東雲製作所

東雲長閑(しののめのどか)のよろず評論サイトです。

テスト結果をごまかすと実力が低下する

近年、民主主義国家でトランプ流の強権的リーダーが台頭している。
ブラジルのボルソナロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領等々。程度の差はあれ、強権化を進めている国は枚挙に暇がない。ロシアのプーチン大統領はそれらの先駆けと言って良いかもしれない。

近年、世界的に少子高齢化が進んだことで、高度成長期のような配分が難しくなっている。
労働人口が増加する人口ボーナス期は軽い税金で手厚い福祉を賄うことができた。現在はより税金を重くしても少ない福祉しか提供できない。
政治家はかつてよりテストで良い点を取るのが難しくなっているのだ。

そんな中台頭したのがトランプ流のリーダーだ。彼らの特徴は敵を攻撃して強いリーダーであることをアピールする、国のルールを自分に都合の良いように変える、などいくつかあるが、最も重要なのは情報操作だ。
彼らは自らに都合の悪い情報をフェイクニュースと断じ、メディアに圧力をかけて国民に届けまいとする。
テストで良い点を取るのが難しいので、テスト結果を改ざんして良い点であるようみせかけようとしたのだ。

この方法は外交ではある程度うまく行く。外交が上手くいっているかを国民が直接知ることは難しいからだ。
経済は外交よりはごまかしにくい。景気が悪化すれば、収入が減ったり失業したりして国民にも実感できるからだ。
だが、経済は前借りによって短期的にごまかすことが可能だ。借金を増やして減税し、公共投資を増やせば短期的に景気は改善する。
また、経済状況は国によって違うので、他国とも比較されにくい。かくしてトランプ流のリーダーは順調に国民の支持を得ていた。

だがここで、世界中のリーダーにまったくごまかせない課題が与えられた。それが新型コロナウィルス対応だ。
新型コロナウィルス対応は全世界統一テストだ。人口当たりの死者数という揺るぎないデータによって政府の実力が白日の元にさらされたのだ。

web.sapmed.ac.jp

新型コロナウィルス対応で問われる能力は多岐に渡る。
第一に政府の発信力だ。政府が国民に正しい情報を届け、国民に実行してもらう力が試される。
第二に政府の決断力だ。素早くイベントの中止や国境閉鎖を打ち出せた国ほど感染者数が少なくなっている。
第三に政府の効率性だ。検査体制、マスクの供給、休業補償などを素早く実施できるかが問われている。
他にも、パンデミックへの備えや医療体制のバッファも重要だ。まさに政府の総合力が問われているのだ。

トランプ流のリーダーは概ねコロナ対策に失敗している。
これには周囲をイエスマンで固めたせいで正しい情報が入りにくかったとか、マッチョに立ち向かおうとしたがコロナには通じなかったとかいくつか理由があるが、本質的な理由は彼らが無能だったからに他ならない。
なぜ、トランプ流のリーダーが無能になるか、それはテスト結果をごまかしているからだ。

後からテスト結果をごまかせると分かっているのに、必死に勉強するのは難しい。どうしたって怠けてしまう。長年の怠惰が積み重なると、メディアを通じて国民に厳しくチェックされているリーダーとは実力に雲泥の差が生じてしまう。
メディア規制を進めるリーダーは反対勢力の力を削いでやろうとして、自らの力を削いでいることに気づいていない。
批判勢力は敵対者ではなく貴重な助言者なのだ。自分の代わりに自らの弱点を探してくれるのだから、こんなに有り難い存在はない。

世界各国のリーダーは自らの身が可愛いのなら、メディア規制や情報の改竄は止め、批判者の声に耳を傾けるべきだ。

とても大きなごん狐

 これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。
 むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに人類を守るためのお城があって、中山さまという将軍さまが、おられたそうです。
 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちのゴジラよりも大きな狐で、しだの一ぱいしげったアマゾンのような原生林の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って東京ドーム十個分の芋をほりちらしたり、菜種油の貯めてあるタンクへ火をつけて村を焼き払ったり、百姓家の裏手に建っている発電用風車の羽をむしりとっていったり、いろんなことをしました。
 或秋のことでした。二、三年雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。
 雨があがると、ごんは、ほっとして穴からはい出ました。空はからっと晴れていて、ごんが穴から出たことを知らせる警戒警報が地の果てまできんきん、ひびいていました。
 ごんは、村を流れる黄河の十倍ぐらいある川の堤まで出て来ました。あたりの、すすきの穂には、まだ雨のしずくが光っていました。川は、いつもは水が少いのですが、三年もの雨で、水が、どっとまし、辺りの村々は全て水没していました。ただのときは水につかることのない、川べりの大きな鉄塔や、世界一長い橋が、黄いろくにごった水に横だおしになって、もまれています。ごんは川下の方へと、すっかり水没した高速道路を歩いていきました。
 ふと見ると、川の中にシュワルツネッガーを百倍屈強にしたような人がいて、何かやっています。ごんは、見つからないように、そうっと原生林の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。
「兵十だな」と、ごんは思いました。兵十はその名の通りグリーンベレーの選りすぐりの兵隊十人を瞬殺したという人類最強の男で、盛り上がった筋肉によってぼろぼろにはち切れた黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、総延長五十キロに及ぶ定置網をゆすぶっていました。はちまきをした顔の横っちょうに、お盆が一まい、大きな黒子みたいにへばりついていました。
 しばらくすると、兵十は、定置網の一ばんうしろの、袋のようになったところを、水の中からもちあげました。その中には、車や家や橋の残骸などが、ごちゃごちゃはいっていましたが、でもところどころ、白いものがきらきら光っています。それは、鯨ぐらい太いうなぎの腹や、ジンベエザメぐらい大きなきすの腹でした。兵十は、体育館ぐらいの大きさのびくの中へ、そのうなぎやきすを、ごみと一しょにぶちこみました。そして、また、袋の口をしばって、水の中へ入れました。
 兵十はそれから、びくをもって川から上りびくを山の峰においといて、何をさがしにか、川上の方へかけていきました。
 兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと原生林の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。ちょいと、いたずらがしたくなったのです。ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、定置網のかかっているところより下手の川の中を目がけて、大谷翔平投手のような豪速球でびゅんびゅんなげこみました。どの魚も、「ドゴォォォン!」と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみ、大きな水柱を立てました。
 一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。うなぎは、キュオオオオオオンと超音波のような叫び声を上げてごんの首へまきつきました。そのとたんに兵十が、向うから、
「うわア石川五右衛門とアルセーヌ・ルパンと怪盗セイント・テールを足して三で割らない大泥棒狐め」と、地球の裏側でも聞こえるような大声でどなりたてました。ごんは、びっくりしてとびあがりました。うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままごんを縊り殺さんと巨大重機のような力で締めあげてはなれません。ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、超音速旅客機コンコルド並みの速度でにげていきました。
 ほら穴の近くの、ごんの挙動を監視するためのセンサーの下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。
 ごんは、ほっとして、象ぐらいの大きさのうなぎの頭をかみくだき、なおも圧搾機のような力で締めあげてくる胴体を渾身の力でやっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。


 十日ほどたって、ごんが、大日本プロレスを代表する悪役レスターである”地獄のカントリーエレベーター”弥助の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木で懸垂をしながら、弥助が、おはぐろをつけていました。総合格闘技界の若きカリスマ、”溶接王”新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛がダンベルを上げながら髪をセットしていました。ごんは、
「ふふん、格闘技村に何かあるんだな」と、思いました。
「何だろう、異種格闘技戦かな。異種格闘技戦なら、プレスリリースがありそうなものだ。それに第一、告知ののぼりが立つはずだが」
 こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に手掘りで地下30キロまで掘り抜いた赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その大きな、兵十が歩くたびに立てる地響きによってこわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきのコック服を着て、腰に手拭をさげたりした三ツ星シェフたちが、厨房で下ごしらえをしています。大きな鍋の中では、本日のメインディッシュである”比内地鶏胸肉の香草和え~キャビアを添えて~”がぐずぐず煮えていました。
「ああ、葬式だ」と、ごんは思いました。
「兵十の家のだれが死んだんだろう」
 お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、坐像としては日本一の高さの大仏さんのかげにかくれていました。いいお天気で、遠く向うには、ごんから人類を守るためのお城の大砲が光っています。墓地には、ラフレシアより大きなひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。と、延暦寺東大寺金剛峯寺増上寺永平寺など日本中の名だたる寺から一斉に、ゴーン、ゴーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。
 やがて、世界各国から集った黒い喪服を着た葬列のものたち七十万人がやって来るのがちらちら見えはじめました。話声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。人々が通ったあとには、ひがん花が、跡形もないほど木っ端微塵にふみおられていました。
 ごんはのびあがって見ました。兵十が、白いかみしもをつけて、3m程の位牌をささげています。いつもは、赤い閻魔大王みたいな元気のいい顔が、きょうは何だかしおれていました。
「ははん、死んだのは兵十のおっ母だ」
 ごんはそう思いながら、頭をひっこめました。
 その晩、ごんは、穴の中で考えました。
レスリング女子世界チャンピオンだった兵十のおっ母は、床についていて、巨大うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十が定置網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母に世界三大珍味を始め、ありとあらゆる有名店の美味しいものは食べさせても、巨大うなぎだけは食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、巨大うなぎが食べたい、ゴテゴテに脂が乗って胃もたれがする巨大うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

 

 兵十が、世界一深い井戸のところで、指懸垂をしていました。
 兵十は今まで、おっ母と二人きりで、ストイックなくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
 こちらの道場の後から見ていたごんは、そう思いました。
 ごんは道場のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」
 ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、
「いわしを五千匹おくれ。」と言いました。いわしの仲買人は、いわしをつんだトラック三百台を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを満載にした発泡スチロール容器を三百人がかりで、弥助の家の中へもってはいりました。ごんはそのすきまに、車列の中から、五、六台のトラックをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の屋敷の裏口から、屋敷の中へトラックを投げこんで、穴へ向ってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、落ちたら骨まで砕け散る井戸のところで小指一本で懸垂をしているのが小さく見えました。
 ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
 つぎの日には、ごんは栗がなった木々を山ごと削りとって、それをかかえて、兵十の家へいきました。裏口からのぞいて見ますと、兵十は、鶏のささみ肉十キロの午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。へんなことには兵十の頬ぺたに、かすり傷がついています。ボクシング世界ヘビー級王者と戦った時も傷一つつかなかった兵十の顔にです。どうしたんだろうと、ごんが思っていますと、兵十がひとりごとをいいました。
「一たいだれが、いわしのトラックなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、盗人と思われて、いわし仲買人のやつに、ひどい目にあわされかけた。まさかトラック三百台が一斉に突っ込んでくるとはな。受け止めるのはなかなか骨だったぞ」と、ぶつぶつ言っています。
 ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし仲買人にトラック三百台で突っ込まれて、あんな傷までつけられたのか。
 ごんはこうおもいながら、そっと兵十の三十年連続総合格闘技世界王者防衛を記念して建てられた東洋一の大きさを持つ道場の方へまわってその入口に、山をおいてかえりました。
 つぎの日も、そのつぎの日もごんは、山を丸ごと削り取っては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗の山ばかりでなく、まつたけの生えた松の山も二、三個もっていきました。


 月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を間断なく降り注ぐ砲弾を手で払いのけながら通ってすこしいくと、非常時には戦闘機が離着陸するために滑走路並みに広くなっている道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと緊急警報が鳴っています。
 ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というムエタイ世界王者でした。
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。
「ああん?」
「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」
「何が?」
「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに大量の土砂を、まいにちまいにちくれるんだよ」
「ふうん、だれが?」
「それがはっきりとはわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」
 ごんは、ふたりのあとをつけていきました。
「ほんとかい?」
「ほんとだとも。うそと思うなら、あした見に来いよ。俺の屋敷を埋め尽くす土砂の山を見せてやるよ」
「へえ、へんなこともあるもんだなア」
 それなり、二人はだまって歩いていきました。
 加助がひょいと、後を見ました。ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。加助は、ごんには気づいていましたが、そのままさっさとあるきました。吉兵衛という館長の家まで来ると、二人はそこへはいっていきました。ポンポンポンポンとサンドバッグを叩く音がしています。窓の障子にあかりがさしていて、兵十よりさらに大きな坊主頭がうつって動いていました。ごんは、
「連合稽古があるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。しばらくすると、また三万人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。千人組手の声がきこえて来ました。


 ごんは、吉兵衛館長主催の一週間で参加者の九割が病院送りになるという連合稽古がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。中山将軍が最終防衛ライン死守のために投入した戦車部隊をふみふみいきました。
 お城の前まで来たとき、振りかかる火の粉を払いながら加助が言い出しました。
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、怪獣のしわざだぞ」
「まあそうだろうな」と、兵十は飛んできた流れ弾をかわしながら、うんざりした顔で、加助の顔を見ました。
「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、怪獣だ、怪獣が、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
「そうかなあ」
「そうだとも。だから、まいにち怪獣にお礼参りをするがいいよ」
「無茶を言うな」
 ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、怪獣にお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。


 そのあくる日もごんは、栗山をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は道場で縄登りのトレーニングを行っていました。それでごんは屋敷の裏口から、こっそり中へはいりました。
 そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が屋敷の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
 兵十は立ちあがって、中山の城に設置してある、対ごん戦に特化して開発された砲身長30mの520mm榴弾砲をとってきて、火薬をつめました。
 そして足音をしのばせてちかよって、今門を出ようとするごんを、ドンと、うちました。ごんは、びくともしませんでした。兵十は五百発ほど打ち込みました。ごんはかすり傷一つ負っていません。兵十は榴弾砲を剣のように構えると、ごんの足に五千連撃を叩き込みました。ようやくごんは足をくじいてばたりとたおれました。兵十はかけよって来ました。家の中を見ると、家の大部分が栗山で押しつぶされているのが目につきました。
「おやおや」と兵十は、うんざりした顔でごんに目を落しました。
「ごん、やはりお前だったのか。いつも栗山をくれたのは」
 ごんは、お礼を言われることを期待したきらきらした目で、うなずきました。
 兵十は榴弾砲を地面に叩きつけました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。

www.aozora.gr.jp

anond.hatelabo.jp

東大王はなぜ面白いのか――好きなことを全力で

『東大王』(TBS系列水曜19:00-)は最も楽しみにしているテレビ番組の一つだ。
現役東大生から選抜された東大王チームが芸能人チームと戦うクイズ番組なのだが、問題文を見る前に押すなどハイレベルな攻防がすさまじい。
特に、芸能人チームに助っ人として加わった東大王OBの伊沢拓司氏が東大王チームと早押し対決をする時は、剣客が真剣で斬り合っているような緊迫感があって、ゾクゾクする。

www.tbs.co.jp

『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の中でナイツの塙氏が、好きなことを夢中になって語っているとそれだけで面白いと指摘していた。
好きなことを全力でやっている人の姿は魅力的だ。伊沢氏や水上颯氏がクイズをやっているのを見ると、本当にクイズが好きなのが伝わってきて嬉しくなる。

人は能力が最大限に発揮できる環境において、もっとも成長し、成長するから楽しくなるという好循環が発生する。
普通のクイズ番組は視聴者のレベルに合わせているため、回答者の能力が最大限発揮されていない。
他のクイズ番組では『Qさま!!』が比較的ハイレベルだが、クイズ好きな視聴者が解けるレベルの問題なので、カズレーザー氏などは余裕を持って解いていることが多い。
東大王ではしばしば視聴者の大半が解けない超難問が出題される。クイズ番組は視聴者が解いて楽しむものという固定概念からすると掟破りだが、スポーツのスーパープレイを見るような感覚で楽しめる。
出演者は能力を最大限に発揮して戦うのでどんどん成長する。当初は伊沢氏らに全然歯が立たなかった鈴木光氏が、エース格にまで成長し、遂に伊沢氏を倒したり、珍回答でチームの足を引っ張っていた山下真司氏が漢字を猛勉強して難読漢字の猛者と呼ばれるまでになった様には心打たれた。
また、東大王メンバーにも、ひらめき、漢字、音楽、生物などそれぞれ得意分野があり、得意なジャンルのクイズを解く時はとりわけいきいきしている。先日放送された水上颯卒業スペシャルでは最後に東大王メンバーと水上氏が一対一のクイズ対決をしたのだが、各メンバーの得意ジャンルのクイズが出題されていて、スタッフの愛を感じた。
鶴崎修功氏やジャスコ林氏はあまりテレビ向きな性格ではないが、じっくり見ていると面白いキャラクターであることが分かってくる。
視聴者がいきなり見ることが多いテレビでは、出演者に分かりやすいキャラ付けが求められがちだが、東大王では無理に役割を演じさせるのではなく、その人の個性を上手く引き出して、魅力的に見せることに成功している。

 

東大王と対照的なクイズ番組が『トリニクって何の肉!?』(テレビ朝日系列火曜21:00-)だ。

www.asahi.co.jp

「トリニクって何の肉!?」はクイズが苦手な芸能人がアホな回答をするのを見て楽しむ番組だ。
同番組では柏木由紀氏が誤答を連発している。柏木氏と言えば神対応で有名だ。ファンに神対応している時、氏の能力は十全に発揮されている。しかし、クイズでは氏の能力が発揮されておらず、あまり魅力的ではない。
この番組では出演者がアホな回答をすることが期待されており、努力してクイズに強くなってしまったら面白くない。成長サイクルとは逆のジレンマ状態に置かれているのだ。

人にはすごい人を見て感嘆したい欲求と駄目な人を見てバカにしたい欲求がある。
後者の欲求が満たされるので「トリニクって何の肉!?」も面白いことは否めない。
だが、前者の感情が多く発露された方が社会が良くなる。人は好きなことをいきいきとやって成長する方が、嫌いなことをやらされて停滞しているより幸せだからだ。

 

株価の暴落を待つべきか

2020年3月の暴落でS&P500は2237.3999まで下落し、2016年12月6日以来の安値をつけた。
2016年12月7日以降に買った投資家は全て、暴落を待っていた方が安く買えたことになる。

一般に、米国株のような右肩上がりの資産では原理的にはすぐに一括投資、心理的には時間分散をして積立投資をするのが良いとされている。
だが、しばしばこのような暴落が起こるのであれば、暴落を待って投資した方が良いのではないか。
そこで、2000年1月~2019年12月の20年間のS&P500の終値を用いて、暴落待ち戦略について検証してみた。

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まず、その日がその日以降の最安値である確率を調べた所、わずか2.723%だった。ほとんどの場合、すぐ買うより下落を待って買った方が良いことになる。
ただし、どのぐらい下落したら買えば良いのかという問題がある。1セントでも良いから下落したら買うのだと、わずか1セントを得するために、するすると上昇してしまって買い逃すリスクを冒していることになり、割に合わない。

そこで次に、10%以上下落する確率を調べると、66.11%だった。買うと決めた日に10%下に指値を入れて待っていれば、2/3ぐらいの確率で買えるということだ。
20%以上下落する確率は49.79%だった。20%下落するのを待つ戦略も半分ぐらいの確率で報われる。

ただし、下落待ち戦略の成功率は時期によって大きく異なる。
20%下落待ち戦略の成功率は、2000-2009年が88.47%であるのに対し、2010-2019年は11.13%だ。
特に2009年2月10日から 2018年1月16日までは20%下落待ち戦略は一度も成功していない。
ざっくり言うと2000年代はボックス相場であり、下落待ち戦略が有効だった。一方、2010年代は上げ相場であり、下落を待つよりすぐ投資する戦略の方が有効だった。

現在はどちらの戦略が有効なのだろうか。
チャートを見ると2017年からボックス相場に入っているようにも見えるし、コロナショックをイレギュラーな事態として除外して考えれば、上げ相場が続いているようにも見える。

2000年代がボックス相場、2010年代が上げ相場になったのはPERの変化による。

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S&P500の実績PERは 2009年のリーマンショック後の異常値を除くと、2000年代は低下し、2010年代に上昇している。
細かく言うと、2002年3月に46.71のピークをつけて下落に転じ、2011年9月に13.5で底を打って上昇に転じ、2018年1月に24.97でピークをつけてから、一時的な下落を除けば高止まりしている。

S&P500は2011年9月から2018年1月にかけて1204.42から2695.81へ上昇している。
株価=PER(株価収益率)×EPS(1株当たり利益)なので、株価が上昇するにはPERかEPSが上がる必要がある。
当該期間に株価は2.24倍になっているが、そのうち1.85倍はPERの上昇がもたらしたもので、EPSは1.21倍になったにすぎない。
EPSの上昇より、PERの上昇の寄与の方がずっと大きい。企業利益が伸びたからというよりは、株が割高になったから値上がりしたのだ。

現在はFRBが限界まで金融緩和を進めた結果、PERはかなり高くなってしまっている。EPS成長率以上の速度で株価が上がることは期待できない。
2000年代初頭のようなバブルが発生して一時的に高騰する可能性はあるが、2010年代のような長期の上げ相場が続くことは考えにくい。

バブル発生の可能性があるので、すぐ売り抜けられる短期投資家は買うのも一法だ。
だが、PERは既に割高で、EPSもしばらくコロナ前の水準には戻りそうもない。経済が完全復活するまではボックス相場になる可能性の方が高いのではないだろうか。

 

ツツジの花の天ぷらを作った。

庭のツツジの花が咲き始めた。
ツツジの花は天ぷらにして食べることができる。
(レンゲツツジには毒があるのでご注意下さい。)
母がツツジを収穫してきてくれた。

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 試行錯誤して揚げてみる。

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 揚げすぎて黒焦げになっている。

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 衣をしっかりつけて揚げると単に小麦粉を揚げたみたいな味になった。これでは駄目だ。

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 衣を薄くしてさっと揚げるとパリッと揚がった。

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ものすごく薄く切ったポテトフライみたいな味だがちょっと酸味がある。サクサクしていて美味しい。
だが、毎日食べていたらさすがに飽きてきた。

 ツツジの花が盛りを迎えた。

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 多すぎ!

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揚げても揚げても終わらないので、まとめて調理することにした。

チャーハン。

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 スパゲッティ。

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 母作の炒めご飯。

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 姉作の酢味噌和え。

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 炒める前。

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 炒めた後。

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 天ぷらにするのはうんざりだが、炒めたり煮たりするとすごく少なくなってしまうので、これはこれで残念なのであった。

 

つみたてNISAでタイミング投資をする方法

個人投資家向けの非課税制度にNISAとつみたてNISAがある。
私は昨年まではNISAを使っていたが、今年からつみたてNISAに切り替えた。

NISAやつみたてNISAには、買った商品が値上がりして出た利益や配当が非課税になるというメリットがある。一方で、損失が出ても計上できないというデメリットもある。
通常の損失は利益と相殺され、トータルで利益が出た分にだけ課税されるのだが、NISAやつみたてNISAで出た損失は利益と相殺できないのだ。
NISAの非課税期間は5年なので、5年目の最後に今回のような大暴落が来たらかえって課税額が増えてしまう。5年後に暴落が来るかなんて分からないから、得をするかどうかは運任せな部分がある。
一方、つみたてNISAは非課税期間が20年ある。米国株や全世界株のような成長株は20年間積み立てをしてマイナスになったことはない。20年以上運用するならNISAより安心である。

ただし、つみたてNISAには二つ問題がある。
限られた投資信託しか買えないことと、つみたてでしか買えないことだ。

1)限られた投資信託しか買えない
NISAはあらゆる株や投資信託を買うことができるのに対し、つみたてNISAでは国が定めた投資信託しか買えない。
投資初心者が変な商品に引っかからないという意味では良いのだが、慣れた投資家からすると大きなお世話である。
米国株で言うと、S&P500連動投資信託は買えるのだが、リターン最強のQQQ(ナスダック)連動投資信託が買えないのは不満だ。
国は低リスク商品を集めていると説明しているが、新興国株はナスダックよりリスクが高い。新興国株は買えるのにナスダックは買えないのはおかしい。

2)つみたてでしか買えない
NISAは好きなタイミングで買えるのに対し、つみたてNISAはつみたてでしか買えない。
もちろん、つみたてにはつみたてのメリットがある。
投資家には暴落している時は恐怖にかられて売りたくなり、暴騰している時は欲にかられて買いたくなる本能がある。だが、後から見ると、暴落している時こそ買いチャンス、暴騰している時は売りチャンスであることが多い。本能に従って売買すると損をしてしまうのだ。
つみたて投資には投資家の本能を制御し、機械的に投資できるというメリットがある。だが、それは投資家は自動給餌器よりアホだと言っているに等しい。

今後値上がりするか値下がりするかは分からないが、PERやイールドスプレッドや長期移動平均線乖離率やFear&GreedIndexを見れば、現在が割高か割安かぐらいは分かる。
割高でも割安でも毎月同額ずつ機械的に買って行くのはあまりに芸がない。

ネット証券の多くでは、つみたてNISAで年二回ボーナス月を設定できる。毎月の給料日以外に、ボーナス日にも買い付けできるようにという配慮だが、これを使えば年二回タイミング投資をすることができる。

つみたてNISAの非課税枠は年間40万円なので、毎月均等に投資すると一ヶ月33333円だ。
だが、ボーナス月設定を使えば、下記のような設定も可能だ。※
1)毎月3万円、ボーナス月2万円×2
2)毎月2.8万円、ボーナス月3.2万円×2
3)毎月1万円、ボーナス月14万円×2
4)毎月100円、ボーナス月19.94万円×2

ボーナス月を年末に設定しておいて、下落が来たらボーナス設定を翌日に変更することで、年二回まとまった額を買い付けることができる。
(例えばボーナス月の買い付け日を12/28,12/29などにしておき、3/19の急落を受けて12/28を3/20に設定変更すれば、3/20に買うことができる。)
4)のような設定にしておいて下落の底を見極められれば、40万円の非課税枠の大半を、大底の2日間で使い切ることできる。

私は2)の設定にしていたのだが、2月の押し目と3月初めの暴落初期で2回のボーナス月の買い付けを使いきってしまい、暴落の底付近では指をくわえて見ているしかなかった。

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私のような自動給餌器以下の凡人投資家はボーナス月は設定しないか1)程度に止め、3),4)のようなリスキーな設定はしない方が良いだろう。

※証券会社によってはできないかも知れないので、詳しくはお使いの証券会社のHPでご確認下さい。

ボトルコーヒーレビュー

会社では無料で飲める泥水のような味のインスタントコーヒーを飲んでいた。
緊急事態宣言以降、自宅勤務になったので、スーパーで安いボトルコーヒーを買って飲むようになった。消費量が増えたので近所のスーパーで売っているコーヒーを飲み比べてみた。

商品名/製造販売者/内容量/100ml当たりのカロリー/近所の安売りスーパーの値段(税抜き)

職人のコーヒー 低糖/UCC上島珈琲/930ml/6kcal/76円

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苦みが強いのが特徴で焦げたパンみたいな味。
他より少し量が多いのに最も安く、カロリーが低い。
苦み走ったコーヒーが好きな人や価格重視な人におすすめ。


「ブレンディ」ボトルコーヒー 低糖/味の素AGF/900ml/16kcal/99円

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香料と乳化剤が入っており、コーヒーゼリーのような味。
カフェオレ推奨と言うだけあって甘みが強く、牛乳とよく合う。
苦味の少ないコーヒーが好きな人におすすめ。


NESCAFE Excella 甘さひかえめ/ネスレ日本/900ml/11kcal/89円

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私が普段飲んでいるコーヒー。
ブレンディに近いが、ブレンディよりは多少苦味がありバランスが良い。
ほどほどに苦いコーヒーが好きな人におすすめ。


アイスコーヒー/トモヱ乳業・ビッグ・エー/1000ml/19kcal/89円

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ボトルコーヒーではなく紙パックコーヒー。唯一アラビカ種コーヒー豆使用と豆の種類が書いてありこだわりを感じる。
職人のコーヒーよりさらに苦い。味が濃くカフェインが強い感じがする。
目を覚ましたい人におすすめ。


私はいつもコーヒーに99円の低脂肪乳を入れて飲んでいるのだが、ためしに163円の普通の牛乳に変えてみたら驚くほど美味しかった。
美味しいコーヒーを飲みたいなら、コーヒーの銘柄なんかより牛乳の方が重要である。