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当たり前な不都合な真実――痩せる筋トレ痩せない筋トレ感想

 数年かけて5キロほどの減量に成功した。だが、同時に代謝も落ちて太りやすくなってしまった。そこで筋肉をつけようと「痩せる筋トレ痩せない筋トレ(比嘉一雄著、ベスト新書)」を手にとった。
 「痩せる筋トレ痩せない筋トレ」は当たり前のことが書いてある本だ。
 本書で著者が繰り返し訴えていることは、「摂取カロリー<消費カロリーにすれば痩せる」ということだ。ものすごく当たり前だが、こういう当たり前なことを言っている本は受けが悪い。
 ベストセラーになっているダイエット本は「私が考えた新しいダイエット法を実行すれば楽に痩せられますよ」というものが多い。本書でも新しいダイエット法に関して検証を行っており、ロングブレスダイエットは長期間取り組めば代謝を高めるので効果は出るが通常の筋トレよりは効果が少ない、トマトダイエットは「リコピンとか関係なく、ただ単に摂取カロリーが小さく」なるから痩せられるといった風に解説していて納得がいく。

 当たり前のことを言うより変わったことを言った方が受けるのはダイエットに限らない。例えば、「癌は早期発見して治療せよ」「地球は温暖化しているので対策が必要」といった当たり前の意見が書かれた本より、「癌は治療するな」「地球は温暖化していない」といった学会の主流派からは相手にされていないような主張をした本の方が売れている。それは前者の主張が読者にとって不都合な真実であり、後者の主張が大衆の欲望に沿った内容だからだ。
 だが、いくら耳に痛くても、事実を受け入れなくては事態は改善しない。本書のようにちゃんとした研究結果に基づいた事実を書いている本は貴重だ。

 本書から得た最も重要な情報は「筋肉を増やすには週二回、辛い筋トレをやるのが効果的」というものだ。私は二年くらいほぼ毎日「腹筋、背筋、腕立て伏せ」を十回ずつやっているのにちっとも筋肉が増えないのは何故なのかと疑問に思っていたのだが、辛くない筋トレを毎日やっていたからだと得心した。筋トレで筋肉に微細な損傷を与え、その損傷を数日かけて修復することで筋細胞が肥大するとのこと。二年前に読めば良かった。

 そこで早速本書に書かれた「スクワット」「膝つき腕立て伏せ」「タオルラットプルダウン」「腹筋」という筋トレをやってみたのだが、滅茶苦茶きつい。特に「膝つき腕立て伏せ」は膝をついてやるなんてぬるいぜ、と舐めていたのだが、いざやってみるとあまりのきつさに呻き声が出てしまった。今までわずかに肘を曲げて誤魔化すインチキ腕立て伏せをやっていたツケが出て、上半身がなまりきっているようだ。不都合な真実は厳しいなあ。

 

痩せる筋トレ痩せない筋トレ (ベスト新書)

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