東雲製作所

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長期の下げ相場にどう対処すべきか

 株の下落が長引いている。12月18日時点で、米国のS&P500は10月の最高値から14.9%、TOPIXは16.7%下落している。両指数とも、Wボトムの抵抗線を突き破って下げてしまったため、どこまで下がるか見当がつかない状況だ。

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 私は米国株はいつ下げ止まるかで書いた通りS&P500は10月29日の2641付近で下げ止まると予想していた。しかし、大ハズレになってしまったので、戦略の練り直しが必要になった。

 エコノミストは総じて景気は比較的堅調で、株は下げ過ぎだと主張している。バロンズ拾い読みによると、10人のストラテジストによる2019年末のS&P500の平均予想値は2975。最も悲観的な人でも2750と答えており、直近の2,546.16より上げることで一致している。
 PER的にも、ダウ平均が15.38、日経平均が11.8と割安水準にあり、長期的に見れば買い場のはずだ。
 問題はいつまで、どこまで下げるか分からないため、無闇にナンピンを繰り返していると、途中で資金が底をつく恐れがあることだ。
 対処法として下記の四つの方法が考えられる。


1持ち株を塩漬けにして相場から離れる
 最もディフェンシブな対処法。現金比率を上げて守りを固めろと言っている多くのエコノミストの意見に沿ったやり方である。
 メリットは現金を温存できることで、給料や配当等の収入がある人ならじわじわ現金比率を上げることができる。
 デメリットは安売りの好機を逃すことだ。
 まだ割安水準になっていない株を持っているなら売ってしまうのも一法だ。そんな株を持っている人はほとんどいないだろうが。

2下げ止まりを待ってから買い向かう
 これが最も王道の対処法だろう。格言にも「落ちたナイフは掴むな。ナイフが地面に突きささり、しばらく揺れ動いた後、しっかり止まってからつかめ。」とある。
 この方法のメリットは下げが続いている間は買わないので、大きく下げた時に無駄な買いを膨らませずにすむ点だ。上手くやれば、見事に大底でだけ買える可能性もある。
 デメリットは底の見極めが難しいこと。もみ合いから上放れしたら買えというのがテクニカル的な鉄則だが、上放れしたと思ったらすぐに落ちることも多いし、十分に上げ相場に乗るのを待ってから買うと、安値で買い損ねることになる。

3ドルコスト平均法で買う
 一定額を週一回など、一定期間毎にコンスタントに買っていく方法。
 メリットはどこが底か考えなくて良いことと、買い付け金額の見通しがつけやすいこと。
 デメリットは運が悪いと大底で買い逃がしたり、一時的に高くなった時ばかり買ってしまう可能性があることだ。
 買い付け日にある程度幅を持たせる方法もある。例えば、週に一度買い付ける場合、買う日を月曜日などと固定せず、週のどこかで買うようにしても良い。
 だが、ドルコスト平均法は人間の自由意志に任せていると間違うから、機械的に買った方が良い結果になるという思想に基づく購入法であり、自由にした方が良いとは言い切れない。

4最安値更新毎に買う
 最大の下げ幅を予想し、投資資金÷最大下げ%の金額を、最安値を1%更新する毎に買い付けていく方式。
 S&P500の場合、リーマン・ショック時には急落直前から44.05%下落している。最大の下げをリーマン・ショックと仮定すると、現時点で急落直前からは13.1%下げているので、残りの最大下げ幅は28.8%。最安値を1%更新する毎に(投資資金÷28.8)だけ買っていけば良い。
 例えば、投資資金が10万円なら、最安値を1%更新する毎に3472円、3%更新したら10416円という風に購入すれば、リーマンショックを超える下げにならない限り資金が枯渇することはない。

 メリットは下げる度に買っていくので、底で買い逃がさないこと。底が近い場合は有効な方法だ。
 デメリットは延々と下落した場合に投資金額が膨らみ、平均購入額も高くなってしまうこと。1000円、2000円、3000円といった風に、1%下げる毎に買い付け金額を増やしていくという方法も考えられるが、すぐ反発した場合、ほんの少ししか買えないので痛し痒しだ。


 相場が荒れている時は、損失を取り返そうと買いを膨らませてしまったり、逆に絶好の買い場を逃してしまったりしがちだ。自分なりの明確な方針を立てて自分を律することが大切だ。

日経平均とS&P500の戻り高値を予想する

 米国株と日本株は10月以降4回も急落している。毎度毎度、一筋の光明が見え始めたと思った途端、奈落の底に突き落とされるので、うんざりしている投資家も多いのではないか。中には、このままリーマンショック級の暴落へと突き進んでいくのではと怯えている人もいるだろう。
 私は、半年ぐらい経ってパニックが収まれば株価は戻るのではないかと予想している。中国や欧州は企業業績の陰りが見られるものの、日本と米国は現時点で企業業績は好調だからだ。

 そこで、株価がどのくらいまで戻るのか、PERで予想してみた。
 2018年2月から12月7日までの日経平均とS&P500の週次予想PERデータをソートし、それぞれに12月7日時点でのEPS(1株利益)をかけて戻り高値を予想した。期間を今年2月からにしたのは、今年2月でそれまでの上げ相場がリセットされ、ボックス相場に移行したと考えているからだ。
 全体の表は長くなるので末尾に掲載し、ここでは目処になる値のみを示す。
 

 日経平均PER一覧表(抜粋)

日付 PER 株価  
2018/2/2 15.1 26942.175 最高値
2018/9/28 13.88 24765.39 10月急落前
2018/7/20 13.44 23980.32 上位25%
  13.06 23302.305 中央値
2018/10/19 13.02 23230.935 10月戻り高値
2018/11/2 12.72 22695.66 下位25%
2018/12/7 12.15 21678.6375 最低値

 

 日経平均の場合、12月7日にPER12.15まで下がり、週次最低PERを更新した。
 2月以降のPER中央値13.06に戻るだけで、233302.31円まで上昇する。12月7日の終値が21678.68円なので、1623.67円、7.49%も上がることになる。
 もし2月2日の最高PER15.1まで戻せば26942.18円となる。驚くほどの高値だが、PER15.1は長期的に見ればごく平均的な水準なので、ありえないことではない。だが、消費増税という悪材料が控えているため、現実的には9月28日のPER13.88まで戻しての24765.39円ぐらいが限界だろう。

 

 S&P500PER一覧表(抜粋)

日付 PER 株価  
2018/9/28 18.09 2895.587672 最高値
2018/2/2 18.05 2889.185046 2月急落前
2018/8/3 17.62 2820.356815 上位25%
2018/6/29 17.18 2749.927927 中央値
2018/10/19 17.1 2737.122675 10月戻り高値
2018/3/23 16.92 2708.310857 下位25%
2018/12/7 16.45 2633.08 現在値
2018/2/9 16.35 2617.073435 最低値

 

 S&P500の週次最低PERは2月9日の16.35。12月7日時点では下から4番めの16.45でやはり最低水準だ。
 PER中央値17.18に戻せば2749.93$まで上昇する。12月7日の終値が2633.08$なので、116.85$、4.25%の上昇だ。
 9月28日のPER18.09まで戻せば2895.59$となる。米国株は2月初頭と9月末の二度、PER18を突破後に急落しているので、市場関係者にPER18の上値ラインが意識されている。金利の利下げがない限り、PER18を超えて上がり続ける可能性は低い。
 米国株は長期的に見れば割高であり、現在はバリュエーション調整中だという見方もある。その場合、大きな戻りは期待できないから早めに売らねばならない。

 表の株価は企業業績が横ばいの場合である。企業の一株当たり利益が増加すれば、その分株価も増加する。EPSが増加したら、適宜更新して使って頂きたい。(株価=EPS×PER)

 

 この表は、その時々のPERの相対的高さを確認するためにある。現在は2017年のような上げ相場ではないので、高くなってきたら少しずつ売っていくことが肝心だ。
 事前に売却計画を立てるのにも役立つ。例えば、「下位25%、中央値、上位25%、最高値で1/4ずつ売る」などと決めておけば、高値に浮かれて売り時を逃すことはない。


 楽観的な希望を語ったものの、経済情勢の先行きには米中貿易戦争の激化や英国のハードブレクジット、原油価格の低迷、中国の債務膨張、イタリアの財政危機、ウクライナ危機、日本の消費増税等の懸念がてんこ盛りで、大暴落が来る可能性もある程度存在する。あえて火中の栗を拾いにいく時は、数年間株価が戻らなくても耐えられるだけの余裕をお忘れなく。

 

日経平均PER一覧表

  日付 PER 株価(EPS1784.25)  
1 2018/2/2 15.1 26942.175 最高値
2 2018/5/18 13.96 24908.13  
3 2018/9/28 13.88 24765.39  
4 2018/9/21 13.78 24586.965  
5 2018/10/5 13.73 24497.7525  
6 2018/6/15 13.68 24408.54  
7 2018/7/27 13.63 24319.3275  
8 2018/6/8 13.61 24283.6425  
9 2018/5/11 13.58 24230.115  
10 2018/5/25 13.51 24105.2175  
11 2018/8/3 13.49 24069.5325  
12 2018/7/20 13.44 23980.32 上位25%
13 2018/6/1 13.34 23801.895  
14 2018/6/22 13.33 23784.0525  
15 2018/7/13 13.31 23748.3675  
16 2018/9/14 13.28 23694.84  
17 2018/6/29 13.25 23641.3125  
18 2018/8/31 13.2 23552.1  
19 2018/8/10 13.12 23409.36  
20 2018/2/9 13.08 23337.99  
21 2018/8/24 13.08 23337.99  
22 2018/4/27 13.07 23320.1475  
    13.06 23302.305 中央値
23 2018/10/12 13.05 23284.4625  
24 2018/8/17 13.03 23248.7775  
25 2018/10/19 13.02 23230.935  
26 2018/2/23 13.01 23213.0925  
27 2018/7/6 13.01 23213.0925  
28 2018/4/20 12.98 23159.565  
29 2018/2/16 12.93 23070.3525  
30 2018/9/7 12.84 22909.77  
31 2018/4/13 12.8 22838.4  
32 2018/3/16 12.74 22731.345  
33 2018/11/2 12.72 22695.66 下位25%
34 2018/4/6 12.69 22642.1325  
35 2018/3/30 12.64 22552.92  
36 2018/3/9 12.61 22499.3925  
37 2018/3/2 12.58 22445.865  
38 2018/11/9 12.56 22410.18  
39 2018/11/30 12.48 22267.44  
40 2018/10/26 12.37 22071.1725  
41 2018/3/23 12.22 21803.535  
42 2018/11/16 12.21 21785.6925  
43 2018/11/22 12.21 21785.6925  
44 2018/12/7 12.15 21678.6375 最低値

 

S&P500PER一覧表

  日付 PER 株価(EPS160.07の場合) 備考
1 2018/9/28 18.09 2895.587672 最高値
2 2018/9/21 18.06 2890.785702  
3 2018/2/2 18.05 2889.185046  
4 2018/10/5 17.98 2877.98045  
5 2018/8/31 17.98 2877.98045  
6 2018/9/14 17.87 2860.373228  
7 2018/9/7 17.84 2855.571258  
8 2018/3/9 17.75 2841.16535  
9 2018/8/24 17.68 2829.960754  
10 2018/7/27 17.65 2825.158784  
11 2018/8/17 17.62 2820.356815  
12 2018/8/3 17.62 2820.356815 上位25%
13 2018/8/10 17.61 2818.756158  
14 2018/3/16 17.6 2817.155502  
15 2018/7/20 17.55 2809.152219  
16 2018/2/23 17.49 2799.54828  
17 2018/7/13 17.45 2793.145653  
18 2018/6/22 17.36 2778.739745  
19 2018/6/15 17.35 2777.139088  
20 2018/6/8 17.29 2767.535149  
21 2018/2/16 17.25 2761.132523  
22 2018/7/6 17.22 2756.330553  
23 2018/6/29 17.18 2749.927927 中央値
24 2018/6/1 17.15 2745.125957  
25 2018/3/2 17.14 2743.525301  
26 2018/5/25 17.13 2741.924644  
27 2018/5/18 17.11 2738.723331  
28 2018/10/19 17.1 2737.122675  
29 2018/10/12 17.08 2733.921362  
30 2018/5/11 17.05 2729.119392  
31 2018/4/20 17.02 2724.317422  
32 2018/4/27 16.99 2719.515453  
33 2018/4/13 16.98 2717.914796  
34 2018/3/23 16.92 2708.310857 下位25%
35 2018/4/6 16.88 2701.908231  
36 2018/3/29 16.85 2697.106261  
37 2018/5/4 16.82 2692.304292  
38 2018/11/9 16.75 2681.099696  
39 2018/11/16 16.7 2673.096413  
40 2018/11/30 16.65 2665.093131  
41 2018/11/2 16.59 2655.489191  
42 2018/12/7 16.45 2633.08  
43 2018/10/26 16.41 2626.677374  
44 2018/11/23 16.35 2617.073435  
45 2018/2/9 16.35 2617.073435 最低値

 

nikkei225jp.com

PER(NYダウ・ナスダック100・S&P500)の推移|株式マーケットデータ

和牛はなぜM-1グランプリで優勝できなかったのか

 M-1グランプリ2018は霜降り明星が優勝した。一個一個のボケ-ツッコミのレベルが高く、大笑いしながら見ていたので優勝には納得だ。
 一方、練りこまれた脚本で唸らされた和牛も霜降り明星に勝るとも劣らない出来だったが、またもや僅差で優勝を逃し、3年連続2位だった。

 和牛はなぜ優勝できなかったのだろうか。理由の一つとして、何度も決勝進出していることがある。
 何度も決勝進出すると何故不利になるのか。二つの理由がある。

1審査員の慣れ
 漫才の面白さの一つに斬新さ、新鮮さがある。
 「へりくつ漫才」と言われる和牛のスタイルは初めて見た時は斬新だった。だが、現在は何度も見ているため、新鮮さは感じない。審査員も同様だろう。
 霜降り明星と和牛のスタイルの斬新さは同程度だと思うが、審査員からすると、初の決勝進出である霜降り明星の方がより新鮮に感じたのではないだろうか。

 また、何度も決勝進出していると過去のネタと比較されてしまう点も不利に働く。和牛のベストネタは2017年ファーストラウンドの「ウエディングプランナー」だろう。審査員は、あの時2位だったのだから、優勝するにはあれを超えるネタを披露して欲しいと感じるのではないか。

2ネタのストック
 もう一つ和牛が不利だったのは、ネタのストックだ。
 和牛は過去に何度も最終決戦に進出し、過去に作っためぼしいネタは既に披露してしまっているので、今年1年間で作ったネタの中から二本選ばねばならない。
 一方、初進出の霜降り明星は過去に作った全てのネタの中から二本選んで臨むことができた。和牛が過去1年分のストックしかないのに対し、霜降り明星は結成以来5年分のネタから選ぶことができた。これは大きなアドバンテージだ。
 もし、和牛が初進出だったら、決勝で「ウエディングプランナー」のネタをやって優勝していたのではないだろうか。


 二組以外では、トム・ブラウンのサザエさんの中島君を5人合体してナカジマックスを作るネタが印象に残った。ナカジマックスは何かのダジャレになっているわけでもないし、なぜ中島君を5人合体させようと思いついたのかが全然分からない。
 お笑いにはパターンがあり、何故面白いのかある程度論理的に説明できる。ナカジマックスはなぜ面白いのか全然分からないが、何故か面白い。
 M-1グランプリは人生が懸かった舞台であり、普通は面白さの裏付けのあるネタをやりたくなるものだ。
 どうやって思いついたのか全然分からないネタを思いついた発想力と、大舞台で何故面白いのか良く分からないネタをかけた勇気に感心した。

www.m-1gp.com

受け入れがたいアノマリーだけが生き延びる――『勝てるROE投資術』感想

読者によって興味のある記事が分かれていそうなので、投資記事は週前半に、その他の記事は週後半に更新することにしました。

  『勝てるROE投資術』(広木隆著、日本経済新聞出版社)はROEについて網羅的に解説された好著だ。説明は分かりやすいが、残余利益モデルやCAPMといった高度な内容についても触れられていて非常に勉強になる。
 本書で最も衝撃を受けたのが、下記のグラフだ。

 

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 TOPIX採用銘柄をPBR、ROEの高さによって5×5の25グループに分け、過去15年間のリターンを調査した所、最低PBR、最低ROEのグループが突出してリターンが高かったというのだ。

 このグループのROEは-15.0とあるので、赤字企業ということだ。PBRが最低ということは、市場からこの企業は将来性が皆無だと見なされているということだ。

 赤字を垂れ流し、お先真っ暗と見なされているボロ株中のボロ株こそが最もリターンが高い。そんな馬鹿な!
 にわかには信じがたいがこれだけ圧倒的差がついていると、信じざるを得ない。

 15年間で950%というのは年率16.19%という驚異的なパフォーマンスだ。これだけ突出したリターンを上げている投資法なら大勢に真似されそうなものだが、低PBR、低ROE銘柄に投資しろと書いている本は見たことないし、そんな戦略を実行している投資家も見たことがない。
 低PBRが良いと書いてある本は存在するが、低ROEの方が良いと主張している本は聞いたことがない。
 ウォーレン・バフェットは収益が安定している優良企業の業績が一時的に落ち込んだ時にも投資しており、その中には一時的に低ROEになっている銘柄もあるかも知れない。だが、バフェットは基本的に高位安定したROEを好んでおり、低PBR、低ROE銘柄が良いという結果からはかけ離れている。

 特定の特徴を持った銘柄や時期に売買することで、市場平均と異なったリターンが得られることをアノマリーと呼ぶ。普通、模倣可能なアノマリーは真似されて消滅する。
 ダウの負け犬戦略という投資法がある。ダウ平均30銘柄の中で配当利回りが高い10銘柄を買うことで、ダウ平均を上回るリターンが得られるという戦略だ。
 この戦略は発見当初は有効だったが、大勢が真似するようになった結果、ダウ平均を上回れなくなった。配当利回りが高いということは人気薄で割安だということだ。大勢が真似した結果、高配当銘柄に人気が出て割安度が薄れてしまったため、リターンが悪化したのだ。
 なぜ低PBR低ROEのリターンが高いというアノマリーはほとんど真似されず、生き延びているのだろうか。

 まず考えられるのが、この戦略を真似するのが大変だということだ。
 ボロ株程リターンが高いと言っても、全ボロ株のリターンが高いのではなく、ボロ株の中に時折業績を回復させ驚異的リターンを上げるものがあり、平均を押し上げていることが予想される。
 全ボロ株を網羅的に買えば勝てるのだろうが、現実的ではない。したがって、ボロ株の中から何銘柄か選んで買うことになるが、それだと全部スカになる可能性がある。業績が回復しなかったボロ株会社は倒産しかねないので、リスクが高い。

 これも想像だがボロ株のリターンは常に高いわけではない。将来の景気後退が予想される現在のような状況ではボロ株は真っ先に売られるので儲かるとは思えない。広木氏も「市場参加者のリスク許容度が急速に高まり相場が急回復する局面で、収益性の低いボロ株が急騰することがよくあるが、低PBRかつ低ROE銘柄グループの高リターンはこの現象が反映されていると思われる。」と分析されている。
 ボロ株戦略はおそらくリスクオン相場でしか有効でないが、リスクオンになるタイミングを測るのは難しいし、リスクオンになったからと言って、必ずボロ株が急騰するわけでもない。
 ボロ株戦略にはいつ上がるとも知れない株を持ち続ける忍耐強さも求められる。

 だが、ボロ株戦略が生き延びている最大の要因は受け入れがたい結論だからではないか。広木氏自身、
「本書の趣旨とは異なるが、ハイリスク・ハイリターン狙いの投資戦略として、このゾーンに所属する銘柄へ若干の投資ポジションをもつというのも一考だろう。」と書かれているものの、最終的には
過去はROEの高い銘柄に投資しても報われることはなかった。これからはどうか? わからない、と述べた。JPX日経400に投資したら儲かるのか? わからない。わからないが、JPX日経400に投資して儲かるようにしていかなければいけないと思う。」と書かれており、「高収益の優良株よりボロ株に投資した方が儲かる」という結果は受け入れがたいと考えておられるのが伝わってくる。
 広木氏は効率的な経営ができていないダメ企業が退場しないことが日本全体の生産性を下げていると主張されているので、ダメ企業に投資する戦略が有効では困るのだろう。

 一流ファンドマネージャーの広木氏ですら受け入れがたいのだから、大半の投資家が受け入れがたく感じ、低PBR低ROE戦略に踏み切れないのも無理は無い。
 さらに誰だって業績が低迷していてお先真っ暗な株なんか買いたくない。いくらデータ上有効だと分かっていても、心理的抵抗により買うのをためらってしまうことによってアノマリーが温存されているのではないだろうか。

 本書が書かれたのは2014年なので、低PBR低ROEのボロ株程儲かるというアノマリーはもしかするとこっそり真似され、現在は解消している可能性もある。
 リスクオフ局面の今やるのはおすすめできないが、それでももしボロ株戦略を実行に移されるのなら、ご自身でデータを検証し、現在でも有効なことを確認されてからにして頂きたい。

勝てるROE投資術

勝てるROE投資術

 

 

シャブ山シャブ子をめぐる三つの論点

 少し前に、シャブ山シャブ子が話題になった。
 シャブ山シャブ子はドラマ「相棒シーズン17」第4話に登場した薬物依存症患者の主婦なのだが、鬼気迫る表情で被害者をハンマーで撲殺。取り調べでは「シャブ山シャブ子でーす! 17歳でーす!」と叫び、ものすごいインパクトで視聴者をざわつかせた。
 その回は普段は仲良しの杉下右京と角田課長が互いの信じる正義を巡って全面衝突する力の入った話で、私も食い入るように見ていたのだが、終盤に1分しか登場しないシャブ山シャブ子が全部持っていった感じだ。

 これに対し、「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」(以下依存症ネット)がテレビ朝日に抗議文を出した。シャブ山シャブ子の描き方が、薬物依存症患者への偏見をあおっているというのだ。

www.asahi.com

 

1リベラルの抗議対象が偏っている問題
 確かに、シャブ山シャブ子の描き方は薬物依存症患者への偏見を助長している。だが、相棒が偏見を助長しているのは薬物依存症患者だけではない。
 当該回ではヤクザが血も涙もない存在として描かれており、ヤクザに対する偏見も助長しているが、ヤクザに対する偏見を助長しているという抗議は誰からもなされていない。
 また、シーズン17の初回では金のために殺人を隠蔽しようとする資産家一家が描かれ、資産家に対する偏見を助長しているし、第3話では辞書編纂者が奇人のように描かれ、辞書編纂者に対する偏見を助長している。

 なぜ薬物依存症患者だけがダメなのか。リベラルの抗議基準が偏っているのではないかという批判はあり得る。リベラルがラストベルトの白人労働者やキモくて金のないおじさんを無視してきたという批判と通底する問題だ。

 だが、何に抗議するのかは全日本リベラル評議会みたいな団体で話し合って決めている訳ではなく、個々の団体や個人が独自に抗議をしている。依存症ネットは依存症問題に詳しい人の集まりであって、あらゆる偏見と戦う団体ではない。
 もし、「薬物依存症問題で抗議するなら、○○についても抗議すべきだ」と思うのなら、その人が自分で抗議すれば良いのではないだろうか。


2表現規制の問題点
 今回の抗議に対して、表現の自由の方が重要だと批判する人もいる。その前にキズナアイ問題が炎上していたので、表現規制=悪という意見も見られた。
 私はキズナアイに対する批判は無視して良いと思う。キズナアイNHKのサイトで聞き手を務めたことで困っている人など誰もいないからだ。
 一方、依存症ネットの批判は考慮に値する。近年、薬物依存症患者リハビリ施設の開設反対運動が相次いでいるのだという。実際に被害に遭っている人からの訴えは、聞くに値する。

 しかしながら、偏見を助長する表現を規制することにはいくつか問題がある。
 第一に、特定の作品が偏見を助長するということを科学的に立証するのが難しいという問題がある。実際に規制をしようとすると、どうしても規制者の主観による判定にならざるを得ず、公平性が保てない。
 第二に、規制をかけると、薬物依存症に関する表現自体が減ってしまうのではないか、という懸念がある。作り手に面倒事を避けたいという意識が働き、偏見を煽るような表現だけでなく、実態を伝える報道や表現まで減ってしまう恐れがある。

 多くの人が薬物依存症患者に偏見を持っているのは、フィクションによる描き方のせいと言うより、薬物依存症患者に関する報道が少ないからだ。問題表現を排除することより、トータルとしてバランスが取れていることの方が重要なのではないだろうか。

 依存症ネットの抗議に対し、テレビ朝日は誠意ある対応をし、建設的な話し合いがなされているという。
 今回の騒動を機に、薬物依存症患者に関する正しい情報が世間に広まることになれば、雨降って地固まるとなるのではないか。


3類型的キャラクター問題
 シャブ山シャブ子に関しては描き方が類型的だという批判もある。シャブ山シャブ子は薬物依存症患者のステレオタイプのようなキャラクターであり、キャラクターの練り込みが足りないというのだ。

 確かに、フィクションのキャラクターが類型的だと、薄っぺらいどこかで見たことのあるような作品になりがちだ。類型的でないキャラクターを目指すべきだという指摘はもっともだ。
 だが、それは主役級のキャラクターの場合であり、端役は類型的な方が良いのだ。

 本作において、シャブ山シャブ子は物語上、被害者を殺すという機能しか持っていない。
 シャブ山シャブ子ではなく、よりユニークなキャラクターが殺していたらどうなっただろう。例えば、紅顔の小学生がライフル銃で狙撃して殺したとすると類型的ではない。
 その場合、視聴者は何で小学生が凄腕スナイパーなの? と興味を持つ。だが、なぜ小学生が凄腕スナイパーなのかを説明している時間はない。被害者を殺すキャラクターに割ける時間は1分しかないからだ。結果として視聴者には何だったんだ、という消化不良感が残される。

 キャラクターが類型的だと視聴者はああ、そういうキャラね、と思い、納得する。時間を割けない端役は、類型的な方が都合が良い。

 様々な側面を持つ複雑なキャラクターを描くには時間がかかるため、メインキャラクターに絞るべきだ。今回だと暴力団壊滅に生涯を捧げてきた刑事は類型的でない味のある造形をされていて心に残った。

 シャブ山シャブ子はインパクトが強すぎてメインの話を食ってしまっている。端役であるシャブ山シャブ子は、むしろより類型的につまらなく描くべきだったのかも知れない。

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円ベース債権的商品の検証

 株式のリターンは長期的には債券より高くなる。
 満期まで持っていれば一定の利回りが確約されている債券に対し、株式はいくらになるのか分からない。分からなくて不安なものは、その分、リターンが高くなる。

 例えば、一年後、確実に1050円になる1000円の債券と、一年後には1400円から700円の間のいずれかの値段になる1000円の株式を売っていたら、ほとんどの人は債券を買うだろう。
 債券は売れるので値上がりして1020円ぐらいになり、株式は売れないので値下がりして980円ぐらいになる。これが株式の利回りが債券より高くなる仕組みだ。

 利回りが高いものを買った方が良いので、私は全く債券を買っていなかった。だが、JPモルガンのGuide to the Marketsという四半期毎に発行されるレポート及び解説を読んだ所、景気拡大の終盤戦で株式より債券が優位になる転換点が訪れると書いてあったので、債券投資を検討してみることにした。 
 Guide to the Marketsは示唆に富んでいるので投資家は必読である。

 資産をドルで運用しているなら、著名米国株ブロガーたぱぞう氏おすすめのBND(バンガード米国トータル債券市場ETF)を買えば良いだろう。

www.americakabu.com


 だが、円ベースではこれぞという債券商品が見当たらない。
 普通なら、単に国債などの日本債券を買えば良いのだが、現在は日銀の超低金利政策により、日本国債10年利回りはわずか0.09%だ。

 山崎元氏の本を読むと、個人向け国債「変動10年」は利上げ時に利回りが上昇するので悪くないと書かれている。だが、10年間ずっと利上げがない可能性もあるので、実際に利上げがなされてから買えば良いのではないか。山崎氏も低金利下では債券は買わなくて良いと書かれている。(海外債券は円ベースでは為替変動リスクの方が大きいため)

 そこで、日本債券の代替となる投資先はないか探してみた。

 債券で重要なことは下記の3つだ。
1)利回りが高い
2)株式との連動性が低い
3)株の暴落局面でつられて暴落しない。

 1)は当然だが、2)、3)については解説が必要だろう。
 長期的リターンで株式を下回る債券に投資する意義は下記の2点だ。
i)株式と組み合わせてリスクを軽減する。
ii)株式が暴落した時に売り払って、株式を購入するための資金にする。

 i)のためには2)である必要が、ii)のためには3)である必要があるのだ。
 そこで、1)から3)について代表的債権的商品(インカムゲイン狙いの商品やディフェンシブな商品)について検証を行った。
 インカムゲイン狙いの商品としては他に実物不動産や太陽光発電もあるが、共にまとまった資金が必要なので省略した。

各商品の値動きは下記の値を用いた。
国内債券 (NEXT FUNDS)国内債券・NOMURA-BPI総合
先進国債券 外国債券・FTSE世界国債
国内リート 東証リート指数
高配当株 MSCIジャパン高配当利回りインデックス・F(年2回)
金      iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)
ソーシャルレンディング SBISL不動産担保ローン事業者ファンド
銀行預金 イオン銀行普通預金

1)利回り
各指数の11/1時点での年初来騰落率は下記の通りだ。
国内債券 99.1%
先進国債券 94.04%
国内リート 105.46%
高配当株 85.33%(+分配金2.28%)
金      92.13%
ソーシャルレ 102.93~104.31%
銀行預金 100.08%

参考
S&P500 100.49%
TOPIX 87.56%

 Jリートソーシャルレンディングのリターンの高さが目立つ。どちらも不動産関連であり、相対的に不動産が好調な一年だったと言える。
 Jリートは今のところ好調だが、景気が悪化すると大きく値を下げるというリスクがある。
 ソーシャルレンディングは利回りが高いものの、事業が失敗して元本が戻ってこないリスクがあるハイリスク・ハイリターンな商品だ。中には年利10%のファンドもあるが、その分リスクも高い。
 債券や金は低迷しており、銀行に預けておいた方がましな状態だ。

 先進国債券のリターンが悪いのは現在が利上げ局面だからであり、利上げが止まればリターンは改善するはずだ。米国の利上げは終わりが近づいており、そろそろプラスのリターンが見込めるかも知れない。

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 年初来のグラフを見るとJリートの好調さと国内債券の値動きの少なさが際立っている。2018年の国内資産はJリート以外壊滅状態と言えよう。

 より長期の利回りはmyINDEXにデータがあった。

世界の主な投資資産リターン (毎月更新) - myINDEX


過去15年の年率平均リターンは
日本株式 +5
外国株式 +8.3
日本債券 +1.8
国債券 +4
日本不動産 +7.6
外国不動産 +8.5
コモディティ -2.6
となっている。

 長期的に見ても、日本不動産に相当するJリートは債券よりリターンが高い傾向にあるようだ。

2)株式との連動性
 インデックス投資家の多くは米国株か先進国株をメインの投資先にしている。
 先進国株の半分は米国株なので、円ベースのS&P500連動ETFであるSPDRS&P500との相関係数を求めた。相関係数は完全に一致していると1、完全に逆相関だと-1、無相関だと0になる。株式の価格変動を緩和するには値が小さい程良い。

国内債券 -0.52
先進国債券 0.13
国内リート 0.72
高配当株 -0.11
金    -0.56
ソーシャルレ (0)
銀行預金 (0)

 金と国内債券が大きめの逆相関を示し、一歩リードした。株式の値動きを緩和することを重視するなら、金か国内債券だが、国内リート以外は相関係数が低いので、株式の変動を緩和する役割は十分果たせる。
 債券は株式と逆相関になると言われているが、先進国債券は弱いながらも米国株式と正の相関を示した。為替の影響が似通っているためだろう。


3)株式暴落時の連動性
今年二回あった大きな米国株の下落時における各資産の騰落率を調べた。
2018年10月1日→10月29日
SPDRS&P500 89.89%
TOPIX    87.44%
国内債券 100.4%
先進国債券 97.52%
国内リート 99.01%
高配当株 89.83%
金    101.59

2018年1月23日→3月26日
SPDRS&P500 87.45%
TOPIX    87.45%
国内債券 100.2%
先進国債券 95.17%
国内リート 94.85%
高配当株 87.61%
金    95.47%

ソーシャルレ― (100%)
銀行預金 (100%)

 米国株と逆相関を示した金と国内債券だが、期待できる値上がり幅はほんのわずかであることが分かった。
 株価暴落時に大きく値を上げてくれる債権的商品があれば最高なのだが、そういう商品は存在しない。
 金は1月の下落では一緒に下落しているし、国内債券は上げているが上げ幅はわずかだ。短期で0.2-0.4%上げていると考えれば悪くないかも知れないが、解約して現金化する間の数日に絶好の買い場を逃がす可能性を考えると、銀行預金より優れているとは言いがたい。
 Jリートは高い利回りの割には下げ幅が少ないため、債券的に使えなくもない。
 たぱぞうの米国株投資でも同様の質問がなされていたが、たぱぞう氏は「債券と同等の安定感があるかと言えば、それはやや早計」「結局東証REIT指数も市況次第ですから、本格的に景気が悪くなれば当然下がります。」と回答されていた。

www.americakabu.com


 リートは基本的に株式の値動きを小さくしたような値動きをするので、株の暴落時はリートにとっても買い場であることが多い。従って、株の暴落時にJリートを売り払って株を買うのが良いかどうかは微妙である。
 なお、ソーシャルレンディングは株式の下落に合わせて下落はしないものの、途中で引き出せないので、株暴落時用資金という役目は全く果たせない。

 ろくな商品がないようだが、ドルベースで考えると景色が変わってくる。
 日本円は暴落初期の2018年1/17~2/15に対ドルで4.86%、10/3~10/16には2.46%上昇している。つまり、単に円で持っているだけで、短期間に米国株などのドル資産を買うための資金が数%も増えるということだ。
 日本円銀行預金は利回りは非常に低いものの、株暴落時用投資資金置き場としては世界最強なのだ。

4まとめ
 2)、3)の機能としては銀行預金か日本債券が、1)だけならソーシャルレンディングが優れているが、1)~3)の要素を総合的に考えるとJリートが最も優れている。と言うより、他がボロボロなので、Jリートぐらいしか有望な投資先がない状態だ。
 しかしながら、リターンが優れた投資先は年毎に変化することが多い。リターンが良い投資先に資金が集中して値上がりし、リターンが悪化しがちだからだ。

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日経平均はTOPIXより低PER高ROE

1.日経平均はいい加減な指標

 日経平均はいい加減な指標だ。株価を単純平均しているため、株価が高い値嵩株の影響を強く受ける。
 1株当たりの値段が高いか安いかは、企業価値と何の関係もない。上場時に1株当たりの価格を低くして株数を多くするか、高くして株数を少なくするかは単なる好みの問題だからだ。
 時価総額によって配分を決めているTOPIXの組み入れ上位10社は下記の通りだ。

1 トヨタ自動車 3.16%
2 三菱UFJFG 2.02%
3 ソニー 1.77%
4 ソフトバンクG 1.59%
5 NTT 1.37%
6 三井住友FG 1.32%
7 ホンダ 1.17%
8 キーエンス 1.16%
9 みずほFG 1.12%
10 KDDI 1.04%

日本を代表する大企業が並んでいる。

 一方、日経平均の組み入れ上位10社は下記のようになっている。
1 ファーストリテイリング 9.65%
2 ソフトバンクG 4.59%
3 ファナック 3.34%
4 KDDI 2.85%
5 東京エレクトロン 2.65%
6 ダイキン工業 2.22%
7 ユニー・ファミリーマート 2.22%
8 京セラ 2.07%
9 テルモ 2.06%
10 TDK 1.65%

ユニー・ファミリーマート時価総額72位、京セラは64位であり、何でこんなにウェイトが高いのか釈然としないが、1株当たりの値段が高いため上位に来ているのだ。

 また、日経平均255社は定期的に入れ替えがなされているが、選定理由に客観的な基準が存在せず、何故この企業が入り、この企業が外されたのか良く分からない。キーエンス時価総額6位の大企業で業績も好調だが、何故か日経平均には入っていない。

 ちなみに、ダウ平均も日経平均同様、株価の単純平均による指標だ。(というか日経平均がダウ平均の真似をして作られた。)日経平均は255銘柄なのに対し、ダウ平均はわずか30銘柄なので、さらに1株当たりの値動きに引っ張られやすい。

 ダウ平均にはアマゾンが入っておらず、今後も入る見込みはない。なぜかと言うと、ダウ平均の構成銘柄は一株当たり40$から340$ぐらいなのに対し、アマゾンは約1600$であり、もし組み入れるとアマゾンの影響が大きくなりすぎるため、入れられないのだ。

 そんないい加減な理由があるだろうか。四則演算しかできない小学生じゃないんだから、適当な補正をかけたらどうなのか。

 

2.日経平均TOPIXより低PER高ROE

 いい加減な日経平均だが、最近のパフォーマンスはTOPIXを大きく上回っている。日経平均=くたびれた大企業の集まりというイメージだったので、パフォーマンスが良いのが不思議だったのだが、ROEを計算してみて驚いた。(ROE=PBR/PER×100)
PER:株価収益率。純利益に対する株価の割安さを表す。低い程割安。
PBR:株価純資産倍率。純資産に対する株価の割安さを表す。低い程割安。
ROE自己資本利益率自己資本からどれくらい利益を上げているかを表す。高い程高収益。

11/16
日経平均
PER 12.21
PBR 1.13
ROE 9.25

TOPIX
PER 13.75
PBR 1.11
ROE 8.07

 つまり日経平均TOPIXより低PER高ROE、すなわち割安なのに収益率が高いのだ。そりゃあパフォーマンスも良くなるはずだわ。

 ちなみに、日本第三の指標にJPX日経400がある。
 組み入れ比率は下記の通りで、時価総額ウェイトであるためTOPIXと似通っている。
1 ソニー 1.69%
2 三菱UFJFG 1.68%
3 ソフトバンクG 1.63%
4 三井住友FG 1.49%
5 ホンダ 1.45%
6 キーエンス 1.41%
7 みずほFG 1.40%
8 NTT 1.40%
9 KDDI 1.31%
10 トヨタ自動車 1.31%

 JPX日経400の投資指標は下記の通りだ。
JPX日経400
PER 13.17
PBR 1.32
ROE 10.02

 PERによる割安度は日経平均TOPIXの中間で、ROEは一番高い。指標上はなかなか優秀である。
 JPX日経400は日経平均と違い、高ROEなどの客観的指標を用いて400企業を選定した指標で、投資家の期待を集めた。ところが、パフォーマンスはTOPIXより悪かった。
 TOPIX日経平均TOPIXとJPX日経400のパフォーマンス比較はナッツさんの記事が詳しい。

www.mixnats.com

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3.何故日経平均のパフォーマンスが良いのか

 何故、客観的指標によって優良企業を集めたJPX日経400のパフォーマンスが悪く、いい加減な日経平均のパフォーマンスが良いのだろうか。

 

 時価総額ウェイトが良くないという指摘がある。

www.y-strategies.com

 時価総額ウェイトだと株価が高くなった時に多く買うため、リターンが少なくなるという指摘で納得がいく。

 

 また、いい加減であること自体がパフォーマンスに寄与しているという指摘も読んだことがある。
 期待を集めている指標は、多くの人が買うため割高になり、パフォーマンスが悪化する。一方、日経平均はいかにもいい加減な指標のためあまり買う気になれず、割安なまま放置されていると言うのだ。

 

 いくつか理由はあるものの、最も本質的な理由は日経平均が割安だということだろう。
 低PER銘柄や、低PBR銘柄は高PER銘柄、高PBR銘柄よりリターンが高いという研究結果がある。
 株価指数を選ぶ時、分散性や選定方法の合理性を第一に考えがちだが、バリュエーション(割安さ)の方が重要なのではないだろうか。