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はてな株に投資すべきか

日経平均株価は一時3万1000円を超え、33年ぶりの高値をつけた。

一方ではてな株は低迷している。2019年前半に急騰して5000円台になったのを除けば長期右肩下がりだ。

これだけ下落したのだから、はてな株は買いチャンスなのではないかと思われるかもしれない。
そこで、はてな株に投資すべきかを初心者向けに解説してみた。

1.株価指標

Yahooファイナンスを見ると、5月26日時点ではてなの株価指標は下記の通りだ。

finance.yahoo.co.jp

PER(会社予想)25.09倍
PBR(実績)0.96倍
1株配当 -

それぞれの意味について簡単に解説する。
*PER
PER(株価収益率)は株価÷1株当たり純利益。ここでは会社予想とあるので、株価÷今期の1株当たり会社予想利益=25.09ということだ。
会社の利益が100%株主のために使われる場合、何年で株を買った元が取れるかを示している。はてなの場合25.09年だ。

平均予想PERはプライム全銘柄が14.70、日経平均が14.17なのではてなのPER25は市場平均より高めだ。
PERが高いほど市場の評価が高く割高、低いほど市場の評価が低く割安だ。
成長期待の高い新興企業は高め、成長が鈍化した企業は低めになる。

例えばトヨタはPER10.18、ソニーはPER19.64だ。はてなは利益面では市場からトヨタソニーより高く評価されている。

*PBR
PBR(株価純資産倍率)は株価÷1株当たり純資産。株価が企業が保有する資産の何倍で評価されているかを示す。
はてなは0.96倍と保有資産より低く評価されている。市場からはてなは経営を続けていっても資産は増えず、むしろ微減させるだろうから、すぐさま解散した方が良いと評価されている。
ものすごい低評価のようだが、日本市場にはPBR1倍割れ企業が珍しくない。例えばトヨタもPBR0.93と1倍割れである。
ただ、PBR1倍割れしているのは多くが低成長の古参企業であり、新興IT企業で1倍割れなのは珍しい。

*配当
多くの企業が株主還元のため利益の一部を配当として株主に支払っている。
はてなは無配当だ。株主に配当を払うより事業に投資した方が株主の利益になると考えている。
新興企業では珍しくない。


2.業績

はてなの売上高・純利益の推移を示す。(22年度までは実績。23年度は会社予想)

左軸が売上高、右軸が純利益。単位は百万円。

23年度は大きく減益見込みであることが分かる。
長期的に見ても売上は右肩上がりで伸びているが、利益は年度ごとのばらつきはあるものの、右肩下がりになっている。
はてなが利益は二の次にして売上を伸ばすことに注力していることが分かる。


3.はてなに投資するべきか

株式の長期投資を行う場合、主に3種類の考え方がある。
1)株価が割安だから投資→割安株投資
2)今後高い利益成長が見込めるから投資→成長株投資
3)配当が高いから投資→高配当投資
1)は主にPERやPBRに着目した投資、2)は主に業績に着目した投資、3)は主に配当に着目した投資と言える。

各投資スタンスに立ってはてな株を検証する。

1)割安株投資
割安株投資は株価が割安な銘柄に投資し、評価が適正値に戻るのを待つという投資手法だ。
はてなの株価指標のうち、PER25は割安ではない。PER25というのは安定的に利益を伸ばしている優良企業の評価であり、年々利益を減らしているはてなの評価としては高すぎる。
一方、PBE0.96は割安と言える。はてなは毎年利益を出している企業であり、今後資産を減らすだろうという評価は低評価すぎる。
ただし、今後PBR1.00に戻っても4.17%の利益が得られるだけだ。低PBR株を狙う場合、通常はPBR0.5といった非常に割安な株を狙うのであって、PBR0.96がPBR1.00に戻るのを狙うことはあまりない。

2)成長株投資
成長株投資は今後利益が順調に伸びていくだろう銘柄に投資し、利益の成長と共に株価も上がることを期待する投資手法だ。
はてなの場合、利益が減っているので成長株投資には適さない。
もっとも、売上は伸びているので、いずれ利益も増え始めるはずではある。気の長い投資家は、将来の利益増に期待して少しずつ投資しても良い。
ただし、はてなの場合、説明会資料を見ても売上のことしか書いておらず、いつ利益が増加に転じるか分からない。通常、売上が増えても利益が増えないうちは、株価も上がらない。利益が伸び始めてから投資した方が安心だ。

3)高配当投資
高配当投資は、配当利回りの高い株に投資し、確実に収入を得ようという投資手法だ。
はてなの場合、無配当なので高配当投資には向いていない。

はてなは売上を順調に伸ばしているので、長期的には有望かもしれない。
だが、表面的な数字を見る限り、どの観点からも現時点では投資に適していない。


4.ユーザーにとっては良い企業

はてなはあまり投資をするには適していないが、だからと言ってはてなが悪い企業なわけではない。
例えば、はてなが短期的利益を追求する企業だったら、下記のような改変を行うだろう。
・アカウントを維持するには課金が必要。
・ブクマをするには動画広告を見る必要がある。
・イエロースターも有料化する。
このような改変を行えば短期的にはてなの利益は増えるだろうがユーザーは不便になる。
はてなが目先の利益に汲々としていないのは株主にとっては良くないが、ユーザーにとっては良いことなのだ。

 

はてな決算説明資料23年7月期

はてなの収益を見ると、儲かっているのは法人向けサービス「Mackerel」や少年ジャンプ+などに採用されているGigaViewerなどのテクノロジーソリューション事業で、はてなブックマークはてなブログは利益が伸びていない。
はてなブログなどのコンテンツ事業は「仕込みの時期として中長期的な視座で取り組む」とあり、短期的には儲からなくても良いと割り切っている。その鷹揚さは素晴らしい。

だが、はてなの株価があまりに安いと買収される可能性がある。
もし、イーロン・マスク氏のような人がはてなを買収した場合、テクノロジーソリューション事業を残してはてなブックマークはてなブログのようなコンテンツ事業は閉鎖するかもしれない。
そうならないために、多少は株価対策も行った方が良いのではないだろうか。