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和牛はなぜM-1グランプリで優勝できなかったのか

 M-1グランプリ2018は霜降り明星が優勝した。一個一個のボケ-ツッコミのレベルが高く、大笑いしながら見ていたので優勝には納得だ。
 一方、練りこまれた脚本で唸らされた和牛も霜降り明星に勝るとも劣らない出来だったが、またもや僅差で優勝を逃し、3年連続2位だった。

 和牛はなぜ優勝できなかったのだろうか。理由の一つとして、何度も決勝進出していることがある。
 何度も決勝進出すると何故不利になるのか。二つの理由がある。

1審査員の慣れ
 漫才の面白さの一つに斬新さ、新鮮さがある。
 「へりくつ漫才」と言われる和牛のスタイルは初めて見た時は斬新だった。だが、現在は何度も見ているため、新鮮さは感じない。審査員も同様だろう。
 霜降り明星と和牛のスタイルの斬新さは同程度だと思うが、審査員からすると、初の決勝進出である霜降り明星の方がより新鮮に感じたのではないだろうか。

 また、何度も決勝進出していると過去のネタと比較されてしまう点も不利に働く。和牛のベストネタは2017年ファーストラウンドの「ウエディングプランナー」だろう。審査員は、あの時2位だったのだから、優勝するにはあれを超えるネタを披露して欲しいと感じるのではないか。

2ネタのストック
 もう一つ和牛が不利だったのは、ネタのストックだ。
 和牛は過去に何度も最終決戦に進出し、過去に作っためぼしいネタは既に披露してしまっているので、今年1年間で作ったネタの中から二本選ばねばならない。
 一方、初進出の霜降り明星は過去に作った全てのネタの中から二本選んで臨むことができた。和牛が過去1年分のストックしかないのに対し、霜降り明星は結成以来5年分のネタから選ぶことができた。これは大きなアドバンテージだ。
 もし、和牛が初進出だったら、決勝で「ウエディングプランナー」のネタをやって優勝していたのではないだろうか。


 二組以外では、トム・ブラウンのサザエさんの中島君を5人合体してナカジマックスを作るネタが印象に残った。ナカジマックスは何かのダジャレになっているわけでもないし、なぜ中島君を5人合体させようと思いついたのかが全然分からない。
 お笑いにはパターンがあり、何故面白いのかある程度論理的に説明できる。ナカジマックスはなぜ面白いのか全然分からないが、何故か面白い。
 M-1グランプリは人生が懸かった舞台であり、普通は面白さの裏付けのあるネタをやりたくなるものだ。
 どうやって思いついたのか全然分からないネタを思いついた発想力と、大舞台で何故面白いのか良く分からないネタをかけた勇気に感心した。

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