東雲製作所

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木綿のハンカチーフは歌詞と曲が合ってない

筒美京平氏が亡くなった。氏の代表曲の一つが「木綿のハンカチーフ」だ。

木綿のハンカチーフ松本隆(作詞)筒美京平(作曲)太田裕美

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以前から思っていたのだが、この歌は歌詞と曲が全然合っていない。

木綿のハンカチーフ」はキャンディーズの「春一番」のようなウキウキしたメロディーだ。なので、最初に聞いた時は、恋人とキャッキャウフフできて嬉しいわ、みたいな内容なのかと思っていた。


だが、実際の歌詞は「都会が楽しくてお前のこと忘れてたわ」とか言う男に女が恨み事を述べるという非常に陰鬱な内容だ。
この男、女は高いプレゼントをやれば喜ぶだろうとか思っていて、全く恋人の人間性を理解していない。こんな男のどこが良かったのか。

泣いていることを木綿のハンカチーフで間接的に表現するのは、百人一首の「わが袖は潮干にみえぬ沖の石の 人こそ知らね乾く間もなし」を思わせる。平安時代から連綿と続く女性像なのだ。
現代の曲で言うと「北の宿から」みたいな内容であり、メロディーも演歌調にした方がマッチするはずだ。

難しいのは、この曲は1番と4番で全然内容が違っており、「北の宿から」みたいなメロディーにすると1番とは合わなくなってしまうことだ。
だが、それにしたってあまりに明るすぎる。太田氏のカラッとした歌い方も相まって、全然悲しみが伝わってこない。いくらなんでも歌詞とメロディーが乖離しすぎではないだろうか。


だが、太田裕美氏を健気で可愛らしく見せるという点では絶妙だ。
もし歌詞に合うようなメロディーにしたら、女の情念が滲みでた重たい歌になっていただろう。
軽快なメロディーをつけることで、待つ女から重さを抜いて健気さだけを抽出し、ひたすら可愛く見せることに成功している。

普通の作曲家は、歌詞に合ったメロディーをつけようとする。
歌詞に合っていなくてはならないという固定観念を外して曲をつけた所が筒美氏の天才たるゆえんではないだろうか。

 

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