東雲製作所

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主要指数のコロナショックからの回復率

世界的にグロース株からバリュー株への資金シフトが起きている。
アメリカではこの1ヶ月で伝統株の割合が高いダウ平均が3.05%、小型株のラッセル2000が6.75%上げたのに対し、ハイテクグロース株主体のナスダック100指数は+0.72%とほぼ横ばいだった。日本でもTOPIXは5.29%上昇しているのに、ハイテク主体の東証マザーズ指数は5.15%下落。中国でも出遅れていた香港ハンセン指数が7.26%上昇したのに対し、ハイテク主体の中国創業板指数は0.65%下落している。(11/13時点)
ハイテク株の上昇が頭打ちになる中、コロナワクチンの普及に伴う景気回復を見込んで、出遅れバリュー株へ資金が動いているのだ。

 

SBI証券の北野一氏はかなり前からグロース株とバリュー株のパフォーマンス格差がITバブル期並に拡大していることから、バリエーション調整が起こると予測されていた。実際、調整が発生したが、氏は依然としてパフォーマンス格差が大きいことから、さらにグロース株が下落すると予想されている。
また、高橋ダン氏も、グロース株からバリュー株へのローテーションが継続すると予想されており、長期的にハイテク株のポジションを減らして、出遅れている英国株、スペイン株、銀行株、航空株などにローテーションすべきだと主張されている。

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一方、楽天証券の広木隆氏はバリュー株の復活は長続きはしないと主張。バリュー株とグロース株の物色は行きつ戻りつ、循環しながら相場全体の底上げが図られると予想されている。

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資産をグロース株からバリュー株にローテートすべきなのだろうか。そのためには、グロース株とバリュー株のパフォーマンス格差はどの程度で、どれぐらい上昇余地があるのかを知る必要がある。
出遅れ度合いを見るのに参考になるのがコロナ前高値への回復率だ。ワクチンが普及し、経済活動が完全にコロナ前に戻れば、株価はコロナ前の水準まで戻るはずだ。

 

  コロナ前高値 コロナ底値 11月13日 最大下落率 回復率 コロナ前比
CXSE(中国ニューエコノミーETF) 44.64 35.02 62.4 21.55 284.62 139.78
マザーズ指数(2516) 714 419 959 41.32 183.05 134.31
NASDAQ100 9718.73 6994.29 11937.84 28.03 181.45 122.83
SPDRゴールド 157.55 138.04 177.16 12.38 200.51 112.45
VTI 172.17 111.91 183.32 35.00 118.50 106.48
上海総合指数 3115.57 2660.17 3310.1 14.62 142.72 106.24
日経平均 24083.51 16552.76 25385.8 31.27 117.29 105.41
S&P500 3386.15 2237.4 3537.01 33.92 113.13 104.46
インドSENSEX 41932.56 25981.24 43443 38.04 109.47 103.60
ラッセル2000 1696.07 991.16 1744.04 41.56 106.81 102.83
ダウ平均 29551.42 18591.93 29497.81 37.09 99.51 99.82
TOPIX 1348.94 961.61 1320.15 28.71 92.57 97.87
ドイツDAX 13789 8441.71 13067.72 38.78 86.51 94.77
VYM(米国高配当ETF) 94.6 60.97 87.84 35.55 79.90 92.85
香港ハンセン指数 29056.42 21709.13 26156.86 25.29 60.54 90.02
XLF(米国銀行株ETF) 31.07 17.66 27.03 43.16 69.87 87.00
英国FTSE100 7674.56 4993.89 6316.39 34.93 49.33 82.30
銀行株ETF(1631) 159 104 125 34.59 38.18 78.62
東証リート指数 2250.65 1145.53 1696.2 49.10 49.83 75.36
運輸・物流ETF(1628) 19100 12740 13630 33.30 13.99 71.36
エネルギー資源ETF(1618) 11960 7090 7580 40.72 10.06 63.38
JETS(航空株ETF) 32.2 12.16 20.15 62.24 39.87 62.58
USO(原油ETF) 105.44 17.04 28.13 83.84 12.55 26.68

主な株式指数のコロナショック底値からの回復率、コロナ前高値との比率を示す。
CXSE、マザーズ指数、NASDAQ100といったハイテク指数はコロナ下で逆に業績を伸ばしているため、コロナ前より遥かに高い水準にある。

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NASDAQ100

金利で相対的に魅力が高まった金やコロナを抑え込んで成長している上海総合指数も高い。

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上海総合指数

グロース株を比較的多く含む日経平均やS&P500もコロナ前高値を既に上回っている。

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日経平均

一方、バリュー株が多いダウ平均やTOPIXはまだコロナ前高値を抜いていない。

主要国・地域で見ると、英国FTSE100、次いで香港ハンセン指数が出遅れている。それぞれブレクジットと国家安全法の懸念があるため戻りが遅い。

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英国FTSE100

業種別で見ると、エネルギー株、運輸株、リートが低迷している。

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東証リート指数

最も回復率が低いのが原油で、わずか13%しか戻っていない。

 

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USO(原油ETF)

もし、利益とバリュエーションが全てコロナ前まで戻るなら、ハイテクグロース株は23~40%下落し、エネルギー株、運輸株、リートは25~37%上昇する。だが、コロナによって世界が変容しているため、完全に元に戻ることはない。ハイテクグロース株はコロナ下で逆に利益を増やしている。

 

低迷している業種や資産はどれも、コロナ前まで業績が戻らないのではないかという懸念がある。
原油はクリーンエネルギーへのシフトが加速すれば需要が減るし、運輸や不動産はテレワークやオンライン会議の普及によって需要が減る懸念がある。
こうして見ると、価格が低迷しているものは低迷しているなりの理由があり、必ずしも割安とは言えないことが分かる。
広木氏は不動産株は業績の戻りに比して株価の戻りが遅れていると指摘されていた。不動産株やJリートは相対的に割安かも知れない。ただし、コロナショックで49%も下落したように、Jリートには危機時に急落するというリスクがある。

 

  1月10日 11月13日 コロナ前比(EPS) コロナ前比(株価) 予想PER
NASDAQ100 372.83 383.24 102.79 122.83 20.04 31.15
S&P500 166.18 139.77 84.11 104.46 20.35 25.65
ラッセル2000 50 22.99 45.98 102.83 56.85 75.86
ダウ平均 1478.14 1207.31 81.68 99.82 18.14 24.32
日経平均 1650.55 1072.49 64.98 105.41 40.43 23.67


日米主要指数の予想EPSの回復率を示す。
ラッセル2000はこの中では最も景気敏感株だが、予想PERで見ても、戻り率の差で見ても、最も割高である。
ハイテクグロース株のNASDAQ100は予想PERは最も割高だが、利益と株価の戻り率の差で見ると、特に割高ではない。
先週は日本株が猛烈に買われた。日本株は割安だと言われているが、予想PERで米国株とほぼ並んでおり、戻り率の差で見るとむしろ割高である。
割高なグロース株から割安なバリュー株に資金がシフトしていると解説されているが、利益の戻りも勘案すれば、必ずしもグロース株の方が割高なわけではない。

企業利益は市場全体で見るとコロナ前の6~8割だが、株価はほぼ100%戻っている。つまり、ワクチンが普及し、企業活動が完全に回復する状態を既に織り込んでしまったということだ。


株価が急騰するのを見ると、バスに乗り遅れるなという気分になるが、もうはっきり割安な資産は残っていない。
回復率が低い資産のうち、これは利益が回復するだろうと見込めるものがあれば、買っても良い。
だが、リスクを取りたくないのなら、あせって流れに乗ろうとするより、長期的に成長する資産をコツコツ積み立てるなり、下落を待つなりした方が良いのではないだろうか。