東雲製作所

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テスト結果をごまかすと実力が低下する

近年、民主主義国家でトランプ流の強権的リーダーが台頭している。
ブラジルのボルソナロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領等々。程度の差はあれ、強権化を進めている国は枚挙に暇がない。ロシアのプーチン大統領はそれらの先駆けと言って良いかもしれない。

近年、世界的に少子高齢化が進んだことで、高度成長期のような配分が難しくなっている。
労働人口が増加する人口ボーナス期は軽い税金で手厚い福祉を賄うことができた。現在はより税金を重くしても少ない福祉しか提供できない。
政治家はかつてよりテストで良い点を取るのが難しくなっているのだ。

そんな中台頭したのがトランプ流のリーダーだ。彼らの特徴は敵を攻撃して強いリーダーであることをアピールする、国のルールを自分に都合の良いように変える、などいくつかあるが、最も重要なのは情報操作だ。
彼らは自らに都合の悪い情報をフェイクニュースと断じ、メディアに圧力をかけて国民に届けまいとする。
テストで良い点を取るのが難しいので、テスト結果を改ざんして良い点であるようみせかけようとしたのだ。

この方法は外交ではある程度うまく行く。外交が上手くいっているかを国民が直接知ることは難しいからだ。
経済は外交よりはごまかしにくい。景気が悪化すれば、収入が減ったり失業したりして国民にも実感できるからだ。
だが、経済は前借りによって短期的にごまかすことが可能だ。借金を増やして減税し、公共投資を増やせば短期的に景気は改善する。
また、経済状況は国によって違うので、他国とも比較されにくい。かくしてトランプ流のリーダーは順調に国民の支持を得ていた。

だがここで、世界中のリーダーにまったくごまかせない課題が与えられた。それが新型コロナウィルス対応だ。
新型コロナウィルス対応は全世界統一テストだ。人口当たりの死者数という揺るぎないデータによって政府の実力が白日の元にさらされたのだ。

web.sapmed.ac.jp

新型コロナウィルス対応で問われる能力は多岐に渡る。
第一に政府の発信力だ。政府が国民に正しい情報を届け、国民に実行してもらう力が試される。
第二に政府の決断力だ。素早くイベントの中止や国境閉鎖を打ち出せた国ほど感染者数が少なくなっている。
第三に政府の効率性だ。検査体制、マスクの供給、休業補償などを素早く実施できるかが問われている。
他にも、パンデミックへの備えや医療体制のバッファも重要だ。まさに政府の総合力が問われているのだ。

トランプ流のリーダーは概ねコロナ対策に失敗している。
これには周囲をイエスマンで固めたせいで正しい情報が入りにくかったとか、マッチョに立ち向かおうとしたがコロナには通じなかったとかいくつか理由があるが、本質的な理由は彼らが無能だったからに他ならない。
なぜ、トランプ流のリーダーが無能になるか、それはテスト結果をごまかしているからだ。

後からテスト結果をごまかせると分かっているのに、必死に勉強するのは難しい。どうしたって怠けてしまう。長年の怠惰が積み重なると、メディアを通じて国民に厳しくチェックされているリーダーとは実力に雲泥の差が生じてしまう。
メディア規制を進めるリーダーは反対勢力の力を削いでやろうとして、自らの力を削いでいることに気づいていない。
批判勢力は敵対者ではなく貴重な助言者なのだ。自分の代わりに自らの弱点を探してくれるのだから、こんなに有り難い存在はない。

世界各国のリーダーは自らの身が可愛いのなら、メディア規制や情報の改竄は止め、批判者の声に耳を傾けるべきだ。