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チェンソーマン127話感想

(本稿は『チェンソーマン』127話のあからさまなネタバレを含みます。ネタバレが嫌な人はジャンプ+で先に読んで下さい。5月2日まで無料で読めます。)

shonenjumpplus.com

先週の『チェンソーマン』127話(藤本タツキ著、集英社)には感銘を受けた。
嫌なことばっかりで人生が嫌になっているアサの前に落下の悪魔が現れ、安らぎに包まれた落下へと誘う。空に向かって落ち始めたアサを助けにチェンソーマンが駆け付ける。

自分の気持ちなんて「わかるワケないでしょ!? 」と言うアサにチェンソーマンが
「悪い事ばっかじゃねぇってわかってるけど… 毎日毎日前にあった悪い事ず~っと思いだして 人生どんどん最悪が糞のハンバーガーみてえに積み重なっていくんだよな? 」と語りかける。
こんなに的確な表現見たことない! 私が鬱々としている時の気持ちをズバリと言い表してくれていて、そうか、こう表現すれば良かったのか、と目が開かれる思いがした。

アサの落下を止めようとしたチェンソーマンは
「楽しい事考えろ!! 犬!猫! 犬!犬! 猫!」
「止まった!猫!猫! アイス!アイスクリーム!」
と呼びかける。
また、アサに
「どうやって乗り越えたの… チェンソーマンは…」
と尋ねられたチェンソーマンは
「乗り越えてねーよ! チェンソーマンは!!」
と応答し、セックスが楽しみで生きていると語る。「乗り越えてねーよ!」という言葉に感銘を受けた。

鬱に関してはとかく原因を見つけ出して解消し、どうやって乗り越えるのかという話になりがちだ。
だが、鬱というのは大元では生老病死の苦しみに起因している。生老病死は避けがたいのだから、苦しみを根本的に解消する方法などない。(悟りを開けば解消できるが常人には難しい。)
苦しみを根本的に解消できない以上、犬猫やアイスクリームやセックスで一瞬だけ苦しみを忘れて一時しのぎするしかない。楽しい一瞬を無限に積み重ねれば、楽しい人生にできるのだ。