東雲製作所

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M-1グランプリ2019感想――期待通り+期待を越える=大きな笑い

 M-1グランプリ2019はレベルが高かった。特に、1~4位になった「ミルクボーイ」「かまいたち」「ぺこぱ」「和牛」は歴代優勝者に勝るとも劣らない出来だった。
 上位4組の漫才はどれも同じことを繰り返すという構造を持つ。視聴者の期待通りのことを繰り返すことで笑いのうねりを作り出していた。それに加えて、視聴者の期待を超えてくることで爆発的な笑いを引き起こしていた。具体的には下記の通りだ。

ミルクボーイ
〇〇やないか、〇〇と違うやないかが交互に来る→期待通り
「煩悩の塊」のような過剰な表現→期待を越える

かまいたち
ボケが頑強にツッコミを拒否し続ける→期待通り
「もし俺が謝って来られて来てたとしたら絶対に認められてたと思うか?」のような異常なことを言い出す→期待を越える

ぺこぱ
突っ込まずに肯定する→期待通り
「間違いはふるさとだ。誰にでもある」のような角度を変えた肯定→期待を越える

和牛
内見に行くとやはり人が住んでいる。→期待通り
ツッコミが人が住んでいないことが最優先になってひどい状態を喜び出す→期待を越える


個々の笑いに関しては「期待通り+期待を越える=大きな笑い」であるものの、それをどう配置するかに関して、決勝初進出組のミルクボーイ・ぺこぱと常連組のかまいたち・和牛は対照的な戦略を取っていた。
初進出組はシンプルに手数で勝負していた。ファーストステージで、期待通りのパターンをミルクボーイは10回、ぺこぱは15回も繰り返していた。
一方、常連組はしっかり振ってから後半で回収することで笑いをエスカレーションさせる戦略を取っていた。

M-1グランプリの持ち時間は4分だ。4分の場合、手数勝負の方が合っている。
かまいたちは言い間違えという比較的単純なフリなので、それほど時間を取られていないが、和牛は不動産の内見に言ったら人が住んでいるという込み入ったフリなので、フリに時間を取られ、トップスピードに入った所で終わってしまっている。『言い訳』で塙氏がM1は短距離漫才の大会だが和牛は中距離漫才であると指摘されていた。持ち時間が10分なら和牛が優勝していたかも知れない。

手数勝負の場合、しっかり振ってから回収するのに比べ一つ一つの笑いは小さくなりがちだ。
ミルクボーイとぺこぱは視聴者の知識をフリに使うことで、大きな笑いを生むことに成功していた。
ミルクボーイは視聴者のコーンフレークや最中体験がネタフリになっていて、漫才中は回収だけしている。
ぺこぱは既存の漫才がフリになっていて、突っ込むのか、と思わせておいて色んな角度から肯定していくというズレが笑いを生んでいる。

和牛が4分の中で種を蒔いて育てて収穫しているのだとすると、ミルクボーイは視聴者が蒔いて育てていた作物をガンガン収穫しまくっているのだ。ミルクボーイの方がウケるのは当然だ。

ミルクボーイとぺこぱの差はミルクボーイがほぼ全てのツッコミで期待を越えるワードで笑いのダメ押しをしていたのに対し、ぺこぱは期待通りレベルで終わっていたツッコミもあったからだろう。
また、これも『言い訳』の受け売りだが、漫才には関西弁の方が有利だという側面も否めない。ミルクボーイが関西弁でしゃべり続けていて笑いのテンションが常に維持されているのに対し、ぺこぱは時を戻している時にちょっとテンションが緩むという点に微妙な差があったのではないだろうか。

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