東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)の投資と評論サイトです。ジオシティーズ(http://www.geocities.jp/shinonomenod/)から移転してきました。

立憲民主党は労働民主党に改名しろ

枝野党首が立憲民主党の名に拘っている。

cdp-japan.jp

確かに立憲主義は大事だ。安倍首相が法解釈を変えて黒川検事長の定年を延長したり、国会議員の1/3以上が要求しているのに国会を開かなかったりしたのは問題だ。だが、それを第一に訴えるべきかどうかは話が別だ。

マズローの欲求5段階説というものがある。人の欲求には1)生理的欲求、2)安全的欲求、3)社会的欲求、4)承認欲求、5)自己実現欲求の5段階があり、より低次の欲求が叶えられて初めて高次の欲求をするという説だ。
この説には異論もあるが、大枠では納得がいく。砂漠で乾きで死にそうな人に水(生理的欲求)とはてなスター(承認欲求)を差し出したら、誰もが水を選ぶだろう。

立憲主義有権者にとって高次の欲求だ。3)~5)ぐらいまでが満たされて初めて、立憲主義を訴える余裕が出てくる。
多くの有権者は安全・安心な暮らしや家族・友人からの受容といったより低次の欲求が満たされていない。
コロナで職を失った人や、収入が減って困っている人に、立憲主義を訴えて響く訳がない。

アメリカ民主党大統領候補のバイデン氏は政権を獲ったら法人増税をすると訴えている。
アメリカでは経営者サイドの共和党と労働者サイドの民主党で、政権交代する度に税制が変わる。政治とはお金をどう集めどう配分するかなのだから、政権交代によって税制が変わるのは当然のことだ。

日本の民主党は「コンクリートから人へ」と訴えて政権交代を果たした。税金の使い道を公共事業中心から有権者への直接給付中心に見直すと訴えたわけだ。
民主党政権がつまづいたのは管首相が消費増税をすると訴えて参議院選挙に負けたのが原因で、完全に支持を失ったのは野田政権が三党合意で消費増税を決めたからだ。
有権者はお金の流れを変えてくれると思って支持したのに、お金の流れを自公政権と同じにすることを合意したのだ。失望されて当然だ。

枝野氏は先の参議院選挙では消費増税反対を訴えていたため、野田政権時代とは変わったのだと期待していた。だが、増税実施後は消費減税に曖昧な態度を取っている。これでお金の流れを自公政権と変える気はないのだと有権者に見透かされてしまった。

野党第一党が訴えるべきは、経営者優遇の自公政権から労働者優遇にお金の流れを変えるということだ。そのためには立憲民主党などと言っていてはダメだ。立憲主義は重要だが、第一に訴えることではない。
立憲民主党は労働民主党に改名し、労働者のための党であることをはっきりと打ち出すべきだ。

シラーPERとリターンの検証

シラーPER(CAPEレシオ)というノーベル経済学賞受賞学者のロバート・シラー教授が考案した株式指標がある。通常のPERが1年間の利益を元に算出するのに対し、シラーPERは過去10年間の利益をインフレ調整して用いる。

PER=株価/1株当たり純利益
シラーPER=株価/過去10年間の1株当たりインフレ調整後平均純利益

PERは株の割安さの指標で、PERが低い程割安だ。
通常のPERはコロナショックのように短期的に利益が落ち込んだ時に分母の急減によって急騰するが、長期的に見ると良い買い場だったりする。
シラーPERは過去10年間の利益を用いているので、通常のPERより長期的に割安かどうかを判断するのに適しているのだ。

S&P500のシラーPERと、1,2,5,10年後のリターンのグラフを示す。
(S&P500 1990年1月~2020年7月の月次データを用いた。)

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シラーPERと1年後リターンは相関係数-0.289とほぼ相関はない。2年後リターンとも-0.439と非常に弱い相関しか見られない。

 

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5年後リターンだと-0.672と負の相関が見られ、10年後リターンだと-0.854と強い負の相関が見られる。

 

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シラーPERと1~10年後のリターンとの相関を示す。年数が増えるほどリターンとの相関が強まっている。

ちなみにシラーPERと1ヵ月後のリターンとの相関は-0.0607と全く相関はない。
シラーPERが30を超えると暴落の危険が高まるという説があるが、シラーPERは短期リターンとは無相関なので根拠はない。

2020年7月24日現在、シラーPERは29.97とかなり割高だ。だが、シラーPERが33.7以下では10年後リターンがマイナスになったことはない。

シラーPERが29~30.99の際の平均リターンは5年が28.51%(年平均5.14%)、10年が33.67%(年平均2.94%)だ。
年平均2.94%はそれほど良いリターンではないが、他に年平均2.94%で運用できる資産がないので、売り払った方が良いわけでもない。
(下落リスクがあるのに年平均リターンが2.94%では割に合わないと考えるのなら売り払っても良い。ただし、現金もインフレリスクがあるので安全ではない。)

米国株は長期的にはプラスサムなので、基本的にはバイ&ホールド戦略が適している。
ただし、32.5を境に5年リターンの期待値がマイナスになっている。今後シラーPERが上昇し、32.5を超えたらある程度売った方が良さそうだ。

 

Shiller PE Ratio by Month

 

庭に生ゴミを埋めると雑草が繁茂する

母がエコにこだわりがあるので、生ゴミは家庭ゴミに出さず、庭に埋めている。
庭の一角は家庭菜園になっていて、ミニトマト、じゃがいも、シソなどが植わっている。
以前は雑草が生えてくると、母や、母の様子を見に来てくれた姉や、私が抜いていたので、畑は秩序を保っていた。

先月、母が田舎に戻ったので、私はのびのびと庭を放置していた。先日、ふと畑を見ると、こんな風になっていた。

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もはや畑の面影がねえ!

 

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生ゴミを埋めていない一角。明らかに生ゴミを埋めた所の方が雑草の育ちが良い。

さすがにまずいので一時間ぐらいかけて草取りをした所、雑草の下から野菜が姿を表した。

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ミニトマト

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収穫したミニトマトとじゃがいも。

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取った雑草の山。

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こまめに草取りをするなら、埋めた生ゴミは野菜の栄養になるのでエコだ。だが、放置しておくと生ゴミは雑草の栄養になってしまう。


雑草はゴミに出すので、生ゴミを直接ゴミに出すより、かえってゴミの量が増えている。生ゴミを庭に埋めるのがエコなのか、疑問になってきたぞ。

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...感想~ハリウッド式作劇法へのアンチテーゼ

(本稿は『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』のネタバレを含みます。)

一視聴者としてはとても面白かったが、一クリエイターとしては敗北感で打ちのめされた、というのが『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...』(原作:山口悟、監督:井上圭介、アニメーション製作:SILVERLIN、以下はめふら)の感想だ。

私は小説を書いている。小説を書く際には、ハリウッド式の作劇法を使って綿密にプロットを組む。第二幕で持ち上げられてから一気に叩き落とされた主人公は、自分の内的課題を突きつけられて精神的危機を迎えるが、そこで変わることを決意して再起し、敵との最終決戦に……という風に頑張ってストーリーを練り込んでいる。
一方、はめふらのストーリー構造は、毎回、アイデンティティ・クライシスに陥っているキャラがいて、カタリナに肯定されて救われるだけというシンプルなものだ。
苦しんでいたキャラクターが受容される展開は、多くの視聴者の琴線をくすぐる一番美味しい所だ。私がどうやって起伏をつけて一番美味しい所を盛り上げるか苦労していたら、一番美味しい所だけを抜き出して並べた方が面白かった。今まで頑張ってストーリーを練り込んできたのは何だったのか。

はめふらはハリウッド式作劇法をことごとく否定している。
第一に敵役がいない。
ハリウッド式の作劇法では、敵役が登場する。敵役は、主人公が目的を達成するのを妨げることで物語に起伏をつけるため、欠くべからざる存在だと思われていた。
はめふらでは敵役を務めるはずのカタリナが良い奴なので、敵役が存在しない。だが面白い。物語に敵役が必要だというのは単なる思い込みで、なくても良かったのだ。

第二に主人公がすぐ目的を達成する。
ハリウッド式の作劇法では、主人公がなかなか目的を達成しないよう、門番が立ちふさがったり、敵役が妨害したりすることで物語に起伏をつける。
はめふらではカタリナを妨害する奴がいないので、やすやすと目的が達成される。その代わり、トラウマを抱えたキャラが沢山登場し、小さな物語が繰り返される。
ハリウッド式作劇法がコース料理なら、はめふらは串団子だ。コース料理の方が美味いと思い込んでいたら、素材と調理がしっかりしていれば串団子も充分美味しかったのだ。

hamehura-anime.com


私は鞄の中に小説を入れて持ち歩いているが、たいてい小説を読む前にスマホでスマートニュースを見てしまう。ウェブ記事は日常の言葉で書かれているのですっと読み始められる。言わば地上からすぐ中に入れる感じだ。
一方、小説は内部の圧力を上げているような感じで、読み始めるのにちょっとしたハードルがある。作品内に入るのに階段を上がっていかねばならないような感じなのだ。

たいていのフィクションは日常で始まり日常で終わる。これは物語に出入りする地点は地上であることが望ましいからだ。
だが、読者は必ずしも地上で物語から乗り降りできるわけではない。ジェットコースターのような小説を読んでいて、物語が急降下し始めた瞬間に電車が目的地についたら、読者はそこで本を閉じねばならない。もう一度読み始める時は、読者は元の地点までえっちらおっちら非常階段を上がっていかねばならない。これはハードルが高い。

ハリウッド式の作劇法は映画のために最適化されている。映画とそれ以外のフィクションに最適な作劇法は違うのではないか。

映画では視聴者は2時間ぶっ続けで観ることを強いられる。従って、地上で観客を乗せた後は、ジェットコースターのように観客をおもいっきり振り回すことができる。その間、観客を地上に下ろす必要はない。

一方、テレビアニメやドラマは一話毎に観る。各話毎に地上で始まって地上で終わった方が見やすい。最近は娯楽が多様化しているので、途中から見たり、すきま時間にちょこちょこ見たりする視聴者も多い。そうなると、一クールかけてジェットコースターのように物語を盛り上げるより、屋台村のように一話一話を美味しくもてなしていった方が良い。

はめふらは忙しい現代の視聴者に最適化したアニメなのだ。

 

トオカツフーズの弁当レビュー

緊急事態宣言中は在宅勤務をしていたので、近所のスーパー、ビッグ・エーで弁当を買って食べることが多かった。
ビッグ・エーの弁当は主にトオカツフーズとシノブフーズが製造している。
まずはトオカツフーズの弁当についてレビューする。

 

細巻きいなり寿司 199円 391kcal/蛋白質11.3g/脂質4.2g/炭水化物77.1g/食塩相当量2.4g

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きゅうり、沢庵、かんぴょうの細巻きといなり寿司が入った弁当。
シノブフーズの助六寿司と比べると、いなり寿司は互角だが、太巻きに比べ細巻きが寂しい。

 

にぎり寿司盛り合わせ 399円 422kcal/蛋白質12.4g/脂質6.9g/炭水化物77.4g/食塩相当量3.5g

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サーモン、焼きサーモン、えび。煮穴子、いか、卵焼き、鉄火巻きからなる寿司盛り合わせ。
回転寿司レベルの寿司で普通に美味しい。
日本に来た外国人がスーパーの寿司が安いのに感激し、毎日食っているという話を聞いたことがある。日本人は寿司はここぞという時に食うものという固定観念にとらわれがちだが、確かに399円なら毎日食っても全然平気である。

 

タルタルチキン南蛮重 299円  569kcal/蛋白質21.1g/脂質23.8g/炭水化物67.8g/食塩相当量2.0g

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ご飯の上に甘酢だれの唐揚げが7個程乗せ、中央にタルタルソースを添えただけのシンプルな弁当。
美味しいがつけものすら入っていないのでちょっと飽きる。

 

唐揚げマヨ重(照焼ソース) 299円 568kcal/蛋白質17.8g/脂質20.4g/炭水化物78.0g/食塩相当量1.9g

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タルタルチキン南蛮重のタルタルソースを照り焼きソースとマヨネーズに変えた弁当。
タルタルチキン南蛮はチキンとタルタルソースが載っているだけだが、こちらは刻んだのりや唐辛子が配してあって、工夫がみられる。

 

牛カルビ重 299円 499kcal/蛋白質13.2g/脂質10.7g/炭水化物89.1g/食塩相当量1.7g

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焼き肉ににんにく醤油でを絡めた匂いからして食欲を誘う弁当。
高価な牛肉が使われているだけに肉がひらひらしており、おかずが少なめなのが難点だが、299円なのでやむを得ない。
カロリーが低くヘルシーだがちょっと食い足りない。

 

豚焼肉重 299円 553kcal/蛋白質16.6g/脂質22.3g/炭水化物71.4g/食塩相当量1.2g

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豚のタン元と玉ねぎをたっぷりの油で炒めた豚丼。塩気は控えめ。
牛カルビ重より、肉がたっぷり入っており、ご飯にも油が染み込んでいるためおかず不足に陥ることはない。

 

海老と野菜の天重 299円 629kcal/蛋白質9.4g/脂質24.7g/炭水化物92.0g/食塩相当量1.4g

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海老天2尾に、れんこん天、かき揚げ、さつまいも天、かぼちゃ天が入った天重。甘辛いトロッとしたたれがかかっている。
トオカツフーズの弁当で唯一野菜が豊富に入っているが脂質も多い。
衣はしっとりとしており、揚げ方へのこだわりは感じないが、海老天はわりとおいしい。

 

こだわりのハンバーグ弁当(イカフライ) 299円 623kcal/蛋白質20.8g/脂質18.1g/炭水化物94.5g/食塩相当量2.4g

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がっつり肉が食えて299円という素晴らしい弁当。最もおすすめ。
ハンバーグはこだわりと言うだけあって、肉厚で満足感がある。ハンバーグは他の肉系おかずと比べて汁気があって、ご飯とよく合う。
ハンバーグの他にイカフライが入っているのとメンチカツが入っているのがある。

 

メンチカツ&からあげ弁当 399円 738kcal/蛋白質26.2g/脂質31.3g/炭水化物88.4g/食塩相当量2.4g

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メンチカツとからあげという塊肉をガッツリ食べたい人向けの弁当。
こだわりのハンバーグ弁当(メンチカツ)と肉の量はほぼ同じなのに100円高いのが納得いかない。
納得いかない人が多かったのか、商品入れ替えで姿を消した。

 

ジャンバラヤ弁当 399円 564kcal/蛋白質14.3g/脂質15.5g/炭水化物92.0g/食塩相当量3.2g

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トオカツフーズの最新作。コショウが効いたケチャップ味のご飯と、チキンカツ、目玉焼き風オムレツ、スパゲッティからなる弁当。
目玉焼き風オムレツがちょっと甘くて微妙な味。ケッチャップご飯も昭和の遊園地の食堂みたいな味で、299円でも買わない感じ。
トオカツフーズはシンプルな弁当は得意だが、付加価値をつけるのは苦手なのではないか。


トオカツフーズの弁当はドカンとメインのおかずが入っていて、野菜など知るか!という豪快さが特徴だ。
好きな肉系おかずをガッツリ食べたい人向けの弁当だ。
健康に気を使っている人は一緒にもやしなどの野菜を買ってきて付け合せにすると良いだろう。

 

www.tokatsu.co.jp

テスト結果をごまかすと実力が低下する

近年、民主主義国家でトランプ流の強権的リーダーが台頭している。
ブラジルのボルソナロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領等々。程度の差はあれ、強権化を進めている国は枚挙に暇がない。ロシアのプーチン大統領はそれらの先駆けと言って良いかもしれない。

近年、世界的に少子高齢化が進んだことで、高度成長期のような配分が難しくなっている。
労働人口が増加する人口ボーナス期は軽い税金で手厚い福祉を賄うことができた。現在はより税金を重くしても少ない福祉しか提供できない。
政治家はかつてよりテストで良い点を取るのが難しくなっているのだ。

そんな中台頭したのがトランプ流のリーダーだ。彼らの特徴は敵を攻撃して強いリーダーであることをアピールする、国のルールを自分に都合の良いように変える、などいくつかあるが、最も重要なのは情報操作だ。
彼らは自らに都合の悪い情報をフェイクニュースと断じ、メディアに圧力をかけて国民に届けまいとする。
テストで良い点を取るのが難しいので、テスト結果を改ざんして良い点であるようみせかけようとしたのだ。

この方法は外交ではある程度うまく行く。外交が上手くいっているかを国民が直接知ることは難しいからだ。
経済は外交よりはごまかしにくい。景気が悪化すれば、収入が減ったり失業したりして国民にも実感できるからだ。
だが、経済は前借りによって短期的にごまかすことが可能だ。借金を増やして減税し、公共投資を増やせば短期的に景気は改善する。
また、経済状況は国によって違うので、他国とも比較されにくい。かくしてトランプ流のリーダーは順調に国民の支持を得ていた。

だがここで、世界中のリーダーにまったくごまかせない課題が与えられた。それが新型コロナウィルス対応だ。
新型コロナウィルス対応は全世界統一テストだ。人口当たりの死者数という揺るぎないデータによって政府の実力が白日の元にさらされたのだ。

web.sapmed.ac.jp

新型コロナウィルス対応で問われる能力は多岐に渡る。
第一に政府の発信力だ。政府が国民に正しい情報を届け、国民に実行してもらう力が試される。
第二に政府の決断力だ。素早くイベントの中止や国境閉鎖を打ち出せた国ほど感染者数が少なくなっている。
第三に政府の効率性だ。検査体制、マスクの供給、休業補償などを素早く実施できるかが問われている。
他にも、パンデミックへの備えや医療体制のバッファも重要だ。まさに政府の総合力が問われているのだ。

トランプ流のリーダーは概ねコロナ対策に失敗している。
これには周囲をイエスマンで固めたせいで正しい情報が入りにくかったとか、マッチョに立ち向かおうとしたがコロナには通じなかったとかいくつか理由があるが、本質的な理由は彼らが無能だったからに他ならない。
なぜ、トランプ流のリーダーが無能になるか、それはテスト結果をごまかしているからだ。

後からテスト結果をごまかせると分かっているのに、必死に勉強するのは難しい。どうしたって怠けてしまう。長年の怠惰が積み重なると、メディアを通じて国民に厳しくチェックされているリーダーとは実力に雲泥の差が生じてしまう。
メディア規制を進めるリーダーは反対勢力の力を削いでやろうとして、自らの力を削いでいることに気づいていない。
批判勢力は敵対者ではなく貴重な助言者なのだ。自分の代わりに自らの弱点を探してくれるのだから、こんなに有り難い存在はない。

世界各国のリーダーは自らの身が可愛いのなら、メディア規制や情報の改竄は止め、批判者の声に耳を傾けるべきだ。

とても大きなごん狐

 これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。
 むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに人類を守るためのお城があって、中山さまという将軍さまが、おられたそうです。
 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちのゴジラよりも大きな狐で、しだの一ぱいしげったアマゾンのような原生林の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って東京ドーム十個分の芋をほりちらしたり、菜種油の貯めてあるタンクへ火をつけて村を焼き払ったり、百姓家の裏手に建っている発電用風車の羽をむしりとっていったり、いろんなことをしました。
 或秋のことでした。二、三年雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
 雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。空はからっと晴れていて、ごんが穴から出たことを知らせる警戒警報が地の果てまできんきん、ひびいていました。
 ごんは、村を流れる黄河の十倍ぐらいある川の堤まで出て来ました。あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。川は、いつもは水が少いのですが、三年もの雨で、水が、どっとまし、辺りの村々は全て水没していました。ただのときは水につかることのない、川べりの大きな鉄塔や、世界一長い橋が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。ごんは川下の方へと、すっかり水没した高速道路を歩いていきました。
 ふと見ると、川の中にシュワルツネッガーを百倍屈強にしたような人がいて、何かやっています。ごんは、見つからないように、そうっと原生林の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。
「兵十だな」と、ごんは思いました。兵十はその名の通りグリーンベレーの選りすぐりの兵隊十人を瞬殺したという人類最強の男で、盛り上がった筋肉によってぼろぼろにはち切れた黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、総延長五十キロに及ぶ定置網をゆすぶっていました。はちまきをした顔の横っちょうに、お盆が一まい、大きな黒子みたいにへばりついていました。
 しばらくすると、兵十は、定置網の一ばんうしろの、袋のようになったところを、水の中からもちあげました。その中には、車や家や橋の残骸などが、ごちゃごちゃはいっていましたが、でもところどころ、白いものがきらきら光っています。それは、鯨ぐらい太いうなぎの腹や、ジンベエザメぐらい大きなきすの腹でした。兵十は、体育館ぐらいの大きさのびくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみと一しょにぶちこみました。そして、また、袋の口をしばって、水の中へ入れました。
 兵十はそれから、びくをもって川から上りびくを山の峰においといて、何をさがしにか、川上の方へかけていきました。
 兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと原生林の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。ちょいと、いたずらがしたくなったのです。ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、定置網のかかっているところより下手の川の中を目がけて、大谷翔平投手のような豪速球でびゅんびゅんなげこみました。どの魚も、「ドゴォォォン!」と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみ、大きな水柱を立てました。
 一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。うなぎは、キュオオオオオオンと超音波のような叫び声を上げてごんの首へまきつきました。そのとたんに兵十が、向うから、
「うわア石川五右衛門とアルセーヌ・ルパンと怪盗セイント・テールを足して三で割らない大泥棒狐め」と、地球の裏側でも聞こえるような大声でどなりたてました。ごんは、びっくりしてとびあがりました。うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままごんを縊り殺さんと巨大重機のような力で締めあげてはなれません。ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、超音速旅客機コンコルド並みの速度でにげていきました。
 ほら穴の近くの、ごんの挙動を監視するためのセンサーの下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。
 ごんは、ほっとして、象ぐらいの大きさのうなぎの頭をかみくだき、なおも圧搾機のような力で締めあげてくる胴体を渾身の力でやっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。


 十日ほどたって、ごんが、大日本プロレスを代表する悪役レスターである”地獄のカントリーエレベーター”弥助の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木で懸垂をしながら、弥助が、おはぐろをつけていました。総合格闘技界の若きカリスマ、”溶接王”新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛がダンベルを上げながら髪をセットしていました。ごんは、
「ふふん、格闘技村に何かあるんだな」と、思いました。
「何だろう、異種格闘技戦かな。異種格闘技戦なら、プレスリリースがありそうなものだ。それに第一、告知ののぼりが立つはずだが」
 こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に手掘りで地下30キロまで掘り抜いた赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その大きな、兵十が歩くたびに立てる地響きによってこわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきのコック服を着て、腰に手拭をさげたりした三ツ星シェフたちが、厨房で下ごしらえをしています。大きな鍋の中では、本日のメインディッシュである”比内地鶏胸肉の香草和え~キャビアを添えて~”がぐずぐず煮えていました。
「ああ、葬式だ」と、ごんは思いました。
「兵十の家のだれが死んだんだろう」
 お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、坐像としては日本一の高さの大仏さんのかげにかくれていました。いいお天気で、遠く向うには、ごんから人類を守るためのお城の大砲が光っています。墓地には、ラフレシアより大きなひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。と、延暦寺東大寺金剛峯寺増上寺永平寺など日本中の名だたる寺から一斉に、ゴーン、ゴーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。
 やがて、世界各国から集った黒い喪服を着た葬列のものたち七十万人がやって来るのがちらちら見えはじめました。話声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。人々が通ったあとには、ひがん花が、跡形もないほど木っ端微塵にふみおられていました。
 ごんはのびあがって見ました。兵十が、白いかみしもをつけて、3m程の位牌をささげています。いつもは、赤い閻魔大王みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
 ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。
 その晩、ごんは、穴の中で考えました。
レスリング女子世界チャンピオンだった兵十のおっ母は、床についていて、巨大うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十が定置網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母に世界三大珍味を始め、ありとあらゆる有名店の美味しいものは食べさせても、巨大うなぎだけは食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、巨大うなぎが食べたい、ゴテゴテに脂が乗って胃もたれがする巨大うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

 

 兵十が、世界一深い井戸のところで、指懸垂をしていました。
 兵十は今まで、おっ母と二人きりで、ストイックなくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
 こちらの道場の後から見ていたごんは、そう思いました。
 ごんは道場のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」
 ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、
「いわしを五千匹おくれ。」と言いました。いわしの仲買人は、いわしをつんだトラック三百台を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを満載にした発泡スチロール容器を三百人がかりで、弥助の家の中へもってはいりました。ごんはそのすきまに、車列の中から、五、六台のトラックをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の屋敷の裏口から、屋敷の中へトラックを投げこんで、穴へ向ってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、落ちたら骨まで砕け散る井戸のところで小指一本で懸垂をしているのが小さく見えました。
 ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
 つぎの日には、ごんは栗がなった木々を山ごと削りとって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、鶏のささみ肉十キロの午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことには兵十の頬ぺたに、かすり傷がついています。ボクシング世界ヘビー級王者と戦った時も傷一つつかなかった兵十の顔にです。どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとをいいました。
「一たいだれが、いわしのトラックなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし仲買人のやつに、ひどい目にあわされかけた。まさかトラック三百台が一斉に突っ込んでくるとはな。受け止めるのはなかなか骨だったぞ」と、ぶつぶつ言っています。
 ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし仲買人にトラック三百台で突っ込まれて、あんな傷までつけられたのか。
 ごんはこうおもいながら、そっと兵十の三十年連続総合格闘技世界王者防衛を記念して建てられた東洋一の大きさを持つ道場の方へまわってその入口に、山をおいてかえりました。
 つぎの日も、そのつぎの日もごんは、山を丸ごと削り取っては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗の山ばかりでなく、まつたけの生えた松の山も二、三個もっていきました。


 月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を間断なく降り注ぐ砲弾を手で払いのけながら通ってすこしいくと、非常時には戦闘機が離着陸するために滑走路並みに広くなっている道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと緊急警報が鳴っています。
 ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というムエタイ世界王者でした。
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。
「ああん?」
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
「何が?」
「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに大量の土砂を、まいにちまいにちくれるんだよ」
「ふうん、だれが?」
「それがはっきりとはわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
 ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
「ほんとかい?」
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。俺の屋敷を埋め尽くす土砂の山を見せてやるよ」
「へえ、へんなこともあるもんだなア」
 それなり、二人はだまって歩いていきました。
 加助がひょいと、後を見ました。ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。加助は、ごんには気づいていましたが、そのままさっさとあるきました。吉兵衛という館長の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンとサンドバッグを叩く音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、兵十よりさらに大きな坊主頭がうつって動いていました。ごんは、
「連合稽古があるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。しばらくすると、また三万人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。千人組手の声がきこえて来ました。


 ごんは、吉兵衛館長主催の一週間で参加者の九割が病院送りになるという連合稽古がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。中山将軍が最終防衛ライン死守のために投入した戦車部隊をふみふみいきました。
 お城の前まで来たとき、振りかかる火の粉を払いながら加助が言い出しました。
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、怪獣のしわざだぞ」
「まあそうだろうな」と、兵十は飛んできた流れ弾をかわしながら、うんざりした顔で、加助の顔を見ました。
「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、怪獣だ、怪獣が、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
「そうかなあ」
「そうだとも。だから、まいにち怪獣にお礼参りをするがいいよ」
「無茶を言うな」
 ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、怪獣にお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。


 そのあくる日もごんは、栗山をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は道場で縄登りのトレーニングを行っていました。それでごんは屋敷の裏口から、こっそり中へはいりました。
 そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が屋敷の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
 兵十は立ちあがって、中山の城に設置してある、対ごん戦に特化して開発された砲身長30mの520mm榴弾砲をとってきて、火薬をつめました。
 そして足音をしのばせてちかよって、今門を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、びくともしませんでした。兵十は五百発ほど打ち込みました。ごんはかすり傷一つ負っていません。兵十は榴弾砲を剣のように構えると、ごんの足に五千連撃を叩き込みました。ようやくごんは足をくじいてばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、家の大部分が栗山で押しつぶされているのが目につきました。
「おやおや」と兵十は、うんざりした顔でごんに目を落しました。
「ごん、やはりお前だったのか。いつも栗山をくれたのは」
 ごんは、お礼を言われることを期待したきらきらした目で、うなずきました。
 兵十は榴弾砲を地面に叩きつけました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。

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