東雲製作所

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一括投資と積み立て投資を比較する

 『全面改訂ほったらかし投資術』(山崎元、水無瀬ケンイチ著、朝日新書)の中で、山崎元氏が一括投資の有効性について書かれていた。


 定期的に一定額を積み立てる方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれる方法で、しばしば投資家にとってリスクが低減できる有利な方法だと説明されています。(中略)

 しかし、ドルコスト平均法を含めて「時間分散」を行う投資法は、投資すべき資金が既にあり、最適な投資額が決っているとすると、時間・手間・コストがそれぞれ余計にかかるのと共に、投資が完了するまでの期間に十分機会を利用できない「機会コスト」もかかるので、「気休めにはなっても、合理的ではない方法」です。

 既に運用資金をお持ちの方は、どの道「いいタイミング」など分からない中で平均的に有利だと思うからリスク資産に投資するのですから、ご自分にとっての適正投資額を遠慮なく1回で投資してしまってください(「一括投資」)。

 

 株価は平均的には徐々に高くなるから早めに全額を投資しきった方が確かにリターンは多くなりそうだ。だが、ドルコスト平均法にも平均取得株価を引き下げる効果がある。

 山崎氏が言われていることは本当だろうか。実際のデータで検証を行った。

 検証には日経平均株価の2015年1月~2018年3月の始値データを用いた。

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 100万円の資金を一括投資は初日に一括投資する。一方、積み立て投資は100日かけて1万円ずつ投資するものとした。
 検証期間は2015年1月5日から2017年10月31日(2018年3月30日の100営業日前)までの全営業日。

 日経平均株価で取得できる金融商品を1単位とし、期間中の全ての営業日について両者の合計取得単位数を算出。100日後の終値で換金した場合のリターンを計算した。

 一括投資の平均利回り(年換算)は7.42%、積み立て投資は2.97%となり、一括投資が上回った。

 695日中、一括購入法が上回った日は446日、積み立て投資が上回った日は249日だった。一括投資の勝率は概ね64.2%だった。

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 両投資法利回りの頻度分布を示す。縦軸が年間利回りを示す。一括投資はハイリスクハイリターン、積み立て投資はローリスクローリターンであることが分かる。 散らばり具合(=リスク)を示す標準偏差は一括投資が24.90、積み立て投資が14.69だった。

 金融商品のリスク当たりのリターンを示す指標にシャープレシオがあり、以下の式で表される。
 シャープレシオ=(投資商品のリターン-無リスク利子率)÷ 投資商品の年率リスク
 無リスク利子率を10年国債金利の0.05%として、両投資法のシャープレシオを計算すると、一括投資が0.30、積み立て投資が0.20となり、やはり一括投資が上回った。

 

 株価は年平均7%程度上昇すると言われている。100日もかけて購入するのは機会損失が大きすぎるようだ。そこで10日かけて10万円ずつ投資する方法についても同様に100日後のリターンを計算した所、次のような結果となった。

 10日積み立て投資: 平均利回り6.91%、標準偏差23.95、シャープレシオ0.29

 一括投資       : 平均利回り7.42% 標準偏差24.90、シャープレシオ0.30

 やはり利回り、シャープレシオ共に一括投資が上回った。連続した10日程度の分散では、リスクを十分に減らせないことが分かった。


 長期間の積み立てでは機会損失が大きく、短期間ではリスクを十分に減らせない。やはり山崎氏が言う通り、ある程度のリスクには目をつぶって一括投資するのが合理的なようだ。 


結論:積み立て投資より一括投資の方が合理的である。

 

PS.だが、実際に自分が投資をする段になるとびびってしまい、一回で全額を投資することはできなかった。一括投資最大の問題は心理的抵抗を振り払うことが難しいことかも知れない。

 

全面改訂 ほったらかし投資術 (朝日新書)

全面改訂 ほったらかし投資術 (朝日新書)