庭の木にみかんがなった。正確に言うと冬頃になっていたのだが、面倒くさいので放っておいたら風の強い日などにぼたぼた落ちてくるようになった。
苗を植えたわけではなく種から生えてきた木なので、店で買うものの味とは比べるべくもなく結構酸っぱいが、落ちるまで熟させればそこそこ甘い。
先日、庭で落ちたみかんを拾っていると、垣根越しに近所のおじさんが話しかけてきた。
「この間、落ちているみかんを拾って食べたら美味しかったよ」と言うので、「そうですか」と答えた。
黙々とみかんを拾っているとおじさんは去っていった。
後で気づいたのだが、あれは暗にみかんをくれと言っていたのであろう。
このように私は察しが悪く、後からそういうことか、と思うことがままある。
だが、この場合は察しが悪いことが幸いした。
なぜなら、特に親しいわけでもないおじさんにみかんをあげたくはなかったからだ。
みかんを両親と姉に送った所、喜ばれた。
その後、自分でも時々食べているのだが、木にはなお沢山のみかんがなっている。おじさんは自分で食べきれない程なっているのにお裾分けしてくれなかったと思っているであろう。
やはり察しが良い方が良かったかもしれない。