東雲製作所

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2021年のグロース株、バリュー株のリターン概算

年末年始に2021年の株式相場展望記事が沢山出ていた。ざっと目を通した感じでは、2021年は経済活動回復に従って、出遅れていた景気敏感バリュー株が巻き返すという予想が多い。

私は2020年11月17日に「主要指数のコロナショックからの回復率」という記事を書いた。そこでは出遅れバリュー株はコロナ前まで業績が戻らない懸念があるため、必ずしもグロース株より割安とは言えないと指摘した。

shinonomen.hatenablog.com


この記事は分析のしかたが定性的で結局どちらが良いのかよく分からない。そこで、代表的なグロース株であるQQQ(ナスダック100ETF)と代表的な出遅れバリュー株である1628(運輸・物流ETF)について、楽観、中立、悲観シナリオに基いてリターンを概算してみた。


1)QQQ(ナスダック100ETF)

主な組入れ銘柄:マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック

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1年で47%以上も上昇してしまったので、過去の株価は参考にならない。そこで、過去のリターンやバリュエーションからリターンを算出した。

*楽観シナリオ +20.3%
QQQの過去10年間の年間リターンは20.3%。同程度上昇すれば+20.3%のリターンが得られる。

*中立シナリオ +3.2~+8.8%
過去1年のリターンが47.2%。2年分上がってしまったので、今年は平均よりはリターンが低下する可能性が高い。
NASDAQ100の予想・実績PERから算出したEPS成長率は8.8%。現在のバリュエーションが維持されれば、8.8%上昇する。
より保守的に見るなら、QQQの予想益利回り3.2%を採用しても良い。

*悲観シナリオ -14.4%
1/8時点でNASDAQ100予想PERは31.25だ。コロナ前は24前後だったので、コロナ前の水準までバリュエーション調整が起こると23.2%下落する。
EPS成長率8.8%分上昇するので、リターンは8.8-23.2=-14.4%となる。


2)1628(運輸・物流ETF)
主な組入れ銘柄:JR東海JR東日本、SGHD(佐川急便)、ANAJR西日本

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赤字企業が多く、バリュエーションで想定するのは難しいので、過去の株価から推定した。

*楽観シナリオ +26.0%
日本がワクチンによってコロナの集団免疫を獲得するのは2022年4月頃と予想されている。
1628の1/8時点での現在値は14130円。コロナ前高値は19100円。2022年年初に4月頃からの経済完全再開を見込んで株価がコロナ前高値を回復すれば、26%の上昇になる。

*中立シナリオ +16.2%
1年後に外国人観光客がコロナ前まで戻るとは考えにくく、利益はコロナ前を下回っている可能性が高い。
1628はコロナ感染者数が減少した2020年6月頃に16420の戻り高値をつけている。ここまで戻れば16.2%の上昇になる。

*悲観シナリオ -15%
1年後もコロナの収束が見通せない状況の場合、夏の安値12000辺りが下値目処になるだろう。その場合15%の下落になる。


概略リターンを計算してみた所、多くのアナリストが言う通り、今年はグロース株のQQQより景気敏感バリュー株の1628の方が期待リターンが高そうだという結果が出た。(1年後にコロナ収束の見通しが立っているという前提の上だが。)

ただし、1628のようなバリュー株は長期成長性は低いので、ある程度戻ったらグロース株に乗り換えた方が良い。そのタイミングを測るのが難しいという人は、今年のリターンは低くても最初からQQQのようなグロース株を積み立てる方が簡単である。


高名なアナリストがお勧めしていると、定性的な理由で買ってしまいがちだが、自分なりにリターンを概算して、定量的に比較してから買うことが、投資上達の近道だ。