東雲製作所

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株価下落時に買う方法

1.なぜ下落時に買うのか
先週は久しぶりに株の大きな調整が発生した。米国の長期金利が急上昇したのを受けて、2月25日にS&P500は2.45%、ナスダックは3.52%下落。翌日の日経平均は3.99%下落した。

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QQQ1年チャート

先日「移動平均線を下抜いたら売る戦略は有効か」という記事を書いた。

shinonomen.hatenablog.com


移動平均線を下抜いたら売る戦略は単純積み立てよりリターンが悪いと結論づけたが、「移動平均線を下抜いたら売る戦略」には二つの側面がある。1)移動平均線を下抜いたら売ると2)下落中は買わないだ。
このうち、リターンが悪くなった主因は2)下落中は買わないの方だ。

投資パフォーマンスを上げるには株価が割安になっている下落時に買うことが重要なのだ。

こう言うと「落ちるナイフを掴むな」と言うではないか、という反論があるかも知れない。
確かに、下落の底を見極めて、下げ止まってから買えれば理想的だ。
だが、下落中は買わず、下げ止まってから買うという方針には二つ問題がある。
一つ目は押し目で買えないことだ。
下落の多くはすぐに下げ止まって押し目を形成する。株価はすぐ元値に戻るので、下落してすぐに買わないと押し目では買えないことになる。

もう一つは底を見極めるのが難しいということだ。
コロナショックの暴落から底を打って上がり始めた2020年4月には、ほとんどの人が二番底を警戒していた。あのウォーレン・バフェット氏ですら二番底を警戒して買えなかったぐらいだ。
買い場だと明言していたのは私の知るかぎりハワード・マークス氏と広木隆氏ぐらいだ。普通の投資家が底を見極めて買えるとは思えない。


2.下落時に買う条件
ただし、下落時に売り逃げず逆に買い増す戦略が有効のは1)現金比率がそこそこあり、2)自己資金だけを運用しており、3)精神的に図太い人が、4)インデックスファンドを買う場合に限る。

第一に現金比率が低い(一割以下など)人はいったん売って現金比率を上げないと暴落中に身動きが取れなくなる。プロが下落トレンドに入ったら売れと言うのは、現金をほとんど持たないからだ。大抵のアマチュアは十分株を買えていないので、売り逃げる必要はない。

第二にお客の金を運用している人(=プロ)は売り逃げないと駄目だ。一時的にでも運用資産が半分になったら客に対して申し開きができず、クビになりかねないからだ。自分の金で買っているアマチュアは半値になろうが十分の一になろうがクビにならないので問題ない。

第三に持ち株が半値になったら精神的に耐えられない人はやめた方が良い。これは甘く見るべきではなく、コロナショック後に株を始めて一度も暴落を経験したことがない人は、暴落の恐ろしさを分かっていない。私は図太い上に2018年末の暴落を経験していたので耐えられたが、駄目な人は本当に駄目なようだ。生ける屍のようになってまで金を儲けてもしょうがない。

第四に個別株でやっては駄目だ。個別株では業績がどこまで悪化するか分からず最悪倒産しかねないからだ。米国企業が全部倒産することはありえないのでインデックスなら大丈夫だ。


3.下落時に買う方法
下落時に買い向かう際に最も恐れるべきは、やみくもに買って下落途中で資金が尽きることだ。
また、心に従って買うと、下落初期は安くなったぞと沢山買い、下落が大きくなるに従って心が折れ、下落の底では全く買えないということになりかねない。下落中に買うなら計画的、機械的に買わねばならない。

私がコロナショックの時にやった方法は以下のとおりだ。


1)どうなったら何を買い始めるか決める。
私の場合S&P500が50日移動平均線を割り込んだら買い始めることにしている。
より慎重にするなら100日移動平均線にしても良いし、PERやシラーPERで決めても良い。

買うものは長期的に利益成長が期待できるインデックスファンドが良い。
具体的には分散されている順にVT(全世界株式)、VTI・VOO(米国株式)、QQQ(NASDAQ100)などだ。
後ろほどハイテクグロースに集中しているので、長期的な利益成長力は高いがリスクも高い。
私はQQQ連動ETFの2568を買うのを基本にしているが、今はグロース株からバリュー株へのローテーションが続いているのでVTやVTIの方が無難かもしれない。

日本円で買える主な投資信託ETFは下記の通り

投資信託
全世界 SBIインデックス全世界株式、eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)、楽天・全世界株式インデックスファンド
VTI 楽天・全米株式インデックスファンド
S&P500 SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
QQQ iFreeNEXT NASDAQ100インデックス

ETF
全世界 MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信(2559)
S&P500 MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)、SPDRS&P500ETF(1557)
QQQ 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし(2568)、MAXISナスダック100上場投信(2631)

 

2)最大下落幅を予想する。
リーマンショック時にS&P500は44%下落した。50%の下落をみておけばほぼ大丈夫だろう。
もっと攻めるなら個々の局面毎に予想しても良い。
2月26日現在、S&P500の予想PERは22.47。コロナショックの底の3月20日には14.62まで低下した。
バリュエーションがコロナショック時に戻ると34.9%下落する。景気は回復に向かっているので、余程のことが起きない限り、35%以内の下落には収まりそうではある。凶悪な変異種が流行して世界中が再ロックダウンになる可能性もあるので、断言はできないが。

 

3)1%下落する毎に買う額を求める
1%毎投資額=投資資金/最大下落幅

 

4)下値を更新する毎に下落分だけ追加購入する。
投資信託を買う場合、
S&P500=3800$から買い始めるなら、(3800,3762,3724,3686,3648,3610…)と1%ずつ下がった表を作っておき、前夜のS&P500が下値を更新した数×1%毎投資額を購入する。一度買った価格には印をつけておき、2度買わないようにする。
具体例
3840 購入せず
3700 1%毎投資額×3(3800,3762,3724の分)を購入
3770 購入せず
3680 1%毎投資額×1(3686の分)を購入

ETFの場合は指値を入れておけば良いのでより簡単だ。
具体例
S&P500が50日移動平均線を割り込んだら買い始め、投資資金が50万円で最大下落幅を50%と見込み、2558を買う場合。
1%毎投資額=1万円
2558は2月26日現在1株11641円なので、1.16%毎に指値を入れておけば良い。
S&P500の50日移動平均線は3802.35で2/26始値3839.66の0.97%下にある。(50日移動平均線の位置はTrading Viewで分かる。)
2558の50日移動平均線は 11641×(1-0.0097)=11528円 にあると推定できる。
11528×1.16/100=133.72円なので、11528から134円下がる毎に(11394,11260,11126,10992,10858,10724…)と指値を入れれば良い。


コロナショック時、私は投資信託を中心に買っていたのだが、日和って1/50以下に減額してしまった。
最もパフォーマンスが良いのは、名義人が死んだり忘れたりして放置されている証券口座だと言う。
暴落時に細かく値動きを負うと疲弊するし、恐れを抱いてなかなか事前の計画通りには買い付けられない。ETF指値を入れておいて放置するのがおすすめだ。