スガキヤは私にとっての憧れだ。長崎ちゃんぽんの四海楼やハンバーグのさわやか等と並んで、長年いつか行ってみたいと思っていた。
ラーメン330円という圧倒的な安さ、唯一無二のラーメンフォーク、ラーメン屋なのに充実しているアイスクリーム。全てが魅惑的だ。
だが、スガキヤは中部や関西にしか存在しない。域外に住むものにとって、スガキヤに行くのはハードルが高い。日本一行くのが難しい店と言っても過言ではない。
どうしても四海楼のちゃんぽんが食べたいのなら、飛行機に乗って食べに行けば良い。
だが、スガキヤのラーメンが食べたいからと言って、新幹線に乗って食べに行くわけにはいかない。
スガキヤは安いことが魅力なのだから、一万円以上かけて食べに行くのでは本末転倒。そんなことをすればスガキヤのレゾンデトールが失われてしまう。
そんなわけでスガキヤは届かぬ夢として存在しつづけていた。
そんな私についにチャンスが巡ってきた。名古屋に日帰り出張に行くことになったのだ。
調べてみると、名古屋駅近くに寿がきやがある。これはスガキヤの高級版だという。
違う! こんなものはまがい物だ。私が行きたいのはショッピングモールの中にある安っぽい店であって、断じて高級店などではない。
さらに調べると名古屋駅から十数分歩いた所にイオンがあり、スガキヤが入っていることが分かった。
昼前に名古屋駅に到着した私は、期待に胸を膨らませ、一路スガキヤを目指した。
黙々と歩いていると、ついにイオンタウン太閤が見えてきた。マックスバリュを通り過ぎた奥、遂にスガキヤがその姿を現した。
赤いめでたそうな看板にガラス張りの開放的な店内。これがスガキヤか……。
しばし感慨にふけった後、店内に入る。
スガキヤには様々なおトクセットが用意されている。ひとしきり悩んだ後、レジでラーメンと五目ごはんのおトクセットD(500円)を注文した。
じきに番号が呼ばれ、トレーを受け取ってカウンター席につく。写真を撮り、ラーメンに刺さっていたスプーンを引き抜くと、四本の突起が顔を出した。
これがあの有名なラーメンフォークか!!
私のテンションが爆上げになった。一見、普通のスプーンであるかのように隠しておいて、引き抜いたらラーメンフォークであるという演出が憎い。
味はと言うと、わっとさんが
「コシ? それなに?」と言わんばかりのフニャフニャの麺、トンコツのはずなのにカツオ節の風味の強いスープ
と喝破されたまさにそのままであった。私から付け加えることは何もない。
全体の感想を言うと、ラーメン330円という値段設定が絶妙である。もし400円なら、ラーメン単品で頼む人がぐっと増えるだろう。
よく考えると五目ごはんは値引き後の170円でもさほど安くない。スガキヤは五目ごはんで稼いでいるに違いない。
夜は名古屋駅北のガード下にある麺屋獅子丸に行った。Rettyおすすめの人気店だ。
一番人気の獅子丸ぱいたんらぁめん 820円の食券を購入する。
麺とスープはすべて国産を使っているというこだわりの店で、厨房を囲むように配された長いカウンター席はほぼ満席だった。
獅子丸ぱいたんらぁめんは泡立てたスープに贅沢に5枚も乗った二種類のチャーシュー、刻み細葱が配されたオシャレな一品。
国産小麦で作られた麺はそうめんのように柔らか。
まろやかなスープは何の出汁だか全く分からなかったが、卓上の説明を読むと、豚骨、鶏ガラ、野菜と煮干しやアゴ、サバなどの魚介系出汁を合わせたスープだという。
さすが価格がスガキヤの2.5倍もするだけあって美味しかったが、私は重大な事実に気づいてしまった。
柔らかい麺に豚骨と魚介の合わせスープ。これって基本のコンセプトはスガキヤと同じじゃない?
名古屋人は魂のレベルでスガキヤが美味いと刷り込まれているのかもしれない。
東雲製作所は本記事が年内最後の更新となります。皆様良いお年をお迎え下さい。