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米国株はいつ下げ止まるか

 米国株の下落が止まらない。10/9から2日で5.3%も下落したS&P500はいったん持ち直すかに見えたが、10/24にまたもや3.1%下落。その後も乱高下を繰り返し、底が見えない状態だ。
 米国株がこれだけ大きく200日移動平均線を割り込むことはめったにない。予想PER16.41も過去2年間で、今年2/9の16.35に次いで低く、絶好の買い場のはずだ。だが、どこまで下げるか見通しがつかないと思い切って買い出動できない。


 そこで2000年以降のS&P500の主な下落について調べてみた。2日間の下げが大きかった事例について、下げ止まりまでの期間と下落幅を調べたのが下記の表だ。

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 これを見ると、2日で5%以上という大きな下げがあっても、半分は2,3日で底を売って反発し、1-2週間で元に戻していることが分かる。米国株は下げた時に買うだけで勝てると言われていたゆえんだ。だが、今回の下げはすでに大幅下落から12日目に入ってしまったので、このパターンではない。

 今回の下げに一番近いのは、記憶に新しい、今年2/8の下落だろう。この時は40営業日かけて8.54%下落し、120営業日かけて元値に戻した。
 他にも、2011年10/3からの下落は9営業日で8.56%、2015年8/20からの下落(チャイナショック)は3営業日で8.26%下落して下げ止まった。
 2000年以降で急落後に株価が9.5%以上下落した時は、いずれもS&P500の実績PERが26以上とかなりの割高水準となっており、PER24以下からでは8.56%以内の下落に留まっている。今回の下落はPER23.88からであり、リーマン・ショックやITバブルのような異常なバブルが弾けたわけではない。
 S&P500は終値で最安値をつけた10/24の時点で既に7.79%下落しており、8.56%までは残り0.77%。予想PER的にも2月の下落までは残り0.37%。類例通りなら、すでに底値圏に到達したと言って良いだろう。

 懸念があるとすると、S&P500の予想PER16.41、実績PER21.8はここ3年に限って見れば非常に安いが、10年くらいのスパンで見れば安くないということだ。例えばリーマン・ショックの後遺症に苦しんでいた2011~12年は実績PER13.5-16.7を推移していた。現時点で企業業績は好調なので、いきなりそんなに下がることはないだろうが、景気後退が始まったらそこまで下がる可能性はあるということだ。
 ここ数年の予想PER=17-18が標準という常識の変わり目に位置しているのではないかという不安が株安を招いている。

 

 今世紀最大の暴落であるリーマン・ショックでは、実に44.05%も下げている。半値近くになったということだ。そうなる可能性も多少あるので、最悪の自体は想定しておいた方が良い。

 しかしながら、今回、そこまで下げる可能性は低い。
 今回の下落はFRBの利上げと米中貿易摩擦が原因だ。
 FRBは今後も利上げを続けると表明しており、それなら株より安全な債券で運用した方が良いや、と思った投資家が株を売って債券を買ったせいで株価が急落した。従って、FRBが「利上げを止めます。何なら利下げします。」と言えば下落は止まる。
 FRBの議長がボンクラでなければ、リーマン・ショック級になる前に利上げを止めると表明するはずだ。

 もっとも、もしリーマン・ショック級の暴落になっても、さほど心配しなくて良いかも知れない。リーマン・ショックでも、395営業日後には元値まで戻しているのだ。半値近くになっても1年7ヶ月間ホールドし続ければ戻るのだと考えれば、だいぶ気が楽になるのではないか。

 とは言え、前世紀に遡れば、株式の死と呼ばれるような、もっと長期の低迷も存在している。現在は絶好の買い場だが、最悪の事態に陥っても詰まない程度の金は残しておくべきだろう。