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投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018に投票しました。

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選定理由
人生は雪球(スノーボール)作りに似ている。大切なのは、大きい雪玉を作るに適した長い長い坂を見つけることさ。(ウォーレン・バフェット

 

株は低リスクのものから上がり始め、上げ相場が長期化するにつれ、高リスクのものが上がり始める。
現在は雪球作りに適した坂の上にいるものの、米国の長期金利が高くかつ利上げが見込まれており、PERもものすごく低くはないため、あまり長い坂ではない。

リスクは基本的に
米国大型株<米国小型株<先進国大型株<先進国小型株<新興国大型株<新興国小型株
となっており、坂が十分長ければ2017年の上げ相場のように新興国小型株まで上がる余地があるが、今年前半の上げ相場のように坂が短いとせいぜい先進国大型株が上がったあたりで終わってしまい、新興国株が十分上がる前に下落してしまう恐れがある。

従って、米国株と先進国大型株のインデックスファンドの中で信託報酬が安いものを選定した。
坂が短いと先進国大型株まで上げが回らない可能性もある。ポートフォリオをシンプルにしたいならeMAXIS Slim米国株式(S&P500)か楽天・全米株式インデックスファンドだけでも良い。

現在は米中貿易戦争によって上値が抑えられているが、米中和解が成立すると、もっと坂が伸びる可能性もある。
今月末の米中首脳会談で和解が成立する方に賭けるなら、SBI・新興国株式インデックスファンドを買っておくと良いだろう。

 

投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018

米国株はいつ下げ止まるか

 米国株の下落が止まらない。10/9から2日で5.3%も下落したS&P500はいったん持ち直すかに見えたが、10/24にまたもや3.1%下落。その後も乱高下を繰り返し、底が見えない状態だ。
 米国株がこれだけ大きく200日移動平均線を割り込むことはめったにない。予想PER16.41も過去2年間で、今年2/9の16.35に次いで低く、絶好の買い場のはずだ。だが、どこまで下げるか見通しがつかないと思い切って買い出動できない。


 そこで2000年以降のS&P500の主な下落について調べてみた。2日間の下げが大きかった事例について、下げ止まりまでの期間と下落幅を調べたのが下記の表だ。

f:id:shinonomen:20181029174148p:plain

 これを見ると、2日で5%以上という大きな下げがあっても、半分は2,3日で底を売って反発し、1-2週間で元に戻していることが分かる。米国株は下げた時に買うだけで勝てると言われていたゆえんだ。だが、今回の下げはすでに大幅下落から12日目に入ってしまったので、このパターンではない。

 今回の下げに一番近いのは、記憶に新しい、今年2/8の下落だろう。この時は40営業日かけて8.54%下落し、120営業日かけて元値に戻した。
 他にも、2011年10/3からの下落は9営業日で8.56%、2015年8/20からの下落(チャイナショック)は3営業日で8.26%下落して下げ止まった。
 2000年以降で急落後に株価が9.5%以上下落した時は、いずれもS&P500の実績PERが26以上とかなりの割高水準となっており、PER24以下からでは8.56%以内の下落に留まっている。今回の下落はPER23.88からであり、リーマン・ショックやITバブルのような異常なバブルが弾けたわけではない。
 S&P500は終値で最安値をつけた10/24の時点で既に7.79%下落しており、8.56%までは残り0.77%。予想PER的にも2月の下落までは残り0.37%。類例通りなら、すでに底値圏に到達したと言って良いだろう。

 懸念があるとすると、S&P500の予想PER16.41、実績PER21.8はここ3年に限って見れば非常に安いが、10年くらいのスパンで見れば安くないということだ。例えばリーマン・ショックの後遺症に苦しんでいた2011~12年は実績PER13.5-16.7を推移していた。現時点で企業業績は好調なので、いきなりそんなに下がることはないだろうが、景気後退が始まったらそこまで下がる可能性はあるということだ。
 ここ数年の予想PER=17-18が標準という常識の変わり目に位置しているのではないかという不安が株安を招いている。

 

 今世紀最大の暴落であるリーマン・ショックでは、実に44.05%も下げている。半値近くになったということだ。そうなる可能性も多少あるので、最悪の自体は想定しておいた方が良い。

 しかしながら、今回、そこまで下げる可能性は低い。
 今回の下落はFRBの利上げと米中貿易摩擦が原因だ。
 FRBは今後も利上げを続けると表明しており、それなら株より安全な債券で運用した方が良いや、と思った投資家が株を売って債券を買ったせいで株価が急落した。従って、FRBが「利上げを止めます。何なら利下げします。」と言えば下落は止まる。
 FRBの議長がボンクラでなければ、リーマン・ショック級になる前に利上げを止めると表明するはずだ。

 もっとも、もしリーマン・ショック級の暴落になっても、さほど心配しなくて良いかも知れない。リーマン・ショックでも、395営業日後には元値まで戻しているのだ。半値近くになっても1年7ヶ月間ホールドし続ければ戻るのだと考えれば、だいぶ気が楽になるのではないか。

 とは言え、前世紀に遡れば、株式の死と呼ばれるような、もっと長期の低迷も存在している。現在は絶好の買い場だが、最悪の事態に陥っても詰まない程度の金は残しておくべきだろう。

 

ふるさと雪のうんちゃららー

ラジオで聞いて以来、ときおり口ずさむ曲がある。女性ボーカルのしっとりとした歌で、秋の夜にはしみじみと心に染みる。

具体的にはこんな曲だ

ふふふーふふふふふ ふふふふー いまふーふふ、ふふふーふふてー
ふふふーふふふふふ ふふふふー ふふふーふふふ ふふふー

要はほとんど歌詞が分からないのだが、サビは多少は覚えている。

(カタカナ)では帰れないー ふるさと雪のうんちゃららー

こんなあやふやな歌詞では正解にたどり着けまい。だが、やはり気になるので、「帰れない ふるさと 雪」で検索をかけてみた。

すると、動画の3曲目に正解がヒットした。


中島みゆきの「ホームにて」という曲だった。

中島みゆき ホームにて 歌詞

私が驚いたのは、私が入力したキーワード三つの内、二つは間違っていたことだ。

(カタカナ)では帰れないー ふるさと雪のうんちゃららー
は正しくは
ネオンライトでは燃やせない ふるさと行きの乗車券

帰れない→燃やせない
雪→行き
だった。

三つのキーワードのうち二つは歌詞に含まれていない単語であるにも関わらず、何となく意味をくみ取って正解を返したということだ。
google先生賢すぎ!

 

ちなみに「雪 ふるさと 帰れない」でググると「ホームにて」は出てこなかった。
つまりgoogle先生は「こいつは「ふるさと 雪」と打っているから「ふるさと 行き」を聞き違って検索しているのかも知れんな」と類推して回答したということだ。

あまりの賢さに、つくづく感心した秋の夜であった。

 

あ・り・が・と・う

あ・り・が・と・う

 

 

長期移動平均線によるタイミング投資は有効か

1.はじめに

 前回の記事ではPERによるタイミング投資(低PER法)の有効性を論じた。

 低PER法には効果が出るまで時間がかかることの他に、実用上の問題がある。時系列データが得にくいのだ。
 私が調べた限り、ネット上で入手できる長期のPER時系列データは世界主要株式市場の株価収益率(PER)がまとめている日経平均、ダウ平均、上海総合指数等だけであり、S&P500やTOPIXMSCIコクサイ、MSCIエマージングについては2年以内の短期データか最新のデータしか入手できなかった。これらについて低PER法を行うには、定期的に公表されるデータをこつこつ記録し続けてデータを蓄積する必要がある。
 また、PERが公表されるのは、早くても取引終了後、遅い場合は週に一度であり、素早い売買を行うには適していない。

 投資の世界にはファンダメンタル分析テクニカル分析という二つの派閥がある。
 ファンダメンタル分析は長期的には会社の価値に見合った株価になるという考え方だ。PER、PBR、ROE、EPS成長率といった会社の価値を表す諸指標を調べることで、会社の生み出す利益や成長性に比べて一時的に割安になっている株に投資する。

 一方、テクニカル分析は会社の価値は全て株価に織り込まれているという考え方で、株価の値動きのみを分析の対象とする。移動平均線などを用いたチャート分析によって売買の判断を行う。
 私はファンダメンタル派なので、短期のテクニカル手法には懐疑的だ。だが、ファンダメンタルが長期的には株価に織り込まれると考えるならば、ファンダメンタル指標であるPERの代わりに長期のテクニカル指標である長期移動平均線乖離率を用いても良いのではないか。

単純移動平均線 | チャートの見方 | 為替レート&チャート | じぶん銀行


2.移動平均線法の検証

 そこで、株価が200日移動平均線を下回った時のみ購入する、という投資法(移動平均線法)が有効か検証を行った。
 検証には2002年8月14日~2018年10月12日の日経平均終値データを用いた。
 移動平均法では200日移動平均線より終値が下の時のみ200円購入する。これと毎日100円ずつ購入するドルコスト平均法とで、平均取得単価の比較検証を行い、下記の結果を得た。


移動平均線 
投資金額315800円
取得株数 28.76株
平均取得単価 10978.88円

ドルコスト平均法
投資金額396500円
取得株数 31.62株
平均取得単価 12538.93円


移動平均線法を用いることで平均取得単価を12.44%下げることに成功した。

f:id:shinonomen:20181022181011p:plain


 グラフのオレンジの部分が移動平均線法で購入した箇所だ。移動平均線法では下げ相場の初期に高値掴みしやすく、上げ相場の初期に購入を打ち切ってしまう傾向が見られたが、概ね高値を回避し、安値を拾えていることが分かる。

 ちなみに、テクニカル分析では、株価が長期移動平均線を上回ったら買い、下回ったら売るという戦略が一般的である。これは”下げ相場の初期に高値掴みしやすく、上げ相場の初期に購入を打ち切ってしまう傾向”を逆用して高めに売って安めに買っているわけだ。 しかしこれは、割安圏にいた株価が割高になるまで待ってから買い、割高圏にいた株価が割安になるまで待ってから売っているわけで、私には理解しがたい。割安なうちに買い、割高なうちに売った方がより儲かるのではないだろうか。

 

 ダウ平均でも同様の検証を行った所、下記の結果を得た。
移動平均線 
投資金額207600$
取得株数 19.96株
平均取得単価 10403.33$

ドルコスト平均法
投資金額407600$
取得株数 32.53株
平均取得単価 12528.23$

移動平均線法の方が平均取得単価が16.96%低くなった。

f:id:shinonomen:20181022181111p:plain

 

 移動平均線法は優秀だが欠点もある。好調な上げ相場が続くとその間全く購入できなくなることだ。
 日経平均とダウ平均の今世紀に入ってからの平均乖離値は日経平均が+256.61円 ダウ平均が+353.63$ だった。ざっくり言うと、日経平均は200日移動平均線からの乖離値が+250円、ダウ平均は+350$以内だったら、平均よりは割安なので買っても良い。


3.低PER法と移動平均線法の比較
 低PER法と移動平均線法のどちらが優れているのだろうか。
 同期間の日経平均株価における、低PER法と移動平均線法の購入時期を並べて示す。(上が低PER法、下が移動平均線法)

f:id:shinonomen:20181022181158p:plain

f:id:shinonomen:20181022181212p:plain


 両者の結果はかなり似通っている。だが、細かく見ると違いもある。両手法の利点と欠点は下記の通りだ。

低PER法
利点:ファンダメンタルの裏付けがあるため、バブル時の高値掴みを避けられる。
欠点:経済危機後の安値を買い逃す危険性がある。PER値が手に入りにくい。

移動平均線
利点:データが入手しやすい。
欠点:過去のデータに引っ張られるため下げ相場の初期に高値掴みしやすく、上げ相場の初期に購入を打ち切ってしまう。市場が長期に渡って間違うと誤った結果を出す。

 200日移動平均線乖離率はググれば簡単に入手できるのに対し、低PER法はExcelで計算しなくてはならず、手間がかかる。さらに、指標によっては長期時系列PERデータが入手できないものもある。
 原理的には低PER法の方が正しいが、実用上は移動平均線法の方が優れている。
 主に移動平均線法で売買を行い、低PER法で適宜チェックするのが良いのではないか。

 

PERによるタイミング投資は有効か

1.はじめに
 日経平均が急騰後に暴落した。
 私はこの流れに翻弄された。まず急騰に完全に乗り遅れた。私は日経平均ETFを2株しか持っておらず、そのうち1株を上がり始めてすぐに売ってしまったので、1株分しか値上がりを享受できなかった。まるで昭和の時代の一坪一株運動家のようだ。
 さらに問題だったのは上がった後だ。急騰後に下げたのを天井ではなく押し目だと思い、1株買い足してしまったのだ。その後利益を確定する前に株価が急落したので、含み損を抱えることになってしまった。

 この件で痛感したのは、値動きに惑わされず割安な株のみを買うべきだということだ。
 私は値上がり前に、日本株が割安だな、とは感じていた。だが、当時は日本株が低迷していたため、さらに下がるのではとビビってしまい、2株しか買わなかった。
 さらにまずかったのは上がった所で買い足したことだ。上がった時点で日本株はバブル以降最高値であり、PER的にもそれほど割安なわけでもなかった。上がっていようが下がっていようが、割安な時に買い、割安でないときは買わなければ、今回のような失敗を防げるのではないか。


2.低PER法の検証
 そこで、PER(株価収益率、時価総額÷純利益)が過去の中央値より低い時のみ買うという購入法(低PER法)を考え、有効かどうか検証を行った。

 検証には2007年7月から2018年7月までの日経平均予想PERと株価の時系列月次データを用いた。

www.ginkou.info

 低PER法は、その時点のPERが過去の時系列PERデータの中央値より低い時に2万円購入し、高い時には購入を見送った。中央値にしたのは、PERは100超のようにやたら高くなることがあり、平均にするとそれに引っ張られてしまうためである。
 これと、毎月1万円ずつ購入するドルコスト平均法の比較を行った。
 2008年1月から購入を開始し、2018年7月の段階で1株あたりの購入金額を比較した。

低PER法
購入株数 117.2914株
投資金額 1440000円
1株あたり購入金額 12277.11円

ドルコスト平均法
購入株数 100.1959株
投資金額 1270000円
1株あたり購入金額 12675.17円

 低PER法の方が3.14%安く買えていることが分かる。

 中央値未満で購入するのではなく、中央値よりずっと低い時だけ購入すればさらに効率が良いのではないだろうか。
 そこで、現在のPERが過去PERの中央値の-2未満の時のみ4万円購入するようにした所、下記の結果となった。

超低PER法
購入株数 91.89989株
投資金額 960000円
1株あたり購入金額 10446.15円

 17.59%も購入金額を下げることができた。ただし、超低PER法は、総投資金額がどの程度になるか分からず、低PER状態が長く続くと資金が枯渇しかねないという欠点がある。

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 低PER法、超低PER法がどのタイミングで購入したかをグラフで示す。超低PER法は黄色の月に、低PER法は黄色とオレンジの月に購入している。

 低PER法の問題点として、経済危機時にはしばしば企業業績が急激に悪化してPERが急上昇するので、株価は安いのに買うことができないということが挙げられる。例えば、2009年2月に日経平均は7568.42円の調査期間中最安値をつけているが、予想PERが28.71と急騰したため、買うことができなかった。
 経済危機時に急騰したPERを無視して臨機応変に買い出動できれば、低PER法はさらに効果を発揮するだろう。


3.ダウ平均と上海総合指数における検証
 低PER法は日経平均以外でも有効なのだろうか。ダウ平均と上海総合指数でも同様に検証を行った。
(この項は検証結果が書いてあるだけなので、お急ぎの方は末尾部分だけ読んで頂ければ十分である。)

ダウ平均
低PER法
購入株数:90.64株
投資金額:1020000$
1株あたり購入金額:11253.55$

ドルコスト平均法
購入株数:92.06株
投資金額:1270000$
1株あたり購入金額:13795.17$


上海総合
低PER法
購入株数:766.85株
投資金額:1920000元
1株あたり購入金額:2503.74元

ドルコスト平均法
購入株数:476.07株
投資金額:1270000元
1株あたり購入金額:2667.69元

 両市場共、低PER法によってドルコスト平均法より1株あたり購入金額を抑えることに成功した。

 ダウ平均では低PER法によって1株あたり購入金額を18.42%も抑えられており成功のようだが、大きな問題がある。ダウ平均は年々PERが上昇しているため、2013年2月を最後に全く買うことができていないのだ。

f:id:shinonomen:20181015180719p:plain


 長期のPER的に見て、この5年間ダウ平均がずっと割高なのは確かだ。そのうち株価が5年前の水準まで暴落して、やはり割高で買うべきではなかった、ということになる可能性も0ではない。とは言え、5年間ずっと一株も買えないのでは投資法としては役に立たない。
 そこで、過去全てではなく過去3年間までのPERと比較して中央値より低ければ買う戦略にした所、2016年1月と2018年5-7月にも買うことができ、下記の結果となった。

低PER法(3年間)
購入株数:89.74株
投資金額:1040000$
1株あたり購入金額:11589.11$

 1株あたり購入金額は多少上がってしまったが、5年間ずっと買えない戦略よりは多少実用的である。
 

 上海総合も1株あたり購入金額を6.15%抑えることができたが、投資金額が1.51倍にも膨らんでしまったのが目立つ。
 上海総合の場合はダウ平均とは逆に調査開始時の2007年下半期にバブルが発生しておりPERが40前後とやたら高い時期が続いたため、その値に引っ張られ、大して割安でない時も割安と判断してしまい、買いすぎになってしまった。
 PER=30以上のバブル部分は除いて2008年8月から買い付けを開始した所、下記の結果となり、投資金額、1株あたり購入金額ともに抑制することができた。

低PER法(バブル除外)
購入株数:643.39株
投資金額:1540000元
1株あたり購入金額:2393.56円

 低PER法は3市場いずれでも1株あたり購入金額を引き下げる効果があった。
 ただし、実際に行うには市場によって多少修正が必要である。ダウ平均のように年々PER値が高まっているような市場では適用が難しい。


4.まとめ
 低PER法は一般的に言う所の長期逆張り戦略である。ウォーレン・バフェットやその師匠であるベンジャミン・グレアムが長期逆張り投資家であることからも、戦略の有効性が伺える。

 低PER法は有効性が高いが、大きな欠点がある。効果が出るまでに時間がかかるのだ。
 低PERが高PERに変わって株価が上がり始めるまでは、数カ月、長い時は何年もかかる。その間、投資家は値上がりしない株をじっと我慢してホールドし続けねばならない。これは、上昇中の株に乗っかる順張り戦略よりもずっとストレスが溜まる。

 ドルコスト平均法の場合は自動積立にして放っておけば良いが、低PER法の場合は自分で買い付けをしなくてはならないので、雑念に惑わされて買いをためらったり我慢しきれずに売ってしまったりしかねない。

 低PER法は長期的には有効だが、やるには相当な我慢強さが必要なのだ。

 

参考:日米主要指標のPERが確認できるサイト

PER(NYダウ・ナスダック100・S&P500)の推移|株式マーケットデータ

日経平均PER PBR 日経平均株価適正水準

モーニングスター [ 東証1部業種別データ ]

人生を超えるもの――半分、青い。感想2

(本稿は「半分、青い。」のネタバレを含みます。)

 『半分、青い。』ほど賛否が分かれた朝ドラも珍しい。絶賛する人がいる一方で、ツイッターに批判用の「半分白目」タグができる程、叩く人も多かった。
 はてブでも「半分、青い。」を痛烈に批判した、「半分、青い。」を直してみた。~私は北川悦吏子のドラマが好きだった。と高く評価した 「半分、青い。」のここが好きでしたが立て続けにホットエントリー入りした。
 何が視聴者の賛否を分けているのだろうか。


1.賛否を分けるもの
 本作を象徴する台詞が涼次の「納得いくものが撮れれば僕の人生を超える」だ。
 涼次が言う通り、現実の人生を超えるものが存在すると思うかによって本作の賛否が分かれているのではないか。

 フィクションは娯楽と芸術という二つの側面を持っている。
 娯楽は現実の人生を楽しくするためのものだ。受け手を楽しませることが最優先であり、現実のためにフィクションがあるという考えに基いて作られている。
 否定派のsleepingnana氏が提示したのは視聴者を気持よくするという目的に絞った修正案であり、人間のドロドロした醜い部分のような視聴者が見たくない部分は排除されている。氏の修正案は娯楽という点で良く出来ている。

sleepingnana.hatenablog.com

 一方、芸術は作品自体に人生を超えた価値があるものだ。何に人生を超えた価値があると考えるかは人それぞれだが、人間の本質とは何かといった普遍的なテーマに迫ることなどが挙げられる。
 インタビューを読むと本作は、片耳が聞こえないことや、創作に対する考え方、恋愛体験、お母さんへの思いなど、北川氏の私小説的な部分が色濃く出た作品であることが分かる。
 私小説的アプローチの利点は、隠している心の奥底まで描くことができる点で、人間の本質に迫る手段としては極めて有効だ。一方で自分が経験していないことに関しては上手く書けないという欠点もある。

 肯定派のkobeni氏が最も称賛していたのも北川氏が経験に基づいて描いた創作の光と影の部分だった。kobeni氏は創作関係の仕事をされているらしく、自分で創作をしたことがある人しか核心部分は理解できないのかもしれない。

kobeni.hatenablog.jp


 私も小説を書いているが何度も新人賞の壁に跳ね返されているので、ユーコや鈴芽が才能に限界を感じて漫画家の道を諦める展開はグサグサ心に突き刺さった。

 

 娯楽と芸術は対立するものではなく、両立しうる。だが、場合によっては対立する。
 基本的に、フィクションの主人公は現実の人間よりも高潔だ。物語のヒーローは仲間のために命がけで戦ったりするが、現実で仲間のために命をかけている人などめったにいない。
 娯楽の観点からは主人公に英雄的行動を取らせた方が視聴者が気持ちよく見れるが、私小説的に考えると絶対そんなことしないよ、というような場合、作者は娯楽を取るのか芸術を取るのか選択を迫られる。


2.現実からの批判と現実より優先すべきもの
 北川氏は最終週の展開についてインタビューで「たぶん炎上するんだろうなと、覚悟はできています。なぜそれを書いたかというと、自分としてはそれが必要だったから。」と答えている。これは視聴者の望むものを提供する娯楽よりも優先度が高いものがあるという考えの現れだ。

 本作で特に批判を浴びた台詞に鈴芽が涼次に言った「死んでくれ」がある。 
 この台詞に対し、井戸まさえ氏が、離婚相談を数多く受けている経験上、相手から離婚を切り出された時に言う台詞は「死んでくれ」ではなく「死んでやるっ」だと指摘していて感心したのだが、リアリティの観点から不自然な台詞をあえて言わせたということは、リアリティよりも優先すべきものを表現するためにあえて書いたと考えるのが自然だ。

gendai.ismedia.jp

 本作で人生を超えるものが存在すると主張する者は象徴的死の世界に生きている。秋風先生やボクテは子供がいないし、涼次も創作の世界に戻る際に子供と別れる。本作で子供が生まれることは人生の象徴である。
 「死んでくれ」は人生を超えるものが存在すると主張する者は、象徴的死の世界へ行くということを明示するための台詞なのだ。

 同様の批判を浴びたのが裕子の震災死だ。
 裕子が死んだのは、看護師の仕事の中に「人生を超えるもの」を見出したからだろう。惜しむらくは、北川氏はおそらく看護師の経験がないので、視聴者になるほど、と思わせるだけのディティールを書き込めなかったことだ。
 完全な芸術家であるボクテと違い、鈴芽と裕子は半分だけ芸術家としての才能を有している。テーマ的に、片方が生の世界へ向かうためには、もう片方は死の世界へ行く必要があったというのは感覚的には理解できる。

 裕子の死に関しては、震災で津波が来ると分かっていて逃げなかった人などいないという批判がなされている。リアリティの観点からは当然の批判だ。一方、作者は実際にどうだったかという現実よりも「現実を超えるもの」を優先して書いている訳だから、両者の意見は決して交わらない。

 現実よりも優先すべき価値があると言うのは、バッティングしたら現実を犠牲にするということだから、現実を再優先と考える人にとっては到底受け入れがたいし、現実以外に価値はないと考える人にとっては理解しがたい。


3.みんな自分のことを語っている
 前出の記事についたブコメを読むと、肯定派より否定派の方が多かった。現実の人生よりも価値のあるものが存在するという考えの人はマイノリティなのだ。

 多くの人は歳とともに現実重視に考えが変わっていく。sleepingnana氏が昔は北川作品を楽しんでいたが今は酷評しているのも氏の中で「人生を超えるもの」の価値が低下したからではないだろうか。私自身若いころは頑張って文学作品を読んでいたが、今は投資本ばかり読んでいるので、「人生を超えるもの」への感性が低下していくのは良く分かる。

 批判している人は人生を超えるものなんかない、人生を大切にしろ! と怒っており、賞賛している人はそうだよ。人生を超えるものは存在するんだよ。朝ドラで良くぞマイノリティの考えを表明してくれたよと喜んでいるのではないだろうか。


 本作への評論で最も感心したのは【ネタバレ感想】北川悦吏子脚本ドラマ 「半分、青い」とは何だったのか。 だ。

www.saiusaruzzz.com

 私が以前書いた「トリックスターヒロイン論」をより緻密に展開していて舌を巻いた。特に「「花野のためになされた」涼次のプロポーズを、鈴愛は「自分のために」断っているのだ。」という指摘には目から鱗が落ちた。

 うさる氏は「朝ドラのコンセプトや見ている人に中等半端に気を遣った結果、根底に不快なもの(だからこそ面白いもの)を秘めつつ、当たり障りのない物語という非常に残念な出来上がりになってしまった。」と批判しているが、言い方を変えれば北川氏は娯楽であり芸術でもある作品を目指したということでもある。

 最終回でキミカ先生は「生まれることも死ぬことも特別なことじゃない」「生まれることがめでたくて死ぬことが悲しいというのも乱暴な気さえする」と語っている。これは「現実の人生が重要だ」=生と「人生を超えるものがある」=死という二つの考えは等価だということだ。


 感想を色々読んで感じたのは、みな「半分、青い。」について語っているようで自分のことを語っているということだ。
 鈴芽は登場人物の隠された感情を暴いて回るトリックスターだったが、作中で暴くことに飽きたらず作品を飛び出して視聴者の感情をも暴いて回っているかのようだ。
 ヒロイン=正義となりがちな従来の朝ドラと違い、本作は正しい人生を提示せず、登場人物全員の人生を等価なものとして提示している。従って、何をくみ取ってくるのかは視聴者次第だ。
 欠点もある作品だが、非常に優れた写し鏡であることは間違いないだろう。

 

shinonomen.hatenablog.com

FAANGのファンダメンタル(PER、EPS成長率、ROE)まとめ

 GAFAFANGFAANGなどと呼ばれる米国の新興企業が話題だ。
 GAFAはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字であり、FANGGAFAからアップルを外してネットフリックスを入れたもの、FAANGは5企業全部を指す。

 過去最高を更新している米国の株価を牽引しているのがFAANGだ。アップル、アマゾンは最近相次いで時価総額1兆ドルを突破した。
 『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』という本がベストセラーになり、アップルがアイルランド政府から巨額の追徴課税を課されたり、トランプ大統領がグーグルやフェイスブックが偏向しているとして調査を命じたりしている。

 圧倒的リターンを叩きだしているFAANGだが、「でも、お高いんでしょう? 」と思って買うのを敬遠してきた。だが、9月に入って高すぎる株価に調整が入ってやや下落したので、ファンダメンタルを調べてみた。
 データは9月23日にモーニングスター米国株式情報から取得した。EPS成長率は最新と4年前のEPSから、1年当たりの成長率を算出した。

銘柄名 ティッカー PER PBR EPS成長率 ROE 営業利益率  
アップル AAPL 19.7 9.1 12.84 36.87 26.76 優良株
アマゾン AMZN 151.7 26.7 79.68 12.91 2.31 急成長株
フェイスブック FB 25.2 5.9 73.12 23.84 24.48 優良株
アルファベットクラスC GOOG 50.4 5 -1.45 8.69 26.05 将来性株
ネットフリックス NFLX 164.2 35 54.29 17.85 7.17 急成長株


 アップルは高いROEの割にPERが低く割安である。ROEを重んじるバフェット氏がガンガン買っているのも納得である。
 フェイスブックは高い成長性の割にはPERが低く、お買い得である。
 アマゾンとネットフリックスはEPS成長率はすさまじいがPERも非常に高い。PERが20になったら株価が1/8くらいになるわけで、ハイリスク・ハイリターンすぎる。
 アルファベット(グーグル)は成長性が低い割にPERが高く現時点では良い所がない。将来性が買われているのであろう。

 これらの株を買うには米国株取引をするしかないが、大和投資信託から『iFreeNEXT FANG+インデックス』という投資信託が販売されている。

www.daiwa-am.co.jp

 これはFAANGに、アリババ、バイドゥ、エヌビディア、テスラ、ツイッターの5銘柄を加えた10銘柄を10%ずつセット販売したもので信託報酬は0.7614%だ。10銘柄の多くが有望なら、この投資信託を買う方が日本円で買えるので楽だ。そこで、追加の5社についても調べてみた。

銘柄名 ティッカー PER PBR EPS成長率 ROE 営業利益率  
アリババ BABA 51 7.4 25.12 19.85 28.12 急成長株
バイドゥ BIDU 21.4 3.7 15.03 17.63 18.5 優良株
エヌビディア NYDA 38.5 18.2 17.61 46.05 33.05 優良株
テスラ TSLA - 13.1 - -43.63 -13.88 将来性株
ツイッター TWITR 91.9 3.9 - -2.24 1.59 将来性株


 ハイテク新興企業10銘柄は下記の3グループに分けられる。
1)ROEや営業利益率が高くて収益性が高いが、EPS成長率がさほど高くないのでPERが割安になっている優良株 →アップル、フェイスブック、エヌビディア、バイドゥ
2)営業利益率は低いが爆発的な成長性を誇り、PERが非常に高い急成長株 →アマゾン、ネットフリックス、アリババ
3)今のところ十分な利益が出ていないが、将来性に期待して買われている将来性株→アルファベット、テスラ、ツイッター


 将来性株という言葉はないが、適当なカテゴリーがなかったので私が命名した。
 順調に成長する新興企業は「将来性株→急成長株→優良株」という順にクラスチェンジしていく。
 フェイスブックはEPS成長率が極めて高い急成長株だったが、直近の四半期決算の伸びが少なかった(四半期成長率が3%)ので優良株へカテゴリーが代わり、株価が急落した。
 私は優良株が好きなので、買うとしたらアップルかフェイスブックだろう。

 投資信託は通常、個人では買えない幅広い銘柄をセットにすることで、下落リスクを軽減するための商品だ。だが、『iFreeNEXT FANG+インデックス』は近い値動きをする銘柄をパッケージングしており、あまりリスク軽減になっていない。『iFreeNEXT FANG+インデックス』を買うより、最もPERが低いアップル株だけ買った方がおそらくリスクは低い。
 また、10銘柄しかないというのもマイナスだ。10銘柄くらいなら自分で買い集めた方が信託報酬がかからないし、自分好みではない銘柄を除外できる。

 アマゾン、アップル、アルファベット、フェイスブック、テスラ、ツイッターの6銘柄はワンタップバイで1000円から手数料0.5%で買える。NEXT FANG+の信託報酬は0.7614%なので、1年4ヶ月以上保有するなら、個別に買った方が手数料は安くなる。 

 逆に言うと、ハイリスク・ハイリターンを好んでいたり、短期に売買を行う投資家にとってはメリットのある商品だ。急成長株が好きだが一社だけ買うのは怖すぎるという人や、手軽にちょっとだけリスキーな商品も持っておきたいという人、相場観に自信があり短期で売り抜けようと目論んでいる人にとっては良い投資信託ではないだろうか。 

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

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