東雲製作所

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たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座感想

『たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座』(田丸雅智著、キノブックス)は各地でワークショップをやっているショートショート作家の田丸氏が、誰でも必ずショートショートが書けるというメソッドを開示した本だ。
本当に誰でも書けるのか、自分でもやってみた。

*超ショートショートのつくり方
1)ワークシートに名詞を20個書く
ex)みかん、電池、新聞、猫、新幹線…

2)名詞一つを選び、思いつくことを10個書く
ex)みかん→甘い、丸い、ビタミンが多い、庭から生えてくる…

3)2)と1)を組み合わせて不思議な言葉を作る
ex)甘い電池、ビタミンが多い新聞、庭から生えてくる新幹線…

4)3)の中から一つを選んで、それがどんなものかを説明し、良いことと悪いことを列挙する。
ex)「庭から生えてくる新幹線」
どんなものか:雑草の間から新幹線が生えてくる。
良いこと:きっちり育てると高く売れる。
悪いこと:育ちすぎると危ない。

イデアがまとまったので、実際にショートショートを書いてみた。


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庭から新幹線が生えてきた
                    東雲長閑

庭の草むしりをしていると、見慣れない草をみつけた。つくしみたいな形だが、白くて青い線が入っている。毒キノコのようで不気味だ。
インターネットで調べてみると新幹線だということが分かった。新幹線は専門の農家が育てているが、野生種も存在する。新幹線の実を食べた鳥の糞から、まれに生えてくるらしい。
庭に新幹線が生えていても邪魔なだけだ。抜いてしまおうと思った私は、一両当たり2~3億円という記述を読んで思いとどまった。新幹線は数年で出荷できるらしいので、上手く行けば年収一億円の大儲けだ。

良い新幹線には鉄分の多い土壌が欠かせない。私はホームセンターから赤土を買ってきて入れ替えを行った。小さい内は塗装が薄く錆びやすいので、雨が降るたびカバーをかけるのも欠かせない。
大事に育てたかいあって、一年後には二階の屋根を超えるまでに成長した。
お隣の山田さんが「危ないじゃないか。」と文句を言ってきた。
「倒れたらどうするんだ。切ってくれ。」
「新幹線は2~3億円で売れます。売れたら迷惑料として一割差し上げます。」
山田さんはほくほく顔で引き下がった。

二年後、新幹線は25メートルまで成長した。窓から覗くと中の椅子まで整然と並んでいる。完璧な仕上がりだ。
私が連絡すると、すぐにJRの担当者が買い取りにやって来た。担当者は見事な出来栄えに感心していたが、各部の採寸をするととたんに渋い表情になった。
「育ちすぎです。これでは買い取れません。」
「そんなはずはありません。きっちり全長が25メートルになるまで育てたんですよ。」
「新幹線で重要なのは車輪幅です。新幹線の線路幅は1435mm。この新幹線は車輪幅が1473mmもあります。これではレールに乗りません。」
私が手塩にかけて育てた新幹線は単なる鉄くずとして二束三文で買い叩かれた。お隣の山田さんもがっかりだ。

やはり素人が新幹線を育てるなどどだい無理な話だったのだ。
私はホームセンターで飛行機の苗を買ってきて育て始めた。飛行機なら育ちすぎてもジャンボジェットにすれば良いからだ。
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一般に、アイデアはひたすら降りてくるのを待つものだと思われている。本書は、天啓頼みと考えられているアイデア機械的な作業の繰り返しによってひねり出すという発想が面白い。
読みの質を追求していた将棋AIが、力技で読む量を増やしたら強くなったみたいなアプローチだ。

書いてみて分かったのは、このメソッドの課題は落ちをつけるのが難しいということだ。
上記の例でも、「庭から生えてくる新幹線」というアイデアは斬新だが、落ちが弱い。
どうやって落とすかは頭を捻るしかないのだろう。