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株式と債券のリバランスは不適当

 インデックス投資では定期的にリバランスをすることが推奨されている。
 リバランスとは資金配分を最適な割合に戻すことだ。例えば、株式と債券の割合を、株式60%、債権40%と定めて投資を始めた場合、株式が値上がりして株式70%、債権30%になっていたら、10%の株式を売却して10%の債権を買うことで、株式60%、債権40%の割合に戻す。逆に株式が値下がりして、株式50%、債権50%になっていたら、債権を売って株式を買うことで株式60%、債権40%に戻す。こうすることで、結果的に高値の時に株式を売り、安値で買い増すことになるので、放置しておくよりリターンが高まると言うのだ。

 リバランスに効果があることは、運用結果で実証されている。『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理』(バートン・マルキール著、井手正介訳、日本経済新聞社)によると、1996年1月~2009年12月の間、米国において株式60%、債権40%の割合で運用を始めた場合、年一回リバランスを行った場合と、行わなかった場合のリターン、リスクは下記のようになり、リバランスを行った方が高いリターンを得ている。

年1回リバランス 年平均リターン10.07% リスク11.84%
リバランスなし 年平均リターン8.76% リスク13.12%

 だが、現在の日本のように債権の利回りが異常に低い時にも有効なのかは疑問だ。何故なら現在は債権の利回りが0.05%、株式は5%程度なので、リバランスをするとほとんどの場合株式を売って債権を買い増すことになる。頻繁に利回りが高い商品を売って、低い商品を買い増していたら、総リターンは下がってしまうはずだ。
 通常の場合、債権の値動きはインフレ率にある程度連動しているので、株式の割高、割安の基準値として機能する。だが、現在の日本では債権の利回りはほぼゼロに張り付いているので、基準として不適当だ。

 今の日本の状況で株式と債券に対しリバランスを行うのは、「平均利回り5%の株式が、0.05%以上の利回りを上げたら割高だから売れ」と言っていることと同義だ。これは明らかにおかしい。

 株式を割高な時に売って割安な時に買いたいのなら、平均利回りを基準に考えるべきだ。株式の過去の平均利回りが5%なら、例えば7%以上増加していたら売り、3%以下なら買い増すといった基準で売買を行う方が適当なのではないだろうか。