東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

米2年債利回りから予想する今後のドル円

ドル円が急落している。11月10日にドル円は146.6円から140.21円まで6.4円も下落。11日には138.48円まで下落した。
10月の米CPI(消費者物価指数)が7.7%に低下したのが原因だ。インフレが峠を越え、FRBが利上げを停止するのではないかという期待が背景にある。
ドル円はこのまま下落し、円高に向かうのだろうか。

ドル円は日米2年債金利差とある程度連動することが知られている。日本の2年債利回りはほぼ0で変動しないので、日米2年債金利差≒米2年債利回りとなる。

年初来のドル円と米2年債利回りの推移を示す。両者が連動して動いていることが分かる。

ドル円と米2年債利回りの散布図を示す。近似直線はY=0.0932x-9.3929(Xがドル円、Yが米2年債利回り)、R^2=0.9477となった。
R^2は2値の相関性を0~1で示した指標で、1に近い程相関が高い。ドル円と米2年債利回りの相関は極めて高い。
急速な円安は投機的な動きであるという意見もあるが、円安には日米金利差というファンダメンタルの裏付けがあることが分かる。

11月14日時点でドル円は1$=140.1円、2年債利回りは4.3993%だ(図中オレンジの点)。近似直線からは大きく離れている。
2年債利回りは4.3993%からドル円の理論値を算出すると、148.14円となる。現在のドル円は理論値より8円円高だ。
年初来の関係式通りであれば、ドル円はいずれ140円台後半まで戻ることになる。

為替は将来の金利の期待を反映する。今までは将来米国の金利が上昇するという期待によってドル高になっていた。今後は米国の金利が下落するから、今までの関係式より円高になるのは正当だという見方もあり得る。
しかしながら、140.1円は年初来の関係式では米2年債利回り3.652%に相当する。
米国はいまだ利上げが継続中であり、10月のCPIは7.7%だ。現在7.7%のインフレ率が目標の2%に達するまでには時間がかかる。近い将来米2年債利回りが3.652%まで低下する可能性は極めて低い。

米国債利回りが4%超というのはインフレ抑制のための非常手段の結果であり、いつまでも続くものではない。
長期的にみればいずれ米国は利下げを行って日米金利差が縮小するので、円高に向かう可能性が高い。だが、それはだいぶ先の話だ。

市場は2023年後半の利下げを期待しているが、ドットプロットやFRB高官の話を総合すれば利下げ開始は2024年だ。
米国が利下げを開始するまでは日米金利差は縮まらない。ドル円は既に3.652%までの金利低下を織り込んでしまっている。
FRBが利下げを開始する2024年、早くても2023年後半までは急速な円高にはならないのではないだろうか。