東雲製作所

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米国株はもう少しで買い場

世界的な金融引き締めによって株などのリスク資産が急落している。
米国を代表する株価指数S&P500は先週一週間で4.65%下落し、一時年初来安値を更新した。債権も急落しており、資金の逃げ場がない状態だ。
ただ、皆が総悲観になり株を投げ売っている時は、長期的に見ると良い買い場であることが多い。そこで、2022年9月23日現在の米国株のバリュエーションをチェックし、過去の買い場と比較して現在が買い場かどうか検証を行った。

 

1.現在の米国株のバリュエーション

1-1.予想PER
9月23日現在の米国主要指数の予想PERをコロナ前(2018年1月~2020年2月末)の平均予想PERと比較すると下記のようになる。
S&P500:9/23 16.42、コロナ前平均 17.54 6.4%割安
NAS100:9/23 20.92、コロナ前平均 20.98  0.3%割安
S&P500は割安、ハイテク株中心のNASDAQ100は適切価格と言える。

1-2.シラーPER
シラーPER(CAPEレシオ)はノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏が考案したPER。通常のPERが1年間の利益を元に算出するのに対し、シラーPERは過去10年の実績利益を元に計算するので、景気循環の影響を排除することができる。
シラーPERは25以上で過熱感を示すとされる。
9月23日現在27.9なので割高だ。

1-3.VIX指数
VIX指数とは株価変動率を表す指標の一つで恐怖指数とも呼ぶ。シカゴオプション取引所がS&P500のオプション取引の値動きを元に算出され、高いほど市場の恐怖が高まっていることを示す。
9月23日現在29.86とかなり高めだ。

1-4.Fear&Greed Index
CNNが算出しているFear&Greed Index(恐怖と強欲指数)は9月23日現在24の「強い恐怖」まで低下した。
全ての投資家が総悲観になって株を売り切ってしまえば、もう売るものがなくなって下落が止まる。強い恐怖になったのは良い兆候だ。


2.買い場に関する研究

2-1.VIX35以上、実績PER20以下は絶好の買い場
東雲製作所では過去に何度か買い場に関する記事を発表している。
そのうち、最も信頼性が高いのは「VIX35以上、実績PER20以下は絶好の買い場」だ。本記事は2008年~2019年2月のデータを検証しており、リーマンショックに対応している点が他記事より優れている。

shinonomen.hatenablog.com


本記事はコロナショック前に書いたので、コロナショックについて追加で検証してみる。
コロナショックでは、2020年2月24日にVIXが40.11まで上昇し、5月4日まで35以上が続いた。実績PERは3月13日に18.9まで低下し、「VIX35以上、実績PER20以下」という条件を満たした。
3月13日にS&P500ETFを購入すると6営業日後の3月23日に16.7%下落して底値をつけた。16.7%という下落幅は大きいものの、株価はすぐにV字回復し、2022年1月には底から220%も上昇した。3月13日に買えれば御の字だろう。
「VIX35以上、実績PER20以下は絶好の買い場」はコロナショック時も有効だった。

2-2.Fear&Greed Index20以下は買い場
「Fear&Greed Indexによるタイミング投資の検証」という記事では2017年から2020年1月のFear&Greed Indexのチャートを元に、Fear&Greed Index20以下は買い場であると結論づけている。

shinonomen.hatenablog.com


ただし、本検証期間には長期の景気後退を伴うような下落が起きていない。リーマンショック級の下落が来ても、Fear&Greed Index20以下は買い場と言えるかどうかは不明だ。

2-3.シラーPER27.5以下は長期的にはそこそこの買い場
「シラーPERとリターンの検証」はシラーPERと10年リターンは逆相関があるということを示した記事だ。本記事は1990年1月~2020年7月の長期月次データを用いており、信頼性が高い。

shinonomen.hatenablog.com


記事中のグラフを見ると、シラーPER27.5以下は10年以上の長期投資では35%以上、ほとんどが50%以上のリターンを上げている。
25以上は割高というのが定説だが、シラーPER27.5以下なら長期的にはそこそこの買い場と言えよう。

2-4.予想PER16以下は絶好の買い場
2017年以降のS&P500の予想PERのチャートを見ると、予想PERが16以下になった2回(2018年12月と2020年3月)はいずれも絶好の買い場だった。

S&P500の予想PERチャート(出典:株式マーケットデータ)

 

ただし、予想PERは2017年以降のデータが入手できなかったので、より長期でも成立する法則なのかは不明だ。


3.現在は買い場か

3-1.VIX35以上、実績PER20以下は絶好の買い場
現在はVIX29.86 実績PER18.09。実績PERは条件を満たしているがVIX指数が35に達していない。
VIX指数がもう少し上がれば絶好の買い場になる。

3-2.Fear&Greed Index20以下は買い場
現在24なのでまだ達していない。もう少し下がれば買い場になる。

3-3.シラーPER27.5以下は長期的にはそこそこの買い場
現在27.9なのでまだ達していない。もう少し下がれば長期的にもそこそこの買い場になる。

3-4.予想PER16以下は絶好の買い場
現在16.42なのでまだ達していない。もう少し下がれば絶好の買い場になる。

4つの指標とももう少しで買い場であることを示している。


4.留意点

「予想PER16以下は絶好の買い場」は米国経済が深刻な景気後退には陥らないという仮定に基づいている。
現在の予想PERは16.42なので割安だが、企業業績が10%下方修正されれば、PER18.24となり割高になってしまう。
今後企業利益が激減するリーマンショックのような景気後退が来るなら、数年間の中期的には買い場ではない。

ただし、「シラーPER27.5以下は長期的にはそこそこの買い場」は景気後退期を含む長期データから算出された法則だ。
今後米国がリーマンショック級の深刻な景気後退に陥るとしても、シラーPER27.5以下なら10年以上の長期的にはそこそこの買い場と言えるのではないだろうか。

 

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