東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

何故いだてんの語りが不評なのか

(本稿は『いだてん~東京オリムピック噺~』の抽象的ネタバレを含みます。文中敬称略。)

 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(宮藤官九郎脚本)におけるビートたけしの語りが不評だ。一緒に観ていた母が「たけしが出てくるとしらけるから止めて欲しい」と言っていたが、同様の感想を持つ人は多いらしく、いくつか記事が上がっていた。

headlines.yahoo.co.jp

 不評な理由の一つ目は、ビートたけしの語りが落語家らしくないことだ。役者もやっている落語家は大勢いるのに、なぜ落語家に頼まなかったのだろうか。
 第二の理由は構造が複雑すぎることだ。森山未來演じる若き日の志ん生と、ビートたけし演じる熟年の志ん生が交互に語りを担当しているのだが、第一話を見逃した人は、二人が同一人物だとは分からないだろう。老人や子供も見ているのだから、必要以上に複雑にしない方が良いのではないか。

 だが、最大の原因は落語がメタ的扱いに向いてないからではないか。

 落語をメタ的に扱った傑作にアニメ『昭和元禄落語心中』がある。石田彰山寺宏一という声優界を代表する実力派が本物の落語家ばりの見事な語りを披露しており、作画も申し分ない。だが、それであっても、作中の落語で声を上げて笑うことはなかった。
 作中の高座シーンは、落語そのものを聞かせるためにあるのではなく、ドラマ上の何かの象徴として登場する。それは『タイガー&ドラゴン』といった他の落語ドラマであっても同じだ。

 もし、ドラマ内の落語そのものが面白いのなら、現実に落語を見る時と同様、固定カメラの映像だけで視聴者は楽しめるはずだ。だが、アニメやドラマにおける高座シーンは、アングルを切り替えたり、観客の反応を入れたり、語りの内容を映像化したりしている。

 なぜ、ドラマ内のメタ的な落語にはアングルの切り替えが必要なのか。それは落語が本来没入して楽しむメディアだからだ。
 落語は文字だけで楽しむ小説に近い、情報量が少ないメディアだ。落語を楽しむには、落語家の語りと身振りから、状況を想像しなくてはならない。人が想像力を働かせるモードに入るには集中力が必要で、集中するには時間がかかる。
 そのため、落語家は話の本筋を語る前に枕を語って、徐々に観客を話の世界に引き込んでいく。
 さらに、笑いはちょっと場の空気が変わっただけで笑えなくなってしまうような繊細なものだ。観客に合わせて落語家が語りを調整することで、初めて笑いが成立するのだ。

 一方、ドラマは視聴者が視覚的に想像する余地がない刺激の強いメディアだ。そのため、ドラマ内に落語を入れ込むと、視聴者は頭が落語を聞くモードになっていない状況でいきなり落語を聞かされるので滑っているように感じ、違和感を覚えてしまうのではないだろうか。

www.nhk.or.jp

VIX指数が高い時は合理的理由で株価が急落、急反発する

 前回の記事でVIX指数35以上でS&P500の実績PER20以下なら絶好の買い場だと書いた。

shinonomen.hatenablog.com

 VIX指数が高い時、株価が割安になるのは、投資家が恐怖にかられて愚かにも割安な価格で株を投げ売ってしまうからだと思われがちだ。
 だが、実際は、投資家達が合理的に行動した結果、割安になるのだ。

 「株を売った方が良い場合まとめ」で下記の二通りの時は株を売った方が良いと書いた。

shinonomen.hatenablog.com


1)明らかに本質的価値より高い場合
2)高確率で下落する場合

 VIX指数が高い時は高確率で下落するので、本質的価値とは関係なく、いったん売り、下落後に買い戻した方が得だ。従って、昨年末のような時に投資家が株を投げ売りするのは血迷ってアホな行動に出ているのではなく、合理的な行動なのだ。本質的価値とは関係なく売った方が得なのだから、株は割安な価格まで売り込まれる。

 しかしながら、合理的なのは、下落後にきちんと株を買い戻せた場合だ。もし株を買い戻せなければ、単に割安な価格で売って損をしたアホになってしまう。投資家は損をしたくないので、株価が底を打った後は我先に買い戻そうとする。そのため、今年一月のように急激に株価が戻るのだ。

 実際は、下落後にビビって買い戻せず、単に安く売っただけの人になることも多い。また、高確率で下落すると思って売っても、売った時が底であることもある。
 VIX指数が高まった時に株を投げ売るのは理論上は合理的な行動だが、結果的に単なるアホな行動になってしまうことも多いのだ。

 

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パワハラなしに指導できないのが良い先生なわけないだろう――3年A組-今から皆さんは、人質です-感想

 (本稿は「3年A組-今から皆さんは、人質です-」の抽象的ネタバレを含みます。文中敬称略)

 『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(武藤将吾脚本)は非常に続きが気になるドラマだ。回毎に構図を変えて視聴者を飽きさせない構成が上手く、ミステリー的面白さもある。菅田将暉と伸び盛りの若手俳優のぶつかり合いは迫力があって引き込まれる。

 問題は生徒を人質に取って教室に立てこもっている柊が素晴らしい先生だったという結論で終わりそうなところだ。「女王の教室」の時も天海祐希演じるパワハラ教師が世間的には素晴らしい先生だということになってしまった。

 どんな目的があろうとも生徒を監禁するような犯罪をしてはいけないのは当然だが、指導方法にも問題がある。柊は生徒を監禁し、強制的に話を聞かねばならない状況を作った。その上、生徒に暴力を振るったり、怒鳴り散らしたりする必要があるだろうか。
 生徒に自分で考え、気付いて欲しいのなら、言いたいことをがなりたててパワハラするのではなく、穏やかに気付きのヒントを語るに止めるべきではないか。怒鳴らないと伝えらないのであれば、指導力が低いと言わざるを得ないだろう。

 別に私はこういうドラマを作るなと言っているわけではない。理不尽な状況を作って視聴者に反発を感じさせるのは視聴者の興味を引きつける有効な手段だ。
 私が言いたいのは、最終回でちゃんと柊が茅野達生徒から「先生の目的は分かりました。しかし先生の取った行動は間違っています」と断罪され、司法の裁きを受けるべきだということだ。そうでないと、視聴者に「情熱があれば子供にパワハラしても良いんだ。子供も感謝しているじゃないか」という誤ったメッセージを送ることになる。

 自分や自分の子供が先生から監禁、脅迫され、PTSDになっても良いと思うのでなければ、柊のことを賞賛すべきではない。

www.ntv.co.jp

VIX指数35以上、実績PER20以下は絶好の買い場

 今から見れば、年末年始は絶好の株の買い場だった。
 S&P500は12/24からの一ヶ月で12.4%も上昇した。年率なら148.8%だ。
 普段なら、超凄腕の投資家が相当苦労して隠れた有望株を発掘しても、なかなか月に10%のリターンを上げることは難しいが、年末に勇気を持ってS&P500などの適当なインデックス投信を買いさえすれば、誰でも濡れ手に粟で10%以上のリターンが手に入ったのだ。買いのタイミングに比べれば、他のことなど取るに足らないことが分かるだろう。

 私は千載一遇のチャンスにほんのちょっとしか買えなかった。
 最大の原因はさらに下落するのではないかとビビってしまったことだろう。
 12月末のS&P500の実績PERは19.5ぐらいだが、2011年には13.5まで下がっている。そこまで下がる可能性もあると思うと、思い切った買いに踏み切れなかったのだ。
 米国株が他国株に比べて割高で、下落余地が大きいのは確かだ。買い向かう理論的根拠を探しておかないと、もう一度暴落した時にまた買い逃す羽目になる。

 市場のパニック度合いを示す指数にVIX指数がある。VIX指数は恐怖指数とも呼ばれ、S&P500の値動きから複雑な計算式で算出される。

 1990年以降のVIX指数とS&P500の比較図を示す。(見やすいようVIX指数は50倍にしている)

f:id:shinonomen:20190212174239p:plain

 VIX指数のピークとS&P500の底が一致しているのが分かる。グラフを見ると、VIX指数が35(上のグラフは50倍しているので1750)を超えた所で買えば、底値を拾うことができそうだ。

 リーマンショック以降、VIX指数が35以上になったのは6回ある。初めて35以上になった日と下落の底を比較した表を示す。

日付 S&P500 VIX指数 底までの日数 底までの下落率
2008/09/17 1156.390015 36.22 119営業日後 41.5%
2010/05/07 1110.880005 40.95 40営業日後 8.0%
2011/08/08 1119.459961 48.00 40営業日後 1.8%
2015/08/24 1893.209961 40.74 1営業日後 1.4%
2018/02/05 2648.939941 37.32 3営業日後 2.6%
2018/12/24 2351.100098 36.07 当日 0.0%

 2011/08/08、2015/08/24、2018/02/05、2018/12/24の4回はほぼ底値を拾えていると言って良い。

 2010/05/07はそこから7.95%下げているのでやや買うのが早過ぎるが、底値をつけてから16営業日後には元値を回復しているから、2010/05/07に買っても悪くはない。(5/7に買ってから、下値を更新する度買い増していければなお良い。)

 唯一全然駄目なのがリーマンショック時の2008/09/17で、VIX指数が35超になってから延々と下落が続き、119営業日後に41.5%も下落してからようやく下げ止まった。その後、元の株価を回復するまで1年以上かかっている。VIX指数30以上は実に170営業日も続き、ピーク時には80.86にまで達した。2008/09/17に買うのは避けるべきだ。

 

 VIX指数35超で買い向かう戦略を採るためには、リーマンショック級の下落を見分けて避ける必要がある。
 リーマンショック級の下落を見分けるには、PERを見れば良い。
 リーマンショック時は下落後もS&P500の実績PERが27前後と高止まりしており、下落してなお割高だった。
 下落後に株価が反発するのは、下落が行き過ぎて割安になっているからであり、下落してなお割高だったら、反発しないのも道理だ。
 それ以降5回のVIX指数急騰時は実績PERが22以下まで下がっている(うち4回は20以下まで下がっている)。つまり、VIX指数が35以上になり、PERも割安であれば、高確率で反発の利益を得ることができると言えるだろう。

 

結論:VIX指数35以上でS&P500の実績PER20以下なら絶好の買い場である可能性が高い。
(日本で米国や先進国の投資信託を買う場合は1日遅れになるからVIX30超になったら買い始め、下落の度に買い増す方が現実的だ。)

 

 もちろん、過去にそうだったからと言って、未来もそうだとは限らない。VIX指数35以上で実績PER20以下からさらに数十%下落することだってありえなくはない。
 しかし、可能性を言うのなら、VIX指数が極めて安定している所からだって暴落は起こりうる。少なくともVIX指数12.12、実績PER24.4の昨年9月末のような時に買うよりはVIX指数35以上、実績PER20以下の時に買った方がずっと安全である。

 

 VIX指数35法の欠点はむしろ買い逃がすことにある。2016年に投資を始め、VIX指数が35以上になるのをじっと待っていたら、2018年2月まで買うことができず、大きな利益を取り逃すことになる。
 株を全く持たずにVIX指数が35以上になるのをひたすら待つよりは、オーソドックスなドルコスト平均法などと併用した方が良いだろう。

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他者の色がないと気づけない――色づく世界の明日から感想

(本稿は『色づく世界の明日から』の抽象的ネタバレを含みます。)

 『色づく世界の明日から』(篠原俊哉監督)のヒロイン月白瞳美が色を見ることができないという設定には舌を巻いた。テーマ的にも表現的にも見事な設定だ。
 第一に、瞳美が世界を活き活きと捉えられずにいるということの象徴としてこの上ない。花火がモノクロで描かれる冒頭のシーンから、視聴者にも瞳美の日々がどれ程味気ないか、心をどれ程冷たく閉ざしているかまざまざと伝わってくる。
 第二に、アニメというメディア特性を最大限活かしている。モノクロとカラーの切り替えで視聴者の心を動かす手法は小説や漫画でやるのは難しい。実写ならできることはできるが、アニメーターが色づけたアニメでやることで感動が増している。さらに言うと美しい映像表現に定評があるP.A.WORKSだからこそという所もある。どうすれば自分たちの強みを活かせるのか考えぬかれた設定だ。

 本作は自分の殻に閉じこもった瞳美に、13話かけて外に出ておいでよ、と呼びかける話だ。
 私はぼっちが仲間色に染まる作品を見るとたいてい「うるせえ! ぼっちだって別に良いだろ。価値観を押し付けるんじゃねえ!」と不快になるのだが、本作は瞳美の心がほぐれていく様がものすごく丁寧に描かれているので、仲間を想いあう気持ちに何度もボロボロ泣いてしまった。
 本作に悪い人は出てこないし、人を幸せにするささやかな魔法というコンセプトが象徴するように、とても優しい世界観だ。
 だが、根本の所では結構厳しいことを問うている。もし自分の殻に閉じこもって誰にも良い影響を与えることがないまま死んだなら、何のために生まれてきたのか。

 第10話に唯翔が幼い瞳美に会う重要なシーンがある。そこで瞳美は自分とお母さんの間が川で隔てられている絵を描いている。
 唯翔が船や鳥や虹の橋やで川を超えられると提示するが、瞳美に退けられてしまう。瞳美は退けながらも、何故超えられないのか答えられない。
 何故、船や鳥や虹の橋では川を超えられないのか。それは自分と他者が川によって隔てられていると考えているのが自分自身だからだ。自ら川を超える意志を持たない内は、川に橋が掛かっていても超えることはできない。
 本作では全編に渡って唯翔が描いた金色の魚が繰り返し登場し、世界中を自由自在に泳ぎまわる。魚にとって川は自分と他者を隔てるものではなく、通路だ。他者との違いを乗り越えるためには、他者との間にあるものが壁ではなくつながりだと自らの意識を変える必要があったのだ。

 色とは多様性の象徴だ。瞳美がモノクロでしか世界をみることができなかったのは、自分の価値観でしか世界を見られないことを象徴している。瞳美は魔法写真美術部の他者達と交流することで、徐々に色を取り戻していく。
 魔法写真美術部で瞳美は深く感情をぶつけ合った唯翔、琥珀、あさぎ、将と比べ、胡桃や千草との交流は薄い。だが、あさぎのように性格的に近しい他者だけでなく、遠い他者とも交流するために、胡桃や千草の存在が必要なのだ。

 世界に色を見出すのはあくまで自分だ。だが、モノクロの部屋に住むペンギンが色を知らないように、他者という色がなければ色に気づくことができないのだ。

www.iroduku.jp

 


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効率的市場仮説は10年しか成り立たない

 投資の世界で有力視されている仮説に効率的市場仮説がある。
 効率的市場仮説によると市場が新しい投資情報を速やか、かつ適切に織り込むため、リスクが等しい商品のリターンは等しくなる。
 成長率が高い企業の株は高く、低い企業の株は安くなるため期待リターンは等しくなると言うのだ。
 従って、効率的市場仮説論者は、何を買ってもリターンは同じなのだから、市場全体に投資してリスクを軽減するのが最良の投資法だと主張している。
 この説は本当だろうか。検証してみた。


1)1年後にPERが等しくなる場合
 利益成長率年20%、10%、0%、-10%の4種類の株があるとする。
 現在の1株利益が100円なら、1年後は120円、110円、100円、90円になる。
 どの株も1年間のリターンが5%、1年後にPER15になるとすると、それぞれの株の現在価格は下記のようになる。

 成長率20%の株は1年後に1800円になるから、現在価格は1714.29円(PER17.14)
 成長率10%の株は1年後に1650円になるから、現在価格は1571.43円(PER15.71)
 成長率0%の株は1年後に1500円になるから、現在価格は1428.57円(PER14.29)
 成長率-10%の株は1年後に1350円になるから、現在価格は1285.71円(PER12.86)

 この仮定だと、利益成長率に関わらず、1年後、全ての株のPER(割安さ)が等しくなってしまう。

 さらに、2年後の1株利益は144円、121円、100円、81円となる。
 2年後のリターンも5%だとすると、
 成長率20%の株は1890円(PER13.13)
 成長率10%の株は1732.5円(PER14.32)
 成長率0%の株は1575円(PER15.75)
 成長率-10%の株は1417.5円(PER17.5)
 となり、高成長の株ほど割安という逆転現象が起こってしまう。これは明らかにおかしい。

 ここではPERが等しくなる年数を1年としたが、X年としてもX年後に同様の問題が発生する。

 効率的市場仮説によれば、高成長株のPERは低下し、マイナス成長株のPERは上昇する。このこと自体は、PERの平均回帰性として、実際に見られる現象だ。
 しかしながら、効率的市場仮説が永続的に成り立つなら、いずれかの時点で高成長株とマイナス成長株のPERが逆転する。だがそんなことは起こらない。
 従って、「リスクが等しい商品のリターンは等しくなる」という効率的市場仮説は疑わしい。


2)50年後にPERが等しくなる場合
 高成長株とマイナス成長株のPERの逆転が発生しない場合が一つだけ存在する。リターンが等しくなる期間が∞年である場合だ。

 人間が株を保有する年数はせいぜい50年程度なので、試しに50年後にPER15となると仮定すると、下記のようになる
 成長率20%の株は50年後に13650657円になるから、現在価格は1190388.19円(PER11903.88)
 成長率10%の株は50年後に176086円になるから、現在価格は15355.38円(PER153.55)
 成長率0%の株は50年後に1500円になるから、現在価格は130.81円(PER13.08)
 成長率-10%の株は50年後に7.73円になるから、現在価格は0.67円(PER0.0067)

 実際は高成長の株はここまで高くないし、マイナス成長の株もここまで安くない。

 リターンが等しくなる期間が∞年でなければ効率的市場仮説は成り立たないのに、実際は50年未満である。

 従って効率的市場仮説は間違っている。成り立つとしても、限られた期間のみだ。X年後に高成長株のPERとマイナス成長株のPERが逆転しないためには、高成長株の方がリターンが高くなければならない。


3)効率的市場仮説が成り立ちうるのは10年以内
 市場はPERが等しくなる年数を何年ぐらいに設定しているのだろうか。

 5、10、15、20年後までのリターンを等しくした場合の現在のPERは下表のようになる。

成長率 5年間成長率 5年後EPS 5年後株価(PER15) 5年間リターン(年率5%) 現在の株価 現在のPER
1.2 2.49 248.83 3732.48 1.28 2924.50 29.24
1.1 1.61 161.05 2415.77 1.28 1892.82 18.93
1 1.00 100.00 1500.00 1.28 1175.29 11.75
0.9 0.59 59.05 885.74 1.28 694.00 6.94
             
成長率 10年間成長率 10年後EPS 10年後株価(PER15) 10年間リターン(年率5%) 現在の株価 現在のPER
1.2 6.19 619.17 9287.60 1.63 5701.78 57.02
1.1 2.59 259.37 3890.61 1.63 2388.50 23.88
1 1.00 100.00 1500.00 1.63 920.87 9.21
0.9 0.35 34.87 523.02 1.63 321.09 3.21
             
成長率 15年間成長率 15年後EPS 15年後株価(PER15) 15年間リターン(年率5%) 現在の株価 現在のPER
1.2 15.41 1540.70 23110.53 2.08 11116.56 111.17
1.1 4.18 417.72 6265.87 2.08 3013.99 30.14
1 1.00 100.00 1500.00 2.08 721.53 7.22
0.9 0.21 20.59 308.84 2.08 148.56 1.49
             
成長率 20年間成長率 20年後EPS 20年後株価(PER15) 20年間リターン(年率5%) 現在の株価 現在のPER
1.2 38.34 3833.76 57506.40 2.65 21673.56 216.74
1.1 6.73 672.75 10091.25 2.65 3803.29 38.03
1 1.00 100.00 1500.00 2.65 565.33 5.65
0.9 0.12 12.16 182.36 2.65 68.73 0.69

これだと、全体的にPERが低すぎるので、成長率0%株のPERが15になるようPERを調整したのが下記の表だ。

成長率 現在のPER(5年後のリターンが等しい場合)
20% 37.32
10% 24.15
0% 15.00
-10% 8.86
   
成長率 現在のPER(10年後のリターンが等しい場合)
20% 92.86
10% 38.90
0% 15.00
-10% 5.23
   
成長率 現在のPER(15年後のリターンが等しい場合)
20% 231.08
10% 62.65
0% 15.00
-10% 3.09
   
成長率 現在のPER(20年後のリターンが等しい場合)
20% 575.22
10% 100.94
0% 15.00
-10% 1.82

この中だと、10年後のリターンを等しくした場合のPERが最も現状に近い。
 

 市場は約10年後までの期待リターンが等しくなるよう価格を調整している。10年目以降は成長率分のリターンが得られる。(そうでなければ高成長株のPERとマイナス成長株のPERが逆転するという奇妙な事態が発生する)
 従って、利益が市場平均を上回って安定成長する株を10年以上保有すれば、理論上市場平均を上回るリターンが得られる。
 これはウォーレン・バフェットの投資法と同じである。


 効率的市場仮説論者はバフェットのリターンが高いのは偶然だと主張しているが、ちゃんと理論的裏付けがあるのだ。

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リスニング四天王物語

nlab.itmedia.co.jp

 昔々、天界の外れにある隠れ里に、りんご、にんじん、きゅうり、ぶどうの四兄弟が暮らしておりました。
 りんごとにんじんには羽根があり、空を自由に飛び回ることができます。きゅうりとぶどうは羽根はありませんがたいそう力持ちで、家ほどもある岩を軽々と持ち上げることができました。
 仲良しの四人はいつも一緒。毎日野山を駆けまわって遊んでいました。
 昔のことを覚えていない四人は、良く両親のことを想像して語り合いました。
「きっと羽根があって力持ちに違いない。」
四人は頷き合いました。
「優しい人だといいなあ。」
四人は深く頷きました。

 ある日、いつもの様に鬼ごっこをして遊んでいた四人は、羽音を聞いて足を止めました。四人はたいそう耳がよく、里の外れの物音すら聞き取ることができたのです。真っ白の服を着た羽音の主はどんどん近づいてきて、ついに里の中に降り立ちました。四人は驚きました。里に誰かが訪ねて来るなど、初めてだったのです。
「我は天使国よりの使者である。りんご様、にんじん様。天使長の命であなた方をお迎えに参った。」
使者の話の話を聞いた四人は目を丸くしました。何と、りんごとにんじんは天使国を統べる天使長が野菜国、果物国の娘との間にもうけた子供だと言うのです。天使軍は野菜・果物連合軍と長らく敵対関係にあり、二人のことは秘されてきました。だが、この度、二国との和平が成ったことから、天使国に呼び戻すことになったと言うのです。
「我ら四人は兄弟です。私とにんじんが天使長の子供だと言うなら、きゅうりとぶどうもそうなのではありませんか。」
りんごの問いかけに、使者は激昂しました。
「断じて違う! 天使長様のお子なら立派な羽根を持っているはず。この二人には羽根がないではないか。」
使者はきゅうりとぶどうを冷たく一瞥すると、りんごとにんじんの肩に手をかけました。
「さあ、天使長様がお待ちです。早く参りましょう。」
りんごとにんじんが逡巡していると、きゅうりが二人の背中を押しました。
「せっかくお父さんに会えるんだ。行かない手はないよ。」
ぶどうも二人の肩を叩きました。
「そうだよ。天使国に行ってお父さんのことを見てきてくれよ。」
それを聞いてりんごとにんじんも天使国へ行く覚悟を決めました。二人は何度も振り向きながら、天使国へと飛び立って行きました。

 その晩のことです。きゅうりは何者かのヒソヒソ声で目を覚ましました。村外れで誰かが密談をしているようです。耳をそばだてるとこんな声が聞こえてきました。
「あいつらの存在は天使国にとって邪魔なのだ。確実に始末しろ。」
続けて、複数の羽音が一目散にこちらに向かってきます。きゅうりは慌ててぶどうを揺り起こすと外に飛び出しました。すると空から無数の矢が飛んできました。空に黒装束の天使数名が並んで矢を放っているのです。
 きゅうりは杉の大木を引っこ抜いて構えました。しかし、天使達ははるか上空にいて届きません。
「ぶどう、僕を投げろ!」
ぶどうは頷くと、きゅうりを大木もろとも空に投げ上げました。きゅうりは大木を横薙ぎにして、天使たちを打ちました。叩き落された天使達はほうほうの体で逃げて行きました。
「やつらは天使国の手の者だと言っていた。このままではりんごとにんじんが危ない。」
「すぐ助けにいかなくちゃ。」
二人は急いで旅支度を整えると、天使国の都へ向けて旅立ちました。
 三日三晩歩き続け、都までの中ほどまで到達した時、二人の耳は無数の羽音を捉えました。顔を上げた二人は唖然としました。空を埋め尽くさんばかりの天使たちが、手に手に武器を持ってこちらへ向かってきたからです。
「どうやらただでは行かせてくれないようだ。」
きゅうりは二本の大木を引き抜くと、二刀流に構えました。
「誰が来ようが押し通るまでのことよ。」
ぶどうは大岩を打ち砕くと無数の石つぶてを作り出しました。
 こうして二人対三千人の戦が始まったのです。

 一方、天使長の館に通されたりんごとにんじんは、豪勢なもてなしに目を丸くしていました。大浴場ではライオンの口からふんだんに湯が流れ、天蓋つきのベッドはふかふかでどこまでも沈んでいきそうです。
「いやあ。良いお湯だったね。うっかり茹でにんじんになる所だったよ。」
「僕の方こそリンゴジャムみたいな甘い香りがしてきたから慌てて上がったよ。」
二人は朗らかに笑いあいました。
「いよいよ明日は父さんとの対面だね。」
「どんな人だろう。優しい人だと良いなあ。」
すると、館の中で誰かが話をしているのが聞こえてきました。
「今度こそ抜かりはないのであろうな。」
「はっ。天使軍の精鋭、三千を向かわせております。きゅうりとぶどうを仕留めそこねることなどありえません。」
りんごとにんじんは驚いて顔を見合わせました。この人達は一体何を言っているのでしょうか。
「しかし天使長様、本当によろしいのですか。長年会っていないとは言え、きゅうりとぶどうはあなたのお子ではありませんか。」
天使長と呼ばれた男は深々とため息をつきました。
「きゅうりとぶどうが生きている限り、いつ私が天使とドワーフのハーフであることが表沙汰になるか分からん。天使国と野菜・果物連合国との和平は薄氷の均衡の元に保たれておる。もし今、私が純血の天使でないことが発覚し、和平反対派が息を吹き返しでもしてみろ。天界はいつ果てるとも知れぬ戦の時代に逆戻りしてしまう。そんな時に私情を挟むわけにはいかんのだ。」
りんごとにんじんは愕然としました。だが、ショックを受けている場合ではありません。
「きゅうりとぶどうが危ない! 」

 きゅうりとぶどうは奮戦し、各々千人の敵を打ち倒しました。しかしきゅうりの手には既に木はなく、体には槍がささってお盆の馬のようになっています。ぶどうも石つぶてが尽き、半分の実が割れてべとべとになっていました。
 二人を取り囲んだ天使たちは槍を構え、じりじりと包囲の輪を狭めて来ます。
「どうやらここまでのようだ。」
その瞬間、空の彼方から何かが猛スピードで突っ込んで来ました。にんじんです。にんじんはきゅうりとぶどうを掴むと、天使軍の槍衾から間一髪二人を救い出しました。
「今だ! 」
にんじんが叫ぶと、空に待機していたりんごが力の限り羽根を振り下ろしました。巨大な竜巻が起こり、天使軍の面々は吹き飛ばされました。
 次々と大地に落ちてきた天使軍を睥睨し、りんごが声を張り上げました。
「帰って我が父に告げるが良い。今後一切我らに手出しすることは許さん。もしもう一度我らに仇なそうなどと一言でも漏らしてみろ。我ら四人の地獄耳が聞きつけて、たちまち天使軍を討ち滅して見せようぞ。」
天使軍がほうほうの体で逃げ帰ると、四人は抱き合っておいおい泣きました。

 その後、四人は里に帰り、いつまでも幸せに暮らしました。天使軍の面々は、四人の地獄耳と強さを大いに恐れ、畏敬の念を込めてリスニング四天王と呼んだということです。

 

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