2015年8月30日に行われた「国会10万人・全国100万人行動」の国会前デモに行ってきた。14時、15時、15時55分の3回シュプレヒコールをやるということで、どれかに参加すれば良いや、とだらだら向かった所、霞ヶ関駅に着いた時は15時半前で、多くの人がデモを終えて帰ってくる所だった。
雨の中、今から向かう人の流れに乗って国会前へ向かう。共産党系らしき「9条壊すな!」「戦争反対」や、金子兜太氏が揮毫された「アベ政治を許さない」、さらにはオリジナルのプラカードやのぼりを持った人を見かけたが、7割くらいは特に何も持たずに行進している。私は「立憲主義」と書いた手書きのプラカードを持ってデモに加わった。
早い時間帯には野党の党首や坂本龍一氏といった有名人が演説していたそうだが、私は最終盤に行ったせいで有名人では雨宮処凛氏の演説を30秒くらい聞けただけだった。
国会前はバリケードが設置され、車道に警察官がずらりとならんでいる。最盛期は車道まで人で埋め尽くされていたらしいが、私が着いた時は車道にいる人はまばらで、右の歩道にぎっしり、左の歩道にぱらぱら人が集まっていた。警察車両の上に立った警察官が度々マイクで、「デモが許可されている国会の反対側の歩道に移動して下さい。」と呼びかけている。私は空いている左の歩道にいたのだが、議事堂が見えないのでどちらが国会の反対側の歩道なのか分からない。警察官に聞いた所、右側が反対側だというので慌てて移動した。
国会前に集まっていた人は団塊の世代くらいの年代が中心だった。服装はほぼ全員が上はワイシャツかTシャツ、ポロシャツで下はチノパンかジーパンであり、ノースリーブのシャツやスカート、タンクトップ、ショートパンツ、派手な柄シャツなどを着ている人は皆無だった。
デモに来るくらいだから怒り狂っているのかと思いきや、険しい表情で安倍政権への怒りをまき散らしているような人は見かけず、困ったものであるなあ、といった淡々とした表情で参加している大人しそうな人ばかりだった。地味な服装の大人しい人、つまり私と同類のような人々が全国から集結した訳で、なかなか居心地が良かった。
15時55分になり、マイクの女性の声に唱和する形でシュプレヒコールが始まった。「戦争法案絶対廃案」「安倍政権は即時に退陣」といった文言をリズミカルに繰り返す。声を上げる内に、徐々に高揚してくる。だが、突出して大声を上げたり声を枯らして叫んでいるような人は周りにおらず、「退陣」「退陣」と連呼しているものの、本当に退陣させられると信じている人はほとんどいなそうである。
デモ終了後、デモの意義について考えた。今回のような大人しいデモをしても政権が退陣する可能性はほぼない。結局のところ、デモの意義は、政権に、次の選挙では政権党には入れないよ、というプレッシャーをかけることである。その意味で、12万もの人が集まったにも関わらず、安保法制反対派のイメージを低下させるような大きなトラブルを起こさなかったという点で、デモは成功だったと言えよう。もし誰かが暴力事件などを起こして逮捕され、サイレントマジョリティにそっぽを向かれ、次の選挙で敗けるようでは本末転倒だからだ。
この成功は、雨の中交通整理等にあたっていたボランティアや警察官の努力に加え、デモ参加者達の大人しさのおかげである。
羊のような大人しさこそがデモを成功に導いたのだ。