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先行指標で暴落を察知できるか―株価指数編

2020年2~3月の株は歴史的暴落となった。S&P500は35%も下落して数年分の利益が吹き飛んだ。
もし暴落を事前に察知して高値で売り抜けることができれば、大きな利益を得ることができる。
株は半導体株のような景気敏感株と生活必需品株のようなディフェンシブ株に分けられる。景気敏感株は景気変動によって業績が大きく変動するため、景気が悪化しそうになるといち早く売り払われる。従って、景気敏感株で構成された株価指数には先行性があると言われている。

S&P500のような主要株価インデックスに先行して動く指標として、よく上げられるのは次の3指数だ。

フィラデルフィア半導体SOX指数)
台湾セミコン、インテルなどの半導体メーカーで構成される指数。
半導体は「産業のコメ」と呼ばれ、景況感に大きく左右される。

ラッセル2000
米国の時価総額1001-3000位の小型株で構成された指数。
小型株は倒産リスクが高いことからいち早く反応する。

ダウ輸送株平均
デルタ航空FedExなど米国の物流銘柄で構成された指数。
物や人の動きが活発かどうかをいち早く反映する。

そこで、過去の暴落時にこの3指標がS&P500に先行して動いているかどうか調べてみた。


2020年2月の暴落(コロナショック)時の4指数のチャートを示す。(2020年2/3を100とした。横軸は2/3を1日目とした日数。)

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GSPC:S&P500、DJT:ダウ輸送株平均、SOX:フィラデルフィア半導体、RUS:ラッセル2000
株価がピークをつけたのは同日か1日遅い。3指数に先行性は見られない。
一方、株価が底値をつけた日は、SOX指数とラッセル2000が3営業日早い。反発に関しては先行して動いたと言える。


2018年10月の暴落時のチャートを示す。(2018年8/27を100とした。)

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株価のピークはSOX指数、ラッセル2000、ダウ輸送株平均がそれぞれS&P500より12,13,4営業日先行していた。
底値をつけた日は4指数とも12/24で同日だった。市場全体の株が一気に売られた激しいセリングクライマックスだったと言える。


2008年10月の暴落(リーマンショック)時のチャートを示す。(2007年5/1を100とした。)

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株価のピークはSOX指数、ラッセル2000はそれぞれS&P500より59,61営業日先行していた。
ダウ輸送株平均は57営業日前に一旦ピークをつけたが、S&P500のピークの165営業日後に最高値を更新している。この最高値は結果的にミスリードであり、先行性のあるダウ輸送株平均が上がっているからS&P500も回復するだろうと買い向かった投資家は暴落に巻き込まれた。
底値をつけた日はSOX指数のみ72営業日先行していた。


まとめ
株価のピーク・ボトムに関しては、ラッセル2000やSOX指数がS&P500に先行することもあることが分かった。ダウ輸送株平均は両指数より先行性が弱い。物流への依存度が低いIT関連銘柄のウェイトが高まっているからだろう。
高値圏でラッセル2000やSOX指数が下がり始めたのにS&P500が上昇を続けている時は、急落が近づいている可能性がある。景気敏感株を売って現金比率を高めるなど、ポートフォリオの守りを固めても良いかもしれない。
ただし、2020年2月の急落のように、突如として暴落が起こる際は、先行指標も先行する余裕がない。過度な期待はしない方が良いだろう。