東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

2019年テレビアニメベスト10

今年は例年よりはテレビアニメを観たので、ベスト10を発表する。
とにかく面白いもの、レコーダーに未見の作品があったら真っ先に見たいもの、という観点で選出したらメジャーなものばかりになってしまった。
ジャンプ作品が4つも入っている。一時期低迷が囁かれていたが、新たな黄金期に入ったのではないだろうか。

 

1)鬼滅の刃(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメ制作:ufotable

家族を鬼に殺された炭治郎が、鬼にされてしまった妹禰豆子を人間に戻すため、鬼と戦っていく大人気バトルアニメ。
本作の特徴はメインキャラが少年も少女もみんな可愛いことだ。炭治郎は頑張り屋さんで可愛いし、禰豆子はお兄ちゃん子で可愛いし、善逸はヘタレで可愛いし、伊之助はツンデレで可愛い。バトル物少年漫画で主要キャラがみんな可愛いのは珍しい。
例えば緋村剣心は普段は可愛いが、敵と戦う時は雄々しくなって格好良い。だが、炭治郎は敵を屠る時すら優しくて可愛い。カードキャプターさくらを思わせる可愛さだ。作者女性説が有力なのもうなずける。

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2)約束のネバーランド(原作:白井カイウ出水ぽすか、監督:神戸守、アニメ制作:CloverWorks)

エマ達孤児院で暮らす子どもたちが秘密を知ってしまったことから始まるコンゲーム。1話の衝撃がすごい。
昔のジャンプ作品はドラゴンボールに代表されるようにストーリー展開は行き当たりばったりだが、キャラとエピソードが強いので面白いマンガが多かったが、最近はストーリー展開が緻密な作品が増えた。
本作はその最たるもので、門に近づいてはならないという<禁止>を破ったことから<罰>を受けるというように物語理論をきっちり学んでストーリーを練り上げている。

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3)ゴールデンカムイ(原作:野田サトル、監督:難波日登志、アニメ制作:ジェノスタジオ)

日本軍兵士杉元とアイヌの少女アシリパがタッグを組んでアイヌの残した金塊を探す冒険活劇。
銃撃戦になったかと思えば、騙し合いになり、敵と見方が入れ替わったりと展開が目まぐるしく変わり、全く先が読めない。
普通の生活を送るのに必要な何かが欠落した人間ばかり登場するが、彼らを否定せず訥々と描写することで、そう生きるしかなかった悲しみが際立っている。特に尾形と谷垣の過去回が心に残った。

 

4)かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(原作:赤坂アカ、監督:畠山守、アニメ制作:A-1 Pictures

生徒会長白銀と副会長かぐやが両思いなのに互いに相手から告白させようと、知略を尽くして無駄に戦うギャグアニメ。
最初はアホかいと笑いながら見ていたのだが、彼らが相手から告らせようとしているのは、相手より優位に立ちたいからではなく、相手に拒絶されるのが怖いからではないか、と気付いて見方が変わった。
これはハイスペックな変人の話ではなく、普遍的な恋愛物語なのだ。

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5)Dr.STONE(原作:稲垣理一郎Boichi、監督:飯野慎也、アニメ制作:TMS/8PAN)

全人類が突如石化。それから数千年が過ぎた世界で、天才高校生石神千空が一から科学文明を再構築していくという気宇壮大なSF。
ジャンプで緻密な話が増えたと書いたが、本作はジャンプ伝統の大風呂敷がすごいタイプの作品。
少年漫画で主人公が科学者というだけでも珍しいが、さらに科学の素晴らしさ、科学的探求のワクワク感を真正面から描いており、本作に触発されて科学者を目指す若者が大勢いるだろうと思うと、科学界への貢献は計り知れない。
敵役の司が科学を目の敵にしている理由が腑に落ちない。司を通して科学の負の側面を掘り下げて描けば、もっと深い話になると思うのだが。

 

6)からかい上手の高木さん2(原作:山本崇一朗、監督:赤城博昭、アニメ制作:シンエイ動画

高木さんがあの手この手で西片をからかうアニメ。
とにかく高橋李依さんの囁くような声音が絶品で、毎回身悶えしながら見ていた。
女子三人組の話が間に挟まるのだが、30分ぶっ続けで高木さんにからかわれていたら悶え死ぬので、適切な処置である。
1期の時はひたすら高木さんが可愛かったのだが、西片も可愛いことに気がついた。高木さんがからかいたくなるのもよく分かる。

 

7)バビロン(原作:野﨑まど、監督:鈴木清崇、アニメ制作:REVOROOT)

正崎検事が自殺法を制定しようとする得体のしれない存在と戦うサスペンス。
とにかく毎回予想をはるかに超えて最悪の展開になっていくのがすさまじい。
野崎まど氏の作品に触れると、自分が無意識の内にリミッターを設定し、その中でだけ考えていたということに気付かされる。
自由意志による幸せな自殺は悪かという哲学的な問いがテーマになっているのだが、自殺は幸せであるという認知の歪みを生じさせることが悪なのだ。自爆テロと同じ構図だよね。

 

8)女子高生の無駄づかい(原作:ビーノ、監督:さんぺい聖、アニメ制作:パッショーネ

女子高生達が青春を浪費している様を描いた日常アニメ。
あそびあそばせ」が萌えアニメの皮を被ったギャグアニメだとすれば、「女子高生の無駄づかい」はギャグアニメの皮を被った萌えアニメ。バカ以外全員萌えキャラじゃないか。
全キャラに端的なあだ名がついているのでキャラ名が覚えやすいし、あだ名に引っ張られてキャラが立っている。
第一印象が最悪だったワセダが段々良い先生に思えてくるのが面白い。

 

9)彼方のアストラ(原作:篠原健太、監督:安藤正臣、アニメ制作:Lerche

宇宙の彼方に転送されてしまった9人の少年少女が、母星への帰還を目指すスペースオペラ
それだけで話の主軸になりそうな大ネタが三つ、四つあり、各キャラクターが抱える葛藤の克服があり、さらに訪れる惑星でのトラブルもあるというてんこ盛りな内容。
本作では国家や宗教が消滅し全部自分で決めるということが肯定されていたが、死の恐怖を前にして宗教のようなものにすがるのは悪いことなのかといったことを考えさせられた。

 

10)賭ケグルイ××(原作:河本ほむら尚村透、監督:松田清、アニメ制作:MAPPA

ギャンブルの腕で序列が決まる私立百花王学園で、蛇喰夢子達が様々な勝負を繰り広げるギャンブルアニメの第二期。
ギャンブルでぎりぎりの精神状態に追い込まれた様が、異様にデフォルメされた絵と振り切った演技で表現されており、見ているとアドレナリンがドバドバ出てくる。
夢子を始め、ネジが外れたような連中ばかり出てくるのだが、根幹の所では疎外された人間が自らを取り戻すという普遍的なことが描かれている。特に扉の塔の話は心に残った。

 

 

S&P500+Jリート―スリーシーズンズポートフォリオ

1)米国株と日本株を組み合わせてもリスク当たりリターンは改善しない。

先月の記事でS&P500に日本株新興国株を混ぜて全世界ポートフォリオを作る方法を紹介した。
全世界ポートフォリオは効率的市場仮説という経済理論に基づいている。割安な株があったらただちに買いが殺到して適正な価格まで値上がりするので、市場で流通している株はどれもリスク当たりのリターンが等しくなる。実際には値上がりする株と値下がりする株があるわけだが、それを事前に予想することはできない。そうであるならば、できるだけ広く分散して世界中の株を少しずつ買うのが、最もリスクが少なくなると言うのだ。

だが、近年のリターンやリスクを見る限り、S&P500に日本株新興国株を混ぜても良いことはない。
下のグラフは2016年1月から2019年11月のSPDR S&P500 ETF(1557)と日経平均を混ぜた場合の1日当たりのリターンとシャープレシオ(リスク当たりリターン)を示したものだ。

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横軸がS&P500の組み入れ比率である。S&P500 100%の時がリターン、シャープレシオ共に最も高くなっている。
リスクのグラフを見ると、日経平均はS&P500よりリスクが高く、また値動きも似ているため混ぜても大してリスクが下がらないことが分かる。

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SPDR S&P500は円ベースなので為替リスクを含んでいる。にも関わらず、為替リスクがない日経平均よりリスクが低い。一般に米国株は日本株よりハイリスクなイメージがあるが、間違いであることが分かる。

もちろん、過去のリターンは将来のリターンを保証するものではない。米国が突然没落する可能性もあるので、株式を地域分散して持っておくことにも意味はある。
現在は米国株が割高なので、来年は相対的に割安な新興国株や日本株の方がリターンが高くなる可能性はある。
だが、新興国株や日本株は米国株よりリスクが高く値動きも似ているのだから、リスク軽減のために新興国株や日本株に分散するのは間違っている。リスクを軽減したいのなら、リスクが低く、S&P500とは異なった値動きをする資産と組み合わせるべきだ。


2)米国株とJリートを組み合わせることで効果的にリスクを減らせる。

通常、株式と混ぜてリスクを軽減するのは債券の役目だ。だが、現在日本債券はマイナス利回りだし、外国債券は為替リスクがあるのであまりリスク軽減にならない。

現状、債券の代替物として最も有力なのはJリートだ。Jリートは3.5%程度の利回りがあるし、通常の株式より値動きが小さい。
さらに、値動きもS&P500とは異なっている。11月に米中合意の機運が高まり株が値上がりすると、Jリートは急落。その後も軟調に推移している。つまり、株式と逆の値動きをしている。S&P500と組み合わせればリスクが軽減できそうだ。

そこで、2016年1月から2019年11月の約4年間の終値データで検証を行った。
SPDR S&P500 ETF(1557)とiシェアーズ・コア Jリート ETF(1476)を0~100%の割合で組み合わせた時のリターン、リスク、シャープレシオは下記のようになった。(横軸がS&P500の組み入れ比率。)

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最もリターンが高いのはS&P500 100%の時、最もリスクが低いのはS&P500 30%,Jリート70%の時だった。
シャープレシオはS&P500 40%,Jリート60%で最も高くなった。


リスクのグラフを見ると、日経平均と違ってJリートはS&P500よりリスクが低い上に値動きの連動性が低く、混ぜることで効果的にリスクを減らせていることが分かる。

その人のリスク許容度に応じて、S&P500のポートフォリオJリートを0%~70%組み込むことで個々人に最適なポートフォリオを作ることができる。
具体的にはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)とeMAXIS Slim 国内リートインデックスを組み合わせるのが最も簡単だろう。
(S&P500はSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド、JリートはSmart-i Jリートインデックスでも良い。)


3)スリーシーズンズポートフォリオ

S&P500 70%、Jリート 30%程度を標準に、各人のリスク許容度に応じてJリートの組み入れ割合を0~70%に変化させるポートフォリオをスリーシーズンズポートフォリオ命名する。

スリーシーズンズというのはレイ・ダリオのオールシーズンズポートフォリオにならったものだ。

kirarinasset.com

レイ・ダリオのオールシーズンズポートフォリオはリターンを多少犠牲にして厳冬期にも対応できるようにしたディフェンシブなポートフォリオだが、スリーシーズンズポートフォリオはリターンが高い分、厳冬期には暴落する。

Jリートは賃料収入を配当として出資者に還元する特殊な株で、家賃は企業の利益より安定しているため利益のブレが少ない。極めてディフェンシブな高配当株のようなものだ。だが、景気が悪化し、企業が次々拠点を絞ってオフィスビルがガラガラみたいな事態になれば賃料収入が減少するので、Jリートも大きく値下がりする。

おそらく、 スリーシーズンズポートフォリオが急落するまでには
1)S&P500が暴落し、Jリートが値上がり。
2)不況が深刻化し、Jリートも値下がり。
というステップを踏むことが予想される。
2)の厳冬期に対応するためには、1)でJリートをある程度売ってキャッシュを確保し、2)でS&P500を買い向かう必要がある。

スリーシーズンズポートフォリオは株式のみで構成されたポートフォリオよりは安全だが、本格的景気後退時にはそれなりの対処が必要なのだ。

 

京都のラーメン屋は研究機関

秋に二泊三日で京都出張に行った。京都の食べ物と言えば一般に和菓子や京野菜といったイメージだが、実は独創的なラーメン屋がひしめくラーメン激戦区なのだ。
ハイペースで京都屈指の人気店ばかり食べ歩いてきたのでレビューを記す。


本家第一旭たかばし本店 ラーメン750円

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京都駅近くにある有名店。11時の時点で20人ぐらいが並んでいる。隣の新福菜館も十数人が並んでおり、二大老舗ラーメン行列の競演みたいになっていた。
45分ぐらい並んで入店。じきに注文した750円のラーメンと250円の餃子が運ばれてきた。

 

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ラーメンは豚骨醤油スープとのことだが、豚油が効いた醤油ラーメンという感じ。普通のチャーシュー麺よりもどっさり乗ったチャーシューがうれしい。
もう一つの特徴がどっさり乗ったネギで、脂と重くなりがちなところにさっぱりとした刺激を与えている。
しっかり美味しいが、ものすごく変わっていたり異常にこだわっていたりするわけではないので、45分も並んでまで食べるほどではない。行くなら早朝など空いている時間が良いだろう。


吟醸ラーメン久保田 吟醸つけ麺味噌 870円 

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五条烏丸の繁華街からは少し外れた場所にある店。20時に行くと、外国人中心に十数人が並んでいた。40分程待って入店。店内はカウンターのみ十席で、店員二人だけで切り盛りしている。

 

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吟醸つけ麺味噌のスープを口に運んだ時の感想は「何だとー!」というもの。横綱が後ろ回し飛び蹴りを放ってきたような衝撃で、今まで食べたラーメンの中で最も予想外の味だった。
ベースは甘い味噌ベースの魚介系濃厚スープなのだが、少量入れられたタバスコ?がとにかく効いていて、一気にピザみたいな味になっている。
発想としては辛子味噌ラーメンに近いのだが、辛子味噌ラーメンの辛子がどっさり入っているのに対し、こちらのタバスコは隠し味的に少量入っているだけでそれほど辛くないのに味としての主張は非常に強いという点が異なっている。
タバスコのせいで、めちゃくちゃこだわって取っただろう魚介出汁スープの印象が薄くなってしまっている。大胆というか贅沢というか。
今まで食べたことのないラーメンを食べてみたい人はぜひ行くべきだ。


あいつのラーメンかたぐるま こくとんしょうゆラーメン 750円

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有名店あっぱれ屋で修行した弟子が開いたという店。こちらも有名店だけに混んでいるかと思ったが、行列もなくすんなり入店できた。丹波口という近くに観光地もなくバスの便も悪いという立地のせいか。外国人観光客が一人もおらず、外国人向けのガイドに掲載されていないのだろう。
店内はカウンターのみ15席程で、三人の店員で切り盛りしていた。
スープを一人前ずつ攪拌機で泡立てていて、手間暇かけて作っているのが伝わってくる。

 

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注文したこくとんしょうゆラーメンは魚粉がたっぷり入った魚介系ラーメン。大きな二枚のチャーシュー、大きなメンマ三本、煮卵が配され見た目的にも美しい。
スープはびっくりするような味ではないが、塩分控えめの上品な味わいで毎週のように通いたくなる味。麺はツルツルしていてのど越しが良い。半生のチャーシューも美味い。細部までこだわって作られたしみじみと美味いラーメンだ。


麺処鶏谷 熟成鶏そば 800円 

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西院駅から1キロ程四条通を歩いた所にある店。九時前に行ったのだが、カウンター+テーブル一席はほぼ満席だった。こちらも日本人客のみ。スタッフは三人。

 

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あっさりの鶏そばと濃厚な熟成鶏そばがあり、せっかくなので熟成鶏そばを注文した。
こげ茶色のスープの上に半生と火が通ったチャーシュー二枚ずつが配され、蝶々のようだ。
とにかく驚くのがスープの濃厚さ。過去食べたラーメンの中で最も濃厚なのは間違いない。おそらく小麦でとろみをつけているわけでもないのに、カレー並みのとろみがあるというのは尋常ではない。魚の甘露煮の鶏バージョンを飲んでいるような感覚だ。
細めの麺に超濃厚なスープが絡みつき、濃厚なのにすいすいと箸が進む。スープだけ飲むと塩分が濃すぎるのが唯一の難点だ。


麺屋極鶏 鶏だく 750円

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京都屈指のラーメン激戦区一乗寺の中でも抜けた人気を誇る名店。16時頃行ったら行列はなかったが、10分ぐらい腹ごなしに歩きまわってから戻ってきたら10人ぐらい並んでいた。おそるべし人気店。
だが、ここも外国人客は全くいなかった。京都駅周辺の店にしかいかないとは、調べが浅いぞ外国人。
店内はカウンターとテーブル一つだが五人程の店員が働いており、一人が誘導をしてくれているので、スムーズに入店できた。

 

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店内にはおしゃれな洋楽がかかっている。名物の鶏だくを注文。丼が置かれた瞬間、ネギの上に乗った刻み柑橘類の香りがして食欲を掻き立てられた。
最大の特徴はムースのようなスープだろう。いくら濃厚なスープでもドロドロした液体だが、鶏だくでは完全に個体。くるみ豆腐を柔らかくしたような食感だ。そこまで濃厚だとさぞかし重いのかと思いきや、油っぽくなくてふわふわしているので、食感はむしろ軽い。ムース状のスープが固ゆでの麺に絡みつく。ラーメンと皿うどんの中間のような感覚だ。久保田も唯一無二だったが、あれはまだ変わった味のラーメンだった。だが、これはもはやラーメンではなく、鶏だくという新しい食べ物だ。普通のラーメン屋が町医者だとすれば、麺屋極鶏はiPS研究所だ。それぐらいの格の違いを感じて圧倒された。
唯一難点を上げるなら塩気が強すぎるかなとは思うが、新しい料理を創設し、どうすればスープがこんなことになるのか見当もつかないという時点で平伏するしかない。一乗寺は京都の北の外れだが、市バスを使えば230円で行ける。ラーメン好きなら京都を訪れた際はラーメン界の極北を一度味わっておくべきだ。


おまけ
めんや鶏志 濃厚鶏白湯そば 780円

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麺屋極鶏と間違って入った店。私の前にいた客もここを出た後麺屋極鶏に入っていったので、間違えたものと思われる。一乗寺の駅から歩いて行くとこちらが先に目に入るので紛らわしいが、店名は鶏しか合っていないのだから、店を責めるわけにもいかない。

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女性店主が一人でやっている店で、鶏の煮凝りを飲んでいるような濃厚なスープ。生玉ねぎがアクセントになっており、細麺と相まって濃厚な割にするする食べられる。
なかなか美味しいが、唯一無二のラーメンという訳ではないので、上記の五店と並べるのはまだ早い感じがする。


今回、短期間に有名店を巡るため、初めてラーメン屋のはしごをしたのだが、血糖値が上がった状態で食べると美味しさがかなり減じてしまうことが分かった。
美味しいものを立て続けに食べると有難味が薄れる。このレベルの超絶美味しいものは月に一回ぐらい食べれば十分だ。

「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」感想――善性の笑い

 ナイツは昔から大好きな漫才師だ。膨大な数のボケを畳み掛けてくるヤホー漫才を生み出しただけに留まらず、他の漫才師のスタイルのパロディをやったり、「俺ら東京さ行ぐだ」にひたすらツッコミ続けたり、英語で漫才をやったり、今も次々と新しいスタイルを生み出している。
 「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」(ナイツ塙宣之 聞き手中村計、集英社新書)はそんなナイツのボケ、塙宣之氏が書いた漫才論ということでかなり期待して読み始めたのだが、期待を上回る面白さであっという間に読み終わってしまった。


 本書には三つの魅力がある。一つ目は漫才論として優れていることだ。
 漫才の面白さの核心について論理的に分析している他、現在活躍中のほとんどの漫才師に対して、どこが優れていてどこがダメなのかをズバズバ指摘している。
 M-1は「漫才という競技の中の一〇〇メートル走の日本一を決める大会」だとか、「関西のしゃべくり漫才はロック」で「オードリーはジャズ」など、なるほどと唸らされる指摘が多い。若手の漫才師はみな、ボロボロになるまで読んでいるんじゃないだろうか。


 二つ目の魅力は普遍的な仕事論になっていることだ。
 以下は塙氏にとってターニングポイントとなった気づきについて書かれた個所だ。

 もう一つ気づいたこと。それは、好きなことをしゃべればいいんだということです。
 それまでの僕は、ネタ中に噛んでしまうことがよくありました。原因は練習量や技術が足りないからだと考えていました。ところが、そうではなかったんです!
 小ボケをしているときは絶対、噛まないのです。自分のオリジナルのネタだから。自分がそういうのが好きだから。

 私は仕事上のミスが多く、何で自分はこんなにポンコツなんだ、とうんざりしていたのだが、それは仕事が好きではなく気持ちが入っていなかったからではないか、と気付かされた。
 確かに好きなことをやっている時、例えばブログの記事を書いている時は、自分の能力が十全に発揮できている。好きでないことは主体的に取り組めていないからミスをするのだ。
 仕事をやる上では上司や客先から制約を受け、嫌なこともしなくてはならない。だが、能力が高まる、好きなことをする方が、本人にとっても周囲にとってもWIN-WINであるはずだ。
 塙氏は自分が好きな小ボケを連発するというスタイルを築いてブレイクした。嫌なことをする能力を磨くより、自分が好きなことをできるような環境を構築することに努めるべきではないか。


 三つ目は青春小説としての魅力だ。本書はM-1という「初恋の人」に何度も挑んでは敗れてきた悔しさが赤裸々に語られている。それだけに、エピローグの審査員として帰ってきた時のエピソードには泣きそうになった。 

 お笑いには誰かをバカにする笑いと、慈しむ笑いとがある。塙氏は自虐ネタのような前者の笑いを嫌い、好きなことを語ったり、変な人を暖かく見守るような後者の笑いを好む。
 人間には善悪両面があり、前者の笑いは人間の悪、後者は善の現れだ。塙氏は人間の善性を信じているのではないか。だから、こんなに読後感が温かいのだ。

 

投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019に投票しました。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
長期成長性が高い、リスクが少ない、信託報酬が安いという三拍子そろった素晴らしい投資信託
iDeCoやつみたてNISAで二十年以上積み立てるなら、これ一本で十分だろう。

 

iシェアーズ・コア Jリート ETF
信託報酬最安のJリート投資信託
ポートフォリオのリスク低減のためには株に債券を組み合わせるのが基本だが、マイナス金利の日本債券は全く買う意味がない。
Jリートは債券に近い値動きだが3%程の利回りがあり、S&P500と組み合わせてリスクを低減させるのに最適だ。

 

eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)
低コストで日本や新興国株に投資できる投資信託
リスクオフで日本や新興国が大きく下げた時、うねり取りで買うのに適している。
eMAXIS Slim 米国株式と組み合わせることで、欧州株比率の低い全世界株ポートフォリオを組むのにも役に立つ。

shinonomen.hatenablog.com

 

SPDR S&P500 ETF
米国市場が大荒れの時は、下げたと思って投資信託を買った翌日に反発して想定より高く買ってしまうことが良くある。
そんな時は買値が分かるETFで買った方が安心だ。

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安いレトルトカレーレビュー

 以前は家でカレーを作っていたのだが、野菜の皮を剥くのが面倒くさくなってきたのでレトルトカレーを使い始めた。
 レトルトカレーと言うと高いイメージだったのだが、最近は100円ぐらいのレトルトカレーが沢山出ている。そこで、近所のスーパーと100円ショップで買い集めてきて比較してみた。
 なお、辛いのが苦手なので、甘口優先、甘口がなければ中辛という方針で買っている。

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野菜が決めてのカレー 甘口/BiaA/200g/69円
小麦粉たっぷりの給食や蕎麦屋のオーソドックスなカレー。最も値段が安い。

 

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ウチの定番カレー 甘口/大創産業/330g/100円
330gと最も量が多く、二食分にもできる。トマトペーストの酸味が強いのが特徴。

 

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Beef Curry 甘口/ニチレイフーズ/180g/100円
小麦粉たっぷりの弾力性の強いルーだが、チャツネが効いていて本格カレーよりの味。

 

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カレー職人 なすとトマトのカレー 中辛/江崎グリコ/170g/100円
トマトの酸味とブイヨンの旨味が効いている。肉は入っていない。中袋に蒸気吹出し口がついており、袋のままレンジでチンできる。

 

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カレー職人 老舗洋食カレー 中辛/江崎グリコ/170g/100円
なすとトマトの代わりに細切れの鶏肉が入っている。トマトの酸味がない他は似た味。

 

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カリー屋カレー 甘口/ハウス食品/200g/100円
牛脂分が多く、コクがある。視認できる大きさの具が入っており、特にちゃんと肉が入っているのには感動した。

 

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セブンプレミアム ビーフカレー 甘口/ハウス食品/180g/91円
ハウスが作っているのでカリー屋カレーとほぼ同じ味。少し量が少ない分安い。

 

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ベジタブルキーマカレー 中辛/ハウス食品/180g/100円
スパイスの辛味と野菜の甘みのバランスが絶妙。たっぷりひき肉が入っているのに感動した。

 

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おいしい1日分の緑黄色野菜カレー 中辛/エスビー食品/180g/100円
緑黄色野菜120gを使用したカレーで肉は入っていない。ソースの味が濃い。

 

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アジアングルメ紀行 バターチキンカレー 中辛/ハチ食品/150g/100円
他とは全然違う本格的な東南アジア風カレー。バターの旨味が効いている。

 

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カレー専門店のジャワ風カレー 中辛/ハチ食品/200g/100円
インゲンが沢山入ったアジア風カレー。マッシュルームとココナッツペーストが効いたまろやかな味。

 

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低糖質ビーフカレー 中辛/ハチ食品/150g/100円
低糖質のシャバシャバしたカレー。スパイスが効いていて、インドカレーと欧風カレーの中間のような味。

 

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ポケットモンスターカレー ポーク&コーン甘口/丸美屋/160g/100円
温めなくてもおいしいと言うだけあって、牛脂は入っておらず、野菜の甘みを活かした蕎麦屋のカレー。ちゃんとした大きさの具が入っている。ポケモンシール入り。ドラえもんプリキュアもある。

 

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それいけアンパンマンカレー 7種の野菜入り ポークあまくち/永谷園/50g×2/100円
幼児向けカレーでアンパンマンシール入り。1人前50gが2袋が入っている。とても甘く量も少ないので、わざわざ大人が買うものではない。


食べ比べてみた結果、三つのことが分かった。
1)ハウスは具だくさん。
さすが長年バーモントカレーを作っているだけあって、ハウス食品はレベルが高かった。他は肉が入っていなかったり、入っていてもほんのちょびっとのが多かったが、ハウスはしっかりとした肉が入っていた。特にベジタブルキーマカレーは100円なのにスパゲッティーのミートソースばりにどっさりひき肉が入っている。よく原価割れしないものだ。

2)量が多いのは大味。
100円だとどれも原価との戦いなので、量が多い商品は大味になってしまう。量が少ない商品の方が具やスパイスに金がかけられ、質が高い傾向にある。

3)蕎麦屋のカレーとアジアンカレーが美味い
欧風カレーだと100円で店の味を再現するのは無理なので、どうしても何かが足りない感じになってしまう。
小麦粉たっぷり蕎麦屋のカレーだと原価が安いので100円でも店のに近い味が再現できる。ポケモンカレーなど、子供向けかとなめていたが、かなり美味しい。
アジアンカレーは本格的なのをほとんど食べたことがないので、100円のでもとても美味しく感じた。(特にバターチキンカレー)。アジアンカレーを食べなれた人が食べると、何か足りないな、と思うのかも知れない。

 

eMAXIS Slim米国株式と3地域均等を組み合わせて格安全世界ポートフォリオを構築しよう

三菱UFJ国債投信がeMAXIS Slim 米国株式、全世界株式の信託報酬引き下げを発表した。

https://emaxis.jp/text/253266s_191015.pdf

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
0.15%以内 → 0.088%以内(税抜き。以下同様)

eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
0.12%以内 → 0.104%以内

 eMAXIS Slimシリーズは信託報酬同ジャンル内最安を掲げている。今回も脅威の格安信託報酬で殴りこんできたSBI・バンガード・S&P500にきっちり対抗値下げを打ってきた。

 ちょっと前まで米国株インデックスに投資するには売買手数料の高い米国ETFを買うか、信託報酬0.225%のiFree NY ダウ・インデックスを買うしかなかった。0.09%以下で買えるなんて良い時代になったものだ。

 私は積立投資をするならeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)一本で良いと考えている。(暴落リスクがあるので一括投資はダメだが。)
 現在は世界中の株の連動性が高まっており、米国株が下落すると他の地域の株も下落する。
 日本株新興国株を買ってもあまり分散効果がないのなら、人口増加国で長期成長性が高い上に信託報酬も安いeMAXIS Slim 米国株式だけ買っておけば十分だ。

 だが、米国株が割高なのは確かだし、1970年代には米国株が全然上がらない「株式の死」と呼ばれる低迷に陥ったこともあった。全世界に分散しておいた方がよいという考えにも一理ある。

全世界株式の地域別比率は下記の通りだ。
先進国81.58%(米国51.31%)
新興国 11.06%
日本 7.39%

 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を買うのも悪くはないが、細かいことを言うなら欧州株のウェイトを落としたい。
 日本から投資をする場合、米国株、新興国株、日本株にはそれぞれ下記のようなメリットがある。
米国→先進国で値動きが安定しているのに成長率は高い。
新興国→将来の成長率が高い。
日本→為替リスクがない。
だが、欧州株は成長率が低いのに為替リスクがあり組み入れるメリットがない。

 ゆうじろう氏が3地域均等型を推奨する記事を書かれている。

www.y-strategies.com


 私は3地域均等型は米国が日本よりウェイトが小さい誰得ファンドだと思っていたが、格安の信託報酬で新興国と日本に投資できるファンドだという指摘には眼から鱗が落ちた。
 現在の信託報酬は
eMAXIS Slim 新興国株式が0.189%以内
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)が0.140%以内
であり、0.104%以内の3地域均等型より大幅に高いのだ。日本株インデックスの手数料が米国株より高いのは納得がいかないが、各社とも日本株の手数料で稼いでいるのだろう。

 氏の提案を元に、3地域均等型を使って全世界ポートフォリオを構築してみた。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)70%
eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)30%
にすれば
先進国 80%(米国76.29%)
新興国 10%
日本 10%
で信託報酬0.0928%。欧州株のウェイトを大きく減らした上にオールカントリーより信託報酬が低い。


米国株のウェイトが高すぎて心配だという人は、下記の組み合わせでも良い。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)40%
eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)30%
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)30%
先進国 76.42%(米国62.9%)
新興国 13.58%
日本 10%
で信託報酬0.0976%。欧州株ウェイトを下げた分を比較的バランスよく割り振れている。


 全世界株式によるポートフォリオ構築をお勧めしたものの、私自身はまだ買ったことがない。
 全世界株式の欠点は、どの地域が値上がりしているのか良くわからないことだ。
 また、日本株新興国株だけ割安に捨て置かれているような場合に、ピンポイントで追加投資できない。
 全世界株式だけでポートフォリオを構築するのは、アクセルとブレーキだけの、ハンドルがない車に乗っているようなものだ。これではスキルは身につかない。

 投資に興味はないが、20年ぐらいのスパンで長期的にお金を増やしたい人は、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)か上記の全世界ポートフォリオを積立にして放っておけば十分だ。生兵法は怪我の元なので、積み立てていることなど忘れていた方が良い。
 だが、投資スキルを磨きたいのなら、信託報酬は高くても、eMAXIS Slim 日経平均やeMAXIS Slim 新興国も少しは買って、売買してみた方が良いだろう。