東雲製作所

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2019年テレビアニメベスト10

今年は例年よりはテレビアニメを観たので、ベスト10を発表する。
とにかく面白いもの、レコーダーに未見の作品があったら真っ先に見たいもの、という観点で選出したらメジャーなものばかりになってしまった。
ジャンプ作品が4つも入っている。一時期低迷が囁かれていたが、新たな黄金期に入ったのではないだろうか。

 

1)鬼滅の刃(原作:吾峠呼世晴、監督:外崎春雄、アニメ制作:ufotable

家族を鬼に殺された炭治郎が、鬼にされてしまった妹禰豆子を人間に戻すため、鬼と戦っていく大人気バトルアニメ。
本作の特徴はメインキャラが少年も少女もみんな可愛いことだ。炭治郎は頑張り屋さんで可愛いし、禰豆子はお兄ちゃん子で可愛いし、善逸はヘタレで可愛いし、伊之助はツンデレで可愛い。バトル物少年漫画で主要キャラがみんな可愛いのは珍しい。
例えば緋村剣心は普段は可愛いが、敵と戦う時は雄々しくなって格好良い。だが、炭治郎は敵を屠る時すら優しくて可愛い。カードキャプターさくらを思わせる可愛さだ。作者女性説が有力なのもうなずける。

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2)約束のネバーランド(原作:白井カイウ出水ぽすか、監督:神戸守、アニメ制作:CloverWorks)

エマ達孤児院で暮らす子どもたちが秘密を知ってしまったことから始まるコンゲーム。1話の衝撃がすごい。
昔のジャンプ作品はドラゴンボールに代表されるようにストーリー展開は行き当たりばったりだが、キャラとエピソードが強いので面白いマンガが多かったが、最近はストーリー展開が緻密な作品が増えた。
本作はその最たるもので、門に近づいてはならないという<禁止>を破ったことから<罰>を受けるというように物語理論をきっちり学んでストーリーを練り上げている。

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3)ゴールデンカムイ(原作:野田サトル、監督:難波日登志、アニメ制作:ジェノスタジオ)

日本軍兵士杉元とアイヌの少女アシリパがタッグを組んでアイヌの残した金塊を探す冒険活劇。
銃撃戦になったかと思えば、騙し合いになり、敵と見方が入れ替わったりと展開が目まぐるしく変わり、全く先が読めない。
普通の生活を送るのに必要な何かが欠落した人間ばかり登場するが、彼らを否定せず訥々と描写することで、そう生きるしかなかった悲しみが際立っている。特に尾形と谷垣の過去回が心に残った。

 

4)かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(原作:赤坂アカ、監督:畠山守、アニメ制作:A-1 Pictures

生徒会長白銀と副会長かぐやが両思いなのに互いに相手から告白させようと、知略を尽くして無駄に戦うギャグアニメ。
最初はアホかいと笑いながら見ていたのだが、彼らが相手から告らせようとしているのは、相手より優位に立ちたいからではなく、相手に拒絶されるのが怖いからではないか、と気付いて見方が変わった。
これはハイスペックな変人の話ではなく、普遍的な恋愛物語なのだ。

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5)Dr.STONE(原作:稲垣理一郎Boichi、監督:飯野慎也、アニメ制作:TMS/8PAN)

全人類が突如石化。それから数千年が過ぎた世界で、天才高校生石神千空が一から科学文明を再構築していくという気宇壮大なSF。
ジャンプで緻密な話が増えたと書いたが、本作はジャンプ伝統の大風呂敷がすごいタイプの作品。
少年漫画で主人公が科学者というだけでも珍しいが、さらに科学の素晴らしさ、科学的探求のワクワク感を真正面から描いており、本作に触発されて科学者を目指す若者が大勢いるだろうと思うと、科学界への貢献は計り知れない。
敵役の司が科学を目の敵にしている理由が腑に落ちない。司を通して科学の負の側面を掘り下げて描けば、もっと深い話になると思うのだが。

 

6)からかい上手の高木さん2(原作:山本崇一朗、監督:赤城博昭、アニメ制作:シンエイ動画

高木さんがあの手この手で西片をからかうアニメ。
とにかく高橋李依さんの囁くような声音が絶品で、毎回身悶えしながら見ていた。
女子三人組の話が間に挟まるのだが、30分ぶっ続けで高木さんにからかわれていたら悶え死ぬので、適切な処置である。
1期の時はひたすら高木さんが可愛かったのだが、西片も可愛いことに気がついた。高木さんがからかいたくなるのもよく分かる。

 

7)バビロン(原作:野﨑まど、監督:鈴木清崇、アニメ制作:REVOROOT)

正崎検事が自殺法を制定しようとする得体のしれない存在と戦うサスペンス。
とにかく毎回予想をはるかに超えて最悪の展開になっていくのがすさまじい。
野崎まど氏の作品に触れると、自分が無意識の内にリミッターを設定し、その中でだけ考えていたということに気付かされる。
自由意志による幸せな自殺は悪かという哲学的な問いがテーマになっているのだが、自殺は幸せであるという認知の歪みを生じさせることが悪なのだ。自爆テロと同じ構図だよね。

 

8)女子高生の無駄づかい(原作:ビーノ、監督:さんぺい聖、アニメ制作:パッショーネ

女子高生達が青春を浪費している様を描いた日常アニメ。
あそびあそばせ」が萌えアニメの皮を被ったギャグアニメだとすれば、「女子高生の無駄づかい」はギャグアニメの皮を被った萌えアニメ。バカ以外全員萌えキャラじゃないか。
全キャラに端的なあだ名がついているのでキャラ名が覚えやすいし、あだ名に引っ張られてキャラが立っている。
第一印象が最悪だったワセダが段々良い先生に思えてくるのが面白い。

 

9)彼方のアストラ(原作:篠原健太、監督:安藤正臣、アニメ制作:Lerche

宇宙の彼方に転送されてしまった9人の少年少女が、母星への帰還を目指すスペースオペラ
それだけで話の主軸になりそうな大ネタが三つ、四つあり、各キャラクターが抱える葛藤の克服があり、さらに訪れる惑星でのトラブルもあるというてんこ盛りな内容。
本作では国家や宗教が消滅し全部自分で決めるということが肯定されていたが、死の恐怖を前にして宗教のようなものにすがるのは悪いことなのかといったことを考えさせられた。

 

10)賭ケグルイ××(原作:河本ほむら尚村透、監督:松田清、アニメ制作:MAPPA

ギャンブルの腕で序列が決まる私立百花王学園で、蛇喰夢子達が様々な勝負を繰り広げるギャンブルアニメの第二期。
ギャンブルでぎりぎりの精神状態に追い込まれた様が、異様にデフォルメされた絵と振り切った演技で表現されており、見ているとアドレナリンがドバドバ出てくる。
夢子を始め、ネジが外れたような連中ばかり出てくるのだが、根幹の所では疎外された人間が自らを取り戻すという普遍的なことが描かれている。特に扉の塔の話は心に残った。