東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)の投資と評論サイトです。ジオシティーズ(http://www.geocities.jp/shinonomenod/)から移転してきました。

米国債利回りと米国株益利回りの関係式から予想する今後の米国株価

資産利回りの妥当性は他の資産との相対評価によって決まる。
米国債の利回りがほとんど0%であれば、株式の利回りが低くても皆我慢する。だが、米国債の利回りが3%あれば、株式にもそれ以上の利回りが要求される。

米国中銀のFRBは来年にも利上げをすることが見込まれている。米国債利回りが上昇すれば、株式はより高い利回りが求められるため、株価の下落圧力になる。
今後、米国債利回りが2%、3%へと上昇した場合、米国株はどの程度下落するのだろうか。
そこで、過去の米国10年債利回りとS&P500益利回り(PERの逆数)の週次データを用いて散布図を描いてみた。

コロナショックがある程度落ち着いた2020年5月31日~2021年11月24日の散布図を示す。(縦軸がS&P500益利回り、横軸が米国10年国債利回り

f:id:shinonomen:20211129170055p:plain
近似直線を描いて求めた両者の関係式は下記の通りだ。
Y = 0.6696X + 3.4352 (X=10年国債利回り、Y=S&P500益利回り)

11月28日の10年債利回りが1.531、11月26日のS&P500益利回り概算値が4.56%なので、11月26日現在のS&P500は関係式より2.19%割安だ。
10年債利回り(金利)が2%、2.5%、3%に上昇した場合のS&P500益利回りを示す。

金利 益利回り PER 騰落率
1.531 4.46 22.42 2.19
2 4.77 20.95 -4.53
2.5 5.11 19.57 -10.79
3 5.44 18.37 -16.28


金利が2%まで上昇した場合、S&P500は4.53%下落する。
S&P500は2022年1-3月期に4.8%の増益が見込まれている。4.53%程度の下落であれば、増益と相殺されるので、さほど恐れる必要はない。

だが、コロナ前のデータも用いて散布図を描くと、だいぶ様相が異なる。
2019年年初から2021年11月24日の散布図を示す。(縦軸がS&P500益利回り、横軸が米国10年国債利回り

f:id:shinonomen:20211129170214p:plain近似直線を描いて求めた両者の関係式は下記の通りだ。
Y = 0.9408X + 3.4886 (X=10年国債利回り、Y=S&P500益利回り)

この関係式では、11月26日現在のS&P500は7.53%割高になる。
同様に10年債利回り(金利)が2%、2.5%、3%に上昇した場合のS&P500益利回りを示す。

金利 益利回り PER 騰落率
1.531 4.93 20.29 -7.53
2 5.37 18.62 -15.13
2.5 5.84 17.12 -21.96
3 6.31 15.85 -27.78


金利が2%まで上昇した場合、S&P500は15.13%下落する。コロナショックの半分程度の下落であり、株式市場へのダメージは大きい。

グラフの右上にあるのがコロナ前、左上にある外れ値がコロナショック中、左下がコロナショック後だ。
コロナ前とコロナ後で、国債利回りと株式益利回りの関係が大きく異なっていることが分かる。コロナ後はコロナ前より割高な株価が許容されている。
右上のコロナ前のみのデータで近似直線を描くと下記の関係式となる。
Y = 0.7325X + 4.1301 (X=10年国債利回り、Y=S&P500益利回り)

この関係式では、11月26日現在のS&P500は13.21%割高になる。

金利 益利回り PER 騰落率
1.531 5.25 19.04 -13.21
2 5.60 17.87 -18.54
2.5 5.96 16.77 -23.54
3 6.33 15.80 -27.97

 

関係式がコロナ前後で異なる原因として考えられるのは、各国の金融緩和だろう。FRBは毎月国債と住宅担保証券を購入。米国政府は国民に給付金を支給し、大量のお金が市場に流れ込んだ。市場参加者は多くのお金を何らかの方法で運用しなくてはならないので、低い利回りを許容し、割高な株価が形成された。

だが、この状態が永続するとは考えにくい。FRBは2021年11月からテーパリング(国債と住宅担保証券の購入額の減額)を開始した。市場に溢れかえったお金の量が元に戻れば、国債利回りと株式益利回りの関係はコロナ前に戻るはずだ。
FRBが金融引き締めに転じ、両者の関係がコロナ前に戻ると、S&P500は13.21%下落する。

「株高は貨幣現象とも言える マネーストックと PER」によると長期的にみて株価(PER)とマネーストック(民間部門が保有する通貨量)は緩やかな相関関係にある。

https://www.dlri.co.jp/pdf/macro/2020/fuji2020915mf.pdf

金融が引き締められれば、PERは下落するのが自然だ。

 

ただし、FRBが株価が13.21%も下落するのを許容するとは思えない。株価が13%も下落しそうになったら、FRBは利上げの延期を表明して、市場の沈静化を図るだろう。従って、コロナショックのような株価の大暴落が起こる確率は低い。
(ただし、インフレがどうしようもなくなって、インフレ退治のためにとにかく利上げだ!株式市場の下落など知るか!となって暴落する可能性はある。)

だが、米国株には、潜在的に7.53~13.21%もの下落圧力がかかっている。来年の米国株は今年のような大きな上昇は見込めそうもない。増益によって益利回りが上がって、徐々にコロナ前の関係式へと近づいていくのではないだろうか。