やしている。

 

低迷している業種や資産はどれも、コロナ前まで業績が戻らないのではないかという懸念がある。
原油はクリーンエネルギーへのシフトが加速すれば需要が減るし、運輸や不動産はテレワークやオンライン会議の普及によって需要が減る懸念がある。
こうして見ると、価格が低迷しているものは低迷しているなりの理由があり、必ずしも割安とは言えないことが分かる。
広木氏は不動産株は業績の戻りに比して株価の戻りが遅れていると指摘されていた。不動産株やJリートは相対的に割安かも知れない。ただし、コロナショックで49%も下落したように、Jリートには危機時に急落するというリスクがある。

 

  1月10日 11月13日 コロナ前比(EPS) コロナ前比(株価) 予想PER
NASDAQ100 372.83 383.24 102.79 122.83 20.04 31.15
S&P500 166.18 139.77 84.11 104.46 20.35 25.65
ラッセル2000 50 22.99 45.98 102.83 56.85 75.86
ダウ平均 1478.14 1207.31 81.68 99.82 18.14 24.32
日経平均 1650.55 1072.49 64.98 105.41 40.43 23.67


日米主要指数の予想EPSの回復率を示す。
ラッセル2000はこの中では最も景気敏感株だが、予想PERで見ても、戻り率の差で見ても、最も割高である。
ハイテクグロース株のNASDAQ100は予想PERは最も割高だが、利益と株価の戻り率の差で見ると、特に割高ではない。
先週は日本株が猛烈に買われた。日本株は割安だと言われているが、予想PERで米国株とほぼ並んでおり、戻り率の差で見るとむしろ割高である。
割高なグロース株から割安なバリュー株に資金がシフトしていると解説されているが、利益の戻りも勘案すれば、必ずしもグロース株の方が割高なわけではない。

企業利益は市場全体で見るとコロナ前の6~8割だが、株価はほぼ100%戻っている。つまり、ワクチンが普及し、企業活動が完全に回復する状態を既に織り込んでしまったということだ。


株価が急騰するのを見ると、バスに乗り遅れるなという気分になるが、もうはっきり割安な資産は残っていない。
回復率が低い資産のうち、これは利益が回復するだろうと見込めるものがあれば、買っても良い。
だが、リスクを取りたくないのなら、あせって流れに乗ろうとするより、長期的に成長する資産をコツコツ積み立てるなり、下落を待つなりした方が良いのではないだろうか。

 

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編感想――やり場のない悲しみが観客を駆り立てる

(本稿は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の抽象的だがあからさまなネタバレを含みます。またTVアニメ版の具体的なネタバレを含みます。)

11月1日に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメーション制作:ufotable)を観てきた。18時台には3スクリーンで上映していたが、どれもほぼ満席だった。
隣席の女学生は漫画を読んで展開を知っているらしく、グロいシーンが近づくと「やだー」と言いながら手で視界を遮っていたので、私も身構えることができた。


炭治郎が健気に頑張るシーンで涙がこらえきれず、三、四回泣いてしまった。また、ギャグも切れており、善逸と伊之助のしょうもない欲望が駄々漏れになっている所など何度も笑った。
私は善逸と伊之助が出てくる前のシビアな雰囲気の方が好きだったのだが、映画を見て彼らの存在は不可欠であると考えを改めた。シビアで悲しい物語の中にあって、善逸と伊之助のギャグはほっと一息つける安息の場所を提供してくれていた。

個々のシーンは素晴らしく、感情が大きく揺さぶられたが、見終わった後の満足感は低かった。
単純な問題として娯楽映画は悪者を叩きのめして終わって欲しい。何でこんな観客の感情がどーんと落ち込む所で終わるのか。『君の名は。』で言えば、瀧が彗星落下跡で呆然と立ちすくんだ所で終わるようなものだ。
これが原作ものの難しい所で、映画オリジナルだったら、絶対こんな脚本にはしなかっただろう。漫画だと一巻単位でカタルシスがなくてもさして気にならないが、映画は作品内でひとまとまりという感覚が強いので、最初に提示された課題が解決されてスッキリ終わって欲しいのだ。

本作を無限列車の乗客を守るミッションとして見れば、課題と解決という応答が含まれてはいる。
だが、終盤の敵は乗客を喰うために登場した感が薄かった。「だらしのない奴め。代わりに俺が乗客を一人残らず喰ってやろう」とか言って登場し、実際に乗客の手足を喰ったりしていれば、もうちょっと印象が違ったのかもしれない。

TVアニメの「ヒノカミ」は神回との呼び声が高いが、あれは見事に難敵を打ち倒した所で終わるからだ。圧倒的な力を持っている憎たらしい敵を倒したから、最上級のカタルシスが得られたのだ。実は打ち倒せていませんでしたという所までで終わっていたら神回にはならなかっただろう。
映画も下弦の壱との戦いが終わった所で終わりで良いじゃないか。このやり場のない悲しみをどうすれば良いのか。


ただし、鬼滅の刃というコンテンツ全体で見ると、これは上手い手法である。
以前、『銀河鉄道999』と『宇宙戦艦ヤマト』に関する論考を読んで感心したことがある。両者は同じ程度ヒットしていたが、前者の映画はスッキリ終わって観客が満足したためあっさりブームが収束したのに対し、後者の映画はグダグダになったので、観客が満足せず、ブームが長持ちしたと言うのだ。

本作でも同じことが言える。もし映画がスッキリ終わっていたら、観客はあー面白かった! と満足してしまい、多くが他の作品に移ってしまったかもしれない。
だが、鬼滅の刃無限列車編を観た観客はやり場のない悲しみを抱えることになるので、何とかしてこの欠落を埋めたいという欲求に駆られ、原作コミックスや今後作られるであろう続編アニメを強く求める。

本作で炭治郎は常に「自分は何て力不足なんだ」と言う想いに駆られ、強くなっていくが、観客もまた、満足感が足りない、全ての鬼を駆逐して私を満足させてくれ、と言う想いに駆られてコミックスを買い求めるのだ。

 

kimetsu.com

市場平均を上回っている指数まとめ

日経500種平均がバブル期につけた史上最高値を上回ったというニュースがあった。

news.yahoo.co.jp


TOPIX日経平均が最高値の6割付近で低迷する中、日経500種平均はパフォーマンスで圧倒的に上回っている。
TOPIX日経平均を売って日経500種平均に乗り換えれば良いんじゃない? と思ったが、日経500種平均に連動するETFはないらしい。

効率的市場仮説は猿がダーツで決めた銘柄を買っても投資家が選んでもパフォーマンスは同じだと主張している。何らかの基準で株を選定しても、継続的に市場平均を上回ることはできないと言うのだ。
実際には日経500種平均のように市場平均(各国の主要銘柄を広く集めた指数)を上回っている指数が存在するのでまとめた。


1)米国市場(S&P500(過去1年の騰落率6.6%)を上回っている指数)
1-1)NASDAQ100
ナスダックに上場する、金融銘柄を除く、時価総額上位100銘柄の時価総額加重平均によって算出される株価指数
GAFAMを中心とした巨大ハイテク企業を高ウェイトで組み込んでおり、圧倒的パフォーマンスを誇る。
*連動するETF QQQ(経費率 0.2%)
*過去1年の騰落率(10月末) 36.3%
*組み入れ上位
1 Apple 13.39%
2 Microsoft 10.76%
3 Amazon 10.66%
4 Facebook 'A' 4.26%
5 Tesla Motors 3.45%
6 Alphabet 'A' 3.42%
7 Alphabet 'C' 3.31%
8 Nvidia 2.88%
9 Adobe Systems 2.03%
10 PayPal 1.99%
*日本円で買える商品
上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし (2568)等


1-2)セクター別ETF(VGT、VHT、VCR)
米国株には11のセクターがある。バンガードが10セクターのETFを発売しているが、VGT(情報技術)、VHT(ヘルスケア)、VCR(一般消費財)の3ETFがS&P500を長期的に上回っている。
VHTやVCRはQQQやVGTにパフォーマンスでは劣るが、ディフェンシブセクターであるため、下落に強いという利点がある。
VGT、VHT、VCRを保有すれば、S&P500よりリターンが高く、QQQよりはリスクが低いポートフォリオを作れることが期待できる。

 

*VGT 情報技術
QQQと似ているが、Amazon,Facebook,Google,Teslaが抜け、VisaやMastercard等が入っている。
カード会社は景気によって利益が変動するので、QQQより景気に敏感。
*過去1年の騰落率(10月末) 33.0%
*組み入れ上位
1 Apple
2 Microsoft Corp.
3 NVIDIA Corp.
4 Visa
5 Mastercard
6 Adobe
7 salesforce.com
8 PayPal Holdings
9 Intel Corp.
10 Cisco Systems

 

*VCR 一般消費財
アマゾン、マクドナルド、ナイキ、スターバックス等、米国株を良く知らない人にもお馴染みの企業が並んでいる。
*過去1年の騰落率(10月末) 28.8%
*組み入れ上位
1 Amazon.com 21.41%
2 Home Depot 7.41%
3 Tesla 6.11%
4 McDonald's Corporation 4.05%
5 NIKE, Class B 3.82%
6 Lowe's Companies 3.20%
7 Starbucks Corporation 2.53%
8 Target Corporation 1.96%
9 Booking Holdings 1.80%
10 TJX Cos

 

*VHT ヘルスケア
製薬メーカー中心のヘルスケアも米国が強い分野だが、薬価引き下げ懸念があり、VGTに比べると過去1年のパフォーマンスは劣っている。
*過去1年の騰落率(10月末) 13.7%
*組み入れ上位
1 Johnson & Johnson
2 UnitedHealth Group
3 Merck & Co.
4 Pfizer
5 Abbott Laboratories
6 Thermo Fisher Scientific
7 Amgen
8 AbbVie
9 Medtronic plc
10 Danaher Corp.

*日本円で買える商品
いずれもなし。主要証券会社の外国口座で買える。経費率0.1%

ただし、近年はハイテク大手のサービスが生活必需品のようになっており、QQQの値動きもディフェンシブセクターに近づいている。
以前よりはハイテクとディフェンシブセクターを組み合わせるメリットは減っている。

 


2)日本市場TOPIX(過去1年の騰落率-5.2%)を上回っている指数)
2-1)日経500種平均
前述の通りパフォーマンスは素晴らしいが連動するETFがない。まさに絵に描いた餅である。
早く連動する投資信託ETFを出して欲しいが、毎年銘柄を大きく入れ替えるので運用が大変なのかもしれない。
*過去1年の騰落率(10月末) 7.4%

 

2-2)JAPANクオリティ150
ROEでかつその持続性が見込まれる企業で構成された指数。
似たようなコンセプトのJPX日経400が全然ダメなのとは違い、こちらは優秀なのだが、全く話題にならない。
信託報酬が高いのが難点。
*連動する投資信託ETF
eMAXIS JAPAN クオリティ150インデックス 信託報酬0.44%(税抜き0.4)
MAXIS JAPAN クオリティ150上場投信 というETFもあり信託報酬は安いが、板がスカスカで適切な値段で売買できなそう。

*過去1年の騰落率(10月末) 5.2%
*組み入れ上位
1 東京エレクトロン 2.5%
2 ダイキン 2.3%
3 ソニー 2.2%
4 第一三共 2.2%
5 HOYA 2.1%
6 村田製作所 2.1%
7 KDDI 2.1%
8 NTTドコモ 2.1%
9 SMC 2.0%
10 伊藤忠商事


2-3)セクター別ETF
米国株と同様の戦術は日本株でも可能である。TOPIXはS&P500と比べ、全然成長していない企業を多数含むので、それらを外せば比較的オーバーパフォームしやすい。
日本株は成長業種だけに投資せよで書いた通り、日本企業が強い分野である医薬品、小売、情報通信・サービス、素材・化学の4業種を保有すればTOPIXをオーバーパフォームすることが期待できる。

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中でも、情報通信・サービスはコロナ下でもパフォーマンスが好調だ。
信託報酬が0.18%と安かったダイワ上場投信・TOPIX-17シリーズが償還してしまい、0.32%のNEXT FUNDS(TOPIX-17)上場投信しか残っていないのが難点。

*NEXT FUNDS 情報通信・サービスその他(TOPIX-17)上場投信 1626 信託報酬(税抜き)0.32%
*過去1年の騰落率(10月末) 12.2%
*組み入れ上位
1 ソフトバンクグループ 12.47%
2 任天堂 8.20%
3 日本電信電話 6.80%
4 リクルートホールディングス 6.42%
5 NTTドコモ 6.41%
6 KDDI 4.73%
7 エムスリー 3.51%
8 オリエンタルランド 3.46%
9 ソフトバンク 2.55%
10 Zホールディングス 2.31%

 


3)中国MSCI China(過去1年の騰落率+32.6%)を上回っている指数)
3-1)CXSE ウィズダムツリー中国株ニューエコノミーファンド
国有企業を除く中国企業に投資するETF。2020年に主要国で唯一プラス成長の中国は全体的にハイパフォーマンスだが、非効率な国有企業を除いてさらにパフォーマンスを高めている。
BAT(バイドゥ、テンセント、アリババ)のようなハイテク株のウェイトが高い。

*過去1年の騰落率(10月末) 48.66%
*組み入れ上位
1 Tencent Holdings Ltd 13.45%
2 Alibaba Group Holding Ltd 10.98%
3 Ping An Insurance Group Co of China 6.55%
4 Meituan Dianping-Class B 5.83%
5 JD.com Inc ADR 3.45%
6 NetEase Inc ADR 2.10%
7 Baidu.com ADR 1.97%
8 Wuxi Biologics Cayman Inc 1.52%
9 Xiaomi Corp-Class B 1.44%
10 Pinduoduo Inc-ADR 1.37%

*日本円で買える商品
CXSEは主要証券会社の外国口座で買える。経費率0.32%


基本的に情報技術中心のグロース株比率が高い指数が市場平均を上回っている。
コロナによってハイテクのような勝ち組企業と観光業のようなダメージの大きな企業の格差が拡大している。デジタル化は長期的な傾向なので、長期的にはハイテクのウェイトを高めた方が良いのではないか。

ただし、グロース株とバリュー株のパフォーマンス格差はITバブル期並みに拡大している。


昨日、ファイザーの新型コロナワクチン治験結果が発表され、グロース株を売って出遅れバリュー株を買う動きが発生した。
中~短期的にバリュー株の巻き返しが来るかも知れないので注意が必要だ。

注:過去1年の騰落率は2019.11/1~2020.10/30で計算した値です。正しくは2019.10/30~で計算すべきでした。

かがみの孤城感想――なぜ主人公を変えなかったのか

(本稿はネタバレに配慮してはいますが、抽象的にはあからさまなネタバレを含みます。)

 『かがみの孤城』(辻村深月著、ポプラ社)は2018年本屋大賞受賞作だ。七人の不登校児が鏡の中の城に集まって何でも願いが叶う鍵を探す話で、細やかな心理描写に引き込まれて一気に読んだ。

 一方で、なぜこうしたのかと納得行かない個所が二つあり、もやもやが残った。


 一つは謎の解き方だ。本作には大きく二つの謎がある。見え見えの謎と巧みな謎だ。
 本作ではクライマックスで探偵役の主人公こころが、見え見えの謎をドヤア!と解き明かすのだが、中盤で既に気づいていたので、「すぐに分かったよ、こんなもん!」と言いたくなった。ヒットした某映画と同じトリックなので、大抵の人はすぐ気づくだろう。
 探偵は読者よりも賢く設定するのがセオリーだ。本作では探偵が読者よりアホなので、なぜ気づかないのかと読んでいてイライラした。

 一方、巧みな謎の方はきっちり伏線が張られていたのに、全然気づかなかった。謎に登場人物の想いがこもっていて、心打たれた。こちらは見事な謎なのに、紙幅を割かずにさらっと明かしている。見え見えの謎は中盤あたりで明かしてしまい、巧みな謎をクライマックスでドヤア!と明かせばもっと盛り上がったのに、もったいない。


 もう一つは最終決戦だ。クライマックスである事件が起こり、こころは恐ろしい敵を相手に危険なミッションをこなすことになるのだが、これが取ってつけたような感じなのだ。
 七人のうち、こころがこのミッションに挑むことになるのはたまたまであり、こころである必然性がない。また、こころと敵には何の因縁もないので、敵対する理由もない。クライマックスを盛り上げるため、事件を起こしてみたという感じが拭えない。
 こころが最終決戦で対峙するとしたら、不登校の原因を作った真田美織であるべきだ。関係ない敵と戦っても、自身が抱える問題は解決しない。

 本作は不登校がテーマなので、作者はこころが真田美織と戦うと、不登校児に「戦わなくてはダメだ」という誤ったメッセージを送ってしまうと考えたのだろう。だが、そうであるならば、戦うシーンそのものを無くすべきだ。
 本作では無理に戦いのシーンを作ったために色々と納得いかない個所が生じている。例えば、クライマックスの敵はなぜもっと必死になってこの展開を回避しようとしなかったのか、とかだ。クライマックスの敵が上位者から何を禁じられているのかが詰められていないので、行動に不可解さが残ってしまっている。


 本作にはミステリーとしての側面と成長物語としての側面がある。ミステリーは謎を解く話であり、成長物語は敵との最終決戦を通じて成長する話だ。その両方の面において、クライマックスの展開に不満があるのだ。

 二つの問題点を解消する簡単な方法がある。主人公を某登場人物に変えれば良いのだ。そうすれば二番目の謎の解明をもっとたっぷり描くことができたし、最終決戦の敵とも因縁があるので対峙する理由がある。意に反して暴走する敵を某人物が必死に止めようとする展開なんて、想像しただけで泣きそうである。なぜそうしなかったのか分からない。


 そもそも論として、こころを主人公にするなら、大掛かりなファンタジー設定など必要ないのではないか。
 本作の傑出している点は、不登校の子供が集まって遊んでいるだけなのにぐいぐい読ませる、細やかな日常描写だ。
 辻村氏は人間観察力が卓越している。ちょっとした心の歪みを抜群のリアリティで描き出す。トラウマをほじくり返されて嫌な気分になるのに、ページを繰る手を止められない。
 おそらく辻村氏も学校に馴染めない子供だったのだろう。書いていることに切実さがある。それが多くの子供達の心を捉えたのだろう。

 辻村氏なら、フリースクールに集まった生徒が徐々に立ち直っていく様を描くだけでも十分面白い小説になるはずだ。もっとご自身の卓越した人間描写力に自信を持って欲しい。

 

つじ田 濃厚つけ麺感想 ――つけ麺メタモルフォーゼ

生涯ベスト級のラーメンを食べた。つじ田の濃厚つけ麺だ。


つじ田 日本橋八重洲店は東京駅八重洲口から徒歩5分、地下鉄日本橋駅の近くにある。アメリカにも出店している有名店だが、私は初めて来店した。

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L字型のカウンターのみ十数席。普段は行列ができるそうだが、私が行った7月末はコロナで客が減っていたようで待たずに入店することができた。
麺は数人分を大きなざるでまとめて茹でており時間がかかる。十分ぐらい待ってスープが、すぐ後に麺が出てきた。

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茶色のスープは鶏や豚、中でも魚介系の旨味が効いており、尖った所のない優しい味。太麺との相性も良い。トロトロのチャーシュやメンマもレベルが高い。さすが有名店だけあって美味しいな、と思いながら食べていた。

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つじ田ではカウンターの前に推奨の食べ方が書いてある。最初の1/3はそのまま食べ、次の1/3は麺にスダチの汁をかけてから食べる。残りの1/3はさらに黒七味をかけて食べるというものだ。

1/3を食べ終えた私は、麺の上にスダチの汁を絞った。よく混ぜあわせ、つけ汁に浸し、口に運ぶ。そして驚愕した。
さっきまでとは全然味が違うじゃないか!
先ほどまでは和風の穏やかな味だった。それが柚子の汁が加わることで一気に洋風に変化している。これは……チーズの味だ!
チーズなんか入っていないはずなのに、旨味たっぷりのスープに酸味が加わることでチーズの味になっている。プリンに醤油をかけると雲丹の味になるような感じだろうか。
そして今までは普通に美味かったつけ麺が劇的に美味くなっている。控えめだった女性が着飾って社交界の華に大変身したかのようだ。

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残り1/3で黒七味をかけると、味はさらに刺激を増し、完全に洋食屋のスープへと変貌を遂げた。
さらに、麺を食べ終えた後は、熱々のスープ割りを入れてくれる。四段階で味が変貌する。つけ麺メタモルフォーゼだ。


ラーメンに途中でトッピングを入れて味変することはあるが、これほど劇的に味が変わったのは初めてだ。魔法にかけられたかのようだ。
まだつじ田の濃厚つけ麺を食べたことのない人は幸いである。ぜひ来店し、幸せな魔法を味わって欲しい。

tsukemen-tsujita.com

木綿のハンカチーフは歌詞と曲が合ってない

筒美京平氏が亡くなった。氏の代表曲の一つが「木綿のハンカチーフ」だ。

木綿のハンカチーフ松本隆(作詞)筒美京平(作曲)太田裕美

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以前から思っていたのだが、この歌は歌詞と曲が全然合っていない。

木綿のハンカチーフ」はキャンディーズの「春一番」のようなウキウキしたメロディーだ。なので、最初に聞いた時は、恋人とキャッキャウフフできて嬉しいわ、みたいな内容なのかと思っていた。


だが、実際の歌詞は「都会が楽しくてお前のこと忘れてたわ」とか言う男に女が恨み事を述べるという非常に陰鬱な内容だ。
この男、女は高いプレゼントをやれば喜ぶだろうとか思っていて、全く恋人の人間性を理解していない。こんな男のどこが良かったのか。

泣いていることを木綿のハンカチーフで間接的に表現するのは、百人一首の「わが袖は潮干にみえぬ沖の石の 人こそ知らね乾く間もなし」を思わせる。平安時代から連綿と続く女性像なのだ。
現代の曲で言うと「北の宿から」みたいな内容であり、メロディーも演歌調にした方がマッチするはずだ。

難しいのは、この曲は1番と4番で全然内容が違っており、「北の宿から」みたいなメロディーにすると1番とは合わなくなってしまうことだ。
だが、それにしたってあまりに明るすぎる。太田氏のカラッとした歌い方も相まって、全然悲しみが伝わってこない。いくらなんでも歌詞とメロディーが乖離しすぎではないだろうか。


だが、太田裕美氏を健気で可愛らしく見せるという点では絶妙だ。
もし歌詞に合うようなメロディーにしたら、女の情念が滲みでた重たい歌になっていただろう。
軽快なメロディーをつけることで、待つ女から重さを抜いて健気さだけを抽出し、ひたすら可愛く見せることに成功している。

普通の作曲家は、歌詞に合ったメロディーをつけようとする。
歌詞に合っていなくてはならないという固定観念を外して曲をつけた所が筒美氏の天才たるゆえんではないだろうか。

 

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