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シラーPERとリターンの検証

シラーPER(CAPEレシオ)というノーベル経済学賞受賞学者のロバート・シラー教授が考案した株式指標がある。通常のPERが1年間の利益を元に算出するのに対し、シラーPERは過去10年間の利益をインフレ調整して用いる。

PER=株価/1株当たり純利益
シラーPER=株価/過去10年間の1株当たりインフレ調整後平均純利益

PERは株の割安さの指標で、PERが低い程割安だ。
通常のPERはコロナショックのように短期的に利益が落ち込んだ時に分母の急減によって急騰するが、長期的に見ると良い買い場だったりする。
シラーPERは過去10年間の利益を用いているので、通常のPERより長期的に割安かどうかを判断するのに適しているのだ。

S&P500のシラーPERと、1,2,5,10年後のリターンのグラフを示す。
(S&P500 1990年1月~2020年7月の月次データを用いた。)

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シラーPERと1年後リターンは相関係数-0.289とほぼ相関はない。2年後リターンとも-0.439と非常に弱い相関しか見られない。

 

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5年後リターンだと-0.672と負の相関が見られ、10年後リターンだと-0.854と強い負の相関が見られる。

 

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シラーPERと1~10年後のリターンとの相関を示す。年数が増えるほどリターンとの相関が強まっている。

ちなみにシラーPERと1ヵ月後のリターンとの相関は-0.0607と全く相関はない。
シラーPERが30を超えると暴落の危険が高まるという説があるが、シラーPERは短期リターンとは無相関なので根拠はない。

2020年7月24日現在、シラーPERは29.97とかなり割高だ。だが、シラーPERが33.7以下では10年後リターンがマイナスになったことはない。

シラーPERが29~30.99の際の平均リターンは5年が28.51%(年平均5.14%)、10年が33.67%(年平均2.94%)だ。
年平均2.94%はそれほど良いリターンではないが、他に年平均2.94%で運用できる資産がないので、売り払った方が良いわけでもない。
(下落リスクがあるのに年平均リターンが2.94%では割に合わないと考えるのなら売り払っても良い。ただし、現金もインフレリスクがあるので安全ではない。)

米国株は長期的にはプラスサムなので、基本的にはバイ&ホールド戦略が適している。
ただし、32.5を境に5年リターンの期待値がマイナスになっている。今後シラーPERが上昇し、32.5を超えたらある程度売った方が良さそうだ。

 

Shiller PE Ratio by Month