東雲製作所

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娯楽と真実――王とサーカス感想

(本稿は『王とサーカス』の抽象的なネタバレを含みます。)

 『王とサーカス』(米澤穂信著、東京創元社)は骨太なテーマを持った読み応えのある小説だ。ネパールの王族殺害事件に遭遇した記者、太刀洗万智がジャーナリストの存在意義を問われるのだが、それは探偵の存在意義であり、作家の存在意義でもある。

 ジャーナリストも探偵も作家も、隠された真実を暴き立てて波風を立てる仕事だ。ジャーナリストや探偵が暴くのは具体的な事件の真相だが、作家は人間や世界の真実のような、より本質的なものに迫ろうとする。

 本作ではジャーナリストの仕事の負の側面として、報じた内容が娯楽として消費されてしまうことを挙げている。
 作中人物が語る「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。」という言葉が重い。

 本作では娯楽(=サーカス)が真実の対極のネガティブな言葉として位置づけられている。だが、娯楽は重要だ。「あー面白かった!」と消費され、後に何も残らないような娯楽は軽んじられがちだが、確実に触れた人を幸福にする。

 一方、真実の価値は分かりにくい。真実が直接人を幸せにするわけではないからだ。作中でも指摘されている通り、真実を暴く行為は必ずしも人を幸せにするわけではない。むしろ他人を引っ掻き回して不幸にすることも多い。

 全ての殺人が終わった後に探偵が犯人を明らかにしても、犯人が不幸になるだけで誰も幸福にはならない。探偵の仕事には、真実を知りたいというエゴで周りを不幸にしているという側面があることは否めない。
 人間の本質に迫るような小説は、しばしば読んだ人の心に消えない傷を残す。そういう小説が読者を幸せにしているかと言うと、首を捻らざるを得ない。

 真実の価値を支えているのは、真実に価値があるという人の信念だ。真実は必ずしも人を幸福にするわけではないから、真実の価値を論理的に示すことはできない。真実の価値を伝えられるのは、小説のような芸術だけだ。

 『王とサーカス』は娯楽より真実を目指すという米澤氏の決意表明なのだ。

 

 

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個人が個別株を買うのは割に合わない

 株に投資する方法は二つある。投資信託と個別株だ。
 投資信託は多数の株を運営会社がセット販売しているもので、投資先が分散されているのでリスクが低い、少額から投資できるといったメリットがある。
 一方、個別株は信託報酬がかからない、株主優待が受けられる、といったメリットがある。
 私は個別株も買ってみたのだが、割に合わないと思うようになった。以下に理由を述べる。


1)オーバーウェイトすぎる
 効率的市場仮説によると、全世界の株式をまるごと買う世界市場ポートフォリオこそが最もリスクを下げることができる。
 世界市場ポートフォリオでは先進国80% 新興国11% 日本9%というウェイトになる。
 100万円を運用している投資家であれば、先進国投資信託80万円、新興国投資信託11万円、TOPIX投資信託9万円を買えば良い。

 ここで、高配当で個人投資家に人気がある日産自動車株を追加で購入するとする。
 3月22日時点で日産自動車は1株957円。株は100株単位で売買されているから、買うには95700円必要だ。
 購入後の日産株のウェイトは約8.73%になる。

 一方、TOPIX中、日産自動車のウェイトは0.49%なので、世界市場ポートフォリオ中のウェイトは9×0.49/100=0.0441%となる。

 つまり、日産自動車株を購入すると、自然なポートフォリオと比べ、日産株のウェイトが約200倍になってしまう。これはさすがに偏りすぎで、日産株暴落のリスクが高すぎる。日本株と日産株のウェイトがほぼ同じことを見ても、個別株のウェイトが大きすぎることが分かるだろう。
 日産自動車は1株価格がかなり安めの株だ。普通の株は100株で数十万円はするから、買うとより著しいオーバーウェイトになる。

 投資資金1億の投資家なら、日産株を100株保有していてもウェイトは0.0957%。世界市場ポートフォリオ中の日産株0.0399%と足して0.1356%となり、0.0441%と比べて3倍程度のオーバーウェイトになる。3倍程度なら、許容範囲内だろう。

 投資資金を1億も持っていない普通の投資家が、どうしても個別株を買いたいなら、単元未満株で1万円ずつ買うべきだ。(1株ずつ買うこともできるが、1万円未満だと手数料が割高すぎる。)
 その場合でも投資資金が1000万円ぐらいはないと個別株のウェイトが大きすぎる。資金が数百万円以下の投資家は、ハイリスク・ハイリターンを求めているのでない限り、個別株には手を出さない方が良いだろう。


2)時間分散しにくい
 投資のリスクを下げるには、銘柄を分散するだけでなく、買う時期を分散する時間分散をすることが重要である。
 投資信託なら100円から手数料無料で買えるのに対し、個別株は単元未満株であっても1万円以下では買いにくい。この差は時間分散のしやすさに跳ね返ってくる。

 投資資金1000万円中、日産株を1万円(0.1%)持っているリッチな投資家が、毎月10万円ずつ株を追加購入するとする。
 ウェイトをキープしながら買い増そうとすると、日産株は100ヶ月に一回、すなわち8年ちょっとに一回しか買い増せない。
 時間分散を考えるなら、毎月か、せめて年に一度ぐらいは買い増したいが、そうするとオーバーウェイト度合いが悪化してしまう。


3)個人がプロより的確な判断をするのは難しい
 投資信託を買うのは市場全体の成長に期待する行為だが、個別株を買うとプロと直接勝負することになる。

 私は、昨年、半導体製造装置株が異様に高ROE低PERになっていたので、単元未満でちょこちょこ買い付けたのだが、大幅に下落して損失を出してしまった。後で分かったのだが、米中貿易戦争の影響で、中国向けの半導体製造装置の出荷額が激減していた。プロは半導体製造装置株がリスキーだと分かった上で売り浴びせていたのだ。

 東証一部に上場しているようなメジャーな株は、プロが血眼になって吟味に吟味を重ねている。割安だと思っても、たいてい安いなりの理由があるのだ。


4)メンテナンスが大変
 投資信託は割高になったらある程度売るぐらいで、基本的にはバイ&ホールドで放っておけば良い。
 一方、個別株は買った後もメンテナンスが必要だ。
 決算の度に業績をチェックする必要があるし、株価が急変したらその度に判断を迫られる。
 割安な株を見つけるのが大変なだけでなく、買った後も大変なのだ。

 投資が趣味で、楽しみのために個別株を買うのであれば良いが、金を増やすのが目的だと労力が割に合わない。


5)日本株全体の見通しが暗い
 個別株を買おうと思ったら、基本的に情報が多くて買いやすい日本株から選ぶことになる。だが、日本株は将来の見通しが暗い。
 世界でいち早く景気後退入りしたと見られている上に、10月には消費増税が控えている。さらに、日銀はすでに目一杯緩和政策を採っているので、景気が悪化しても手のうちようがない。

 今、日本の個別株を買うのは、急速に地盤沈下している土地で屋上の海抜が高くなる建物を探すようなものだ。そんな難しいことをするよりは市場全体の成長が見込まれる米国株か全世界株に投資する方が楽なのではないだろうか。

 

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リスクを知りたければ昨年末のポートフォリオを見ろ

 先々週は世界的に株が下落した。1月から急速に上がった株は先週あたりから頭打ちになっていた。そこで、欧州中央銀行(ECB)が経済成長見通しを大幅に下方修正したり、中国の証券会社が珍しく売り判断を出したりしたせいで、株価が大きく下落した。
 先週は株価が反転したものの、昨年末のような下落リスクは依然として残っている。

 昨年末に比べて良い点は下記の二点だ。
1)FRBが利上げを当面停止。
2)米中貿易戦争が停戦になりそう。

 一方、悪い点は三点ある。
1)ユーロ圏経済成長見通しが1.7%から1.1%に引き下げ。
2)中国2月の貿易統計で輸出が前年比20.7%減。
3)日本が統計上景気後退。

 昨年末は景気後退するのではないかという不安で大きく下げた。今回は実際良くなかったことが分かったわけなので、楽観は出来ない。リスクのチェックが必要だ。

 厳密にポートフォリオのリスクをチェックするには時系列データを入手して分散を取る必要があるが、もっと簡単に知る方法がある。昨年末はあらゆる資産のリスクが顕在化した状態だった。つまり、昨年末のポートフォリオを見るだけで、リスク資産をチェックすることができるのだ。
 昨年末のポートフォリオを見て、こうなったらまずいと思う銘柄は今のうちに売り払うか、本格的下落が来たら素早く投げられる準備をしておくのが良いだろう。

2018年12月28日から2019年3月8日までの主な投資信託の騰落率を示す。

 

投資信託 騰落率
大和-iFreeNEXT NASDAQ100インデックス 14.37
楽天楽天・全米株式インデックス・ファンド 13.70
レオス-ひふみプラス 13.60
大和-iFree NYダウ・インデックス 13.04
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 12.96
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 12.74
楽天楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド 10.90
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 新興国株式インデックス 10.51
SBISBI新興国株式インデックス・ファンド 10.39
三菱UFJ国際-eMAXIS 日経アジア300インベスタブル・インデックス 9.08
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) 7.82
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 国内株式(日経平均 6.67

米国株、特にNASDAQの上げが大きい。
日本株は出遅れているが、ひふみプラスは米国株並みに上昇している。
新興国株は昨年の下落幅が小さかった分、戻りも少なくなっている。

一般に、上げ相場で大きく上げる銘柄ほど、下げ相場では大きく下落する傾向がある。
下げ相場に入ったらNASDAQを売り、底を打ったら素早く買い戻すことができれば、原理上市場平均を上回ることができる。大きく下げた時は続落が怖いので高配当株のようなディフェンシブなものを買いたくなるが、むしろNASDAQのような高成長株を仕込むチャンスなのだ。
天井と底の見極めが難しいので、なかなか上手くはいかないのだが。

 

変なものを切り捨てない―無人在来線爆弾感想

(本稿は『シン・ゴジラ』のネタバレを含みます。文中敬称略。)
 『シン・ゴジラ』(庵野秀明総監督、樋口真嗣監督)を見終わった時、私の頭の中はこのような状態だった。

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無人在来線爆弾 70%
石原さとみの怪演 20%
内閣総辞職ビーム 5%
その他 5%

 それまでは頭の中に色んな感想が渦巻いていたのに、最後に登場した無人在来線爆弾に全部持っていかれた。
 なぜ無人在来線爆弾はそれほどインパクトが大きかったのだろうか。

  第一に、無人在来線爆弾という言葉自体がパワーワードであることが上げられる。在来線という日常的で全然強そうじゃない言葉と爆弾という非日常の劇的な言葉をくっつけたことにより二物衝突が起こり、強く印象に残る。無人新幹線爆弾より在来線爆弾の方が話題になったのは、在来線の方が爆弾とのギャップが大きいからだろう。

 第二に、小学生みたいな発想であることが上げられる。これまでの政治機構や作戦の描写はリアリズムに基いているのに対し、無人在来線爆弾だけ児童向けアニメのようなリアリティだ。映像もいかにもミニチュアで撮ったと分かるもので、これまで積み上げてきたリアリティが一気に崩壊した。映画全体のバランスを考えるなら、無人在来線爆弾のアイデアはカットすべきだ。無人在来線爆弾が無くてもストーリー上何の支障もないのだから。

 だが、無人在来線爆弾は私の心に深く刻み込まれた。初めて見てから一年以上が経ち、他のシーンの多くは忘れてしまっても、無人在来線爆弾のことは決して忘れることはない。映画の価値とは全体のバランスではなく、印象深い断片にあるのではないだろうか。そういう意味では、無人在来線爆弾は『シン・ゴジラ』で最も優れた断片だと言える。

  日本は全体の調和を重んじがちな社会だ。無人在来線爆弾石原さとみの怪演のように全体の調和を乱す変なものを切り捨てず、生かしていくのは、これからの日本社会において必要なことだ。そして、それこそが『シン・ゴジラ』のテーマでもあるのだ。

 

過ちを認めないと再起できない―生き残りのディーリング感想

 『生き残りのディーリング 決定版 投資で生活したい人への100のアドバイス』(矢口新著、パンローリング)は多くのプロディーラーが座右の書としているという名著だ。書かれたのは2001年だが、原則的なことが書かれているので、内容は古びていない。

 私は主に長期投資の本を読んでいたので、「損切りオーダーをつけて節目節目で買い迎えば、大底での買い余力が大きい」といったテクニックは新鮮だった。

 本書で最も感心したのは「ポジションの量と保有期間が方向を決める」という教えだ。
 ある株の買い手と売り手が一人ずつだとする。買い手が一年間、売り手が一日だけポジションを持つと、売り手は売ろうとしても買い手がいないため、価格は限りなく上昇する。
 私は相場の流れは投機筋によって大きく左右されていると思っていた。だが、短期売買を繰り返す投機筋にはトレンドは作れない。大きなトレンドは、実需など長期にわたってポジションを保有する人の売買によって決まっているという本書の指摘を読んで、目からうろこが落ちた。

 本書で繰り返し説かれているのが、損切りの徹底となんぴんの厳禁だ。

 損切りについて本書はこう説いている。
 損は切るもの。アゲインストのポジションは持ってはならないものなのです。
 アゲインストのポジションからは、まともなものは何ひとつ生み出せません。必要以上のエネルギーを消費させ、相場観を狂わせ、機会利益を減少させ、ひいては取り返せないほどの損を抱える危険をはらんでいるのです。

 また、なんぴん買いは「ルーレットなどで負け続けても、やられた分の倍額を賭け続ければ、一回の勝ちで全額取り戻せると考える博打戦法と同じ」であり、「勝つ確率は確かに高まりますが、膨大なリスクに比べて、期待利益があまりにも小さい」と痛烈に批判している。

 買ったものが値下がりしたということは、自分の判断のあやまちを、相場が教えてくれたのです。
 大切なのは、その後の態度です。ここは謙虚にあやまちを認め、一度損切って出直すべきところです。

 塩漬け株を持っている私には耳が痛い。


 損切りの徹底を説く本書の主張は、他の投資本と対立しているように見える部分もある。

 投資の初心者向けのベーシックな投資本では、世界的に広く分散された低コストのインデックスファンドをドルコスト平均法でコツコツ積み立てろと説いているものが多い。インデックスファンドを積み立てるような場合 値下がりして赤字になった時に売らずに買い増すと、損切りせずになんぴんしていることになる。
 また、ウォーレン・バフェット氏は株を十分割安だと信じる価格で買ったら、下がっても損切りはせず、適正価格になるのをじっと待つという投資法で巨万の富を築いた。
 矢口氏の主張と相反するようだが、どちらが正しいのだろうか。


 重要なのはもくろみが崩れたかどうかだ。
 インデックスファンドの積み立ては短期的な値動きは気にせず黙々と積み立てていけば、市場平均のリターンが得られるというもくろみで投資している。従って、短期的に値下がりしたからと言って、当初のもくろみが崩れた訳ではないため、損切りする必要はない。

 バフェット氏の場合も、短期の値動きに関わらず三年ぐらい保有すれば適正価格になるだろうというもくろみで投資している。短期的に下落してももくろみが崩れた訳ではないから損切りしなくて良い。
 バフェット氏は三年程保有して十分なリターンが得られなかった株は売却している。氏ももくろみが崩れた場合はあやまちを認めて軌道修正しているのだ。

 一方、短期で利ざやを稼ごうとして保有したのに、下落したら長期保有すれば上がるとばかり塩漬けにしたりなんぴんしたりするのは、もくろみが崩れたのに、そのことと向き合っていない、「損を認めたくないための、臆病な行為」にすぎない。

 過ちを認めない人は、同じ失敗を繰り返す。過ちと向き合わないと再起できないのだ。

 

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麺巧潮の(白)はオールタイムベストラーメン

 麺巧潮の『(白)鶏白湯そば』(870円)は私のオールタイムベストラーメンだ。

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(白)鶏白湯そば

 (白)は洋風の、超斬新なラーメンだ。変わったラーメンは目新しさが売りで、美味さではオーソドックスなラーメンに劣ることが多いが、白はそんなことはない。

 (白)の特徴は何といっても黄色のとろっとしたスープだ。濃厚な鶏ガラスープとクリームの旨味が合わさって、初めて食べた時はくわっと目を見開いた。ホテルで「大山鶏のポタージュ~肉巻きアスパラとポーチドエッグを添えて~」とかいう名前で出せば3000円くらい取れる味で、こんな値段で食べられる有難さに拝みたくなる。
 麺はそうめんのような柔らかな細麺で、ラーメンよりカルボナーラに近い。
 トッピングはブロッコリー、ポーチドエッグ、肉巻きアスパラという洋風スープならではのラインナップ。特に肉がミルフィーユのように重なった肉巻きアスパラが絶品。まぶされた黒胡椒が良いアクセントになっている。

 麺巧潮にはもう一つ『(黒)にほんいち醤油そば』(870円)という看板メニューがある。

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(黒)にほんいち醤油そば

こちらは醤油と魚出汁にこだわったオーソドックスな醤油ラーメンを洗練させた一品で、美味しいが、天下一品であっさりを頼むような感じだ。せっかく麺巧潮に行くのなら、他では食べられない白を注文したい。

 麺巧潮の基本メニューは(白)と(黒)だけだが、平日18時以降限定で『海老白湯そば』(980円)が食べられる。(白)にエビのスープを追加し、エビフライを載せたエビ尽くしラーメンで、エビ好きにはたまらない一品だ。私はそこまでエビ好きではないので、(白)の方が好きだ。

 (白)の欠点はスープを飲み干すといかにも高カロリーなことだ。だが、こんな美味しいスープを飲み干さないなんてことができようか。
 毎週のように通うのではなく、ここぞという時に食べに行くようなラーメンだ。

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麺巧潮

tabelog.com

先進国債券はいつ買えば良いのか

 先進国株式の買い時ははっきりしている。株が暴落している時だ。株の暴落時はリスク回避の円高になるので、ドル建ての株式は二重に割安になる。
 一方、先進国債券の買い時は複雑だ。リスクが高まると株を売って安全な債券を買う人が増えるため、債券が値上がりする。リスクが下がってくると、債券から株に乗り換える人が増えるので、債券は値下がりする。つまり、リスクが高まっている時は円高だが債券は高く、リスクが下がると債券は安くなるが円安になってしまう。

 一体、いつ買えば良いのか。そこで、昨年一年間の、先進国債券価格(eMAXIS Slim先進国債券の基準価額)とドル円レート、米国10年国債利回りから逆算した米国10年債価格の相関を取ってみた所、下記の結果となった。
 先進国債券価格とドル円レートの相関=0.45
 先進国債券価格と米国10年債価格の相関=0.16
 先進国債券価格は米国10年債価格よりドル円レートとの相関が高いことが分かった。先進国債券は、米国債だけでなく、欧州債など、色々な債券が混ざっているからだろう。

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 先進国債券価格とドル円レート、米国10年債価格の年初を100とした値動きを示す。短期的な形はドル円レートと連動しているが、長期的には米国10年債価格の寄与も大きい。

 結局の所、いつ買えば良いのだろうか。日本円で投資信託ETFを買う場合、円高になった時に買うのが良いだろう。ただし、円高になった時は株の買い時なので、先進国債券を買う金があるなら先進国株式を買った方が良い感は否めない。
 ドルで買う場合は円高になった時にドル転し、混乱が落ち着いて価格が下がってから債券を買うのが良い。しかし、債券価格は単純にリスクと比例するわけではない。リスクが非常に高まると債券も下がるし、FRBの政策にも大きく左右される。債券が下がるのを待っている間にFRBが利下げに踏み切れば、債券価格は値上がりしてしまう。なかなか良い買い場を探るのは難しい。

 債券の主な役割は、資産全体のリスクを軽減することと、株が暴落した時に売り払って株を買うための資金にすることだ。しかし、外国債券は為替によって大きく価格が変動し、どちらの面でも十分な役割を果たせない。
 外国債券は無理に買わなくても良いのではないだろうか。