東雲製作所

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S&P500+Jリート―スリーシーズンズポートフォリオ

1)米国株と日本株を組み合わせてもリスク当たりリターンは改善しない。

先月の記事でS&P500に日本株新興国株を混ぜて全世界ポートフォリオを作る方法を紹介した。
全世界ポートフォリオは効率的市場仮説という経済理論に基づいている。割安な株があったらただちに買いが殺到して適正な価格まで値上がりするので、市場で流通している株はどれもリスク当たりのリターンが等しくなる。実際には値上がりする株と値下がりする株があるわけだが、それを事前に予想することはできない。そうであるならば、できるだけ広く分散して世界中の株を少しずつ買うのが、最もリスクが少なくなると言うのだ。

だが、近年のリターンやリスクを見る限り、S&P500に日本株新興国株を混ぜても良いことはない。
下のグラフは2016年1月から2019年11月のSPDR S&P500 ETF(1557)と日経平均を混ぜた場合の1日当たりのリターンとシャープレシオ(リスク当たりリターン)を示したものだ。

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横軸がS&P500の組み入れ比率である。S&P500 100%の時がリターン、シャープレシオ共に最も高くなっている。
リスクのグラフを見ると、日経平均はS&P500よりリスクが高く、また値動きも似ているため混ぜても大してリスクが下がらないことが分かる。

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SPDR S&P500は円ベースなので為替リスクを含んでいる。にも関わらず、為替リスクがない日経平均よりリスクが低い。一般に米国株は日本株よりハイリスクなイメージがあるが、間違いであることが分かる。

もちろん、過去のリターンは将来のリターンを保証するものではない。米国が突然没落する可能性もあるので、株式を地域分散して持っておくことにも意味はある。
現在は米国株が割高なので、来年は相対的に割安な新興国株や日本株の方がリターンが高くなる可能性はある。
だが、新興国株や日本株は米国株よりリスクが高く値動きも似ているのだから、リスク軽減のために新興国株や日本株に分散するのは間違っている。リスクを軽減したいのなら、リスクが低く、S&P500とは異なった値動きをする資産と組み合わせるべきだ。


2)米国株とJリートを組み合わせることで効果的にリスクを減らせる。

通常、株式と混ぜてリスクを軽減するのは債券の役目だ。だが、現在日本債券はマイナス利回りだし、外国債券は為替リスクがあるのであまりリスク軽減にならない。

現状、債券の代替物として最も有力なのはJリートだ。Jリートは3.5%程度の利回りがあるし、通常の株式より値動きが小さい。
さらに、値動きもS&P500とは異なっている。11月に米中合意の機運が高まり株が値上がりすると、Jリートは急落。その後も軟調に推移している。つまり、株式と逆の値動きをしている。S&P500と組み合わせればリスクが軽減できそうだ。

そこで、2016年1月から2019年11月の約4年間の終値データで検証を行った。
SPDR S&P500 ETF(1557)とiシェアーズ・コア Jリート ETF(1476)を0~100%の割合で組み合わせた時のリターン、リスク、シャープレシオは下記のようになった。(横軸がS&P500の組み入れ比率。)

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最もリターンが高いのはS&P500 100%の時、最もリスクが低いのはS&P500 30%,Jリート70%の時だった。
シャープレシオはS&P500 40%,Jリート60%で最も高くなった。


リスクのグラフを見ると、日経平均と違ってJリートはS&P500よりリスクが低い上に値動きの連動性が低く、混ぜることで効果的にリスクを減らせていることが分かる。

その人のリスク許容度に応じて、S&P500のポートフォリオJリートを0%~70%組み込むことで個々人に最適なポートフォリオを作ることができる。
具体的にはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)とeMAXIS Slim 国内リートインデックスを組み合わせるのが最も簡単だろう。
(S&P500はSBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド、JリートはSmart-i Jリートインデックスでも良い。)


3)スリーシーズンズポートフォリオ

S&P500 70%、Jリート 30%程度を標準に、各人のリスク許容度に応じてJリートの組み入れ割合を0~70%に変化させるポートフォリオをスリーシーズンズポートフォリオ命名する。

スリーシーズンズというのはレイ・ダリオのオールシーズンズポートフォリオにならったものだ。

kirarinasset.com

レイ・ダリオのオールシーズンズポートフォリオはリターンを多少犠牲にして厳冬期にも対応できるようにしたディフェンシブなポートフォリオだが、スリーシーズンズポートフォリオはリターンが高い分、厳冬期には暴落する。

Jリートは賃料収入を配当として出資者に還元する特殊な株で、家賃は企業の利益より安定しているため利益のブレが少ない。極めてディフェンシブな高配当株のようなものだ。だが、景気が悪化し、企業が次々拠点を絞ってオフィスビルがガラガラみたいな事態になれば賃料収入が減少するので、Jリートも大きく値下がりする。

おそらく、 スリーシーズンズポートフォリオが急落するまでには
1)S&P500が暴落し、Jリートが値上がり。
2)不況が深刻化し、Jリートも値下がり。
というステップを踏むことが予想される。
2)の厳冬期に対応するためには、1)でJリートをある程度売ってキャッシュを確保し、2)でS&P500を買い向かう必要がある。

スリーシーズンズポートフォリオは株式のみで構成されたポートフォリオよりは安全だが、本格的景気後退時にはそれなりの対処が必要なのだ。