日本株は食品、エネルギー資源など17の業種に分けられる。TOPIXには業種別ETFが存在し、業種毎に投資することができる。
一般に、業種別投資は上手くいかないと言われている。過去の業績が好調だったからと言って、今後も好調だとは限らない。株価がどんどん上がっている業種はすでに割高になっているので、かえってリターンが悪くなると言うのだ。
確かに、一年程度の短期のリターンは株価が割高か割安かに大きく左右される。しかし、長期的に見れば、株のリターンは利益成長率に比例する。
どの業種も同程度の成長性であれば、市場全体に投資すべきだ。しかし、業種によって長期の成長性が全然違うのであれば、高成長業種に絞って投資すべきではないか。
下表はTOPIXの業種別ETF、NEXT FUNDS(TOPIX-17)シリーズの情報をまとめたものだ。業種によって長期リターンが全然違うことが分かる。
業種 | 基準価額 | 純資産総額 | 3年騰落率 | 設定来騰落率 | 最新分配金 | 設定来累計分配金 | 組入上位 |
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医薬品 | 224760 | 30.1 | 17.5 | 140.2 | 3750 | 38890 | 武田薬品、アステラス製薬、第一三共 |
小売 | 198368 | 6 | 12.2 | 134.4 | 1280 | 27040 | セブン&アイHD、イオン、ファーストリテイリング |
情報通信・サービス | 214777 | 15.1 | 33.7 | 130.5 | 2170 | 26074 | ソフトバンク、NTT、リクルートHD |
素材・化学 | 241337 | 13.8 | 45 | 126.1 | 4480 | 30634 | 花王、信越化学工業、資生堂 |
建設・資材 | 217540 | 22.1 | 19.3 | 119.2 | 4480 | 54508 | 大和ハウス、積水ハウス、大東建託 |
食品 | 304161 | 9.4 | 7.5 | 104.7 | 7660 | 43832 | JT、キリンHD、アサヒGHD |
商社・卸売 | 330848 | 10 | 51.3 | 83.7 | 7020 | 84219 | 三菱商事、三井物産、伊藤忠商事 |
機械 | 311956 | 41.3 | 32 | 81.6 | 4030 | 49663 | ダイキン工業、SMC、小松製作所 |
自動車・輸送機 | 197177 | 66 | 8.9 | 62.1 | 4240 | 40163 | トヨタ自動車、本田技研工業、ブリジストン |
電機・精密 | 177790 | 26.6 | 40.3 | 58.7 | 2290 | 17630 | キーエンス、ソニー、ファナック |
運輸・物流 | 19370 | 57.2 | 18.7 | 52.1 | 1680 | 16905 | JR東海、JR東日本、JR西日本 |
不動産 | 280083 | 9.7 | 1.8 | 28.1 | 3510 | 25950 | 三井不動産、三菱地所、住友不動産 |
金融(除く銀行) | 117798 | 1.5 | 18.5 | 0.4 | 4740 | 26577 | 東京海上HD、オリックス、MS&ADIGHD |
エネルギー資源 | 117027 | 2.4 | 37.4 | 0.1 | 3600 | 40946 | JXTGHD、国際石油開発帝石、出光興産 |
銀行 | 91438 | 25.2 | 10.9 | -22.6 | 3230 | 29951 | 三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFG |
鉄鋼・非鉄 | 162532 | 2.4 | 18.2 | -25.4 | 490 | 71934 | 新日鐵住金、住友電気工業、JFEHD |
電力・ガス | 81720 | 2.5 | 14 | -25.4 | 1380 | 15084 | 関西電力、東京瓦斯、東京電力HD |
17業種中、医薬品(140.2%)、小売(134.4%)、情報通信・サービス(130.5%)、素材・化学(126.1%)、建設・資材(119.2%)、食品(104.7%)
の6業種は設定来の11年間で株価が倍以上になっており、長期投資に適している。
特に、素材・化学は29期連続増配の花王を始め国際競争力が高い優良企業が多い。騰落率トップの医薬品は個別企業には新薬開発失敗リスクがつきものだが、業種全体としては高齢化が進む社会情勢を考えても安定成長する可能性が高い。
また、商社・卸売と電機・精密は3年騰落率が非常に高い。近年業績が改善しているからだと考えれば、投資するのも面白い。特に、商社・卸売は分配金が高くPERも割安なので投資先として有望だ。
逆に、電力・ガス、鉄鋼・非鉄、銀行、エネルギー資源、金融(除く銀行)の設定来騰落率ワースト5業種は、11年間で株価が全く上がっていないか、下がっている。
これらの業種は日本の国際的競争力が低く、今後成長率が大きく改善するとは考えにくい。
インデックス投資は投資先全体が成長することに期待する投資法だ。従って、成長していない業種に投資するのはインデックス投資の趣旨に反している。
これらの業種は下がった時に買い、上がったら売るうねり取りでなら買う意味があるが、長期投資しても意味がない。
実際に投資する場合は機械的に、設定来騰落率の上位から買っていけば良いだろう。資金量に応じて設定来騰落率上位4,7,11業種のETFを買うのがおすすめだ。
具体的にはダイワ上場投信・TOPIX-17シリーズが信託報酬0.18%で最も安い。
一部の業種だけを買うと分散が不十分になり、市場全体を買うよりハイリスクになるという懸念を持たれる方もいるかも知れない。
だが上位7業種のうち
医薬品と食品はディフェンシブ株
素材・化学と商社・卸売は景気敏感株
他は中間的なので上位だけ買ってもリスクが高くはないだろう。
2019年5月21日現在、上位業種のほとんどは安値圏にある。唯一、情報通信・サービスだけは高めなので、割安さにこだわる人は避けても良いかも知れない。
この投資法の欠点は二つある。
一つはETFが1株2~3万なので、4業種に分散投資するだけで10万円程かかってしまうことだ。日経平均やTOPIXの投資信託が100円から買えるのと比べると、ある程度まとまった資金が必要だ。
もう一つは、業種別ETFがあまり人気がないので、償還のリスクがあることだ。償還されると償還時の価格で買い取りになるので、株価が低迷している時に償還になると、損をする恐れがある。
これらの欠点を差し引いても、難しい銘柄検証をすることなしに、TOPIXを上回るリターンが期待できるのは魅力的だ。なぜこんなに簡単な方法がメジャーにならないのか不思議でならない。