萩生田文部科学大臣の身の丈発言をきっかけに、大学入学共通テストへの批判が高まっている。
これに限らず安倍政権は無駄に制度を複雑化させて費用対効果を落としているような政策が目立つ。
ふるさと納税は返礼品によって地方税収を目減りさせている。
軽減税率・キャッシュレス決済によるポイント還元は「公平・中立・簡素」という税の原則に反し、小売店の事務処理コストを増大させている。
大学入学共通テストへの英語民間試験の導入は受験生に英語民間試験受験の負担を増やしている。
これらの政策には共通点がある。結果的に一部の人を優遇する制度になっているのだ。
ふるさと納税→返礼品に選ばれた業者を優遇
ふるさと納税新制度から泉佐野市らを除外→政府の指導に逆らわない自治体を優遇
軽減税率→新聞社を優遇
キャッシュレス決済によるポイント還元→キャッシュレス決済業者を優遇
大学入学共通テストに英語民間試験を導入→英語民間試験業者を優遇
愛知トリエンナーレへの補助金不交付→イデオロギー的に近い人を優遇
他にも、森友・加計問題等でも、政府が友人・知人を優遇したのではないかという疑いがかけられている。
政治は一部の人のためではなく全体のために行うべきだ。一部の人を優遇するなら合理的な理由が必要で、明確な理由も示さず恣意的に行うべきではない。
例えば、所得税の累進課税は貧困層を優遇しているが、貧しい人の生存権を保証し、内需を拡大して経済を活性化するといった合理的理由が存在する。一方、新聞に軽減税率を適用したことには合理的理由が存在せず、ほとんど国民は納得していないだろう。
政府が優遇政策を行うのは、権力強化に役立つからだ。
リーダーが一万円を10人に千円ずつ公平に分配すると決まっている場合、リーダーは権力の振るいようがない。一方、一人にだけ恣意的に一万円を与えるのであればリーダーはそれを餌に権力を振るうことができる。
新聞社に軽減税率を適用することが決まると、新聞や系列のテレビ局から強い軽減税率批判が出なくなった。出版社は書籍も軽減税率の対象にしてくれるよう、政府に要望している。消費税率が一律だった時より政府の権力が強まったのだ。
だがこれには前提条件がある。優遇戦略が上手くいくのは多くの国民が諦めて黙っている場合だけなのだ。
先ほどの例で言うと、一人にだけ恣意的に一万円を与えるのをメンバーが黙って見ていれば、リーダーは権力を持つ。だが、メンバーの多くがそれに抗議してそんなことをすればリーダーを解任するぞと脅せば、リーダーは不平等な取り扱いを止めざるを得ない。
最近の国政選挙では半分ぐらいが棄権するので、3割の人を優遇すれば、2割の人が怒って反対しても選挙に勝つことができる。だが、棄権している人の内、1/5以上が怒って立ち上がるかもしれないと思えば、政府は優遇政策を止めざるを得ない。政府にとっては選挙で負けて権力を失うことこそが最も恐ろしいからだ。
本稿を書いている途中で、政府が英語民間試験の導入を延期するというニュースを聞き、久しぶりに主権者は国民であるということを思い出した。高校生を始め、粘り強く抗議を続けてきた人達の努力が実を結び、多くの国民の共感を集めるに至って、遂に政府が危機感を抱いたのだろう。
政府に有権者の一部が立ち上がるかもという危機感を抱かせることができれば、不平等な政策を止めさせることができる。合理的な理由なく一部の人を優遇するような政策には、諦めずに反対の声を上げよう。